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審決分類 審判    D4
審判    D4
管理番号 1192228 
審判番号 無効2008-880013
総通号数 111 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-05-12 
確定日 2009-01-26 
意匠に係る物品 遠赤外線暖房機 
事件の表示 上記当事者間の登録第1149476号「遠赤外線暖房機」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の請求の趣旨及び請求の理由
[1]請求の趣旨
請求人は、「登録第1149476号意匠登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、証拠方法として、甲第1?第16号証を提出した。
[2]請求の理由
1.意匠登録の無効理由の要点
(1)意匠法第3条第1項第3号違反
本件登録意匠は、出願前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載された遠赤外線暖房器「サンラメラ600」の意匠(以下、「本件対象意匠(1)」という。)、又は遠赤外線暖房器「サンルーム550」の意匠(以下、「本件対象意匠(2)」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
(2)意匠法第5条第2号違反
本件登録意匠は、請求人の業務に係る物品である遠赤外線暖房器「サンラメラ600」と混同を生ずる恐れがあるから、意匠法第5条第2号により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号により無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件対象意匠の公知性
本件対象意匠(1)の形態については、平成9年11月9日付毎日新聞、平成10年11月8日付読売新聞、平成11年10月31日付読売新聞、平成12年12月10日付読売新聞の各紙上、平成9年冬号及び平成10年冬号の通販カタログ誌上に、いずれも写真が掲載され(甲第5?第10号証)、本件登録意匠の出願日よりも前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載されていた。
本件対象意匠(2)の形態については、平成12年12月9日付読売新聞紙上に写真が掲載され(甲第11号証)、本件登録意匠の出願日よりも前に日本国内で公然知られ又は頒布された刊行物に記載されていた。
(2)本件登録意匠と本件対象意匠との対比
(a)物品の同一性
本件登録意匠及び本件対象意匠(1)(2)の意匠に係る物品は、いずれも遠赤外線暖房器であり、同一である(甲第1?第3号証)。
(b)意匠の類似性
ア)本件登録意匠と本件対象意匠(1)の比較
両者の共通点である、角が丸い直方体形状の筐体の前面に発熱ユニットと輻射面を覆う格子状ガード(縦に密で横に疎)を装着し、底部左右に前後に張り出した2個の取付脚を取り付け、前面右上部にスイッチ2個を並列に配置した基本的構成要素は共通である。次に、具体的構成要素について、格子状ガードが前面の中央部に配置され、下及び左右に筐体の表面を見せていること、取付脚の前後に合計4個のキャスターを有していることが共通である。
両者の差異点は、具体的構成要素について、本件登録意匠は、格子状ガードに凹みがないこと、格子状ガードの上部に筐体の表面が見えていること、スイッチの位置が枠内にないこと、以上が差異点である。
イ)本件登録意匠と本件対象意匠(2)の比較
両者の共通点である、角が丸い直方体形状の筐体の前面に発熱ユニットと輻射面を覆う格子状ガード(縦に密で横に疎)を装着し、底部左右に前後に張り出した2個の取付脚を取り付け、前面右上部にスイッチ2個を並列に配置した基本的構成要素は共通である。次に、具体的構成要素について、格子状ガードが前面の中央部に配置され、下及び左右に筐体の表面を見せていること、取付脚の前後に合計4個のキャスターを有していることが共通である。
両者の差異点は、具体的構成要素について、本件登録意匠は、格子状ガードの上部に筐体の表面が見えていることが差異点である。
ウ)共通点及び差異点の評価
本件登録意匠及び本件対象意匠(1)(2)は、いずれも遠赤外線暖房器に係るものであり、当該物品の性質・用途等に照らすと、当該意匠について美感の差異を計るのは、通常の消費者を念頭に置くべきであるところ、上記のような人目を惹く正面形状の基本的構成要素及び具体的構成要素において一致が見られることから、これらをもって意匠の当否判断を分ける要部と認めるのが相当である。
なお、本件登録意匠と本件対象意匠(1)(2)とは、具体的構成要素において若干の差異点を見出すことができるが、それらは美感上は僅かの違いに過ぎず、看者に格別強い印象を与えるほどのものではない。
(3)本件登録意匠と本件対象意匠の類否の結論
以上のとおりであるから、本件登録意匠と本件対象意匠(1)(2)はいずれも類似するものというべきである。
(4)本件登録意匠が請求人の業務に係る物品と混同するおそれがあるこ と
請求人は、昭和61年から「サンラメラ」の商標登録を有し、「サンラメラ」という商品名で遠赤外線暖房器を販売し、そのうち出力が600ワットの商品を「サンラメラ600」という名称で平成9年より販売を開始し(甲第12?15号証)、「サンラメラ600」は請求人の業務に係る物品であるところ、本件対象意匠(1)に係る物品が「サンラメラ600」である(甲第2号証)。
本件登録意匠は、本件対象意匠(1)と類似しているから、請求人の業務に係る物品である「サンラメラ600」と混同するおそれがある。さらに、本件登録意匠については、当該意匠にかかる遠赤外線暖房器に「サンルーム550」という名称を付している(甲第1号証の斜視図と正面図において、右横のスイッチの上の枠内に「Sun Room サンルーム」の文字が見える)ところ、「サンルーム550」については、出願前から「サンラメラ600」と同一の媒体を使い、方法も酷似した宣伝広告を行っているのであって(甲第2、第3号証、第5?第11号証)、名称と形態の類似性とも相まって、両者に混同を惹起させるおそれがあったというべきである。
