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審決分類 審判    L6
管理番号 1212872 
審判番号 無効2009-880001
総通号数 124 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-01-06 
確定日 2009-08-10 
意匠に係る物品 壁板材 
事件の表示 上記当事者間の登録第0979915号「壁板材」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の請求の趣旨及び請求の理由
[1]請求の趣旨
請求人は、「登録第979915号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、証拠方法として、甲第1?第3号証を提出した。
[2]請求の理由
1.意匠登録の無効理由の要点
「壁板材」に関する本件登録第979915号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)(別紙第1参照)は、特願昭62-294386号「サイディングボード」を原特許出願して、意匠登録出願(意願平7-31178号)に出願変更したものであるところ、かかる意匠への出願変更は適法なものとはいえないので、出願日の遡及効は享受できず、本件登録意匠の出願日は意匠への出願変更を行った平成7年10月17日と認定すべきであるから、本件登録意匠はその出願日より前に出願公開された原特許出願の特開平1-137056号公報(平成1年5月30日公開)に掲載された意匠に類似するものとして、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。
2.本件登録意匠を無効とすべき具体的理由
(1)特許出願から意匠出願への出願変更の問題について
(a)本件登録意匠(甲第1号証)は、その右側面図または正面図中央縦断面図からして、原特許出願(特願昭62-294386号)の図面のうち、おそらく最も近似するものと思われる図面「第13図(c)」(甲第2号証)(別紙第2参照)について、これを意匠登録出願に出願変更したものである。
(b)本件登録意匠は、原出願の側面図的な「説明図」1図のみをもって意匠に出願変更したもので、「原出願の明細書・図面から明確に認識でき、かつ原出願の明細書・図面に表された意匠と同一であること」が必要であるとする特許から意匠へ出願変更する場合の要件を満たしていないものとして、この意匠への出願変更は不適法なものである。
(2)本件登録意匠と原特許出願に係る意匠との比較(「比較図」〔甲第3号証〕参照。)
(a)原出願図面の雌型連結部の一部をも形成している右側端の凸部aは、他の4個の凸部b1?b4と比較してその幅(壁面としたときの上下幅)が極端に狭くなっているのに対して、本件登録意匠の凸部aの幅は、他の4個の凸部b1?b4の幅と同一に表されている。
そして、原出願図面に記載の壁板材(サイディングボード)を雌雄連結部により上下方向に順次嵌合連結していった場合、規則的にこの雌雄連結部の連結箇所でのみ凸部の上下幅が狭くなり、これが施工後の壁面における一つのアクセントとなる。一方、本件登録意匠の場合、横縞状に凹凸のある壁面全体が均質に見え、雌雄連結部の連結箇所は一見して分からない。
このように、本件登録意匠と原出願図面とにおける「壁板材」の表面材の形状の差異は、壁面施工後の外観に大きな相違をもたらすもので、この表面材の形状の差異を意匠的に同一のものとして無視できるものではなく、従って、本件登録意匠は、その表面材の形状において、原出願図面を大きく改変しており、「原出願の明細書・図面に表された意匠と同一であること」が必要な特許から意匠への出願変更の要件を満たしていないので、本件登録意匠の意匠への出願変更は不適法なものである。
(b)また、原出願図面において、芯材の背面に貼付される裏面材の雌型連結部側端部は、該雌型連結部の折り返し端部に突設するように構成されており、本件登録意匠の「右側面図」では同様の構成となっているが、「正面図中央縦断面図」では、雌雄連結部の背部に巻き込むように構成されており、これでは、「変更に係る意匠が原出願の明細書・図面から明確に認識できる」ような具体的なものとはいえず、「原出願の明細書・図面に表された意匠と同一である」ともいえないので、この点でも本件登録意匠は特許から意匠への出願変更の要件を満たしていない。
(3)検討
上記のような、原出願背面と本件登録意匠の図面における差異、特に、「表面材の形状」の差異は、壁面施工後の外観にも大きな相違をもたらすきわめて重要な差異であり、このような差異は原出願図面と本件登録意匠との間では、意匠として類似するものではあっても、到底同一の意匠であると認められるようなものではない。
3.むすび
以上述べたように、本件登録意匠は特許から意匠への出願変更の要件を満たしていないので、本件登録意匠の意匠への出願変更は不適法なものであることは明らかであり、原特許出願日への出願日の遡及効を享受することができないものであるから、本件登録意匠の出願日は意匠へ出願変更を行った平成7年10月17日と認定すべきであり、本件登録意匠はその出願日より前に出願公開された甲第2号証の図面「第13図(c)」に掲載された意匠に類似するものとして、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものである。
