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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K6
管理番号 1222913 
審判番号 不服2010-7072
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-05 
確定日 2010-09-09 
意匠に係る物品 ピペットチップ 
事件の表示 意願2008- 12949「ピペットチップ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願の意匠
本願は,平成20年5月23日の意匠登録出願であり,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「ピペットチップ」とし,形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。
すなわち,全体が円筒部(正面視上部),中間部,先端部からなり,中間部と先端部は円錐台形状からなり,先端になるにつれて段階的に,かつ,直線的に先細りに形成されており,円筒部の後端の周側面部には円筒部の肉厚程度の幅で同じ高さの凸状のフィンが6本等間隔に形成されており,円筒部:中間部:先端部の長さの比率は,略2.9:1:1.5であり,また,全長:フィンの長さは略6.1:1となっているものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定において,本願意匠は,「本願出願前に公然知られたものと認められるチップの意匠(意匠1)の外周側面端部に,本願出願前に公然知られたものと認められる凸状の縦筋(意匠2)を形成したに過ぎないものですので,容易に創作できたものと認められます。」とし,意匠1として,特許許庁発行の公開特許公報記載,特開2006-115781の図3のチップの意匠を,意匠2として,特許庁発行の公開特許公報記載,特開2002-263451の図1のチップの凸状の縦筋部を引用し,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当する旨の,拒絶の理由を通知した。

3.請求人の主張
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
本願意匠に係るピペットチップは,ピペット装置のピペット先端部に装着される嵌合部にフィンを均等に付けた形状をなし,このフィンの長さがピペットの全体長に対して略10分の1程度の長さに形成すると共に,フィンを設けた嵌合部の外周側面端部の肉厚はフィンを設けない位置の肉厚と同等の肉厚に形成することで,フィンを設けた外周側面端部の肉厚を均等に薄くして伸びやすくしたため,ピペット先端部に装着する際の圧入した時にフィットするようになっておりリークしにくい形状になっている。
これに対して,意匠1の態様は,ノズルに装着する部位の外周側面端部にフィンを均等に設けると共に,このフィンを取り付けた外周側面端部に円周上にリング状の肉厚部分を設けた態様をなしている。また,意匠2の態様は,ノズルに装着する部位の外周側面端部にフィンを均等に設けると共に,このフィンの形状がピペットの全長に対して略2分の1程度の長さに形成されている。
したがって,本願意匠のフィンの部分の肉厚を無くした特徴的な形態と,意匠1及び意匠2の形態とでは,顕著に相違し,本願意匠と意匠1及び意匠2との間に容易に創作できることが成立する余地は全くない。

4.当審の判断
そこで請求人の主張を踏まえ,本願意匠が創作容易か否かについてさらに検討する。
(1)引用意匠
引用意匠1は,平成18年5月11日に特許庁が発行した公開特許公報の特開2006-115781号公報の図3に記載の意匠であって,その形態は,同公報に示すとおりとしたものである(別紙第2参照)。
引用意匠2は,平成14年9月17日に特許庁が発行した公開特許公報の特開2002-263451号公報の図1に記載の意匠であって,その形態は,同公報に示すとおりとしたものである(別紙第3参照)。
(2)創作の容易性の判断
本願意匠の創作が容易と判断するに際して,その基本となる形状を有するとする引用意匠1は,本願意匠のように,全体が円筒部,中間部,先端部からなり,中間部と先端部は円錐台形状からなり,先端になるにつれて段階的に,かつ,直線的に先細りに形成されており,円筒部の後端の周側面部には円筒部の肉厚程度の幅の直線状フィンが形成されているが,円筒部:中間部:先端部の長さの比率は,略9.1:1:2全体の比率であり,円筒部が本願意匠に比べてかなり長いものである。本願意匠の属する分野においては,ピペットチップの全体形状を,先端になるにしたがって,先細りになるよう形成することは普通であるが,円筒部分の長さを引用意匠に比べて短くすることにより,引用意匠とは異なる全体形状とした点は,創作レベルが高いとはいえないものの,一定程度の創作が行われたものといわざるを得ない。
そして,引用意匠1の形状を基本として,その後端部の周側面に形成されたフィンを有するとする引用意匠2のフィンは,フィンの長さが全体の略3分の1であり,後端部の高さがほとんど無く,円筒部の先端寄り(下方)ほどフィンの高さが高く,また,フィンの幅と円筒部の肉厚との関係は不明である。そうすると,引用意匠2におけるフィンを,引用意匠1の後端部に形成したとしても,フィンの形状が異なる上に,ピペットチップ全体におけフィンの比率も異なることになる。このことは,フィンの形状や長さの比率に関しても一定の創作が行われたものといわざるを得ないことを示している。
以上のとおり,本願意匠は,引用意匠1の後端部の外周側面端部に,引用意匠2の凸状のフィンを形成したに過ぎないものということはできず,また,引用意匠1および引用意匠2を参考にしたとしても,一定の創作があったというほかなく,容易に創作できたものであるということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。また,他に本願の登録を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-08-30 
出願番号 意願2008-12949(D2008-12949) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 茂雄 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-10-01 
登録番号 意匠登録第1400378号(D1400378) 
代理人 川村 恭子 
代理人 佐々木 功 

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