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審決分類 審判    K6
審判    K6
管理番号 1185956 
審判番号 無効2007-880024
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-12-28 
確定日 2008-10-06 
意匠に係る物品 医療検査用細胞容器 
事件の表示 上記当事者間の登録第0888566号「医療検査用細胞容器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立及び理由

請求人は、登録第888566号意匠の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める、と申し立て、その理由として、要旨以下の主張をし、立証として、甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。
(1)本件登録意匠は、その出願前に頒布された刊行物である実開昭60-120358号公報に記載の「極小組織片の採収容器」の意匠(以下「先行意匠1」とする。)に類似する(無効理由1)。また、英国特許GB1232276号明細書に記載の「組織包埋容器」の意匠(以下「先行意匠2」とする。)に類似する(無効理由2)。従って本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。
(2)本件登録意匠は、出願前に日本国内において広く知られた形状に基づいて、当業者が容易に意匠の創作することができた意匠である。即ち、実開昭60-120358号公報の図面(先行意匠1)、特公昭48-44081号公報の図1(甲第9号証)、特開昭51-118531号公報のFIG.1(甲第10号証)、及び実開昭63-135166号公報の図5及び図6(甲第11号証)によれば、「直方体の上面が開口された箱状体に形成され、下面に小さな透孔を縦横の略格子状に多数穿設した容器本体と、容器本体の上面と略同大の直方板状に形成され、上面に小さな透孔を縦横の略格子状に多数穿設した蓋体」の形状は、出願前の周知形状である。また、本件登録意匠の出願前に発行された雑誌「Medical Technology 1982・Sep」(甲第5号証)、及び同「Medical Technology 1986・Feb」(甲第6号証)によれば、「直方体の上面が開口された箱状体に形成され、下面に小さな透孔を縦横の略格子状に多数穿設した容器本体と、容器本体の上面と略同大の直方板状に形成され、上面に小さな透孔を縦横の略格子状に多数穿設し、一方の短辺側で容器本体に接続され開閉可能な蓋体」の形状は、出願前の周知形状である。従って本件登録意匠は、出願前に日本国内において広く知られた形状に基づき、当業者が容易に創作できた意匠であるから、意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により、無効とすべきである。(無効理由3、無効理由4)

第2.被請求人の答弁

被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、本件登録意匠と先行意匠1、及び先行意匠2との間には、多くの特徴的な差異、或いは基本的構成態様における差異があり、いずれの意匠とも類似せず、また、仮に請求人が示した各先行意匠が周知であったと仮定しても、これら先行意匠との間には多くの構成上の差異があり、周知形状に基づいて容易に創作できた意匠に該当しない、旨の反論をした。

第3.当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成2年11月8日に意匠登録出願があり、平成5年10月12日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、意匠に係る物品を「医療検査用細胞容器」とし、形態を、願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
即ちその形態は、(1)容器本体と蓋体からなる、上下に扁平な、概略横長直方体状の容器であり、容器本体は、上面を開口した浅い角箱状で、蓋体は略方形板状で、蓋体、及び容器本体底面において、四周に幅狭の余地を残して、略全面に、正方形の小孔を多数、縦横等間隔の格子状に配列した基本的な構成であること、その具体的な態様として、(2)容器本体は、高さと横幅と前後幅の比が、おおよそ1対5対3で、4方の側面が略鉛直状で、前面、及び背面において、下寄り1/4の位置に、横水平に、逆段状の段差が形成され、この段差が左右両側面に小幅、延長状に回り込み、左右両側面において、両側辺及び上辺に枠取り状に、逆「凹」字形状の凸部を形成して、その余を凹状とする逆差を形成して、上辺沿いの幅細の凸部を、蓋体を嵌め合わせるための係合縁としたものであること、(3)蓋体について、前後幅が容器本体と等幅で、横幅が容器本体より僅かに長く、左辺中央略1/2幅の部分に、極く浅い凹状の切欠きを設けて、この端縁沿いの裏面に、横長矩形板状に突出して垂下する係合片を1つ設け、そして右辺を一直線状として、端縁沿いの裏面に、横長矩形状に突出して垂下する係合片を2つ、横並びに設けたもので、2つの係合片は、並んだ全幅(手前の係合片の前端から後方の係合片の後端までの長さ)が、容器本体の係合縁の前後幅(逆「凹」字形状の上辺部分の幅)と同寸となるよう、2つの係合片をやや離して設け、閉蓋時に、これらの係合片が、本体の左右側面において、係合縁に外側から嵌め合わされる態様としたものであること、(4)蓋体裏面において、「凹」字形状のリブが、小孔を囲う態様で、前後に一対、設けられていること、(5)蓋体、及び本体底面の小孔について、蓋体と本体底面の相互に、同形、同大の孔を同数(前後7列、横10行、総数70個)配列していること、が認められるものである。