よって、本件登録意匠は無効理由を有するものであり、その登録は無効とされるべきものである。
第2.被請求人の答弁の趣旨及び答弁の理由
[1]答弁の趣旨
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、証拠方法として、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
[2]理由
1.請求人の主張が失当である理由
(1)原特許出願における変更に係る意匠の記載について
本件登録意匠は、この原特許出願の明細書及び図面の全記載によって明確に全体形状が特定されている実施例として表された各種形状のサイディングボードの内から、断面形状を第13(c)とする意匠について意匠登録出願に変更したものである。
したがって、本件登録意匠が、『側面図や断面図のような「説明図」だけで立体的な意匠全体が把握できるものであるのか、本請求人としてはきわめて疑問である。』(審判請求書2頁23行目?3頁4行目)とする、請求人の主張に理由はない。
また、この種建築用板材の分野において、製品の形状を表す図面として断面形状のみを示すことが従来から行われており、断面図のみであっても、この種物品については、意匠全体の立体形状を特定することに支障が無く扱われているものであることが明らかであり、本件登録意匠の原特許出願は、断面の具体的な形状ばかりでなく、全体を立体的に表した斜視図と共に、意匠全体の立体形状を特定するに十分な記載がなされており、本件登録意匠は、その具体的に特定された意匠を意匠登録出願に出願変更したものであって、請求人が主張する不適法性はない。
(2)本件登録意匠と原特許出願に記載の意匠との比較について
(a)凸部aの幅の他の凸部b1?b4と比較した差異について
原出願図面の凸部aの幅が他の凸部の幅に比して稍狭いことの差異は、一見しては判らない程度の些細な不一致に過ぎない。
また、原特許出願の図面では、第13図の(a)から(d)の4図だけ、表面材に複数本の化粧溝を設けた実施例を表しており、この4図で表されている意匠は、表面材にそれぞれ2?5本の化粧溝を等間隔に設けた実施例であって、化粧溝の間に等幅の凸部が現れる基本構成のものを表したものである点で共通しているものであり、各凸部の幅について多少の差異があるとしても、第13図の(a)から(d)の4図が、いずれも、凸部の一のみを他と異なる幅として施工時の壁面にアクセントを付けることを意図した形状として表したものではないことは明らかである。
出願変更は、出願の形式の変更であって、「もとの出願と新たな出願とは内容的に同一性を有していることが必要であるが」(意匠審査便覧18.11(説明)1行目)として、記載された図面の物理的な同一を要件とするものではない。
本件登録意匠についても、意匠登録出願への変更に際して、手書きに近い原出願図面で生じていた僅かな図面上の不一致について、当初の明細書及び図面から当然に導き出される内容である、表面材に等間隔に設けた複数本の化粧溝間に等幅の凸部を表した形態の意匠図面として、僅かな調整を行って出願変更したものであって、意匠の内容には何ら変更を来しているものではなく、実質的同一性が維持されている。
(b)裏面材の雌型連結部側端部の構成の差異について
本件登録意匠は、雌型連結部の背面側態様について、「正面図中央縦断面図」のみに僅かな不一致があったとしても、該断面図が、意匠としてはさほど重要でない内部構造を説明するために加えたに過ぎない図であることを勘案すれば、この1図のみの相違によって連結部の態様が具体的でないということはできず、一組の図面、及び本件登録意匠の連結態様を表すために雌雄嵌合部を拡大した「装着状態参考図」を含む図面の記載全体として、本件登録意匠の雌型連結部背面側の態様は具体的に特定されており、また、その特定されている形態は、原出願図面「第13図」(c)と同じものであるから、請求人が主張する出願変更を要件を満たしていないとする不適法はない。
(3)むすび
以上のとおりであって、請求人の主張はいずれも失当であり、本件登録意匠の原特許出願から意匠登録出願への変更は適法になされており、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものではない。
よって、答弁の趣旨のとおり、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。
第3.請求人の弁駁
1.理由
請求人は、被請求人の平成21年3月4日付答弁書に対し、平成21年5月15日付弁駁書を提出して反駁し、証拠方法として、甲第4?第6号証を提出した。要旨、以下のとおりである。
(1)本件登録意匠の原特許出願から意匠登録出願への出願変更の不適法性について
化粧板(表面材)の「化粧溝(凹部)の形状」に関し、原特許出願(甲第2号証)の明細書では、その「第1図」?「第4図」の説明で、「上記化粧溝3は化粧片2aとθ1で交わる、側面3aと化粧面部2とほぼ平行な底面3bと、化粧片2bとθ2で交わる傾斜面3cとから断面をほぼ等辺台形状に形成したものである。」(甲第2号証の2頁右上欄下?2行目から同頁左下欄2行目)としており、各化粧溝の台形状を構成する左右傾斜面の角度が異なっている不等辺(非対称)の特殊形状の台形としなければならない特別の理由もなければ、それについての記載や示唆も原特許出願の明細書中には全くない。本件登録意匠では、「等辺台形状」とはなっておらず、雌型連結部側の傾斜面の方が雄型連結部側の傾斜面より化粧溝内底面に向かって緩やかな傾斜となっている「非対称(不等辺)の台形」に形成されている。
