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審決分類 審判    D3
管理番号 1233218 
審判番号 無効2010-880001
総通号数 136 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-04-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-17 
確定日 2011-02-16 
意匠に係る物品 道路灯 
事件の表示 上記当事者間の登録第1129314号「道路灯」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1129314号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
平成11年11月 5日 意匠登録出願(意願平11-30780号)
平成12年10月24日 拒絶査定(引用意匠;電波新聞所載の道路灯「P REA-road」)
平成12年12月 6日 審判請求
平成13年 9月13日 審決
平成13年10月26日 設定の登録(意匠登録第1129314号)
平成22年 2月28日 本件審判請求(請求人、甲第1?第19号証添付 )
平成22年 4月 5日 手続補正書提出(請求人)
平成22年 5月21日 答弁書(被請求人)
平成22年 8月10日 審理事項通知書
平成22年 8月25日 口頭審理陳述要領書提出(請求人、甲第20?第 24号証添付)
平成22年 9月 2日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
平成22年 9月10日 口頭審理
平成22年 9月30日 審尋
平成22年10月14日 回答書提出(請求人、甲第25,26号証添付)
平成22年11月10日 回答書提出(被請求人、乙第1?第3号証添付)

第2 請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第26号証を提出した。

1.登録無効の理由の要点
意匠登録第1129314号の登録は、創作した者でない者であって意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号に該当し、無効とすべきである。

2.本件意匠登録を無効とすべき理由
請求人(小谷正澄)の主張を要約すると以下のとおりである。
(1)意匠登録第1129314号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)の意匠権者である被請求人(星和電機株式会社)と請求人を代表者とするMKデザインは、平成11年4月1日、契約期間を1年間とする業務委託契約を締結した(甲第1号証)。
(2)請求人は、平成11年7月下旬、被請求人会社社員の田邊部長から道路灯のデザインをやらないかという打診を受けた後、被請求人会社会長及び担当社員と道路灯の開発についての打ち合わせをし、その際に、先行する東芝「PREA-road」と岩崎「PAZU」の道路灯のカタログのコピーの提供を受けた(甲第10、11号証)。
(3)請求人は道路灯のデザイン製作を受託後、平成11年8月2日から道路灯のデザイン製作に着手した。そして、道路灯の最初のCGデザインスケッチ図として、甲第24号証の「A-1」「A-2」「A-3」「A-4」「A-5」の図を同月8日に完成し、そのデータを同月9日に被請求人会社の照明部門に提供した。
(4)請求人が提供したCGデザインスケッチ図に対し、被請求人会社社員の町田は他社製品との類似性を指摘した。
(5)請求人はその後もデザイン製作を進め、甲第24号証の符号「B」が付されたCGデザインスケッチ図を同月12日に完成し、甲第24号証の符号「C」が付されたCGデザインスケッチ図を同月17日に完成し、符号「D」が付されたCGデザインスケッチ図を同月20日に完成し、これらを翌週23日に被請求人会社の照明部門に提供した。符号「C」が付された一連のCGデザインスケッチ図が、本件において甲第14号証として提出したデザインスケッチ図であり、その形状は被請求人が意匠登録を受けた本件登録意匠の形状と同じである。
(6)その後、同月30日に被請求人からカタログ用の内部構造図の作成依頼が入り(甲第12、13号証)、CGによる内部構造図を作成した。この内部構造図は被請求人が作成した図面に基づいて作図したものであるが、本件登録意匠は道路灯の外観に関する創作であるので本件登録意匠の創作とは関係が無く、請求人が本件登録意匠を創作したことに変わりはない。
(7)上述の証拠方法として以下を提出する。
・甲第1号証 星和電機との平成11年4月の契約書
・甲第2号証 星和電機が小谷正澄を創作者とした意匠公報
・甲第3号証 小谷正澄が申請した著作権登録証
・甲第4号証 星和電機の意匠登録第1129314号の意匠公

・甲第5号証 星和電機からの1回目のメールによる回答書
・甲第6号証 星和電機からの2回目の郵送による回答書
・甲第7号証 小谷正澄代理人弁理士による申出書
・甲第8号証 星和電機代理人弁理士からの回答書
・甲第9号証 小谷正澄代理人弁理士による再申出書
・甲第10号証 星和電機が提供した東芝カタログ
・甲第11号証 星和電機が提供した岩崎カタログ
・甲第12号証 小谷正澄の平成11年8月勤務表
・甲第13号証 星和電機の平成11年度の業務管理表
・甲第14号証 小谷正澄が最初に創作したCGによるデザインス
ケッチ図
・甲第15号証 スケッチ画を保存したCD-R
・甲第16号証 カタログ製作までのデータを保存したCD-R
・甲第17号証 星和電機の初版カタログ
・甲第18号証 星和電機の2版カタログ
・甲第19号証 平成12年度業務委託契約書(参考)
・甲第20号証 平成10年(51期)業務管理表
・甲第21号証 平成12年(53期)業務管理表
・甲第22号証 特許、意匠登録願一式
・甲第23号証 打ち合わせ議事録一式
・甲第24号証 MOディスクのデータ
・甲第25号証 2001年(54期)勤務表
・甲第26号証 2001年(54期)勤務管理表
(8)なお、甲第24号証の各意匠は、請求人がMOディスクに記録し、保管しているデータをプリントアウトしたもので、甲第15号証はこのMOディスクをコピーしたCD-Rである。甲第15号証のCD-Rの各図面及びその記録された日付から甲第14号証の意匠、及び甲第24号証の各意匠が請求人によって創作されたことは明らかである。
(9)よって、本件登録意匠は請求人が創作したものであり、その登録は、意匠登録を受ける権利を承継しないもののした意匠登録出願に対してされたもので無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁及び理由
被請求人は「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。

