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審決分類 審判    B1
管理番号 1198810 
審判番号 無効2008-880001
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-02-05 
確定日 2009-06-16 
意匠に係る物品 健康帯 
事件の表示 上記当事者間の登録第1108671号「健康帯」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1108671号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申し立て及び理由の要点
1.請求の趣旨
請求人は,登録第1108671号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)の登録を無効とするとの審決を求めると主張し,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証の書証を提出している。
2.請求の理由
(1)手続の経緯
本件登録意匠は,平成12年1月21日に出願され,平成13年3月9日に意匠登録を受けたものである。
(2)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号の規定及び意匠法第48条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,無効とすべきである。
(3)本件登録意匠と無効とすべき理由
イ,本件登録意匠は,請求人特許(特許第2991606号「混成糸及びその混成糸の製造方法」)の混成糸を使って,株式会社イソカイが創作したものである。
ロ,株式会社イソカイは,本件登録意匠出願前の平成9年(1997年)に百貨店にて本件登録意匠商品を3万枚販売している。
株式会社イソカイは,本件登録意匠出願前の平成10年(1998年)に百貨店と量販店にて本件登録意匠商品を10万枚販売している。
ハ,株式会社イソカイは,本件登録意匠出願前の平成10年(1998年)11月28日に,「‘98なら・グッドデザイン」に選定され,「ファッション部門優秀賞」として表彰された。マスメディアで発表されると共に,奈良県は,県内外のデパート等で展示し又奈良県作成の選定品冊子を全国に配布して幅広くPRを実施し,株式会社イソカイのファッション部門優秀賞「Princess bloomers」は,広範囲に露出された。(甲第1号証(ファッション部門優秀賞「Princess bloomers」・・・’98なら・グッドデザイン選定品カタログ2ページから),及び甲第2号証(‘98なら・グッドデザイン選定品カタログ(全12ページ)・・・11ページに公開展示の詳細記述))
ニ,本件登録意匠は,株式会社イソカイが企画・設計しデザインを創作したものである。
ホ,従って,ヨークス株式会社とは無関係で,ヨークス株式会社の吉田幸三氏が本件登録意匠の創作者になるはずがないのだが,株式会社イソカイが,量産生産をヨークス株式会社に生産依頼したため,ヨークス株式会社がこのデザインを知ることとなった。
ヘ,株式会社イソカイの株式会社ヨークスへの生産以来は1997年3万枚及び1998年10万枚行われている。
ト,従って,本件登録意匠出願前の1998年に奈良県から表彰された株式会社イソカイのグッドデザインは,ヨークス株式会社が,株式会社イソカイの発注に基づき「株式会社イソカイ創作のデザイン」を,賃加工で生産したものの1つで,まさに,本件登録意匠に他ならない。
(4)むすび,従って,登録第1108671号は,本件登録意匠出願前に,公然と知られた意匠かつ刊行物に記載された意匠であり,その意匠登録は無効とすべきである。
(5)弁駁の主張の要点
[1]無効理由:冒認登録について
甲第3号証(株式会社イソカイ代表取締役の供述書)のとおり,本件登録意匠は冒認出願に係るものである。
[2]無効理由:新規性欠如について
本件登録意匠の二重編み・段差・すそ部分については,既に本件登録意匠出願前から株式会社イソカイは商品化して世に出しており,既に市場に大量に出回っていた。
第2.被請求人の答弁及び理由の要点
1.答弁の趣旨