このように、本件登録意匠の形態は、原特許出願の斜視図や明細書の記載自体からは正確に理解・把握することはできないのであるから、原特許出願の明細書及び図面中には本件登録意匠そのものを明確に認識できる具体的記載はないというべきである。
(2)本件登録意匠と原特許出願の図面との比較
(イ)原特許出願の図面「第13図」について
原特許出願の「第13図(a)」については、中央の凸部の頂面幅が他の凸部の頂面幅よりも幅広に作図され、また、「第13図(d)」については、「第13図(c)」と同様に、雌型連結部を構成する右側端の凸部の頂面幅のみが他の凸部の頂面幅よりも狭く作図されている。
このように、原特許出願の「13図」の(a)、(c)及び(d)の図面のいずれにおいても、かかる各凸部の頂面幅の差異が認められることからすれば、化粧溝の間に形成される凸部の頂面幅について、張り上げ施工時に壁面全体が全く均質均等な縞模様ではなく、独特の変化が規則的に現れるよう意図していると理解せざるを得ない。
従って、このような被請求人の意図により採用された各凸部の頂面幅の差異は、到底作図上の誤記や不手際あるいは些細な不一致などと評価することはできない。
(ロ)被請求人の壁板材の他の登録意匠について
意匠登録第1168154号公報「壁板材」(甲第5号証)では、雌雄連結部を接合した場合、その連結してできる凸部全体の頂面幅だけが、他の凸部幅よりも明らかに幅広(他の凸部の約2倍幅)になるように作図されており、意匠登録第1167980号公報「壁板材」(甲第6号証)では、雌雄連結部を接合した場合にできる化粧溝の底面幅は、他の化粧溝の底面幅よりも明らかに幅細となるように構成されており、張り上げ施工した壁面に規則的に凸部の頂面幅(あるいは化粧溝の底面幅)の変化が表れるような構成を採用していることから見ても、原特許出願の「第13図(c)」の図面において、意図的に凸部の頂面幅の一つのみを他の凸部の頂面幅と異なる幅とし、張り上げ施工した壁面にアクセントを付けることとしたことが認められ、本件登録意匠と原特許出願の「第13図(c)」の図面に係る意匠との差異は、壁面施工後の外観に大きな相違をもたらすもので、このような表面材である化粧面の形状の差異を無視することはできない。
第4.当審の判断
[1]本件登録意匠を無効とすべき理由について
請求人は、本件登録意匠を無効とすべき理由について、「本件登録第979915号意匠は、特願昭62-294386号「サイディングボード」を原特許出願して、意匠登録出願(意願平7-31178号)に出願変更したものであるところ、かかる意匠への出願変更は適法なものとはいえないので、出願日の遡及効は享受できず」、「本件登録意匠はその出願日より前に出願公開された原特許出願の特開平1-137056号公報(平成1年5月30日公開)に掲載された意匠に類似するものとして、意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、同法第48条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。」旨主張するものであり、そこでは、「特許出願から意匠登録出願への出願の変更が認められるか否か」が結論を大きく左右することになるから、その点から順次検討する。
[2]特許出願から意匠登録出願への出願の変更が認められるか否かについて
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第979915号)は、意匠法第13条第1項の規定(出願の変更)により、原特許出願(以下、「もとの出願」という。)を昭和62年11月21日の昭和62年特許願第294386号(特開平1-137056号、公開日平成1年5月30日)とする、平成7年(1995年)10月17日の意匠登録出願に係り、平成9年(2002年)2月10日に意匠権の設定の登録がなされた意匠であって、願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば、意匠に係る物品を「壁板材」とし、その形態を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