(5)結語
したがって、本件登録意匠は、出願前に公知となった本件対象意匠(1)(2)と類似であること、または、請求人の業務に係る物品と混同するおそれがあることにより無効とされるべきである。
第2.被請求人の答弁の趣旨及び答弁の理由
[1]答弁の趣旨
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、証拠方法として、乙第1?第9号証を提出した。
[2]答弁の理由
1.無効理由に対する答弁の要点
(1)意匠法第3条第1項第3号について
本件登録意匠は、本件対象意匠(1)として提出された遠赤外線暖房「サンラメラ600」及び本件対象意匠(2)として提出された遠赤外線暖房「サンルーム550」の意匠とは非類似であるから、意匠法第3条第1項第3号に該当するものではない。
(2)意匠法第5条第2号について
本件登録意匠の登録出願時において、本件対象意匠(1)及び(2)は、著名な意匠とはいえないこと、本件意匠とは非類似であることから本件意匠に係る物品が、本件対象意匠(1)及び(2)に係る物品と出所の混同を生じるおそれはなく、したがって、本件登録意匠は、意匠法第5条第2号に該当するおそれはない。
2.答弁の具体的な理由
2-1 意匠法第3条第1項第3号について
(1)本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)との対比-差異の検 討
A.基本的な構成態様
本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)の基本的な構成態様は、ほぼ同じと言える。
(a)本件登録意匠の基本的な構成態様
横長の長方形の面発熱体とこれを覆う縦格子のガードを囲む、角が丸みを帯びた横長の長方形の枠と、その枠の下に前後に張り出しそれぞれ2つのキャスターを設けた2本の脚とからなる。
(b)本件対象意匠(1)及び(2)の基本的な構成態様
横長の面発熱体とこれを覆う縦格子のガードを囲む、角が丸みを帯びた横長の長方形の枠と、その枠の下に前後に張り出しそれぞれ2つのキャスターを設けた2本の脚とからなる。
B.各部の具体的な構成態様の差異
(c)本件登録意匠の枠は、面発熱体及び縦格子のガードを中心として、左右両側及び上下枠で囲っている構成態様であるのに対して、本件対象意匠(1)及び(2)は、上枠の部分がなく、開放され、この開放された部分を縦格子のガードが両側枠の厚みに添って奥に向かって折曲延長されて後方の枠に接着固定され覆っている。
(d)本件登録意匠の左右両側枠の横幅は、上下枠の幅の3倍の広さがあり、面発熱体及び縦格子のガードに比較して左右両側枠の横幅が広く、また、右側の枠の正方形やスイッチの左右には広い余地があるので、その感を強く受け、この左右両側の横幅が広いために、枠の角は大きなアールが形成され、丸みを帯びた形状となっているのに対して、本件対象意匠(1)及び(2)の左右両側枠の横幅は、下枠の幅の2倍しかなく、右側の長方形状の枠は左右に余地がないほど右枠の幅いっぱいに表示され、また枠の角のアールは小さい。
(e)本件登録意匠の縦格子のガードは、面発熱体と同じ大きさで枠内に設置されているのに対して、本件対象意匠(1)及び(2)は、縦格子のガードを共に面発熱体の上下幅を超えて、上端部では両側枠の厚みに添うように後方に屈曲延長して後方の枠に接着固定をし、下端でも面発熱体の下端を超えて、下枠に嵌合している2本の脚に接するところまで延長されている。なお、本件対象意匠(1)の縦格子のガードは、中央部分で内側に窪んだ形態であり、本件登録意匠が全面フラット形態である。
(f)本件商標の表示方法とスイッチの設置方法において、本件登録意匠は、商標を表示する正方形の下にこれとは別個に、スイッチを設置しているのに対して、本件対象意匠(1)及び(2)は、枠の中に商標や図形と共にスイッチを設置している態様からなる。
(g)脚の形状及び設置箇所も本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)とでは、異なっている。
(2)公知意匠との比較検討
ア)横長や縦長の面状発熱体とこれを支える枠を持つ遠赤外線暖房機は、本件登録意匠の登録出願前から広く公開されている(例えば、甲4-3、甲4-7、甲4-8、乙1?6など)。
イ)枠の角を丸く形成することも広く行われているものであり(甲4-3、甲4-8、乙1、乙2及び乙5など)、当業者であれば必要に応じて行われるデザイン上の工夫に過ぎない。
ウ)全体が横長の枠の両側を左右同じ横幅とすることも行われている(乙2)。
エ)枠を前後に張り出した2本の脚部で支え、その脚部のそれぞれに2個のキャスターを設けることも本件登録意匠の出願前から行われている(例えば、甲4-3、甲4-10、甲4-12、乙3,乙5及び乙6の2、4など)。
オ)なお、甲4-1では、横長で丸い四隅の枠とキャスター付きの脚とを備え、乙5では、面発熱体と縦格子のガードの周り角が丸い枠(筐体)で囲み、キャスター付きの脚を備えたものが開示されている。また、乙6の2、4では面発熱体と縦格子のガードの周りを枠で囲み、キャスター付きの脚を備え、右側面には長方形状の枠の中に商標、左右に並べられた2つのプッシュ式スイッチと回転式のレバーとがある。
キ)これらの本件登録意匠の登録出願前の公知意匠をみれば、本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)の基本的な構成態様である「面発熱体と縦格子のガードが設けられており、その周りに角が丸い枠があり、右側の枠にスイッチが設けられ、枠の下に前後に張り出した取付脚が2個設けられ、底にキャスター2個が取り付けられている」という形態は、格別特報的な形態とは言えない。
(3)本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)の差異の評価
