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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 D7
管理番号 1222907 
審判番号 不服2010-86
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-05 
確定日 2010-08-23 
意匠に係る物品 いす 
事件の表示 意願2008- 25950「いす」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする平成20年(2008年)10月9日の意匠登録出願(意匠に係る物品「いす」)であり、その意匠は、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下、意匠登録を受けようとする部分(背もたれ部)の意匠を「本願意匠」という。別紙第1参照。)。
これに対して、原審は、拒絶の理由について、この意匠登録出願の意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、日本国特許庁発行(平成17年10月24日)の意匠公報記載の意匠登録第1254042号(意匠に係る物品、「いす」。)の意匠(類否判断の対象は、本願意匠に対応する部分であり、以下、当該部分を「引用意匠」という。別紙第2参照。)に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、同条の規定により意匠登録をすることができないものであるとしたものである。
そこで、原審が拒絶の理由において本願意匠が類似するとした引用意匠との類否判断について検討する。
両意匠の意匠に係る物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状」という。)について、両意匠の主な共通点である、全体をやや縦長の略隅丸矩形板体として、平面視、板体の中央部が後方へ僅かに凹む緩やかな弧状とし、側面視、上下方向の中央よりやや下方寄りを弧状にして、板体を略「く」の字状に屈曲した形状は、矩形状の板体も、前面が湾曲面に凹む形状も、腰が当たる部分の弧状の屈曲部も、いずれも身体にかかる負担等の人間工学を配慮したデザインに係り、この種椅子の分野において極普通に見られる形状(例えば、意匠登録第1167484号「椅子」の意匠、意匠登録第1295115号「椅子」の意匠等参照。)であり、需要者(使用者)の格別の注意を惹くものではなく、むしろ、より具体的な形状に需要者の注意が惹くものというべきである。
そして、具体的形状における主な相違点として、(A)正面視形状につき、本願意匠は、屈曲部を最大横幅とし、それぞれ上下方向に従い左右両辺が内側方向へ僅かに傾斜し、それぞれ横幅を漸次幅狭として、全体を下膨れとしたのに対して、引用意匠は、上辺を最大横幅とし、下方向に従い左右両辺が内側方向へ僅かに傾斜して横幅を漸次幅狭としながら、中段から徐々に左右両辺の内側への曲がりを大きくした緩やかな弧状とし、全体を下窄まりとし、(B)上縁部につき、本願意匠は、垂直方向に対して約60度、背もたれ部の傾斜に対して約50度後方へと屈曲させ、その先端が、平面視、板体の弧状の凹みと略同心円状に外方向へやや幅を持たせて鍔状に張り出させ、その左右両端を小さな略円弧状として左右両辺へと繋げて、上縁部に全体が略三日月状の屈曲片を形成したのに対して、引用意匠は、上縁部に屈曲部が無く、中央縦端面形状において、上縁の前面が、前方へ極僅かに膨らむ弧状にして垂直方向に対して約40度傾斜する面取りを施したものとの相違が認められる。これら相違点の(A)正面視形状の相違は、背中を支えるシンプルな板体の中にあって、全体が下膨れと下窄まりとでは、必ずしも共通した構成とは言えず、本願意匠の最大横幅が上下方向の中央よりやや下方寄りの位置を屈曲部として、腰の当接部分を広く当てることによって、引用意匠より重心が低く、安定した印象を需要者に与えるものであり、また、(B)上縁部形状の相違は、視覚的に目立ち、手で直接触れる機会の多い上縁部で、本願意匠の屈曲片が、ある程度の幅を持ち、かつ、その屈曲角度も大きくとって後方へと屈曲し、背もたれ部の重要な構成要素を成すものとなり、引用意匠の屈曲部の無い板体の上縁を、単に面取りしたものとでは、同じ構成の中に到底含めることはできず、かつ、本願意匠に係る(A)及び(B)の合わせ持った形状は、従来見られない特徴的なものであって、需要者の格別の注意を惹くものであるから、これら相違点の相俟って生じる形状を総合してみると、既に共通点を凌駕して、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものである。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が同一としても、形状において、相違点が共通点を凌駕し、意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しないものである。
以上のとおりであり、両意匠は類似しないものであるから、原審のした拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-08-06 
出願番号 意願2008-25950(D2008-25950) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (D7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠松尾 鷹久 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
市村 節子
登録日 2010-09-10 
登録番号 意匠登録第1398630号(D1398630) 

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