そして、形態については、(a)全体は、正面視、左右に連続する薄板状の長尺材であって、前面側を覆う化粧板材(表面材)と、その背面側を塞ぐ裏板材(裏面材)と、化粧板材と裏板材とで囲まれる内部に充填する芯材とで構成し、前面側に、凹凸面を形成したもので、ほぼ同形状の化粧溝(凹部)を等間隔に水平状に4個所設けて、その化粧溝の形成により相対的に浮き出る化粧凸部をほぼ同形状で等間隔に水平状に5個所設け(なお、以下、化粧溝及び化粧凸部とした場合には、それぞれ上下辺の傾斜する側壁部分は、共有するものとする。)、上下端部に、それぞれ互いに他の壁板材と連接して嵌め合う凹凸部を有した連結部を形成したものである。また、各部の具体的な態様について、(b)各化粧溝を、奥に向かって先窄まり状の略縦長倒台形状で、その奥行が壁板材の板厚に対して約1/3とする浅い窪みとし、(c)各化粧凸部を、前方に向かって先窄まり状の略縦長扁平倒台形状で、その奥行を壁板材の板厚に対して約1/3とする浅い盛り上がりとし、(d)化粧溝と化粧凸部の縦幅の比率を、約1:2とし、(e)上端部の連結部(以下、「雄型連結部」という。)は、右側面視、薄板状の化粧板材を、前面側の上端寄りの最上位の化粧凸部の裾部から、化粧溝の底面と同一面状とする延長線上に、上方へ垂直状に化粧溝の縦幅程度延ばし、その先端を、上方へ突出する略倒「コ」字状の、前面側上端を面取りして折り返し突出する差込凸部とし、差込凸部の後辺から繋いで、略「U」字状に折り返す係合溝を形成し、その深さを、化粧溝の縦幅の約1/2とし、さらに、係合溝の後辺をそのまま繋いで上方に延伸する垂直状の係合片を形成し、その長さを、差込凸部上端位置より化粧溝の縦幅程度とし、係合片の中央よりやや差込凸部上端位置寄りに、円弧状の小凸部を形成し、係合片の上端に、前面側へ折り曲げた細幅折り返し片を形成し、(f)下端部の連結部(以下、「雌型連結部」という。)は、右側面視、化粧板材の前面側を、最下位の化粧凸部の下端から上方へ略倒「コ」字状に屈曲させて窪ませた嵌合溝を形成し、その深さを、化粧溝の縦幅の約1/2とし、嵌合溝の後辺の下端に、背面側へ折り曲げた細幅折り返し片を形成し、(g)化粧板材の背面側を塞ぐ裏板材を、薄板状とし、右側面視、雄型連結部の係合溝を構成する後辺の上部を僅かに除く下部の垂直状部分に、裏板材の上端を接合して、雌型連結部の下方へ垂下させ、壁板材の下端よりやや上の位置で、下方に従い前方へ傾斜する段部を形成し、さらに、裏板状の下端を、雌型連結部の嵌合溝の折り返し片と同一面状に連接し、かつ、嵌合溝の後辺の上半部と接合したものであると認められる。
ところで、本件登録意匠の認定にあたって、図面を詳細にみると、幾つか図が相互に一致しない点が認められる。また、請求人も、その点について、「原出願図面において、芯材の背面に貼着される裏面材の雌型連結部側端部は、該雌型連結部の折り返し端部に突合するように構成されており、本件登録意匠の『右側面図』では同様の構成になっているが、『正面図中央縦断面図』では、雌型連結部の背部に巻き込むように構成されており、これでは、『変更に係る意匠が原出願の明細書・図面から明確に認識できる』ような具体的なものとはいえず、『原出願の明細書・図面に表された意匠と同一である』ともいえないので、この点でも本件登録意匠は特許から意匠への出願変更の要件を満たしていない。」(審判請求書5頁9行目?16行目)と主張する。
すなわち、図が相互に一致しない点として、(1)裏板材の雌型連結部との接合態様について、「右側面図」は、裏板材の下端が、嵌合溝の折り返し片と同一面状に連接し、かつ、嵌合溝の後辺の上半部と接合し、「正面図中央縦断面図」は、段部から垂下して、嵌合溝の手前で鉤状に内方へ屈曲し、その下片が嵌合溝の上面と接合し、また、「装着状態参考図」は、右側面図の態様とほぼ共通としながらも、嵌合溝の上面位置で極浅い小段部を形成した点、(2)裏板材と雌型連結部との接点位置について、「右側面図」と「装着状態参考図」は、嵌合溝の深さのほぼ中央位置とし、「正面図中央縦断面図」は、嵌合溝の上面位置とし、「背面図」は、接線が作図されていない点、(3)裏板材の段部の位置について、「右側面図」と「正面図中央縦断面図」と「装着状態参考図」は、同じ位置であるが、「背面図」は、両図の位置よりもやや下方寄りとした点、(4)雌型連結部の折り返し片の態様について、「右側面図」と「装着状態参考図」は、裏板材と同一面状とし、「正面図中央縦断面図」は、嵌合溝後片より化粧板材の厚み分盛り上げ、「背面図」は、折り返し片が作図されていない点が認められる。
そこで、これらの点をみると、(1)の裏板材の雌型連結部との接合態様の不一致については、大きくは、「右側面図」と「正面図中央縦断面図」との不一致とでき、立体を表す一組の図面として「右側面図」を一義的に捉えて解釈するとしても、一方で、意匠を十分表現するために、「正面図中央縦断面図」を加えたものであり、どちらの態様も成り立ち得るとも言えなくもないが、もとの出願の図面「13図」に限ってみても、本件登録意匠に係る(c)を除く、他の3図(a)(b)及び(d)が、いずれも「正面図中央縦断面図」の態様を示していて、意匠登録出願への出願の変更に際し、「正面図中央縦断面図」に限って誤って作図されたとも考えられ、さらに、特に意匠の理解を助けるものとして加えられた、壁板材を壁面に取り付けて雌雄連結部の結合状態を示した「装着状態参考図」をみると、「右側面図」と一致する。そうとすれば、裏板材の雌型連結部との接合態様は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、「右側面図」に基づいてその意匠を理解すべきであって、「正面図中央縦断面図」を誤記したものとするのが相当であり、かつ、この相違は、外観上殆ど視覚的な相違を生じさせない、単なる連結部の構造上の微細な部分についての記載不備であって、意匠の要旨に殆ど影響を及ぼさないものであることから、本件登録意匠の裏板材の雌型連結部との接合態様は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、具体的なものであるといえる。