本件登録意匠は、枠で面発熱体及び縦格子のガードを囲んでおり、さらにその枠の左右両側の横幅が上下枠の幅に比較して3倍あるという全体として横に広い枠であること、枠の角は大きなアールを形成してより丸みを強調していることを要部とするものである。
これに対して、本件対象意匠(1)及び(2)には、上部で枠がなく開放されていて、その部分を縦格子のガードで覆っている形態であることが本件登録意匠との最も顕著な相違であり、また、縦格子のガードが枠の上端から下端は、面発熱体の下端を超えて、下枠に設けられている2本の脚に接するところまであり、さらに枠の両側は下枠の幅の2倍の横幅しかなく本件登録意匠の枠の両側より狭く、併せて枠の角のアールは小さいといい、本件登録意匠の要部とは明らかに異なった特徴をもつものである。
また、以上の相違点に加えて、商標表示部分の枠の形状の相違及びこの外側にスイッチが設けられているか、内側に設けられているかという表面の目立つところでの相違、さらに脚の形状と取付位置の相違などが認められる。
したがって、本件登録意匠と本件対象意匠(1)及び(2)とは、美感を異にするそれぞれ異なった形態からなる非類似の意匠どうしと言わなければならない。
2-2 混同理由(意匠法第5条第2号)について
本件対象意匠(1)及び(2)に係る「サンラメラ600」「サンルーム」が毎日新聞等の紙上に掲載されたことは窺い知ることはできるが、本件登録意匠の登録出願前における、これらの物品の販売実績がどのようなものか全く明らかにされておらず、その著名性を立証するものではなく、本件登録意匠に係る物品が、その登録出願時に本件対象意匠(1)及び(2)に係る物品と混同を生じるおそれのあることを認めることはできない。
3.むすび
上記のように、請求人の主張にはいずれも根拠がないので、本件無効審判の請求は成り立たないものである。
第3.請求人の弁駁の趣旨及び弁駁の理由
[1]弁駁の趣旨
請求人は、平成20年9月4日付弁駁書を提出し、「答弁の理由は成り立たない。登録第1149476号意匠登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と弁駁した。
[2]弁駁の理由
1.意匠の類似性について
(1)被請求人は、本件登録意匠と本件対象意匠の要部を特定する際に公知意匠を参酌しているが、これは不当である。意匠登録の無効審判においては、登録意匠と公知意匠との同一性又は類似性それ自体が問題となっているのであるから、公知意匠と同一又は類似の部分を意匠の要部から除外することはできないというべきである。被請求人がいうように、本件登録意匠と本件対象意匠の基本的構成態様が公知意匠と類似しているというなら、本件登録意匠がもともと新規性を欠いていたことになるはずであって、公知意匠に類似していることによって本件登録意匠の有効性を基礎づけることは背理というべきである。
また、そもそも、公知意匠を要部から除外すること自体が不適当と言うべきである。なぜなら、意匠は、全体のまとまりを考慮しなければならず、公知要素の寄せ集めが新規な美感、意匠的効果を生む場合が珍しくないからである。
(2)被請求人が、本件登録意匠と本件対象意匠との間で、基本的構成要素は同一であるとしながら、具体的構成要素のうち「上部に枠があるかないか、枠の両側の広さ、枠の角の丸み、商標表示部分の形状、スイッチの配置」という僅かな違いを取り上げて「美感を異にする」と主張するのは、特定の部分にこだわり、全体的観察を欠いたものというほかない。意匠は物品全体の形状を基本とするものであり、全体の印象によって美感は左右されるため、特定の部分のみを比較してはならないのである。
(3)被請求人は、本件登録意匠の出願時点において本件対象意匠はいずれも登録されていたにもかかわらず、本件登録意匠は非類似として登録されているという。しかしながら、意匠登録の無効審判において、審判官が審査官が類似の公知意匠を見落としたことに限定されるものではないから、被請求人の主張は法的には無意味である。
2.混同について
被請求人は、意匠法第5条第2号の混同とは、意匠そのものが出所の混同を生じるおそれがあるかであり、取引の実際や使用される商標とは無関係であると主張する。
しかしながら、意匠法5条は、業務上の不正競争防止を防止する趣旨に出たものであり、物品相互の形態の類似性による出所の混同にとどまらないのであって、このことは、意匠の類似性(意匠法3条1項)とは別に他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれを登録阻却要件としたことから明らかである。
したがって、意匠法第5条の混同につき、意匠そのものについて判断すべきであるとする被請求人の主張は前提において失当である。しかして、本件における具体的な取引状況が本件登録意匠と本件対象意匠(1)との混同を生じさせるものである。
3.結語
よって、被請求人の答弁の理由は成り立たず、本件無効審判請求には理由があるから、本件登録意匠は無効とされるべきである。
第4.当審の判断
[1]意匠法第3条第1項第3号違反について
意匠登録第1149476号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)と本件対象意匠(1)(以下、「甲1意匠」という。)及び本件対象意匠(2)(以下、「甲2意匠」という。)との類否を判断し、意匠法第3条第1項第3号違反の当否について検討する。
