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審決分類 審判    M3
審判    M3
管理番号 1195360 
審判番号 無効2007-880011
総通号数 113 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-05-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-07-03 
確定日 2009-03-27 
意匠に係る物品 木ねじ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1141607号「木ねじ」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1141607号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求の趣旨及び理由の要旨
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立、その理由として要旨以下に示すとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)意匠登録無効の理由の要点
i)無効理由1
本件登録意匠は、願書に添付した図面から具体的な一の意匠の内容を導き出すことができず、意匠法第3条第1項柱書に規定する「工業上利用することができる意匠」に該当しないため、同法第48条第1項第1号により登録を無効とすべきである。
ii)無効理由2
本件登録意匠は、甲第1号証(公開日、平成10年2月13日、特開平10-37925公報)に表された意匠と類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に該当し、同法第48条第1項第1号により登録を無効とすべきである。
(2)無効理由1
本件登録意匠の願書に添付された図面は、その平面図及び底面図に対して、正面図、左側面図、右側面図および背面図の方向が軸心回りに30度ずれている。
また、A-A断面図のうち駆動穴(リセス)と思われる部分を除いた部分も、平面図における断面指示線、A-A線に対して軸心回りに30度ずれている。
さらに、駆動穴と思われる部分における図面の不備は、本件登録意匠の特定を不可能にしている。すなわち、駆動穴と思われる部分に関し、平面図とA-A断面図とは相互に全く一致していない。
したがって、願書に添付した図面から一の意匠の内容を導き出すことができない。
(3)無効理由2
本件登録意匠に係る物品と甲第1号証意匠(特開平10-37925公報、図1及び図2)に係る物品とは、意匠に係る物品が同一または類似であることは明白である。
本件登録意匠のイ.基本的構成態様「軸体の基端側に頭部を有し、軸体の先端側の外周面にねじ山を形成した木ねじのうちの、頭部部分に係り、頭部には、該頭部の頂面から軸体側に陥没する駆動穴(リセス)と思われるものが設けられている。」と、甲第1号証意匠の基本的構成態様は、完全に一致している。
また、本件登録意匠と甲第1号証意匠の具体的構成態様は、次の点において一致している。
A.頭部の頂面は平面状で正六角形となっている。
B.頂面を含む頭部の頂部は、非常に低い(薄い)六角柱状の部分となっている。
C.頭部の軸体側端は、頂面より小径となっている。
D.頭部のうちの軸体側端から六角柱状の部分に至る部分(頭部のうちの六角柱状の部分を除く部分)は、ほぼ六角錘台形状となっており(しかもその角度もほぼ同じである)、この部分には頂面の六角形の各頂点に対応する稜線が形成されている。
E.六角柱状の部分が存在するため、厳密には頂面の各頂点は稜線と重ならないが、ほぼ重なる関係となっている。
本件登録意匠と甲第1号証意匠の具体的構成態様は、次の点において相違している。
技術的常識からすると、本件登録意匠は四角穴の駆動穴を有するとともにその周囲に浅い円形状のくぼみを有しているものと推測される。他方、甲第1号証意匠の駆動穴は十字穴となっている。また、甲第1号証意匠には、本件登録意匠の浅い円形状のくぼみに相当するくぼみは図示されていない。
本件登録意匠と甲第1号証意匠との構成態様の差異点は、駆動穴の形状の相違と、駆動穴の周囲の浅い円形状のくぼみの有無のみである。
しかるに、本件登録意匠が採用する四角穴は、JIS B 0101、「ねじ用語」、番号2117、(甲第2号証34、49頁)にも定義されているねじの駆動穴の形状であり、本件意匠登録出願日前から周知の形状であって、かつ専らねじを駆動回転させるという機能のみに基づく形状である。このような四角穴は、高トルクを作用することができるため、本件意匠登録出願前から建築用の木工ねじ等においてよく用いられている。
また、本件登録意匠における駆動穴の周囲の浅い円形状のくぼみは、デザイン上形成されているものではなく、駆動穴および頭部外周を、欠陥を生じることなく、精確に形成しようとすると、製造工程上、自ずとできてしまう、浅い円形状の圧痕である。