(2)の裏板材と雌型連結部との接点位置の不一致については、上記(1)の裏板材の雌型連結部との接合態様と関連するものであり、裏板材の雌型連結部との接合態様が「右側面図」に基づいてその意匠が理解されることから、接合部の位置も、同様に「右側面図」に基づいてその意匠を理解すべきであって、「正面図中央縦断面図」の誤記であり、「背面図」は、「右側面図」の裏板材の下端にあって、嵌合溝の折り返し片と同一面状に連接して、折り返し片との境界線すら凝視しても視認しにくいもので、その形状の記載を欠落した誤記であることは明らかであり、かつ、この不一致は、外観上背面側の下端部における、殆ど視覚的な相違を生じさせない、連結部の構造上の微細な部分についての記載不備に過ぎず、意匠の要旨に殆ど影響を及ぼさないものであることから、本件登録意匠の裏板材と雌型連結部との接点位置の態様は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、具体的なものである。
(3)の裏板材の段部の位置の不一致は、段部を直視できる「右側面図」、「正面図中央縦断面図」及び「装着状態参考図」とがそれぞれ一致するものであり、「背面図」に段部の位置の誤記があることが明らかで、本件登録意匠の裏板材の段部の位置の態様は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、具体的なものである。
(4)の雌型連結部の折り返し片の態様の不一致は、裏板材が折り返し片と同一面状に連接するか、裏板材が嵌合溝の手前で鉤状に内方へ屈曲するかにもよるもので、上記(1)の裏板材の雌型連結部との接合態様と関連するものとも言え、裏板材の折り返し片の態様も、「右側面図」に基づいてその意匠を理解すべきであって、「正面図中央縦断面図」と「背面図」は、誤記であり、かつ、この不一致は、外観上背面側の端部に殆ど視覚的な相違を生じさせない、連結部の構造上の微細な部分についての記載不備に過ぎず、意匠の要旨に殆ど影響を及ぼさないものであることから、本件登録意匠の雌型連結部の折り返し片の態様は、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、具体的なものである。
そうして、これらの図が相互に一致しない点について総合しても、本件登録意匠の図面の記載は、確かに、立体を表す図面として正確性に欠けるところがあることは否めないが、(3)の裏板材の段部の位置の不一致を除いて、他の(1)の裏板材の雌型連結部との接合態様の不一致、(2)の裏板材と雌型連結部との接点位置の不一致及び(4)の雌型連結部の折り返し片の態様の不一致は、いずれも、裏板材の雌型連結部との接合態様と関連し、ひいては、いずれの相違も「正面図中央縦断面図」の明らかな誤記から生じてくるものであり、かつ、いずれの不一致も、意匠の要旨に殆ど影響を及ぼさないものであり、また、(3)の裏板材の段部の位置の相違も、「右側面図」、「正面図中央縦断面図」及び「装着状態参考図」と照らし合わせれば、「背面図」の明らかな誤記であることから、図に相互に一致しない点があったとしても、そのことから本件登録意匠が具体的でないものと認められるに至る程のものではなく、本件登録意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載を、この意匠の属する分野における通常の知識に基づいて総合的に判断すれば、一の意匠を導き出すことができるものであり、具体的なものであると認められる。そして、その形態の認定については、先に述べたとおりである。
2.もとの出願の意匠
もとの出願は、昭和62年11月21日の特許出願(昭和62年特許願第294386号〔発明の名称「サイディングボード」〕)であって、その出願の明細書及び図面の内容は、当該特許出願後の平成1年5月30日に出願公開(特開平1-137056号)された特開平1-137056号(発明の名称「サイディングボード」)(甲第2号証)の明細書及び図面の記載のとおりである。
そして、もとの出願の明細書及び図面の記載によると、図面の第1図ないし18図において、本発明に係る一実施例のほか、その他の実施例を多数表している。そのうち、本件登録意匠に係る記載については、本件登録意匠の化粧溝の個数及び位置等に照らし合わせると、図面「第13図(c)」(甲第2号証)に表された壁板材の意匠(以下、「もとの出願の意匠」という。)とするものであり、その形態は、当該公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.もとの出願の明細書及び図面中に本件登録意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されているか否かについて
ところで、請求人は、「本件登録意匠は、原出願の側面図的な「説明図」1図のみをもって意匠に出願変更したもので、『原出願の明細書・図面から明確に認識でき、かつ原出願の明細書・図面に表された意匠と同一であること』が必要であるとする特許から意匠へ出願変更する場合の要件を満たしていないものとして、この意匠への出願変更は不適法なものである」(審判請求書3頁9行目?13行目)旨、主張する。