被請求人は,「本件審判は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める旨主張し,証拠方法として,乙第1号証の書証を提出している。
2.理由
[1]無効理由:冒認登録(意匠法48条1項3号)について
(1)理由イについて
a)請求人は,本件登録意匠は,(株)イソカイが創作したものと主張するが,その証拠は提出していない。よって,それだけでも請求人の主張は失当である。
b)つぎに,被請求人は,本件登録意匠は意匠権者ヨークス(株)の代表者である吉田幸三が創作し,その意匠登録を受ける権利を被請求人ヨークス(株)が譲り受け,意匠権者になったものであること。よって,冒認登録に該当しないこと,を以下のとおり立証する。
被請求人と(株)イソカイの間で合意した「覚書」(乙第1号証)の第1条によれば,本件登録意匠は,(株)イソカイのヒントがあったものの被請求人が開発,改良したことが記載されている。本件登録意匠のデザインに(株)イソカイの関与はなく,被請求人サイドで創作した事実が記載されている。しかも,この覚書は請求人が創作者と指摘する(株)イソカイ自身が認めたものである。換言すれば,乙第1号証の覚書は(株)イソカイと被請求人との間で合意されたものであり,両当事者の代表者印も押印されているので,真正に成立したものである。よって,創作の実質的関与は吉田幸三にあることは明らかである。
c)以上の次第であるから,請求人の主張は事実に反する。
また,請求人は,虚偽の事実を真正と偽る詐欺の行為により審決を受けようとするものであるから,意匠法第70条(詐欺の行為の罪)に該当し,請求人の主張どおりの審決が出された場合は,請求人は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられるものである。
(2)理由ロについて
(株)イソカイが販売した製品は本件登録意匠に係わる製品ではない。なお,(株)イソカイは被請求人に生産委託して本件登録意匠とは無関係な別製品を販売した事実があるが,被請求人が生産し(株)イソカイに供給した数量は平成9年で約1480枚,平成10年で約5460枚である。よって,数量だけみても請求人が主張した平成9年の3万枚,平成10年の10万枚とは大差があり,このことも請求人の主張は事実に基づかないことをうかがわせている。
(3)理由ハについて
前記のとおり,本件登録意匠は(株)イソカイによって創作されたものではない。甲第1号証および甲第2号証は,本件登録意匠とは異なる別製品が出展された事実を証するだけのものである。
(4)理由ニないしトについて
前記のとおりであり,本件登録意匠が冒認登録にかかるものであるとの主張は,いずれも理由がない。
[2]無効理由:新規性欠如につて
本件登録意匠は公然知られた意匠(意匠法3条1項3号)には該当しない。
その理由は以下のとおりである。
(1)甲第1号証に記載された「プリンセスブルマー」は,本件登録意匠とは無関係に(株)イソカイが開発した別製品であり,同一でもなく類似もしていない。甲第2号証に記載された「プリンセスブルマー」も本件登録意匠と無関係な別製品であり,同一でもなく類似もしていない。
(2)
(イ)本件登録意匠の健康帯(市場ではパンツとも称されている)は,人が着用した際に腹部に当たる本体部分が二重編みになっており崇高感がある。また,崇高になっていることにより,上下の厚さの薄い部分との境界線に段差が入って見える。この特徴は写真では現れにくいが見本では顕著な特徴となって現れており,この点が評価されて登録されたものである。
これに対し,甲第1号証および甲第2号証の写真は,マネキン着用のものも机上に置いたものも,そのような特徴的形態は現われていない。
よって,同一でもなく類似でもない。
(ロ)本件登録意匠の健康帯は,裾が斜めに切れ上っている。
これに対し,甲第1号証及び甲第2号証の写真は,マネキン着用のものに明瞭に現われているように,これらは裾が水平になっており,斜めに切れ上がっていない。よって,この点でも形態上の相違が存する。
よって,同一でもなく類似でもない。
(3)(株)イソカイとの関係
以上の理由により,甲第1号証および甲第2号証のカタログによっても,本件登録意匠は新規性を失っていない。
第3.当審の判断