出来上がり製品であるねじの駆動穴の周囲に、円形状の台状部に押圧された跡である浅い円形状のくぼみ(圧痕)が形成されるような加工法は、ねじの生産技術において非常によく行われるものであるので、駆動穴の周囲の浅い円形状のくぼみは、本件意匠登録出願日前から周知の形状である。
以上のように、四角穴の駆動穴および浅い円形状のくぼみは、専ら製造上の要請から自ずと形成されてしまうものであって、かつ本件登録意匠に係る物品の分野において、本件意匠登録出願日前から周知の形状である。したがって、これらは、看者の注意を引く部分ではない。
他方、本件登録意匠と甲第1号証意匠との構成態様の共通点は、形態全体にかかわるものであって、意匠全体の基調を成し、形態上のまとまりを形成したものと認められる。そして、特に具体的構成態様における前記共通点A,B,C,DおよびEは、看者の注意を引く部分である。
以上を総合すると、両意匠の構成態様の共通点は、看者に共通する印象を与えるものであるから、類否判断を左右するといわざるを得ないものである一方、差異点は、微弱なものであるから、類否判断に及ぼす影響は小さいものであり、前記共通点の奏する基調と特徴を凌駕して、類否判断を左右するとは認められない。
そうすると、本件登録意匠と甲号意匠は、意匠に係る物品が一致し、その形態についても類否判断を左右するところにおいて共通しているから、両意匠は類似しているものというほかない。
(4)むすび
以上のように、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項柱書きに規定する「工業上利用することができる意匠」に該当しないとともに、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、同法第48条第1項第1号により登録を無効とすべきである。
第2.被請求人の答弁の趣旨及びその理由
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、答弁書に記載のとおり主張し、乙第1号証及び検乙第1号証を提出した。その要旨は、以下のとおりである。
(1)本件登録意匠の願書に添付した図面の一部に誤記があることは認めるが、当該誤記箇所を当業者の常識をもって合理的に善解し得る余地があり、あるいは、図面の記載を統一的に、総合的に判断し、条理上自然な解釈態度をもってすれば、特定の意匠の構成を理解することが可能であり、また、本件登録意匠は、引用された甲第1号証意匠とはおよそ非類似であり、本件審判請求人の主張に係る「無効理由1」及び「無効理由2」は、何れも理由がない。
(2)無効理由1について
本件登録意匠の願書添付図面を詳細に検討したところ、六面図のうち、「正面図」、「背面図」、「左側面図」、「右側面図」の表記が入れ替わってしまった誤記があることの点においては、本件審判請求人の主張の通りであることは認める。また、「駆動穴(リセス)」部分の表記に関しても、厳密に言えば、若干相違する表記かもしれないことは認める。
しかしながら、それらの図面の表記に誤記や齟齬があるからといって、本件登録意匠が、必ず、意匠法第3条第1項柱書に規定する「工業上利用することができる意匠に該当しないかといえば、それは必ずしもそうは言えず、この点についての審判請求人の主張は否認する。
すなわち、前者は、明白な誤記であり、後者は、いわば、図面作図上の、いわば省略が行われた結果である。そして、それらが本件登録意匠の特定に困難を来しているかといえば、断じて「否」である。本件登録意匠は、立派に工業上も製造され(検乙第1号証)、まさに工業上できる意匠に外ならない。
この種の裁判例も、この種の願書に添付した図面の表記に誤記や齟齬があったとしても、当該意匠の特定が可能であるとした例は枚挙にいとまがない。
上記誤記に対しては、正しくは、「正面図」は、「右側面図」に、「背面図」は、「左側面図」に、「左側面図」は、「正面図」に、「右側面図」は、「背面図」として合理的に見れば、この問題は解決する。
また、参考資料2とする書面に基づく図面の不備については、若干の不一致は存在するものの、それは、本件登録意匠の平面図に示されるネジ頂部のデザイン上の特徴をよりよく適切に表現する余り、若干抽象化されてしまったものである。すなわち、平面図においては、本件登録意匠のネジ頂部の外観上の特徴を表示する際に、他のネジとの比較を重視した余り若干の省略がされてしまったようである。しかしながら、本件登録意匠のネジ頂部の外観構成は、まさに、平面図に示されるものに外ならない。
また、断面図においても、四角穴形状において、若干の絞り込む形状のように表記されているが、これは四角穴形成の際には、打ち込みによって形成され、本来的にはテーパー状の絞り込み形状となるべきものではないところ、四角柱状ドライバーを用いての当該ネジの締め込み作業の際には、ドライバーが当該穴に捕捉させる機能において、絞り込み形状が望ましいことを推察して若干誇張的に表現してしまったようである。