2.無効理由1(本件登録意匠と先行意匠1の類否)

請求人は、本件登録意匠が先行意匠1に類似し、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当すると主張するので、以下、本件登録意匠と先行意匠1との類否を検討する。
先行意匠1は、特許庁発行の実開昭60-120358号公報に記載された「極小組織片の採収容器」の意匠であり、その形態は、当該公報の図面、及びこれに関連する記載に表されたとおりである(別紙第2参照)。

本件登録意匠と先行意匠1を対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態において、(a)容器本体と蓋体からなる、上下に扁平な、概略横長直方体状の容器であり、容器本体は、上面を開口した浅い角箱状で、蓋体は略方形板状で、蓋体、及び容器本体底面において、四周に幅狭の余地を残して、略全面に、正方形の小孔を多数、縦横ほぼ等間隔の格子状に配列した基本的な構成である点、その具体的な態様において、(b)容器本体は、高さと横幅と前後幅の比が、おおよそ1対5対3で、右側面を除く3方の側面が略鉛直状である点、(c)蓋体について、前後幅が容器本体と等幅で、横幅が容器本体とほぼ等しく、左辺中央略1/2の幅の部分に凹凸造作をし、その端縁近くの裏面に、係合片を1つ垂下して容器本体の左側面に形成された係合部に外側から嵌め合わされる態様とし、そして、右辺を一直線状として、その裏面に、横長矩形板状に突出する係合片を下向きに設けている点、(d)蓋体、及び本体底面の小孔について、蓋体と本体底面の相互に、同じ大きさの孔を同数、配列していると認められる点、が共通する。

一方、両意匠には差異として、(ア)容器本体の右側面について、本件登録意匠は略鉛直面状であるが、先行意匠1は傾斜面状である点、(イ)容器本体の4方の側面において、本件登録意匠は、前面、及び背面の下寄り1/4の位置に、横水平に、逆段状の段差が形成され、この段差が左右両側面に小幅、延長状に回り込み、左右両側面において、両側辺及び上辺に枠取り状に、逆「凹」字形状の凸部を形成して、その余を凹状とする逆差を形成して、上辺沿いの幅細の凸部を、蓋体を嵌め合わせるための係合縁としたものであるが、先行意匠1は、該当する段差、或いは係合縁が形成されていない点、(ウ)蓋体について、本件登録意匠は左辺中央が凹状に欠いた態様であるが、先行意匠1は凸状に形成されでいる点、(エ)蓋体右辺について、本件登録意匠は、係合片が2つ設けられたもので、また前後に直列配置されたその全幅が、容器本体の係合縁の前後幅と同寸となるよう、2つがやや離して設けられ、更に閉蓋時に、本体右側面の係合縁に外側から嵌め合わされる態様であるが、先行意匠1は、右辺の係合片が1つで、容器本体の側板上面に形成された凹孔に、上から差し込まれて閉蓋され、外側には現れない構成となっている点、(オ)本件登録意匠は、容器本体に仕切りが設けられていないが、先行意匠1は、全体を6つに区画する格子状の仕切りが設けられている点、(カ)本件登録意匠は、蓋体裏面に扁平「凹」字状のリブが前後一対設けられているが、先行意匠1では、その有無が明らかでない点、(キ)蓋体、及び容器本体の小孔の数について、本件登録意匠は、7列、10行、総数70個が配列されているが、先行意匠1は、10列15行、総数150個が配列されていると認められる点、が主にある。