このことは、前段の「本件登録意匠は、原出願の側面図的な「説明図」1図のみをもって意匠に出願変更したもの」を理由として、後段の「原出願の明細書・図面から明確に認識でき」るものか、又は「原出願の明細書・図面に表された意匠と同一である」ものかへと結びつくものであることから、まずここでの項では、前段の理由によって、後段の「原出願の明細書・図面から明確に認識」し得るように具体的に記載されているか検討することとする。
そこで、もとの出願の明細書及び図面の記載をみると、もとの出願の意匠を表す図面「第13図(c)」は、壁板材の断面図のみを表したものであっても、明細書の記載によれば、「発明の名称」の欄を、「サイディングボード」と記載し、「特許請求の範囲」の欄を、「横長の化粧面部に少なくとも1本以上の表面材の長手方向と平行に断面を凹状とした化粧溝を設けると共に、化粧面部の一側縁に差込縁と係合溝と固定用の延長部からなる雄型連結部を形成し、他側縁を内方に屈曲し嵌合溝を有する雌型連結部を設けた表面材と、表面材の凹状部に充填した芯材と、該芯材の裏面を被覆した裏面材とを一体に形成してなり、また前記差込縁の先端を面取り断面に形成したことを特徴とするサイディングボード。」と記載し、「発明の詳細な説明」の欄を、本発明に係るボードの〔実施例〕のあとの〔その他の実施例〕の項に、「以上説明したのは本発明に係るボードAの一実施例にすぎず、第6図から第18図に示すように形成することができる。すなわち、第6図(a)?(i)」は化粧溝3の化粧面部2における位置を異なら占めたボードA、第7図(a)?(e)は差込縁8の先端に面取りを除いて角あるいは四面状に、もしくは上面6の途中に突起を形成して防水、係合力を強化したり、化粧溝3に図示のように窪部を形成してボードAの連結部と化粧溝3とを酷似させたのボードA、第8図(a)?(e)、第9図(a)?(e)は裏面材21の装着状体を異ならしめたボードA、第10図(a)?(e)、第11図(a)?(e)は化粧溝を変形し、目地部もこれに対応する形状、あるいは異ならしめた形状としたボードA、第12図(a)?(e)、第13図(a)?(d)、第14図(a)?(f)、第15図(a)?(j)、第16図(a)?(c)、第17図(a)?(k)はその他のボードAの実施例を示す説明図であって、連結部は十分に防水性、係合力を考慮した寸法とするものである。さらに第18図は雄、雌型連結部4、13の図示する位置の少なくとも1個所にコーニング材23を埋設したものである。」と記載し、さらに、「図面の簡単な説明」の欄を、「第1図は本発明に係るサイディングボードの一実施例を示す斜視図、第2図?第4図(a)?(c)は表面材を説明する説明図、第5図は上記ボードを用いて形成した壁体の目地部の一例を示す説明図、第6図(a)?(i)?第18図はその他の実施例を示す説明図である。」と記載したものである。そして、これらの明細書及び図面の記載を参酌すれば、図面「第13図(c)」の断面図が、第1図の斜視図及び第2図?第5図の説明図によって表された本発明に係るサイディングボード(以下、「壁板材」という。)の意匠の、その他の実施例を示すための断面図であることは明らかであり、かつ、壁板材自体が、建物の外壁として使用されるものであって、一方向に連続する長尺材の長さを適宜必要に応じて切断して使用されるものであるという物品の特性を考慮すれば、図面「第13図(c)」に表されるもとの出願の意匠は、壁板材の長手方向に(第1図の斜め前後方向)連続する薄板状の長尺材の、断面を「第13図(c)」とするものであって、意匠を十分表現して、具体的な意匠を表わしているものというべきである。そうとすれば、図面「第13図(c)」の断面図に表された意匠は、その「説明図」1図によっても、本件登録意匠が十分明確に認識し得るように具体的に記載されたものとすることができる。そうして、この点について、請求人の主張は、失当である。
さらに、請求人は、弁駁書において、「『化粧溝(凹部))の形状』に関し、原特許出願(甲第2号証)の明細書では、その『第1図』?『第4図』の説明で、『上記化粧溝3は化粧片2aとθ1で交わる側面3aと化粧面部2とほぼ平行な底面3bと、化粧片2bとθ2で交わる傾斜面3cとから断面をほぼ等辺台形状に形成したものである。』(甲第2号証の2頁右上欄下から2行目?同頁左下欄2行目)としており、各化粧溝の台形を構成する左右傾斜面の角度が異なっている不等辺(非対称)の特殊形状の台形としなければならない特別の理由もなければ、それについての記載や示唆も原特許出願の明細書中には全くない。」(弁駁書2頁4行目?12行目)。「本件登録意匠では、各化粧溝(凹部)の形状は『等辺台形状』とはなっておらず、雌型連結部側の傾斜面の方が雄型連結部側の傾斜面より化粧溝内底面に向かって緩やかな傾斜となっている『非対称(不等辺)の台形』に形成されている」(弁駁書2頁14行目?17行目)。「このように、本件登録意匠の形態は、原特許出願の斜視図や明細書の記載自体からは正確に理解・把握することはできないのであるから」、「原特許出願の明細書及び図面中には本件登録意匠そのものを明確に認識できる具体的記載はないというべきである。」(弁駁書2頁19行目?23行目)旨、主張する。