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成13年(2001年)6月8日の出願に係り、平成14年(2002年)6月21日に意匠権の設定の登録がなされた意匠であって、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「遠赤外線暖房機」とし、その形態を、願書の記載及び願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、形態について、(A)全体は、奥行の短い略横長直方体状の筐体部の前面に横長矩形状の放熱部を設けて、その放熱部の左右両側及び上下両側にそれぞれ互いに同幅の余地部を形成し、放熱部前方に線材による格子状ガードを装着し、右側余地部の上方寄りにスイッチを配した操作部を設け、さらに、筐体部底面の左右両端寄りに前後方向に対称に張り出した略角棒状の脚部を取り付けた基本的構成態様としたものである。さらに、各部の具体的構成態様として、(B)筐体部について、(B-1)正面視、縦横の構成比を、約1:1.5とし、左右両側の余地部の横幅を、筐体部の横幅の約1/7とし、上下両側の余地部の縦幅を、筐体部の縦幅の約1/16とし、(B-2)正面視四隅の角部を、やや大きな隅丸とし、(B-3)側周面の前後両面との角部を、丸面状とし、(C)格子状ガードの線材を、縦方向に等間隔に多数、横方向に略中央、上下端及び上端寄りとに数本とし、(D)操作部のスイッチを、略正方形状の区画枠の下側に横に2個並列して配し、(E)左右の脚部について、各々筐体部を支持する中央を、筐体部底面を嵌め込むように側面視隅丸凹状に窪ませ、前後方向に張り出す上面を、それぞれ先端に下り斜面状とし、先端の前後面を、平面視半円状とし、さらに、底面の先端寄りにキャスターを取り付けたものである。
2.甲1意匠
甲1意匠は、株式会社エヌ・ジー・シーが発行した通販カタログ『いいモノいい出会い』、「VOL.48、1999-2000WINTER保存版」(甲第2号証)で、当該カタログの表紙右下の「ご注文承り期間」が「ファッション衣料2000年・1月31日(月)まで」との記載により、遅くとも平成12年(2000年)1月31日までに発行されたものの、「冬号恒例大好評シリーズ」欄に遠赤外線輻射式暖房器「サンラメラ600」(商品番号48-0101)として写真に現された意匠であって、その形態を当該カタログの写真に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。なお、同遠赤外線輻射式暖房器と同一機種に係るものの意匠が、1997年(平成9年)11月9日付毎日新聞、1998年(平成10年)11月8日付読売新聞、1999年(平成11年)10月31日付読売新聞、2000年(平成11年)12月10日付読売新聞、通販カタログ『いいモノいい出会い保存版』「VOL.43、’97?’98WINTER」及び通販カタログ『いいモノいい出会い保存版』「VOL.46、’98?’99WINTER保存版」に(甲第5?第10号証)に記載されている。
すなわち、形態について、(A)全体は、奥行の短い略横長直方体状の筐体部の前面に横長矩形状の放熱部を設けて、その放熱部の左右両側に同幅の余地部及び下側にも余地部を形成し、放熱部前方に線材による格子状ガードを装着して筐体部の上端まで延伸し、右側余地部の上方寄りにスイッチを配した操作部を設け、さらに、筐体部底面の左右両端寄りに前後方向に対称に張り出した略角棒状の脚部を取り付け基本的構成態様としたものである。さらに、各部の具体的構成態様として、(B)筐体部について、(B-1)正面視、縦横の構成比を、約1:1.5とし、左右両側の余地部の横幅を、筐体部の横幅の約1/8とし、下側の余地部の縦幅を、筐体部の縦幅の約1/30とし、(B-2)正面視四隅の角部を、隅丸とし、(B-3)筐体部の側周面を、丸面状とし、(C)格子状ガードの線材を、縦方向に等間隔に多数、横方向に上方寄り、上下端及び上下端寄りとに数本とし、さらに、各縦線材の、上方寄りの横線材の位置より僅かに下と、下端寄りの横線材の位置より僅かに上との2箇所に段差を形成し、中央部分を内側に僅かに窪ませ、(D)操作部のスイッチを、略縦長長方形状の区画枠内の下方に横に2個並列して配し、(E)左右の脚部について、各々筐体部を支持する中央を、筐体部底面を嵌め込むように側面視略半凹円弧状に窪ませ、前後方向に張り出す上面を、それぞれ先端に下り斜面状とし、先端の前後面を、平面視半円状とし、さらに、底面の先端寄りにキャスターを取り付けたものである。
3.甲2意匠
甲2意匠は、株式会社エヌ・ジー・シーが遅くとも平成13年(2001年)末までに発行した通販カタログ『いいモノいい出会い』、「VOL.50、2001WINTER保存版」(甲第3号証)所載、1頁に遠赤外線輻射熱式暖房器「サンルーム550」として現されたものの意匠である。しかしながら、同遠赤外線輻射熱式暖房器と同一機種に係るものの意匠が、甲第11号証の平成12年(2000年)10月9日付読売新聞、8頁広告ページに記載の遠赤外線輻射式暖房器「サンルーム550型」として現されている事実を考慮すると、甲2意匠は、本件登録意匠の出願前に日本国内において公然知られた意匠であり、その形態を当該カタログに現されたとおりとしたものである(別紙第3参照)。
4.本件登録意匠と甲1意匠との類否判断
両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
(1)共通点
(A)意匠に係る物品は、ともに遠赤外線暖房器であって共通する。
形態について、主な共通点は、以下に示すとおりである。
(B)全体は、奥行の短い略横長直方体状の筐体部の前面に横長矩形状の放熱部を設けて、その放熱部の左右両側に同幅の余地部及び下側にも余地部を形成し、放熱部前方に線材による格子状ガードを装着し、右側余地部の上方寄りにスイッチを配した操作部を設け、さらに、筐体部底面の左右両端寄りに前後方向に対称に張り出した略角棒状の脚部を取り付けた構成態様とした点。
(C)筐体部について、(C-1)正面視、縦横の構成比を、約1:1.5とし、(C-2)正面視四隅の角部を、隅丸とした点。
(D)格子状ガードの線材を、縦方向に等間隔に多数、横方向に数本とした点。
(E)操作部のスイッチを、横に2個並列して配した点。
(F)左右の脚部について、各々筐体部を支持する中央を、筐体部底面を嵌め込むように窪ませ、前後方向に張り出す上面を、それぞれ先端に下り斜面状とし、先端の前後面を、平面視半円状とし、さらに、底面の先端寄りにキャスターを取り付けた点。
(2)形態についての主な差異点