そこで上記の共通点と差異点を全体として検討するに、まず共通点について、(a)は、全体の骨格的な構成態様を表す共通点で、(b)及び(c)は、その寸法比率と具体的な態様に関する共通点であるが、(a)の共通点には、(ア)の構成上の顕著な差異が認められ、また(b)及び(c)の共通点に関しても、(イ)ないし(エ)の具体的な差異が認められるところであり、共通点としては未だ概念的というほかなく、しかも(a)(b)及び(d)の共通点は、この種の物品において、本件登録意匠の出願前にも認められる態様の域を出ないもので、形態上の特徴としてもさほど重視できず、共通点が一体となったとしてもなお、両意匠の共通点のみによって類否を決定することができない。

一方差異点につき、(ア)の差異は、本件登録意匠のように、4方の側面がすべてほぼ鉛直状である構成それ自体は、従前からみられるとしても(甲第4号証、甲第6号証のA)、先行意匠1との対比においては、容器本体が、左右(長手方向)に対称か否かという構成上の大きな差異となっており、また容器本体、及び蓋体に係る(イ)及び(エ)の具体的な態様とも相関連し、一体となった差異であって、看者に、一側面の傾斜角度の違いという印象を越えた、全体構成の違いを印象付けると認められる。そして(イ)の差異は、その段差が本件登録意匠において左右対称状であることから、(ア)の差異を強調し、また基本構成に係る前記(a)の構成にさほど特異性がみられない本件登録意匠にあっては、(ウ)及び(エ)の差異に係る態様とも一体となって、本件登録意匠の形態上の特徴を形成していると認められる。そして(ウ)の差異は、凹状(本件登録意匠)、あるいは凸状(先行意匠1)の度合いはさほど大きくないとしても、略方形板状を呈する蓋体の輪郭の形状差として看者の注意を惹くと認められ、(エ)の差異は、(イ)の差異と共に、看者の視覚をよく捉える外観形状の差異を形成し、また蓋体の開閉、或いは固定に関わる差異であることから、看者も注意を払って着目すると考えられ、更に(イ)、(ウ)の差異と共に、本件登録意匠の形態上の特徴を形成していると認められる。
すなわち(ア)ないし(エ)の差異は、何れも、両意匠外観上の顕著な差異というほかなく、また相互に組み合わさり一体となって、本件登録意匠の特徴をよく表すところを形成しており、そして共通点が概念的な範囲に止まる両意匠にあっては、(ア)ないし(エ)の差異は、共通点を優に凌いで、両意匠を別異の美感の意匠とするに十分と認められる。

請求人は、この種の容器が小さく、また上方から見る場合が圧倒的に多いことから、蓋体の上面の形状が特に需要者の注目を引き、これと比較すると他の部分はさほど目立たず、類否判断においては、容器の基本構成、及び蓋体上面の態様が重視されるべきである、として、両意匠が類似する旨を強く主張するところであり、確かに、容器全体の基本構成、及び蓋体上面の小孔に関する(a)の共通性、更には(b)ないし(d)の共通性は、一体となって、看者の視覚に一定の共通感を与えると認められる。
しかしながらこの種の容器は、実際に手に取り、蓋体を開閉して使用するものであるから、使用者は、その基本的な構成、或いは上面の小孔に関する態様だけでなく、開蓋時、及び閉蓋時に亘る容器本体、及び蓋体の具体的な形状を、比較的近い視点から明瞭に視覚に捉え、またよく使う部分や、蓋の開閉に関する部分等は、使用上の重要箇所として、注意を払って着目し、その上で、全体を観察し、全体形状を把握すると考えられる。従って、この種の容器がさほど大きくないことを考慮に入れてもなお、(ア)ないし(エ)の差異は、看者の視覚をよく捉える部分を形成しており、その差異は、上記のとおり、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすと判断せざるを得ない。