しかし、請求人の主張する「化粧溝の形状」に関する「第1図」?「第4図」の説明は、「断面をほぼ等辺台形状」に形成するものであって、特に「等辺台形状」に限定したものではなく、また、他の第6図(a)?(i)には、化粧溝の位置を異ならしめた図面の中にも、詳細にみれば(f)の「非対称の台形」も含み、第10図(a)?(e)及び第11図(a)?(e)には、化粧溝を変形して種々の異なる形状のものが表されていることから、もとの出願の明細書及び図面中には、化粧溝を「等辺台形状」に限定するというよりも、化粧溝の形状を広範に解釈すべく意図したものと考えられる。ついては、もとの出願の意匠は、図面「第13図(c)」に意匠を十分表現して、具体的な意匠を表しているものであることは、すでに上述したとおりであり、もとの出願の明細書及び図面中に本件登録意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されていることに変わりはない。したがって、請求人の主張は、失当である。
以上のとおりであり、もとの出願の図面「第13図(c)」の断面図に表された意匠は、本件登録意匠が十分明確に認識し得るように具体的に記載されたものであり、もとの特許出願の明細書及び図面中に、本件登録意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されているものと認められる。
4.本件登録意匠がもとの出願の意匠と同一であるか否かについて
(1)本件登録意匠ともとの出願の意匠の対比
両意匠は、意匠に係る物品が、共に壁板材であって一致し、形態については(なお、形態について両意匠を対比するに、もとの出願の意匠の図面「第13図(c)」の断面図の向きは、本件登録意匠の右側面図に合わせて、90度右回転して、雄型連結部を上側にし、さらに、左右を反転させて、前面側〔表面側〕の化粧板材が左側にくるようにして対比する。)、主な共通点及び差異点として、以下のとおり認められる。
1)共通点
(A)全体は、正面視、左右に連続する薄板状の長尺材であって、前面側を覆う化粧板材と、その背面側を塞ぐ裏板材と、化粧板材と裏板材とで囲まれる内部に充填する芯材とで構成し、前面側に、凹凸面を形成したもので、ほぼ同形状の化粧溝を等間隔に水平状に4個所設けて、その化粧溝の形成により相対的に浮き出る化粧凸部をほぼ同形状で等間隔に水平状に5個所設け、上下端部に、それぞれ互いに他の壁板材と連接して嵌め合う凹凸部を有した連結部を形成したものである点。
各部の具体的な態様について、
(B)各化粧溝を、奥に向かって先窄まり状の略縦長倒台形状で、その奥行が壁板材の板厚に対して約1/3とする浅い窪みとした点。
(C)各化粧凸部を、前方に向かって先窄まり状の略縦長扁平倒台形状で、その奥行を壁板材の板厚に対して約1/3とする浅い盛り上がりとした点。
(D)化粧溝と化粧凸部の縦幅の比率を、約1:2とした点。
(E)雄型連結部は、右側面視、薄板状の化粧板材を、前面側の上端寄りの最上位の化粧凸部の裾部から、化粧溝の底面と同一面状とする延長線上に、上方へ垂直状に化粧溝の縦幅程度延ばし、その先端を、上方へ突出する略倒「コ」字状の、前面側上端を面取りして折り返し突出する差込凸部とし、差込凸部の後辺から繋いで、略「U」字状に折り返す係合溝を形成し、その深さを、化粧溝の縦幅の約1/2とし、さらに、係合溝の後辺をそのまま繋いで上方に延伸する垂直状の係合片を形成し、その長さを、差込凸部上端位置より化粧溝の縦幅程度とし、係合片の中央よりやや差込凸部上端位置寄りに、円弧状の小凸部を形成し、係合片の上端に、前面側へ折り曲げた細幅折り返し片を形成した点。
(F)雌型連結部は、右側面視、化粧板材の前面側を、最下位の化粧凸部の下端から上方へ略倒「コ」字状に屈曲させて窪ませた嵌合溝を形成し、その深さを、化粧溝の縦幅の約1/2とし、嵌合溝の後辺の下端に、背面側へ折り曲げた細幅折り返し片を形成した点。
(G)化粧板材の背面側を塞ぐ裏板材を、薄板状とし、右側面視、雄型連結部の係合溝を構成する後辺の上部を僅かに除く下部の垂直状部分に、裏板材の上端を接合して、雌型連結部の下方へ垂下させ、壁板材の下端よりやや上の位置で、下方に従い前方へ傾斜する段部を形成し、さらに、裏板状の下端を、雌型連結部の嵌合溝の折り返し片と同一面状に連接し、かつ、嵌合溝の後辺の上半部と接合した点。
2)差異点
(ア)各化粧凸部の縦幅について、本件登録意匠は、図面上5個所すべて同一幅で表しているのに対して、もとの出願の意匠は、最下位の化粧凸部が、他の4個所の化粧凸部よりやや狭く表している点。
なお、本件登録意匠ともとの出願の意匠の各化粧溝の形状を詳細に対比して、本件登録意匠は、各化粧溝の上辺の水平面状に対する傾斜が下辺より極僅か急とするように上下非対称としたのに対して、もとの出願の意匠は、上半部2個所の化粧溝の上下辺の傾斜は、本件登録意匠と同様の態様とするものの、下半部2個所の化粧溝の上下辺ともほぼ同傾斜とするように上下対称とした差異があるとしても、この両意匠の傾斜の差異は、詳細にみても極僅か差に過ぎず、通常の壁板材が壁面に施工された使用の状態を斜視状態から観ても、その傾斜の差を視認することは困難であり、両意匠とも、化粧溝が単に略縦長倒台形状の浅い窪みとなって等間隔に水平状に設けられる態様が視認できるだけであって、意匠の要旨に殆ど影響を及ぼさず、かつ、一般に、もとの出願である特許出願は、意匠登録出願と異なり、技術的思想内容を表すものであり、そこに記載される図面は、技術的思想、技術的事項を端的に表すのに十分な表現方法が採られるものであって、簡略化した図面を用いることも極普通に行われる表現方法であり、本件登録意匠と厳密に寸分違わない形状にしなければいけない必要もないことを考慮すれば、この差異は、差異点として取り上げる程のものとは認められない。
