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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1231518 |
審判番号 | 不服2010-15228 |
総通号数 | 135 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2011-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-08 |
確定日 | 2011-01-17 |
意匠に係る物品 | 医療用注入器 |
事件の表示 | 意願2009- 8246「医療用注入器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は、本意匠を意匠登録出願2009-8243号とする、平成21年4月10日(パリ条約による優先権主張2008年10月11日 域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠))の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「医療用注入器」とし、その形態を願書及び願書添付の図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。 2.引用意匠 原査定において、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するとして、拒絶の理由に引用された意匠(以下、「引用意匠」という。)は、特許庁発行の意匠公報記載、意匠登録第1178092号「キャップ付き注射筒」の意匠であって、その形態は、同公報に表されたとおりのものである(別紙第2参照)。 3.両意匠の対比 両意匠を対比すると、いずれも所定量の薬液を注入する医療用の注入器に係るものであり、意匠に係る物品が共通し、形態については主として以下の共通点及び差異点が認められる。 なお、両意匠を対比するため、引用意匠の「正面図」を左に90度回転させ、本願意匠の図面の向きに合わせて以下それぞれ形態を認定する。 (1)共通点 (A)全体について、中央部が膨らんだ細長略円筒状のペン形状で、注入器本体とクリップ付きのキャップ部とから成り、注入器本体は、遠位側から、キャップ部を外した際に表れる円筒状薬液保持部、太円筒状グリップ部、複数の小リブ付きの短円筒状ダイヤル部、及び近位側端部の短円筒状ボタン部による構成としている点、(B)薬液保持部について、先端部を一回り径の小さな短円筒状部とする略2段構成とする点、(C)グリップ部について、略平行四辺形状の表示窓を有し、その表示窓部を囲み、キャップ部方向を先細りとする砲弾状の曲線模様を有する点、(D)キャップ部と注入器本体との嵌合部について、クリップを有する側に、キャップ部側を凹状、本体側を凸状とするU字状の嵌めあわせ部を有する点、において共通する。 (2)差異点 (a)全体について、本願意匠は、背面側に、リブ付き短円筒状ダイヤル部の近位側からキャップ部先端にかけて、表示窓部を囲む砲弾状曲線模様を挟み、曲線模様を2本、上下対称状に、キャップ部先端へ向けて曲線間を狭めるように設け、その模様は、左側面側のキャップ部先端面において、2本の平行模様として表れ、正面側のクリップ部とつながる態様としているが、引用意匠にはそのような曲線模様は無い点、(b)クリップ部について、背面側から回り込む曲線模様部が延伸して一体となって設けられている本願意匠のクリップ部は、正面視においては、同幅で先端部を緩やかな弧状とし、平面視においては、中央部を頂部とする略弓状に湾曲した態様としているのに対し、引用意匠のクリップ部は、キャップ部先端面中央部を根元とし、直角状に設けられ、正面視においては、先端部を先細りとする砲弾状とし、平面視においては、キャップ部と平行とする平板状の態様とする点、(c)キャップ部先端面について、本願意匠は、角部を落とし、中央部を僅かに膨出させた丸みのある態様としているのに対し、引用意匠は、瓦状に膨らみ、角張った態様としている点、(d)キャップ部と注入器本体との嵌合部について、本願意匠は、全体を直線状に構成し、正面側と背面側の中央部に本体側からキャップ部側へ向けてU字状の嵌めあわせ部を設けているのに対し、引用意匠は、全体を、正面側と背面側についてはキャップ部側へ、平面側と底面側については本体側へ膨出する波状とし、クリップ部と表示窓部がある背面側のみキャップ部側へ向けてU字状の嵌めあわせ部を設けている点、(e)表示窓部について、本願意匠は、クリップを有さない背面側に設け、2箇所に目盛りあわせのための凸部及び矢印表示を有するのに対し、引用意匠は、クリップを有する正面側とし、凸部は1箇所で、矢印表示は有さない点、また、表示窓部を囲む砲弾状曲線模様について、本願意匠は、リブ付きの短円筒状ダイヤル部と表示窓部の間からはじまっているが、引用意匠は、リブ付き短円筒状ダイヤル部の近位側からはじまっている点、(f)リブ付き短円筒状ダイヤル部について、本願意匠は、その全周面に、砲弾状のリブを複数設けているのに対し、引用意匠は、表示窓部を囲む砲弾状曲線模様内を除く周面に、略楕円形状のリブを複数設けている点、(g)表示窓部の裏側について、本願意匠は、キャップ部方向を先細りとする小さな砲弾状の曲線模様を有するのに対し、引用意匠は、小さな隅丸長方形模様としている点、(h)色彩について、本願意匠は、近位側端部の短円筒状ボタン部、リブ付き短円筒状ダイヤル部の近位側からキャップ部先端にわたる一連の曲線模様の内側、クリップ部、及び表示窓部の裏側の小さな砲弾状曲線模様の内側を、明るいトーンによる銀色調とし、表示窓部を囲む砲弾状曲線模様の内側を黒色、それ以外をトーンを落とした低明度の銀色調としているのに対し、引用意匠は、線図によるもので、色彩を有さない点、において差異が認められる。 4.類否判断 そこで検討するに、共通点の態様は、この種ペン形状の注入器の分野において、従来から見受けられる態様であり、これらの点のみをもって両意匠の類否判断を左右する共通点ということはできない。 これに対して、前記各差異点は、いずれも両意匠に異なる視覚的効果を生じさせており、看者の注意を強く惹くもので、その差異は、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。 とりわけ、(a)における、背面側のリブ付き短円筒状ダイヤル部からはじまり、キャップ部先端面、そして正面側のクリップへとつながる一連の曲線模様の態様は、本願意匠の特徴を決定付けており、このような態様を有さない引用意匠とは視覚に訴える印象を大きく異なるものとしている。また、その他の差異点については、それらのみではいずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいが、上記差異点(a)に係る態様と相俟って、意匠の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、両意匠の共通の特徴による視覚的効果を圧するものであり、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。 以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が共通するものであるが、その形態において、差異点が共通点を凌駕し、意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから、類似しないものである。 5.むすび したがって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するものではないから、原審の拒絶理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2010-12-17 |
出願番号 | 意願2009-8246(D2009-8246) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 山田 繁和 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
樋田 敏恵 北代 真一 |
登録日 | 2011-02-10 |
登録番号 | 意匠登録第1409439号(D1409439) |
代理人 | 結田 純次 |
代理人 | 竹林 則幸 |