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審決分類 審判 判定  同一・類似 属する(申立成立) B9
管理番号 1228234 
判定請求番号 判定2010-600033
総通号数 133 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2011-01-28 
種別 判定 
判定請求日 2010-06-15 
確定日 2010-11-26 
意匠に係る物品 バックル 
事件の表示 上記当事者間の登録第1125816号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠は、登録第1125816号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、「イ号意匠は、登録第1125816号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲に属する、との判定を求める。」と申立て、その理由として判定請求書に記載のとおりの主張をし、証拠方法として、イ号意匠の写真、資料1(先行登録意匠一覧表)及び甲第1号証ないし甲4号証を提出した。

第2.被請求人の答弁及び理由
当審では、被請求人に期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは期間内に答弁がなされなかった。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成10年3月25日に意匠登録出願をし、平成13年9月21日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1125816号の意匠であり、願書の記載によれば意匠に係る物品を「バックル」とし、その形態は願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。
2.イ号意匠
本件判定請求の対象とされるイ号意匠は、判定請求書においてイ号意匠として示されたものであり、その形態を当該写真に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。
3.本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると、両意匠は、バッグ等に使用されるバックルと認められるものであるから、意匠に係る物品が一致し、その形態については、主として以下の共通点と差異点がある。
<共通点>
すなわち、基本的構成態様において、(A)全体は、雄体と雌体が嵌着して、正面視、縦方向で略1:3の比率で構成された縦長の概略長方形板状のものとし、雄体は上部にベルト挿通部を有し、下部に中央支柱と左右一対のばね足を有したものであって、雌体は下部にベルト挿通部を有し、その上部は横断面が横長略長方形状の扁平な筒状とし、筒状部の左右両側に対称のくびれ部を有するものであり、雄体と雌体とを嵌着した状態において、くびれ部から雄体のばね足が露出している点。雄体と雌体とが嵌着した状態における各部の具体的態様において、(B)くびれ部より上方の部分(雄体ベルト挿通部及び雌体筒状部上部)は、正面視で、左右側辺をくびれ部上端の角部から立ち上がった緩やかな凸弧状とし、両角部を大きな円弧状として、上辺も左右辺となだらかに連続する緩やかな凸弧状とし、全体として、くびれ部との境界部分のみが角張った楕円に近い略隅丸長方形とするものであって、雄体と雌体とは左右両側において略面一状をなして嵌着し、ベルト挿入口の略中央に横桟を配し、雌体の上辺は、正面視で、雄体の上辺とほぼ同様の曲率の緩やかな弧状線を描いている点。(C)雌体のくびれ部は、左右から深く凹弧状にえぐり、その凹面にばね足が露出する窓を形成し、この窓からばね足の外縁が凸弧状に表れるもので、くびれ部の最もくびれた部分の位置は雌体全体の高さの略中央で、横幅が雌体最大幅の半分弱である点。(D)雌体のベルト挿通部は、くびれ部からS字状に反転させて続く左右側辺のラインの下方部分によって、左右対称の凸弧状に丸く形成され、そのまま緩やかな凸弧状に湾曲した下辺に連続して、ベルト挿通部全体を横長略楕円形状に形成したもので、ベルト挿通口は上方が円弧状となった細い略三日月状としている点。(E)雌体は、背面側を平坦面とし、正面側は、上部中央を、平面視、やや肉厚として、ここを頂点に正面側の上半部をなだらかな山状に隆起させ、下方のベルト挿通部付近で背面側に急傾斜させている点。
<差異点>
各部の具体的態様において、(ア)雄体のベルト挿通部の横桟について、本件登録意匠は、ベルト挿通部両側から正面側に弓状に張り出しているのに対し、イ号意匠はベルト挿通部両側の枠部からやや凹んだ位置に平坦面状に形成している点。(イ)雌体の正面側の隆起部について、イ号意匠は、不明確ながらも隆起部の周囲に放物線状の山裾部を有していると認められるのに対し、本件登録意匠は対応する山裾部が認められない点。(ウ)くびれ部の幅について、本件登録意匠は、雌体最大幅の約45%としたのに対し、イ号意匠は、約50%弱で横幅がやや広い点。(エ)雌体のベルト挿通部の下辺部について、本件登録意匠は扁平な薄板状のものとして、左右の凸弧部と一体化しているのに対し、イ号意匠はやや厚みのある板状とし、ベルト挿入口の下辺側に低い台形状凸部を形成し、背面側に横長略矩形の凹みを二個形成したものとして、全体が背面側にわずかに迫り出す態様で左右の凸弧部と一体化している点。(オ)イ号意匠は、雄体ベルト挿通部の横桟の正面側に横長長円形の浅い凹みを二個形成し、その背面と雄体ベルト挿通部の上辺とばね足の先端部の背面側にも凹みを形成しているのに対し、本件登録意匠は凹みを形成していない点。(カ)露出するばね足の上端が、本件登録意匠はくびれ部の上端からわずかに内寄りであるのに対し、イ号意匠はくびれ部の上端である点。
(2)両意匠の類否判断
そこで、これらの共通点及び差異点を総合し、両意匠の類否を意匠全体として検討し、判断する。
まず、共通点(A)については、両意匠の形態全体にかかわる骨格的な態様をなすものであるが、この種の物品分野においては、全体が雄体と雌体より構成された概略長方形板状のものとし、上下端にベルト挿通部を有し、雌体の筒状部の両側に左右対称のくびれ部を設けて、そのくびれ部から雄体のばね足先端が露出した態様は、このタイプのバックルとして周知の態様と認められるものであるから(例えば、意匠登録923359号、意匠登録第1003683号、同号類似第1号、同号類似第2号等)、雄体が雌体の1/3程度まで短い長さの構成比率とした共通点を考慮しても、この共通点(A)が類否判断に与える影響は、それのみとしてはさほど大きなものではない。