(2)両意匠の同一性について
上記共通点(A)ないし(G)は、殆ど意匠全体を網羅する態様であって、特に、通常の壁板材が壁面に施工された使用の状態を斜視状態から観た場合、前面側の視覚的に目立つ凹凸形状が、全面にわたってほぼ同形状の化粧溝を等間隔に水平状に4個所設けて、その化粧溝の形成により相対的に浮き出る化粧凸部をほぼ同形状で等間隔に水平状に5個所設けた態様とし、さらに具体的な態様として、各化粧溝を、略縦長倒台形状の浅い窪みとし、各化粧凸部を、略縦長扁平倒台形状の浅い盛り上がりとした態様は、両意匠に一致した意匠的な効果をもたらし、また、壁板材が機能上必然的に備えられる施工性や防水性、耐久性等で重要視される雄型連結部及び雌型連結部の態様が一致するものであり、かつ、これら前面側態様及び雌雄連結部の態様は、壁板材の特徴的な態様を表す主要な部分である。一方、差異点とする(ア)各化粧凸部の縦幅の差異について、もとの出願の意匠の最下位化粧凸部の縦幅は、他の4個所の化粧凸部の縦幅と比べても、やや狭いだけで、視覚的に殆ど視認することができない程の僅かな差に過ぎず、かつ、最下位化粧凸部と他の化粧凸部との間に化粧溝を介して化粧凸部同士が離れ、縦幅を比較し難く、縦幅の差異を正確に認識することは困難であり、もとの出願の意匠の最下位化粧凸部の縦幅も、他の4個所の化粧凸部の態様の延長上に包含されて、化粧凸部がほぼ同形状で等間隔に水平状に設けられる構成の範囲内での僅かな差にとどまり、結局、両意匠の化粧凸部がもたらす意匠的な効果に差は無いものである。加えて、壁板材が壁面に施工された状態として観ても、化粧凸部の縦幅の差異によって、もとの出願の意匠の最下位の化粧凸部が、他の4個所の化粧凸部と比べて格別目立つ程のものではなく、むしろ、化粧凸部をほぼ同形状で等間隔に水平状に設けられる態様の中に埋没して、本件登録意匠と殆ど意匠的な効果に差をもたらさないものである。
加えて、化粧凸部の縦幅は、化粧溝の形成によって相対的に定まってくるものとも言え、もとの出願の図面の記載によれば、第6図(a)?(i)は、「化粧溝3の化粧面部2における位置を異ならしめたボードA」を表し、第8図(a)?(e)、第9図(a)?(e)は、「裏面材21の装着状態を異ならしめたボードA」を表しながら、第8図又は第9図中のそれぞれ各図の化粧溝の位置は異なり、第10図(a)?(e)、第11図(a)?(e)も、「化粧溝3を変形し、目地部もこれに対応する形状、あるいは異ならしめた形状としたボードA」を表しながら、第10図又は第11図中のそれぞれの図の化粧溝の位置は異なるもので、化粧溝の位置を種々変化させている態様が表されている。第13図(a)?(d)中にあっても、最下位の化粧凸部も種々異なっている。そうとすれば、両意匠の最下位の化粧凸部の縦幅の差も、化粧溝の位置によって生じる極僅かな差に過ぎない。
したがって、両意匠の化粧凸部の縦幅の差異は、もとの出願の意匠の縦幅も、化粧凸部がほぼ同形状で等間隔に水平状に設けられる構成の範囲内での僅かな差にとどまり、もとの出願の意匠に本件登録意匠と実質的に同一の意匠が表されているものというべきである。
5.小まとめ
以上のとおり、特許出願から意匠登録出願への出願の変更が認められか否かについては、もとの出願の明細書及び図面中に本件登録意匠が明確に認識し得るように具体的に記載されたものであり、かつ、本件登録意匠ともとの出願の意匠と実質的に同一の意匠であることから、特許出願から意匠登録出願への出願の変更は適法なものと認められる。
[3]結論
以上のとおりであって、本件登録意匠は、特許出願から意匠登録出願への出願の変更が認められ、変更による新たな意匠登録出願が、もとの特許出願の時にしたものとみなされるものであって、もとの特許出願後に出願公開された特開平1-137056号公報に掲載された意匠に類似するものとはできず、請求人の提出した証拠及び主張によっては、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項の規定に違反して登録されたものとして、同法第48条第1項第1号により本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2009-06-10 
結審通知日 2009-06-15 
審決日 2009-06-29 
出願番号 意願平7-31178 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (L6)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 藤井 俊二山崎 裕造井上 博之 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 市村 節子
杉山 太一
登録日 1997-02-10 
登録番号 意匠登録第979915号(D979915) 
代理人 南部 さと子 
代理人 水野 尚 
代理人 永芳 太郎 
代理人 浅賀 一樹 
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