• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) C3
管理番号 1206631 
判定請求番号 判定2009-600024
総通号数 120 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2009-12-25 
種別 判定 
判定請求日 2009-06-26 
確定日 2009-10-28 
意匠に係る物品 物干し用ピンチ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1129856号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠及びその説明書に示す「物干し用ピンチ」の意匠は、登録第1129856号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、イ号意匠及びその説明書に示す意匠(以下、「イ号意匠」という。)は、登録第1129856号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める、と申立て、その理由として判定請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
第2.被請求人の答弁
当審では、被請求人に期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは期間内に何らの答弁もなされなかった。
第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成12年12月28日に意匠登録出願をし、平成13年11月 2日に意匠権の設定の登録がなされたものであり、願書の記載によれば意匠に係る物品を「物干し用ピンチ」とし、その形態を願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
本件判定請求の対象とされるイ号意匠は、判定請求書添付の甲第2号証(イ号意匠およびその説明書)の記載によれば、意匠に係る物品を「ベランダ用ピンチ」とし、その形態をイ号意匠の写真に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.両意匠の対比
両意匠を対比すると、何れも洗濯物を乾かす際に使用するピンチに係るものであるから、両意匠の意匠に係る物品が一致し、その形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
3-1.共通点
(1)形態の全体は、左右一対の部材により対称状に構成したものであって、正面視、上部を略「V」字形状の把手部とし、下部を外縁形状が下方に舳先を向けた略舟形状に形成した挟み部とし、左右の部材の把手部と挟み部との間をそれぞれ向かい合わせの凸状に形成して、この凸状部分を内蔵したバネによって結合することにより、挟み部を左右に開閉するための支点としている点。
(2)開閉支点より下方の挟み部の長さを、開閉支点より上方の把手部の長さの略1.9倍としている点。
(3)把手部は、正面視略「V」字形状とした部分の谷部を略弧状として、その後、左右の部材のそれぞれの両辺を直線状として、上方へ次第に細幅としている点。
(4)把手部の断面は、左右の部材が向かい合う側を凹状とし、その反対側を、上端に近接してごく浅い凹面を形成した平らか状としている点。
(5)把手部の上端を、側面視弧状に形成している点。
(6)挟み部は、左右の部材が向かい合う側の縁形状(内縁形状)を、正面視略卵形状とし、このうちの下端部分を互いに外反りに湾曲形成している点(以下、この外反り湾曲部分に相当する挟み部の先端部分を「外反り湾曲部」という。)。
(7)挟み部の正面視幅について、向かい合う側の縁形状(内縁形状)を略卵形状とし、その反対側の縁形状(外縁形状)を略舟形状とすることにより、挟み部上端の開閉支点に繋がる部分と下端の外反り湾曲部部分の幅を、中間部の幅に比べてやや太く拡張したものとしている点。
(8)挟み部の左右の部材が向かい合う側の上方部分に、それぞれ、略三角形状としたバネ端の固定部を互いに向かい合うように突出させている点。
3-2.差異点
(A)左右一対の部材について、本件登録意匠は全体を不透明としているのに対し、イ号意匠は全体を透明としている点。
(B)把手部の上端部分について、イ号意匠は、正面視、外方側にわずかに端反り状としているのに対し、本件登録意匠は、下方から直線状に延伸したままとしている点。
(C)挟み部の断面形状について、本件登録意匠は、左右の部材が向かい合う側の上端から下端に至るまでの全てを平らか状とし、その反対側を凹状に形成しているのに対し、イ号意匠は、向かい合う側の上端から外反り湾曲部の上端に至る部分までを本件登録意匠とは逆の凹状に形成し、外反り湾曲部の向かい合う側のみを本件登録意匠と同様に平らか状として、凹凸の向きを逆の態様に組み合わせて形成している点。
4.両意匠の類否判断
そこで両意匠を全体として観察し、共通点と差異点の類否判断に及ぼす影響を総合的に検討する。