このような事情から、本件願書添付図面の作成時の段階において、図面作成に若干の省略や誇張が行われたと推察されるが、本件登録意匠に係る木ねじの意匠の範囲が確定不能かといえば、必ずしもそうとは言えず、これらの図面表記上の若干の矛盾ないし不一致等の齟齬を勘案しても、十分に登録意匠の内容を特定することができる。図面表記上若干の矛盾ないし不一致等の齟齬があった場合であっても、そのことから直ちに当該登録意匠の範囲を確定不能とするのではなく、物品の性状を総合的に勘案し、当該意匠創作者の意図した意匠の具体的な構成がどのようなものであったかを当業者の立場から合理的、客観的に判断し、この観点から、前記矛盾ないし不一致が、前記願書及び図面作成上の誤記や不手際ないし作図上の制約から生ずるものであることが理解され、具体的に構成された統一性ある意匠を想定し得る場合には、合理的に想定される意匠をもって当該登録意匠の内容を成すのが相当である。
したがって、審判請求人の本件無効理由1の主張は理由がない。
(3)無効理由2について
甲第1号証には、頂部が六角錘状の「タッピンネジ」が開示されているが、その図1に表示されたネジの頂面には、明らかに、十字穴が穿設されており、本件の四角穴とは明らかに異なる。
審判請求人は、この四角穴については、本件登録意匠出願日前から周知の形状であると主張するが、周知形状であるかどうか、「不知」である。
仮に、周知形状だとしても、意匠は、周知形状が施されるその物品の表面に現れたそれらの形状の配置、大きさ等により、観者の受ける印象が異なり、同じ形状が施されていても、それだけで、両者が類似するものとは言い難い例も多数存在するところ、単に、ネジ頂部に四角穴が穿設されているというだけで、その穴が、どのような大きさで、どの程度の配置で、あるいは全体との関係でどの程度のものかは全く定まらない。
甲第1号証意匠は、その頂部に厳然として十字状の穴があり、それに対し、本件登録意匠は、その頂部に四角穴が配置され、およそ似ても似つかぬ頂部の外観形状である。
ネジ頂部の穴形状としては、四角があったり、十字があったりはするとしても、その大きさや配置を全く考慮することなく、単に四角穴が他に存在するからとして、それを前提として、四角穴頂部を持つ本件登録意匠が、十字穴の頂部のネジである甲第1号証意匠と類似するとするのは、それこそ四角穴の大きさや配置等を全く考慮することなしに認定したと批判されるであろうことが予想され、このような認定自体がおよそ乱暴な話である。
本件審判請求人の主張は、このような乱暴な考えに基づいて、本件登録意匠が甲第1号証意匠に類似すると主張するものであって、到底受け入れることはできない。したがって、本件登録意匠は、甲第1号証意匠と類似するとの主張は誤りであり、無効理由2も理由がなく、本件審判の請求棄却を求める。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、当該登録原簿及び出願書面の記載によれば、平成13年5月21日に出願され、平成14年3月22日に設定の登録がなされた登録第1141607号の部分意匠であって、意匠に係る物品が「木ねじ」であり、その形態は、願書の記載、及び、願書に添付された図面に実線で表されたとおりのものである(別紙1参照)。
2.無効理由1について
請求人は、(1)本件登録意匠の願書に添付された図面は、その平面図及び底面図に対して、正面図、左側面図、右側面図および背面図の方向が軸心回りに30度ずれており、また、A-A断面図のうち駆動穴(リセス)と思われる部分を除いた部分も、平面図における断面指示線、A-A線に対して軸心回りに30度ずれており、更に、(2)駆動穴と思われる部分における図面の不備、すなわち、平面図とA-A断面図とは相互に全く一致せず、本件登録意匠の特定を不可能にし、したがって、一の意匠の内容を導き出すことができず、意匠法第3条第1項柱書に規定する「工業上利用することができる意匠」に該当しないと主張するので、これらの点について検討する。
まず(1)の点について、正面図、左側面図、右側面図および背面図の4図(以下、「四周4図」という)と、平面・底面両図とを対比すると、稜線の位置、及び、最大幅部の寸法の対応関係により、四周4図に対して、平面・底面両図が軸心周りに30度ないし90度ずれていることは明らかである。また、この四周4図と、平面・底面両図の不整合は、平面・底面両図を基準とするならば、四周4図が30度ないし90度ずれていると解することができるものである。
すなわち、これらの点に関する不整合は、六面全図を同時に一瞥すれば、全体形状が概略倒六角錘台形状としていることに疑義が生じる余地はなく、請求人も実質的に認識しているように、四周4図に対して平面・底面両図が、軸心周りに30度ないし90度ずれていることが理解でき、同時に、図そのものの記載内容に変更を加えることなく、正面・背面両図と、左側面・右側面両図の「表示関係を相互に置き換えるだけで不備を解消できる」誤記と解することができるものであり、このような図表示の誤記と解せられる点を根拠として、直ちに工業上利用することができる意匠に該当しないとすることはできない。
次に、(2)の点について、平面図において正方形として表された部分に関し、平面図とA-A断面図を対比すると、一見当該部分は下方が窄まった四角穴のように推認されるが、仮にそうであるとするならば、四隅において隣り合う面の接合部を表す線、及び、底面の外周形状を表す線が記載されておらず、また、A-A断面図上端の幅は、指示線の位置によれば、平面図において正方形の辺の幅と同じとなるはずのものが、対角線とほぼ同じとなっていることから、両図は整合せず、何らかの作図上の瑕疵があるものと認められる。