(ア)筐体部の余地部について、(ア-1)本件登録意匠は、前面の放熱部の上側にも、下側と同幅の余地部を形成したのに対して、甲1意匠は、放熱部の上側に余地部はなく、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸し、(ア-2)左右両側の余地部の横幅を、本件登録意匠は、筐体部の横幅の約1/7としたのに対して、甲1意匠は、約1/8とし、上下両側に係る余地部の縦幅を、本件登録意匠は、筐体部の縦幅の約1/16としたのに対して、甲1意匠は、約1/30とした点。
(イ)格子状ガードについて、(イ-1)横線材の位置を、本件登録意匠は、略中央並びに上下端及び上端寄りとしたのに対して、甲1意匠は、上方寄り並びに上下端及び上下端寄りとし、(イ-2)甲1意匠は、各縦線材の2箇所に段差を形成し、中央部分を内側に僅かに窪ませたのに対して、本件登録意匠は、段差を形成しない点。
(ウ)筐体部の側周面を、本件登録意匠は、筐体部前後面との角部を、丸面状としたのに対して、甲1意匠は、筐体部前後面を繋いで大きな丸面状とした点。
(エ)筐体部の正面視四隅の角部を、本件登録意匠は、甲1意匠よりやや大きな隅丸とした点。
(オ)操作部のスイッチを、本件登録意匠は、略正方形状の区画枠の下側に配したのに対して、甲1意匠は、略縦長長方形状の区画枠内の下方に配した点。
(カ)左右の脚部の中央の窪みを、本件登録意匠は、側面視隅丸凹状としたのに対して、甲1意匠は、側面視略半凹円弧状とした点。
(3)両意匠の類否判断
この種遠赤外線暖房器は、床に置かれ、筐体部前面の放熱部からの暖気を前方に放射して室内を暖房するものであって、需要者は、正面側斜め上方、又は、やや左右側面側に寄った斜め上方からの斜視状態を中心としつつ意匠全体として観察するものと認められる。
そこで、形態についてみると、共通点(B)全体の構成態様は、全体の骨格を形成する基本的構成態様に係るものであって、かつ、斜視状態から観察して視覚的に目立つところであるから、観者の注意を惹くものである。しかし、この共通点(B)の構成態様は、両意匠の基本的構成態様の一部に過ぎず、一方で、筐体部前面の上側部分において、上記差異点(ア-1)筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異を有するものである。そして、この差異も、筐体部の前面の上側部分で、斜視状態から観察して視覚的に目立つところであり、かつ、本件登録意匠が放熱部の上側に余地部を形成して、左右両側の余地部とを繋ぐことによって、余地部が放熱部の周囲を囲むように構成するもので、甲1意匠の放熱部の上側に余地部はなく、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸して、左右両側の余地部が途絶え分離した構成とは、単に筐体部前面の放熱部上側の部分的な差異に止まらず、両意匠の基本的構成態様に係ってくる差異であり、ともに観者の注意を惹くものである。そうして、本件登録意匠の基本的構成態様とは、すなわち、全体は、奥行の短い略横長直方体状の筐体部の前面に横長矩形状の放熱部を設けて、その放熱部の左右両側及び上下両側にそれぞれ互いに同幅の余地部を形成し、放熱部前方に線材による格子状ガードを装着し、右側余地部の上方寄りにスイッチを配した操作部を設け、さらに、筐体部底面の左右両端寄りに前後方向に対称に張り出した略角棒状の脚部を取り付けた態様としたものである。そうとすれば、甲1意匠とは、特に筐体部の前面の上側部分において、本件登録意匠の、放熱部の左右両側及び上下両側にそれぞれ互いに同幅の余地部を形成し、余地部が放熱部の周囲を囲むようにした態様とし、放熱部が筐体部前面の平坦面状の中にあって、中央部を横長矩形状に抉り出した様としたものと、甲1意匠の、放熱部の上側に余地部はなく、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸することによって、中央部の放熱部が筐体部の上端から下側の余地部を僅かに残して切り欠いたようにし、上側で左右両側の余地部が全く分離した態様とでは、意匠全体として観者に与える視覚的効果は全く異なるものである。したがって、共通点(B)の構成態様については、むしろ、差異点(ア-1)筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異が、両意匠の類否判断を左右し決定付ける程に大きい影響を及ぼすものであるから、相対的に共通点(B)の構成態様は、両意匠の類否判断に及ぼす影響が微弱なものと言わざるを得ない。
共通点(C)筐体部について、(C-1)正面視縦横構成比は、共通点(B)全体の構成態様における略横長直方体状筐体部の正面視縦横構成比を具体的に示しただけで、この縦横構成比自体は、この種遠赤外線暖房機等の分野において普通に見られる範囲のものであって、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。また、共通点(C-2)正面視四隅の角部の態様も、略横長直方体状筐体部の四隅の部分的な箇所で、角部を隅丸にすることが、この種遠赤外線暖房器等の分野において極普通に見られる態様であり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
共通点(D)格子状ガードの構成態様は、共通点(B)全体の構成態様における格子状ガードの具体的構成態様であって、筐体部の前面の広い範囲を占め、斜視状態から観察されて視覚的に目立つところであるが、線材を横方向に数本並べただけで、縦方向に等間隔に多数並べた態様は、甲1意匠の公知前にあってもこの種遠赤外線暖房器等の分野において広く知られた態様であり(例えば、意匠登録第605785号「電気ストーブ」、意匠登録第980868号「電気ストーブ」参照。)、縦方向に等間隔に多数並べ、横方向に数本並べた態様も、公然知られた態様であってみれば(例えば、意匠登録第852973号「電気ストーブ」、乙第5号証、乙第6号証等参照。)、まったく特徴的な態様ではなく、むしろ、格子状ガードが筐体部前面の放熱部に装着されることによって、同時に差異点(ア-1)筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異を生じさせることになるものであり、差異点(ア-1)については、前記共通点(B)の項の中で述べたとおりであることから、共通点(D)格子状ガードの構成態様は、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