当審は,本件登録意匠が,その意匠登録出願前に発行された「なら・グッドデザイン選定品カタログ(‘98?’99)」(写し)(甲第2号証)の第2頁に記載されたブルマー「ファッション部門優秀賞 Princess bloomers プリンセスブルマー」の意匠(以下,「引用意匠」という。)に類似し,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するから,本件意匠登録は同法第3条の規定に違反してなされたものであり,同法第48条第1項の規定により無効にすべきものと判断する。本件登録意匠が引用意匠に類似する理由は,下記のとおりである。
なお,本件登録意匠は引用意匠に類似する意匠であるが,同一の意匠ではないから,本件意匠登録は,意匠法第48条第1項第3号の規定に該当するものではない。
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成12年1月21日に意匠登録出願され,平成13年3月9日に登録の設定がされたものであり,その願書及び見本によれば,意匠に係る物品が「健康帯」で,その形態が見本に現されたとおりのものである(別紙第1(特許庁において見本を電子ファイル化した写真)参照。)。
2.引用意匠
引用意匠は,(財)奈良県広域地場産業振興センターが本件登録意匠出願前(平成10年11月末頃)に発行した「なら・グッドデザイン選定品カタログ(‘98?’99)」の第2頁に記載されたブルマー「ファッション部門優秀賞 Princess bloomers プリンセスブルマー」の意匠であり,意匠に係る物品が「ブルマー」で,その形態が当該カタログ所載の写真に現わされたとおりのものである(別紙第2参照)。また,当該カタログの記載によれば,「【審査講評】このブルマーは,ファッション性を好む女子高生を中心ターゲットにした製品ですが,おしゃれ感覚を意識したデザイン構成,伸縮面などの機能性,天然素材(ウール)と合繊素材(アクリルやナイロン等)の良さをミックスした点など,従来の同製品に余り見られなかった商品」である。
なお,「なら・グッドデザイン選定品カタログ(‘98?’99)」の発行日については,同カタログ11頁の記載によれば,審査会が平成10年10月27日,選定品の展示が平成10年11月28日?29日,入賞製品の展示が平成11年1月22日?であり,同カタログの発行日は,平成10年11月末頃(遅くとも平成11年1月)と推認される。
3.本件登録意匠と引用意匠との対比
本件登録意匠と引用意匠を対比すると,両意匠の意匠に係る物品は「健康帯」と「ブルマー」であり,いずれも「衣服」のうち「下着」に含まれる「パンツ」等であって,意匠に係る物品が類似するものと認められる(意匠法施行規則別表第1「二 衣服」参照)。
そして,両意匠の形態については,以下の共通点と差異点が認められる。(なお,引用意匠を現した写真には,様々な模様と色彩がほどこされた複数の意匠が現されているが,いずれも同一の形状の意匠であり,共通する形状の意匠を引用意匠として対比する。色彩については,本願登録意匠とほぼ一致する赤色のものがある。)
(1)共通点
両意匠は,(A)全体が伸縮性を有する素材で形成されたやや厚手のパンツ形状のものであって,着用した場合は体にフィットし,脱いだ場合はやや全体が縮小する点,(B)脱いだ場合の正面視は,全体がやや縦長で,上端腰部にやや太めの帯状に縦縞の網目模様(ゴム編み)を配し,上端腰部がやや縮んで波形状となり,下部の裾部は大きく縮んで大きな襞形状を形成した点,(C)着用した場合は,全体が伸びた状態となり,上端腰部も裾部も緩みのない態様となるが,全体的に伸縮性があり腰部も裾部も形状が固定的なものではない点,(D)上端腰部の帯状の幅は,全体の高さの略10分の1程度であって,下部の裾部は上端腰部よりもやや長い幅に形成された点において共通する。
(2)差異点
(a)本件登録意匠は,着用した際に腹部に当たる部分,すなわち全体の略上半分がやや厚みがあり,下半分の厚さの薄い部分との境界に段差が形成され,上下を分ける中央横線模様が現れているのに対し,引用意匠は,全体が同じ厚さであって中央横線模様は現れていない点,(b)本件登録意匠は,正面視で,裾が斜め左右に若干切れ上っているのに対し,引用意匠は裾が略水平である点に差異が認められる。
4.本件登録意匠と引用意匠との類否判断
意匠の類否を判断するに当たっては,両意匠の共通点及び差異点について,意匠全体に占める割合,物品特性,及び公知意匠を参酌し,美感の観点から看者の注意を引く部分か否かを評価して,意匠全体として両意匠の全ての共通点及び差異点を総合的に観察した場合に,需要者に対して共通する美感を起こさせるか否かを判断する。