共通点(1)及び(2)については、両意匠の形態全体にかかわり、その骨格をなすものとして一見して看取できる構成であるから、視覚的に最も強い印象をもたらすものであり、両意匠の類否判断に与える影響は極めて大きいといえるものであって、中でも挟み部の外縁形状を略舟形状とした点は、共通点(6)の挟み部の内縁形状を略卵形とし、その下端部分に外反り湾曲部を形成した点と、共通点(7)の開閉支点に繋がる部分と外反り湾曲部部分の幅を太幅とした点との相乗効果により、挟み部全体に人間の指先で摘み上げるかのような極めて生物的な印象を付加するものとなっており、これに共通点(8)のバネ固定部を向かい合うように突出させた点を加えた挟み部全体の共通態様は、本件登録意匠の出願時点では、他に類例を見ない本件登録意匠のみの新規な態様と認められるものであり、かつ、当該部位は洗濯物を挟むという物品本来の機能に直接関係し、使用時に常に注視される部分であって、全体の長さの2/3弱に達する程の広範囲を占める部分であるから、両意匠の類否を決定づけるものであって、類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
また、共通点(3)、及び(4)の把手部の態様も、全体の長さの1/3強を占める部分であって、把手部単独で見れば把持部の全体に及ぶ態様であり、共通点(5)も公然知られた態様と認められるものではあるが、これらが相俟った共通の印象は、類否判断に影響を与えるものである。
これに対し、差異点は、以下のとおり何れも微弱なものに止まり、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものである。
すなわち、差異点(A)については、従来より、樹脂成型品を透明に現すことは、この種物品分野に限らず広く一般に行われていることであり、この種のピンチ類の分野についても、ごく普通に行われていることであるから(例えば、登録第1095066号意匠参照。)、この差異は殆ど看者の注意を惹かず、両意匠の類否判断に与える影響は極めて微弱である。
差異点(B)については、イ号意匠は、本件登録意匠の把手部の上端をわずかに端反り状とした程度であって、形態全体からみると局部的な差異といわざるを得ず、その印象は、略「V」字状の把手部の態様がもたらす強い印象に埋没してしまう程度の僅かなものであるから、この差異が類否判断に与える影響も極めて微弱である。
差異点(C)については、この種の物品の形態として、軽量化や剛性向上などを意図して挟み部や把手部の断面に「コ」字溝形(いわゆるチャンネル形)を採用することは、従来より、極めて普通に行われていることであって(例えば、登録第738018号類似第1号意匠、登録第759058号意匠(甲第5号証)、登録第675518号意匠(甲第6号証)、登録第899197号意匠、公開実用新案公報所載の実開昭62-165992号の第1図の「ハンガー固定洗濯バサミ」の意匠、和泉化成(株)発行のカタログ「IZUMI ’90PLASTIC CATALOGUE」第48頁記載の「洗たくばさみ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC02033829号 別紙第3参照)、米国特許庁発行の米国意匠公報「オフィシャルガゼット」1号 1240巻 1100頁所載 登録第433318号の「洗濯ばさみ」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH12034068号 別紙第4参照)等。)、また、その溝の向きを互いに向かい合う側とするか、これとは反対の外方側とするかの点も、前掲の公知意匠に明らかなようにどちらも極めてありふれた態様であり、さらにイ号意匠のように、先端部近辺で凹凸の向きを逆転させた態様も、前掲の登録第899197号意匠で確認することができるものであって、イ号意匠は左右の部材全体を透明としているため、不透明の場合に比較して凹凸の態様を直ちに明瞭に視認しづらい点も勘案すると、当該差異は特段の看者の注意を惹くものではなく、上記の共通点で採り上げた人間の指先で摘み上げるかのような挟み部の印象をいささかも変更するものではないから、類否判断に与える影響は微弱といわざるを得ない。
以上のとおりであって、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、(A)ないし(C)の差異点はいずれも類否判断に及ぼす影響が微弱であり、これら差異点を総合し相俟った視覚的効果を考慮しても、(1)ないし(8)の共通点がもたらす視覚的効果を凌駕して別異の感を生じさせるに至っているとすることができないから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているというほかない。
5.結び
従って、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論の通り判定する。
別掲
判定日 2009-10-15 
出願番号 意願2000-38448(D2000-38448) 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (C3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加樋田 敏恵 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
淺野 雄一郎
登録日 2001-11-02 
登録番号 意匠登録第1129856号(D1129856) 
代理人 勝木 俊晴 
代理人 白崎 真二 
代理人 阿部 綽勝 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