共通点(E)操作部のスイッチの配列は、全体から観れば小さい部位であり、電源の切換等の機能的な釦を単にまとめて横に配列しただけに過ぎず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
共通点(F)左右の脚部の態様について、中央の窪みの態様は、視認し難い筐体部の底面にあって、筐体部を支持するために筐体部の底面に嵌合するようにそのまま窪ませただけであり、何ら観者の注意を惹くものではなく、上面の態様も、この種遠赤外線暖房器等の分野において普通に見られ(例えば、甲第4号証の2、甲第4号証の3、乙第6号証の5参照。)、脚部前後面の態様も、端部におけるありふれた態様であり、また、キャスターの取付態様も、この種遠赤外線暖房器等の分野に限らず、可動用として極普通に見られる態様であることから、この共通点(F)の両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
一方、差異点についてみると、(ア)筐体部の余地部について、(ア-1)筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異は、前記共通点(B)の項の中で既に述べたとおりであり、すなわち、放熱部上側の余地部の有無の差異によって、本件登録意匠の、放熱部の左右両側及び上下両側にそれぞれ互いに同幅の余地部を形成し、余地部が放熱部の周囲を囲むようにした態様とし、放熱部が筐体部前面の平坦面状の中にあって、中央部を横長矩形状に抉り出した様としたものと、甲1意匠の、放熱部の上側に余地部はなく、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸することによって、中央部の放熱部が筐体部の上端から下側の余地部を僅かに残して切り欠いたようにし、上側で左右の余地部が全く分離した態様とでは、意匠全体として観者に与える視覚的効果は全く異なるものとなる。したがって、この差異は、両意匠の基本的構成態様に係ってくる差異であって、ともに観者の注意を惹くものであるから、両意匠の類否判断を左右し決定付ける程に大きい影響を及ぼすものである。また、差異点(ア-2)左右両側の余地部の横幅及び上下両側に係る余地部の縦幅の差異は、視覚的に認識することができない程に僅かな差に過ぎず、左右両側の余地部とを上下両側に係る余地部で繋ぐことにかわりはなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
差異点(イ)格子状ガードについて、(イ-1)横線材の位置の差異は、横方向への本数も少なく、縦方向の多数の線材を中心とした格子状ガードに格別異なる印象を与える程のものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。また、(イ-2)段差の有無の差異は、段差も上下2箇所で僅かに窪むようにしただけであり、観者の格別の注意を惹くものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
差異点(ウ)筐体部の側周面の態様の差異は、ともに筐体部の外縁に係る態様であって、その箇所だけを観れば、いずれの態様も、ありふれた態様であり、観者の注意を惹くものではない。しかし、この差異は、本件登録意匠が、筐体部前後面との角部を丸面状としただけであって、そのため筐体部前面の平坦面状の余地部を残して、放熱部の周囲を囲むようにした態様を強調するものとなり、一方の甲1意匠が、筐体部前後面を繋いで大きな丸面状とすることによって、筐体部の前面の上側部分において、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸して、上面が深く切り欠かれた態様となり、その切欠き態様が斜視状態から観察して明確に視認されて、その切欠き態様を強調するものとなっている。このことは、差異点(ア-1)に係る筐体部前面の余地部の態様との結び付きを強くし、差異点(ア-1)における、本件登録意匠の、余地部が放熱部の周囲を囲むようにした態様とし、放熱部が筐体部前面の平坦面状の中にあって、中央部を横長矩形状に抉り出した様としたものと、甲1意匠の、格子状ガードが筐体部の上端まで延伸することによって、中央部の放熱部が筐体部の上端から下側の余地部を僅かに残して切り欠いたようにし、上側で左右の余地部が全く分離したものとの異なる視覚的効果の差異を際立たせることになる。したがって、差異点(ウ)筐体部の側周面の態様の差異は、差異点(ア-1)と相まって、観者の注意を惹くものとなり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
差異点(エ)筐体部の正面視四隅の角部の大きさの差異は、四隅の僅かの差に過ぎず、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
差異点(オ)スイッチの区画枠との位置の差異は、スイッチが区画枠の内か外かは、使用者が電源の切換等を行うために直接触れて使用される部分にあって、操作部のまとまりとして、本件登録意匠のスイッチが区画枠の外側の下側に配され、区画枠とスイッチとが個々に散在するものと、甲1意匠のスイッチが区画枠内に収められて集中したものとでは、観者に与える印象も異なり、他の差異点と相まって、意匠全体として両意匠の差異感をより強調することになるから、この差異は、両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きい。