そして両意匠には、他にも(オ)ないし(キ)の差異が認められるところであり、意匠全体として、両意匠においては、差異点の類否に及ぼす影響が共通点のそれを凌駕し、意匠全体として両意匠は類似しない。
従って、本件登録意匠について、先行意匠1に類似するとの理由で、登録を無効とすることはできない。

3.無効理由2(本件登録意匠と先行意匠2の類否)

請求人は、本件登録意匠が先行意匠2に類似すると主張するので、以下、本件登録意匠と先行意匠2との類否を検討する。
先行意匠2は、本願出願前に頒布された英国特許GB1232276号の明細書に記載された組織包埋容器の意匠であり、その形態は当該明細書のFIG.1ないしFIG.4、及びこれに関連する記載に示されたとおりである(別紙第3参照)。

本件登録意匠と先行意匠2を対比するに、両意匠は意匠に係る物品が共通し、形態において、(a)容器本体と蓋体からなる、上下に扁平な、概略横長直方体状の容器であり、容器本体は、上面を開口した浅い角箱状で、蓋体は、上下の厚みが薄い、上面視略方形状のもので、蓋体について、四周に幅狭の余地を残して、全面に、小さい孔を多数、等間隔の格子状に配列し、また容器本体の底面においても小孔を配列した構成である点、(b)容器本体について、四方の側面が略鉛直状で、また四方の側面に段差が現れている点、(c)蓋体について、横幅、及び前後幅が本体とほぼ等しい点、が共通する。
一方両意匠は差異として、(ア)容器本体について、先行意匠2は、下段の有底の箱状部と、その上部に嵌合された筒枠部の、上下2部材から構成されたものと認められるが、本件登録意匠は全体が1部材で構成されたものである点、(イ)容器本体の四方の側面の段差について、先行意匠2は、箱状部と筒枠部が嵌合されことによる段差であって、下段(箱状部)が突出する段差で、また段差が全周に亘って横一直線状であるが、本件登録意匠は、1部材とする中で形成された段差で、また下段を凹状とする逆段状で、また左右側面の段差が一直線状ではない点、(ウ)蓋体について、本件登録意匠は板状で、左辺に浅い切欠きを設け、左右両辺に係合片を下向きに設けたものであるが、先行意匠2は、下面を開口した伏箱状と認められ、該当する切欠き、及び係合片が設けられていない点、(エ)蓋体上面、及び本体底面の小孔について、本件登録意匠は、孔が正方形で、蓋体及び本体底面相互に同数の孔が、縦横格子状に、配されているが、先行意匠2は、孔が小さい円形で、蓋体に斜格子状に多数配され、底面においては少数の孔が外周沿いに配されている点、が主に認められる。

そこで上記の共通点と差異点を全体として検討するに、共通点について、(a)ないし(c)の点は、全体の骨格、及びその具体的な構成態様に関する共通点であるが、共通点としては、未だ概念的であり、共通点のみによって類否を決定付けることができないのに対して、(ア)及び(ウ)の差異は、容器本体及び蓋体の基本的な構造に関する差異であって、両意匠の構成を別異とするに十分な差異であり、また容器本体、及び蓋体の具体的な態様においても(イ)及び(エ)の顕著な差異が認められるところであり、共通点が概念的な範囲の両意匠にあっては、(ア)ないし(エ)の差異は共通点を凌駕して両意匠を別異の美感の意匠とするに十分であり、意匠全体として両意匠は類似しない。
従って、本件登録意匠につき、先行意匠に2に類似するとの理由で、登録を無効とすることはできない。

4.無効理由3(創作容易性、その一)