しかし、具体的構成態様における共通点(B)の楕円に近い略隅丸長方形は、その下方に形成されたくびれ部によって、バックル全体の約上半分を占める大きさのものとして構成され、更にその形状は、雄体と雌体の左右両側が略面一状に嵌着することにより、雄体のベルト挿通部と雌体の筒状部との形態的な一体感がより強調されることとなり、全体として一塊の小石状の視覚的なまとまりを強く印象づけるものであるから、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
更に、共通点(B)の下半分を構成する部分から、共通点(C)の深く凹弧状にえぐられたくびれ部を経て、共通点(D)の略横長楕円形のベルト挿通部へと至る雌体の輪郭形状は、共通点(E)の雌体の正面側が山状に隆起している形状と相俟って、看者に対して立体感に富んだ生物的な印象を与えるものとなっており、本件登録意匠の備える極めて独自性の高い部分と認められるものである。そして、当該輪郭形状は、形態全体の約3/4に達する部分に係る共通点であり、形態的特徴をなすところのものとして看者の注意を強く惹くものと認められる。したがって、この共通点(B)の下半部と共通点(C)及び(D)が一体となって表す形状は、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
また、共通点(E)の雌体正面側がベルト挿通部付近で背面側に急傾斜している点も、これほどにまで顕著に傾斜させた態様は他の先行意匠にはそう多くは見られず、当該傾斜は雌体のベルト挿通部を構成する、上記共通点(D)の左右対称にS字状のラインを描く部位に施されていることにより、当該部位が二股の枝状となって背面側に向かって伸びていくような印象をもたらしているから、当該態様が類否判断に及ぼす影響も過小評価すべきものではない。
そして、これら各部の具体的態様における共通点は、バックルのほぼ全域に渡る共通点であって、特に共通点(C)の雌体の凹弧状にえぐられたくびれ部は、その上方の共通点(B)の楕円に近い略隅丸長方形部と、その下方の共通点(D)の横長楕円形部を強調する効果も有し、共通点(A)の骨格的な態様が共通していることと相俟って両意匠に強い共通感をもたらすものとなっている。
他方、差異点について検討すると、差異点(ア)の雄体のベルト挿通部の横桟の態様については、本件登録意匠の張り出しの度合いはわずかで、差異として目立たず、しかも、イ号意匠は、ベルト挿通部の左右側辺から一段凹んだ位置に平坦面状に形成されたものであるが、当該態様は、本件登録意匠の出願前より周知であるから(例えば、意匠登録第881119号、同号類似第1号。)、さほど目立たず、この差異が類否判断に与える影響は微弱である。
次に、差異点(イ)は、イ号意匠の写真によれば当該部分を注視した際に初めてそれと視認できる程度のものであって、雌体の中央上部を山状に隆起させたとする、共通点(E)の両意匠に共通する態様の中で見られるごくわずかな差異でしかなく、類否判断に与える影響はごくわずかである。
そして、差異点(ウ)のくびれ部の幅については、どちらも雌体の最大幅の約半分を超えるまでに狭幅とした点では共通し、その差は看者の注意をほとんど惹かず、共通点(C)の深く凹弧状にえぐられた印象を変更するには至らず、類否判断に与える影響はほとんどないものといわざるを得ない。
また、差異点(エ)のベルト挿通部の下辺部の態様についても、共通点(B)ないし(E)の極めて特徴のある共通点の中で見られる差異であることから、差異としてさほど目立たず、しかも、板厚の差異は、どちらの厚みとしたものも、この種の物品において既に公然知られており(例えば、本件登録意匠と同様な扁平な板状としたものについては意匠登録1088613号、同号類似第1号等、イ号意匠と同様な厚みのある板状としたものについては意匠登録第748494号、意匠登録第814389号等。)、イ号意匠が背面側にせり出す態様で一体化し、ベルト挿入口の下辺側に台形状凸部を有している点についても、既にありふれた態様ないしは局部的な差異と認められるものであり、看者の注意はほとんど惹かず、背面側に形成された二個の凹みも、後記差異点(オ)の凹みと同様に、形態上の特徴として重要視できず、類似判断に与える影響はいずれも微弱なものというほかない。
そして、差異点(オ)はいずれも局所的な差異であり、イ号意匠の背面側における雄体ベルト挿通部の上辺及び横桟とばね足の先端部に形成された凹みは、常套的に行われる、いわゆる「肉抜き」処理を施したまでのものと認められるから、特段の看者の注意は惹かず、この差異が類似判断に与える影響は微弱である。
更に、差異点(カ)のばね足の位置も、雌体の筒状部が左右対称の円弧状に大きくくびれた位置に形成されている点においては異なるものではないから、わずかな位置のずれととらえられる範囲のものでしかなく、この差異が類否判断に与える影響も微弱である。
以上のとおりであって、本件登録意匠とイ号意匠は、意匠に係る物品が一致し、形態についても、差異点(ア)ないし差異点(カ)は、いずれも類否判断に及ぼす影響が微弱であり、これら差異点を総合し相俟った視覚的効果を考慮しても、共通点(A)ないし(E)がもたらす視覚的効果を凌駕して両意匠に別異の感を生じさせるに至っているとすることができないから、イ号意匠は、本件登録意匠に類似しているというほかない。
4.結び
したがって、イ号意匠は、本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する。
よって、結論の通り判定する。
別掲
判定日 2010-11-17 
出願番号 意願平10-8089 
審決分類 D 1 2・ 1- YA (B9)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川崎 芳孝清野 貴雄 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
市村 節子
登録日 2001-09-21 
登録番号 意匠登録第1125816号(D1125816) 
代理人 川越 弘 
代理人 松原 美代子 

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