差異点(カ)左右の脚部の窪みの態様の差異は、斜視状態から観察して、筐体部の下に隠れて視認し難いものであり、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして、共通点及び差異点を総合した場合、共通点(B)全体の構成態様は、両意匠の基本的構成態様の一部に過ぎず、甲1意匠とは、本件登録意匠の基本的構成態様である、観者の注意を惹く筐体部前面の上側部分において、差異点(ア-1)の余地部の有無の差異を有し、共通点(D)格子状ガードの具体的構成態様によっても、差異点(ア-1)の余地部の有無の差異が生じ、両意匠の意匠全体として観者に与える視覚的効果が全く異なるものとなるのであり、他の共通点(C)、(E)、(F)の態様も、いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であることから、共通点(B)?(F)の態様の相まって生じる視覚的効果は、両意匠の類否判断を決定付ける程のものではない。一方、差異点(ア-1)筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異は、これ自体でも両意匠の類否判断を決定付ける程に大きい影響を及ぼすものであるが、さらに、差異点(ウ)筐体部の側周面の態様の差異が、差異点(ア-1)に係る筐体部前面の余地部の態様との結び付きを強くし、差異点(ア-1)における余地部の態様における両意匠がもたらす視覚的効果の差異を際立たせて、加えて、差異点(オ)スイッチの区画枠との位置の差異が、操作部のまとまりに異なる印象を与え、意匠全体として両意匠の差異感をより強調することになるから、差異点(ア)?(カ)の相まって生じる視覚的効果は、両意匠に異なる美感を起こさせるものと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲1意匠とは意匠に係る物品が共通するが、形態において、差異点の相まって生じる視覚的効果が、共通点がもたらす共通感を凌駕することとなり、両意匠は類似するものではない。
5.本件登録意匠と甲2意匠との類否判断
(1)甲2意匠の形態について
甲2意匠は、甲1意匠と対比して、(a)格子状ガードの具体的構成態様において、(a-1)甲1意匠の縦線材に形成された段差を形成しない点、(a-2)甲1意匠の下端寄りの横線材に当たる甲2意匠の横線材の位置を、甲1意匠よりやや上とした点、(b)スイッチを収める区画枠を、略縦長長方形状の上部が半円状とする略砲弾形状とした点、(c)下側の余地部の縦幅を、筐体部の縦幅の約1/14とした点で相違する他は、甲1意匠と共通する。
(2)両意匠の共通点及び差異点
両意匠の意匠に係る物品は、ともに遠赤外線暖房器であって共通する。 形態については、前記「4.本件登録意匠と甲1意匠との類否判断」における本件登録意匠と甲1意匠の共通点及び差異点の認定と比較して、差異点において、(a)格子状ガードについて、(a-1)甲2意匠の縦線材に段差が形成されず、段差の有無による差異点が認められず、(a-2)横線材の位置を、本件登録意匠は、略中央、上下端及び上端寄りとしたのに対して、甲1意匠は、上方寄り、下方寄り、上下端及び上端寄りとした点、(b)操作部のスイッチを、本件登録意匠は、略正方形状の区画枠の下側に配したのに対して、甲2意匠は、略砲弾形状の区画枠内の下方に配した点、(c)上下両側に係る余地部の縦幅を、本件登録意匠は、筐体部の縦幅の約1/16としたのに対して、甲2意匠は、約1/14とした点と認定できる他は、本件登録意匠と甲1意匠の共通点及び差異点における認定と一致する。
(3)両意匠の類否判断
本件登録意匠と甲2意匠の類否判断に当たっては、本件登録意匠と甲1意匠の共通点及び差異点の認定と比較して、上記に示した相違する認定とした点を中心として、両意匠の共通点及び差異点を総合して、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断することとする。
(a)格子状ガードについて、(a-1)甲2意匠の縦線材に段差が形成されない点については、段差が形成されないことによって、格子状ガードの態様については、両意匠の基本的構成態様と格子状ガードの具体的構成態様における共通点と横線材の位置の差異点が認められることになる。しかし、両意匠の共通点となる基本的構成態様及び格子状ガードの具体的構成態様の類否判断に及ぼす影響については、前記「4.本件登録意匠と甲1意匠との類否判断」の「(3)両意匠の類否判断」の項の共通点(B)及び共通点(D)において述べたとおりであり、いずれの態様も、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであることに変わりはない。また、(a-2)横線材の位置の差異は、横方向への本数が少ないことには変わりはなく、縦方向の多数の線材を中心とした格子状ガードに格別異なる印象を与える程のものではなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
(b)スイッチの区画枠との位置の差異は、区画枠の態様が明確に異なる上に、スイッチが区画枠の内か外かは、使用者が電源の切換等を行うために直接触れて使用される部分にあって、操作部のまとまりとして、本件登録意匠のスイッチが区画枠の外側の下側に配され、区画枠とスイッチとが個々に散在するものと、甲2意匠のスイッチが区画枠内に収められて集中したものとでは、観者に与える印象も異なり、他の差異点と相まって、意匠全体として両意匠の差異感をより強調することになるから、この差異は、両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きい。
(c)上下両側に係る余地部の縦幅の差異は、視覚的に認識することができない程に僅かな差に過ぎず、左右両側の余地部とを上下両側に係る余地部で繋ぐことにかわりはなく、両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
(d)両意匠の共通点及び差異点を総合すると、共通点である全体の構成態様は、前記「4.本件登録意匠と甲1意匠との類否判断」の「(3)両意匠の類否判断」の項の共通点(B)において述べたとおりであり、両意匠の基本的構成態様の一部に過ぎず、他の共通点も、いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱であることから、これら共通点の相まって生じる視覚的効果は、両意匠の類否判断を決定付ける程のものではない。