請求人は、本件登録意匠が、甲第3号証(先行意匠1)、甲第9号証、甲第10号証、及び甲第11号証に示された形状にもとづき、容易に創作できた意匠であるから、意匠法(平成10年改正前意匠法)第3条第2項の規定に該当する、と主張するので、以下検討する。

請求人が示した甲第3号証の形状は、実開昭60-120358号公報に示された、極小組織片の採収容器(先行意匠1、別紙第2)の形状であり、甲第9号証の形状は、特公昭48-44081号公報の第1図に表された生物標本処理用の組合わせカプセル付き型箱装置の形状(別紙第4上段)であり、甲第10号証の形状は、特開昭51-118531号公報のFIG.1(別紙第4中段)に示された標本処理容器の形状であり、甲第11号証の形状は実開昭63-135166号公報の図5及び図6に示された医療検査用器の形状(別紙第4下段)である。

そこで本件登録意匠を創作の観点から検討するに、まず本件登録意匠の形状は、「1.本件登録意匠」の項で認定したとおりであり、この形状について、「2.無効理由1」の項で認定した先行意匠1との共通点の(a)ないし(d)の形状は、先行意匠1が、本件登録意匠の出願前の公開実用新案公報に記載され、広く頒布されていたこと、また甲第5号証ないし甲第11号証に係る公報も本件登録意匠の出願前に広く頒布されていたことから、少なくとも当業者においては、本件登録意匠の出願前に広く知られた形状であったと認められる。
また先行意匠1との差異である(ア)ないし(カ)の態様のうち、(ア)の、右側面を略鉛直面状とする態様それ自体も、箱体一般の側面として特異性がなく、またこの種の物品において先行意匠2や甲第6号証のAの容器に認められ、格別特徴的な構成とはいえず、また(オ)の、容器本体に仕切りを設けていない構成も特徴はなく(甲第9号証、甲第10号証)、(キ)の、孔の数を7列10行総数70個とした態様も、この種の蓋体においては従来から孔の数を様々にして表されてきたことが認められる(甲第5号証ないし甲第11号証)から、孔の数についての創作も、特段のものとは認められない。
しかしながら、(イ)ないし(エ)の差異に係る本件登録意匠の態様について、容器本体の前面、及び背面の下寄りに、横水平に逆段状の段差を形成し、この段差が左右両側面に小幅、延長状に回り込む態様とし、左右両側面において、両側辺及び上辺に枠取り状に、逆「凹」字形状の凸部を形成して、その余を凹状とする逆差を設け、上辺沿いの幅細の凸部を、蓋体を嵌め合わせるための係合縁とした態様、蓋体の左辺中央略1/2幅の部分に、極く浅い凹状の切欠きを設けて、この端縁沿いに係合片を設けた態様、蓋体右辺について、2つの係合片を、その全幅が、容器本体の係合縁の前後幅と同寸となるよう、やや離して設けた態様、本体の左右側面において、蓋体の係合片が外側から嵌め合わされて閉蓋される態様は、一体となって本件登録意匠の特徴をよく表し、また本件登録意匠の美感の形成に大きく関わっていると認められるところ、これに関する態様を請求人の提出した証拠に認めることができず、また請求人の提出した証拠から、この創作が容易であったと判断できず、更に本件登録意匠は、この態様を、(1)ないし(5)のその余の構成態様と組み合わせ、相互を関連付けて、容器の形状として全体を一体化したものであり、この創作が、請求人の提出した証拠から容易であったと判断することができない。
従って本件登録意匠は、甲第3号証、甲第9号証、甲第10号証、及び甲第11号証に記載された形状に基づいて容易に創作できたもの、と判断することはできない。

5.無効理由4(創作容易性、その二)

請求人は、本件登録意匠が、甲第5号証、及び甲第6号証に示された形状にもとづき、容易に創作できた意匠であるから、意匠法第3条第2項の規定に該当する、と主張する。

請求人が示した甲第5号証の形状は、本件登録意匠の出願前に医歯薬出版株式会社が発行した雑誌「Medical Technology 1982・Sep」に掲載された、「ティシュー・テックIII ,ユニ・カセット」とする容器の形状(別紙第5上段)であり、甲第6号証の形状は、同「Medical Technology 1986・Feb」の137頁に掲載された固定包埋用カセットの形状(別紙第5下段)である。