そこで検討するに,この種パンツ等は着脱して使用するものであるから,脱いだ場合及び着用した場合の全体的態様について注目するとともに,身につけるものであるから,或る程度は具体的構成態様についても注目しつつ意匠全体を観察するものである。
そうすると,本件登録意匠と引用意匠の共通点(A)の全体が伸縮性を有する素材で形成されたやや厚手のパンツ形状のものであって,着用した場合は体にフィットし,脱いだ場合はやや全体が縮小する構成態様は,両意匠の全体的な基本的構成態様であって,両意匠の造形的な骨格を形成し,看者の注意を引くものである。また,このような伸縮性を有する素材で形成されたやや厚手のパンツ形状のものは,本件登録意匠出願前及び引用意匠の以前にはあまりみられないもので,両意匠の特徴的な構成態様であり,格別に看者の注意を引くものと認められる。さらに,脱いだ場合の共通点(B)の構成態様,及び着用した場合の共通点(C)の構成態様は,いずれも両意匠のほとんど全体を占めており,看者の注意を引くものである。したがって,両意匠は,全体的な基本的構成態様であり,かつ,特徴的な構成態様である(A)において共通し,また,着脱いずれの状態でもほとんどの部分が共通するとともに,具体的なプロポーション(D)においても共通性が顕著であり,両意匠は全体として看者に共通する美感を起こさせるものである。
これに対し,両意匠の差異は微弱であって,両意匠の共通する美感を変更するまでのものではない。
すなわち,差異点(a)は,本件登録意匠の厚みの差は僅かなもので,境界に現れる中央横線模様も顕著に目立つ態様のものではなく,かつ,本件登録意匠のように厚みの差によってパンツ中央部に横線模様を現す構成態様もすでにありふれた態様であることを考慮すると(例えば,別紙第3の公知意匠1ないし4参照。),共通する特徴的な全体的構成態様に比較して,この差異点は格別看者の注意を引くものではなく,類否判断を左右する程のものではない。(なお,被請求人は,「この特徴は写真では現れにくいが見本では顕著な特徴となって現れており」と主張するが,見本においても顕著なものではない。)また,差異点(b)は,本件登録意匠の斜めの切れ上がりは格別大きな角度ではなく,両意匠の角度の差異は微差であり,また,裾が斜め左右に若干切れ上っている態様も略水平である態様も,この種パンツ等においては例を挙げるまでもなくありふれた態様であり,かつ,材質に伸縮性があるため,着用した場合の裾の状態も固定的なものではなく水平からやや斜め状態まで可動性があることを考慮すると,この差異点は看者の注意を引くものではない。そして,これら差異点を総合して勘案しても,両意匠の全体として共通する美感を変更するまでのものではない。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が類似し,形態においても,共通点が差異点を凌駕し,全体として看者に共通する美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似する。
5.むすび
したがって,本件登録意匠は意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し,本件意匠登録は,同法第3条の規定に違反してなされたものであるから,同法第48条第1項の規定により,無効にすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2008-08-06 
結審通知日 2008-08-08 
審決日 2008-09-17 
出願番号 意願2000-684(D2000-684) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (B1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 清野 貴雄 
特許庁審判長 梅澤 修
特許庁審判官 樋田 敏恵
並木 文子
登録日 2001-03-09 
登録番号 意匠登録第1108671号(D1108671) 
代理人 山内 康伸 
代理人 中井 博 
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