そこで、当該部分における作図上の瑕疵について、検討する。
当該部分は、意匠登録を受けようとする部分全体から見れば細部に属するものであり、また、A-A断面図により凹陥部であることに疑義が生じる余地はなく、これを前提とするならば、両図の不整合の範囲、すなわち、穴の大きさ、及び、内周面の傾斜の大小(有無も含む)に関する不確定な範囲については、更に狭い範囲、すなわち、細部に属するものである。
また、本件登録意匠は、意匠に係る物品を「木ねじ」とするものであり、その使用の目的、使用の状態を勘案すると、当該部分は駆動穴(リセス)と解するほかないものであり、また、被請求人もこれを否定していない。駆動穴であるとするならば、内周面の傾斜の大小は別として、平面視正方形状四角穴は、後述するようにねじの駆動穴としては一種の類型に属する周知のものと認められる。
このように、不特定な範囲が細部形状に関するものであって、しかも、本件登録意匠特有の特徴的部分とは認められない部分において、正確な形状を特定することができないとしても、直ちに工業上利用することができる意匠に該当しないとすることはできない。
したがって、請求人の主張する無効理由1について、これを根拠に工業上利用することができる意匠に該当しないとして、本件登録意匠を無効とすることはできない。
3.無効理由2について
請求人は、無効理由2として、本件登録意匠は、本件登録意匠出願前に公開された甲第1号証の図1及び図2に表された意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号に該当すると主張するから、この点について検討する。
(1)引用意匠
本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号に該当するとして、請求人が引用した意匠は、この意匠登録出願前、平成10年2月13日に公開された甲第1号証、特開平10-37925公報、図1及び図2に表された「ねじ(タッピンねじ)」の意匠(以下、「甲号意匠」という。)であって、その形態は同公報の図面に表されたとおりとするものである(別紙2参照)。
(2)本件登録意匠と甲号意匠の対比。
そこで、本件登録意匠と甲号意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が共通し、実線で表した本件登録意匠の部分と、これに対応する部分の甲号意匠は、共に丸棒状軸体上端に位置する部分に関するものであるから、位置及び範囲が共通し、その形態について、以下の共通点と差異点が認められる。
すなわち、両意匠は、共通点として、
a)全体形状について、下端が円柱面に外接する概略倒正六角錐台状とし、上面中央に駆動穴(リセス)を設けたものである点、
b)全体の概略寸法比について、底面視下端の直径を基準とすると、高さは概ね1.5倍程、上面の向かい合う辺の間の長さ(内接円の直径)を概ね2.5倍程とし、斜め下方を向いた周側面の相互反対側の面が形成する角度については、概ね60度としている点、
c)上端周囲について、上面に対して垂直状の僅かの幅の面取り部を設けた点、
がある。
一方、両意匠は、差異点として、
ア)上面中央の駆動穴について、甲号意匠は、十字状としているのに対して、本件登録意匠は、平面視正方形状としている点、
イ)上面について、甲号意匠は、駆動穴部分以外は平面状としているのに対して、本件登録意匠は、駆動孔と中心を同じとする極く浅い円形凹陥部を設けている点、
ウ)上面に対する下端の相対的大きさについて、本件登録意匠は、引用意匠よりも僅かに大きくしている点、
エ)上端周囲の面取り部の幅について、本件登録意匠は、甲号意匠よりも狭くしている点、
がある。
(3)共通点及び差異点の検討
そこで両意匠の共通点及び差異点の、類否判断に及ぼす影響について検討する。
まず、ア)の差異点について、ねじ一般の駆動穴において、平面視正方形状角穴が本願出願前周知であることは、甲第2号証「JISハンドブック3、ねじ、1998」(1998年4月24日、財団法人日本規格協会発行)34頁「2117」の欄の記載内容、及び、49頁「付図2117」により明らかである。
また、甲第3号証、「ALC建築の仕上げ集」(1995年4月20日、東伸企画社発行)の146頁及び198頁には、甲号意匠に設けられた十字状穴と、本件登録意匠に設けられた平面視正方形状穴とをそれぞれ設けた「木ねじ様」のねじ(ねじ先端が尖っており、頭部外周縁部の幅を狭くしたもの)が並載されており、これらの記載内容は、「木ねじ様」のねじにおいても、両駆動孔は、本件登録意匠出願前、既に、単なるバリエーションの範囲、すなわち、普通に行われる置換の範囲にすぎないものに至っていることを伺わせるものであり、仮に、それまでに至っていないとしても本件登録意匠特有の特徴に該当せず、着目されるほどの差異でないことは明らかである。
このように、ア)の差異点は、上面側の視認し易い部位に関するものではあるが、内容的には格別着目されるほどの差異でなく、また、本件登録意匠全体に対してさほど大きい部分ではないから、一定程度類否判断に影響を及ぼすものとは認められるものの、共通点に係る構成態様を検討せずに、これのみを取り上げて類似しないと結論付けるほどのものとすることができない。