そこで検討するに、本件登録意匠の形状は、「1.本件登録意匠」の項で認定したとおりであり、この形状について、甲第5号証、及び甲第6号証によれば、(1)に関して、全体が容器本体と蓋体からなる、上下に扁平な、概略横長直方体状の容器であり、容器本体は、上面を開口した浅い角箱状で、蓋体は略方形板状で、蓋体、及び容器本体底面において、四周に幅狭の余地を残して、略全面に小孔を多数、縦横等間隔の格子状に配列した基本的な構成であること、また小孔の形状が正方形であること、(2)に関して、容器本体は、高さと横幅と前後幅の比が、おおよそ1対5対3であること、4方の側面がほぼ鉛直状であること(甲第6号証のAの容器)、前面、及び背面に、横水平に、逆段状の段差が形成されていること(甲第5号証)、(3)に関して、蓋体の前後幅が容器本体と等幅で、横幅が容器本体とほぼ等幅で、短手方向の1辺中央に浅い凹状の切欠きを設けること、短手方向の裏面の少なくとも1辺に横長矩形板状の係合片を設けること、(4)に関して、蓋体裏面にリブを設けていること、(5)に関して、蓋体、及び本体底面の小孔について、蓋体と本体底面の相互に、同形、同大の孔を同数配列していること、が本件登録意匠の出願前に広く頒布されていた雑誌に認められ、少なくとも当業者においては、この種の容器の形状として、本件登録意匠の出願前に広く知られていたものと認められる。
しかしながら本件登録意匠は、容器本体の前面、及び背面の下寄りの位置に、逆段状の段差を形成し、この段差が左右両側面に小幅、延長状に回り込み、左右両側面において、両側辺及び上辺に枠取り状に、逆「凹」字形状の凸部を形成して、その余を凹状とする逆差を形成して、上辺沿いの幅細の凸部を、蓋体を嵌め合わせるための係合縁とし、また蓋体の左辺中央略1/2幅の部分に、浅い凹状の切欠きを設けて、この端縁沿いに係合片を設け、他方の蓋体右辺についても、2つの係合片を、その全幅が、容器本体の係合縁の前後幅と同寸となるよう、やや離して横並びに設けて、閉蓋時に、容器本体の左右両辺において、蓋体の係合片が、本外側から嵌め合わされる態様としたもので、この態様は本件登録意匠の特徴をよく表すところを形成し、また本件登録意匠の美感を形成する大きな要素となっていると認められるところ、これを請求人の提出した証拠に認めることができず、また請求人の提出した証拠から、この点についての創作が容易であったと判断できず、更に本件登録意匠は、この態様を、その余の本件登録意匠の前記(1)ないし(5)の構成態様と組み合わせ、相互を関連付けて、容器の形状として全体を一体化したものであり、その創作が、請求人の提出した証拠から、容易であったと判断することができない。
従って本件登録意匠は、甲第5号証、及び甲第6号証に記載された容器の形状に基づいて容易に創作できたもの、と判断することはできない。

6.むすび
以上のとおりであって、請求人の主張、及び提出した証拠によっては、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当すると判断することができず、また、意匠法第3条第2項の規定に該当すると判断することができず、請求人の主張、及び提出した証拠によって、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-08-06 
結審通知日 2008-08-08 
審決日 2008-08-25 
出願番号 意願平2-37897 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (K6)
D 1 113・ 113- Y (K6)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 本田 憲一
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 1993-10-12 
登録番号 意匠登録第888566号(D888566) 
復代理人 張 泰敦 
代理人 村林 隆一 
代理人 大森 純一 
復代理人 佐合 俊彦 
代理人 折居 章 
代理人 井上 裕史 
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