一方、差異点である筐体部前面の放熱部上側の余地部の有無の差異は、両意匠の基本的構成態様に係ってくる差異であり、意匠全体として観者に与える視覚的効果は全く異なるものであるから、これ自体でも両意匠の類否判断を決定付ける程に大きい影響を及ぼすものであるが、さらに、筐体部の側周面の態様の差異が、上述した筐体部前面の余地部の態様との結び付きを強くし、筐体部前面の余地部の態様における両意匠がもたらす視覚的効果の差異を際立たせて、加えて、操作部の態様の差異が、操作部のまとまりに異なる印象を与え、意匠全体として両意匠の差異感をより強調しており、差異点の相まって生じる視覚的効果は、両意匠に異なる美感を起こさせるものと認められる。
したがって、本件登録意匠は、甲2意匠とは意匠に係る物品が共通するが、形態において、差異点の相まって生じる視覚的効果が、共通点がもたらす共通感を凌駕することとなり、両意匠は類似するものではない。
[2]意匠法第5条第2号違反について
請求人は、請求人の業務に係る物品である甲1意匠(商品名「サンラメラ600」)(甲第2号証)を平成9年より販売を開始し(甲第12?15号証)、本件登録意匠は、甲1意匠と類似しているから、請求人の業務に係る物品と混同するおそれがあるとし、さらに、「本件登録意匠については、当該意匠にかかる遠赤外線暖房器に『サンルーム550』という名称を付している(甲第1号証の斜視図と正面図において、右横のスイッチの上の枠内に『Sun Room サンルーム』の文字が見える)ところ、『サンルーム550』については、出願前から『サンラメラ600』と同一の媒体を使い、方法も酷似した宣伝広告を行っているのであって(甲第2、第3号証、第5?第11号証)、名称と形態の類似性とも相まって、両者に混同を惹起させるおそれがあった」旨主張する。
ところで、意匠法第5条は、同法第3条に規定する意匠登録の要件を満たす意匠であっても、公益に反するものを意匠登録しないという趣旨によるものであり、同条第2号は、他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠を掲げている。この規定に該当するのは、模様として商標的な文字や図形が表されている場合は勿論であるが、物品の形態全体であっても、相当長期間にわたる、又は短期間でも強力な製造、使用等の実施の結果、需要者に広く知られ、需要者が何人かの業務に係る物品であることを認識することができるに至り、他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある場合も、これに該当する。
そこで、以下、本件登録意匠が意匠法第5条第2号に規定する意匠に該当するか否かについて検討する。
なお、請求人は、本件登録意匠の商品の名称について、「本件登録意匠については、当該意匠にかかる遠赤外線暖房器に『サンルーム550』という名称を付している(甲第1号証の斜視図と正面図において、右横のスイッチの上の枠内に『Sun Room サンルーム』の文字が見える)」と主張する。しかし、本件登録意匠においては、当該区画枠内に現されたものは、小さく掠れた状態で、判読しようと凝視してようやく「Sun Room」の文字が読み取ることができる程度のものであると認められる。
そうして、本件登録意匠と甲1意匠とは、前項において判断したとおり、同一意匠ではなく、類似するものでもないから、甲1意匠が需要者に広く知られ、需要者が何人かの業務に係る物品であることを認識することができるに至ったか否かを検討するまでもなく、本件登録意匠は甲1意匠と混同を生ずるおそれがなく、意匠法第5条第2号に規定する意匠には該当しないというべきものである。
さらに、宣伝広告(甲第2、第3号証、第5?第11号証)によっても、本件登録意匠と甲1意匠とが類似しない上に、宣伝広告が遠赤外線暖房器が持つ暖房性能等の機能の特長を強調するものであり、需要者が暖房性能等を重要視することを考慮すれば、直ちに本件登録意匠が甲1意匠と混同を生ずるおそれがあるものということはできない。
したがって、本件登録意匠が意匠法第5条第2号に規定する意匠に該当するか否かについては、本件登録意匠と甲1意匠とは、同一意匠ではなく、類似するものでもなく、本件登録意匠は甲1意匠と混同を生ずるおそれがないものであって、宣伝広告によっても、本件登録意匠が、甲1意匠と混同を生ずるおそれがあるものということはできないものであり、本件登録意匠は、他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれがある意匠とすることはできず、意匠法第5条第2号に規定する意匠に該当しない。
[3]むすび
以上のとおりであって、請求人の提出した証拠及び主張によっては、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項又は同法第5条第2号の規定に違反して登録されたものとして、同法第48条第1項第1号により本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-11-25 
結審通知日 2008-11-28 
審決日 2008-12-11 
出願番号 意願2001-16765(D2001-16765) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (D4)
D 1 113・ 2- Y (D4)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 加藤 真珠遠藤 行久 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 杉山 太一
鍋田 和宣
登録日 2002-06-21 
登録番号 意匠登録第1149476号(D1149476) 
代理人 喜多村 勝徳 
代理人 梅村 莞爾 
代理人 水谷 彌生 
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