イ)の差異点について、本件登録意匠に設けられた円形凹陥部は、極く僅かの段差により形成された視覚的に微弱なものであり、また、ねじ上面に駆動穴と同心状に設けられた浅い円形凹陥部は、前掲甲第2号証、696頁及び697頁に記載された図、あるいは、甲第4号証「ねじ総合カタログ、2000年版」(平成12年1月、東京鋲螺協同組合発行)210頁に掲載された「穴付き平ボルト」、「穴付きさらボルト」の写真版に表されていることから普通にみられるものと認められ、本件登録意匠特有の特徴とは認められず着目される程のものでないから、類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎない。
ウ)の差異点について、本件登録意匠が仮に軸部を含む意匠であったとするならば、本件登録意匠の軸部がやや太く視認されるとしても、本件登録意匠の範囲においては、真横からよほど注視しなければ気が付かない程度の僅かなもので、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない。
エ)の差異点について、元もと極めて狭い(細い)部分の幅に関する差異であって、視覚的に微弱なものであり、後述するように、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない共通点c)の構成態様における更に微細な差異であるから、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない。
これに対して、前記共通するとしたa)の点は、基本的構成態様に関するものであり、b)の概略寸法比及び形成角度の共通点は、共通感を大きく強めるものであり、これらa)及びb)の共通点に係る構成態様は、全体に係わる特徴的構成態様を構成すると認められ、両意匠それぞれにおいて訴求力の強い共通した視覚的まとまりを生じさせるものであり、この共通する視覚的まとまりは、ア)ないしエ)の差異点が生じさせる視覚的効果を大きく凌駕し、意匠全体として共通した基調を形成するものであるから、類否判断を左右する大きな影響を及ぼすものである。なお、c)の共通点に係る構成態様については、極めて細幅であって、尖った稜部の保護のために行われる周知の形態処理手法であるから、共通感を僅かに強める働きをするものの、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではない。
(4)類否判断
このように、a)及びb)の共通点に係る構成態様は、共通した基調を形成し類否判断に大きな影響を及ぼすものであるのに対して、ア)及びイ)の差異点については、視覚的に微弱であり、また、格別着目される程のものでないから類否判断に及ぼす影響は僅かにすぎず、ウ)及びエ)の差異点については、類否判断に殆ど影響を及ぼすものではなく、また、これらア)ないしエ)の差異点の相まった効果を総合したとしても、共通するとした基調を凌駕することができないから、結局、本件登録意匠は甲号意匠に類似するといわざるを得ないものである。
なお、被請求人は、四角穴について、周知形状であるとしても、その穴が、どの様な大きさで、どの程度の配置か等が定まらないと主張するが、駆動穴であるならば、その中心は軸心と一致するはずのものであり、大きさについても、強度的に合理的な一定の範囲に収まる大きさとなることは必然のことと認められ、また、本件登録意匠と甲第3号証に記載されたものの駆動穴の大きさは、何れも軸部の太さとほぼ同程度の共通するものであるから、請求人の主張は採用することができない。
第4.むすび
以上のとおり、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項柱書きに規定する工業上利用することができる意匠に該当しないとすることはできないものであるが、その意匠登録出願前頒布された刊行物に記載された甲号意匠に類似するものであり、意匠法第3条第1項第3号の意匠に該当し、同条同項の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は、意匠法第48条第1項第1号の規定によって、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2007-09-26 
結審通知日 2007-10-01 
審決日 2007-10-16 
出願番号 意願2001-14425(D2001-14425) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (M3)
D 1 113・ 14- Z (M3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 川崎 芳孝 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 山崎 裕造
市村 節子
登録日 2002-03-22 
登録番号 意匠登録第1141607号(D1141607) 
代理人 大森 泉 
代理人 大滝 均 
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