1.請求人が提出した証拠方法のうち、甲第3、7、12、13号証は不知、甲第14号証ないし甲第16号証及び甲第24号証(最初のデザイン図が甲第24号証の「A-1」「A-2」「A-3」「A-4」「A-5」であったこと)は否認する。

2.請求人は被請求人と取り交わした業務委託契約に基づき本件登録意匠のデザイン製作に関与したものであって、請求人は創作者ではない。委託業務の内容は「業務委託契約書」(甲第1号証)の第3条に記載のとおり、「製品全般からカタログ編集に関するデザイン関係全般の業務及び会社が指示する関連業務」である。そして第4条に記載のとおり、この委託業務には当然のことながら被請求人から請求人に委託料が支払われている。このような中、本件登録意匠の最終形は、被請求人の社員である複数の設計担当者の検討過程から生まれたもので、創作者は本件登録意匠の開発に主に携わったものがなっている(甲第4、6、8号証)。

3.以上のとおりであって、請求人は創作者ではなく、単に本件登録意匠のデザイン製作に関与した者の一人に過ぎない。したがって、本件登録意匠は被請求人によって正当に意匠登録出願されたものであり、冒認出願されたものではない。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、平成11年11月5日の意匠登録出願に係り、平成13年10月26日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1129314号の意匠であり、願書の記載よれば、出願人を星和電機株式会社とし、創作者を中野秀司とし、意匠に係る物品を「道路灯」とし、その形態を願書及び添付図面に記載のとおりとするものである(別紙第1参照)。

2.請求人は本件登録意匠が冒認出願に係るものであると主張するので以下検討する。
まず、前提となる事実として、請求人及び被請求人の主張及び提出された全証拠によって以下を認めることができる。
(1)被請求人(星和電機株式会社)と請求人(小谷正澄)を代表者とするMKデザインは、平成11年4月1日、委託者を被請求人、受託者をMKデザインとして、契約期間を平成11年4月1日から平成12年3月31日までの1年間とする業務委託契約を締結した。この契約書の「記」欄の3.には「委託業務は製品全般からカタログ編集に関するデザイン関係全般業務及び会社が指示する関連業務とする。」と記載され、同欄の4.には「委託業務料は月額320,000円とし、・・・。契約書に定められた以外の業務量を処理したときは、別途に委託業務料を支払う。」と記載されている(甲第1号証)。
(2)平成11年7月下旬頃、被請求人は請求人に対し、道路灯のデザイン製作を委託した。その際、被請求人は同業他社の先行製品である東芝「PREA-road」と岩崎「PAZU」の道路灯のカタログのコピーを参考として提供すると共に、道路灯のデザイン全体のイメージを伝達した(甲第5号証、甲第6号証)。
(3)請求人は受託後、道路灯のデザイン製作に着手し、道路灯の最初のCGデザインスケッチ図として、甲第24号証の「A-1」「A-2」「A-3」「A-4」「A-5」の図(以下、これらの図によって表された意匠を「A意匠」という(別紙第2参照)。)を被請求人会社の照明部門に提供した(甲第6号証、甲第15号証)。
(4)被請求人は、提供されたA意匠に対し、他社製品との類似性を指摘する等した。
(5)これを受けて請求人はその後もデザイン製作を進め、甲第24号証の「C-1」「C-2」「C-3」「C-4」の図(以下、これらの図によって表された意匠を「C意匠」という(別紙第3参照)。)を被請求人に提供した。
(6)A意匠及びC意匠は、請求人が提出した甲第15号証のCD-Rに記録されていることが認められる。甲第15号証のCD-Rは、請求人が作業データを保存していたとする請求人保管のMOディスクのコピーと認められ、A意匠はプロパティの最終更新日を平成11年8月11日とし、C意匠はプロパティの最終更新日を平成11年8月17日としていることが認められる。そしてC意匠は請求人が自己の創作であるとして提出した甲第14号証の意匠と一致する(以下、「甲第14号証意匠(C意匠)」という。)。
以上から、A意匠及び甲第14号証意匠(C意匠)が、本件登録意匠の出願前に、請求人自身の手によって描かれた(CG化された)ものであると認められる。
(7)被請求人は、請求人が提供した甲第14号証意匠(C意匠)を基に、製品化のための製作図面を起すとともに実物大模型を作成し、請求人同席の上で、稜線のRの大小(接合部の強調)やポール取付け部の形状等を検討し、デザインの最終形を確定した。
(8)平成11年11月5日、被請求人は出願人を被請求人とし、創作者を中野秀司として本件登録意匠に係る意匠登録出願をし、その後、審査段階で、引用意匠を東芝「PREA-road」の道路灯(別紙第4参照)の意匠とする拒絶査定を受け、これに対する不服審判請求を経て、意匠権の設定の登録を受けた。

3.本件意匠登録が意匠法第48条第1項第3号の規定に該当するか否かについて
(1)本件登録意匠と甲第14号証意匠(C意匠)との対比及び同一性
甲第14号証意匠(C意匠)の創作の経緯、及び創作者についてはさておくとして、まず、本件登録意匠と、請求人が請求人自身の創作であると主張する甲第14号証意匠(C意匠)とを対比する。
両意匠を対比すると、両意匠は意匠に係る物品が一致し、その形状について以下の一致点がある。
(ア)道路灯の全体が、上部ケース体と下部ケース体とからなり、上下方向から水平に嵌着されたもので、下部ケース体の下面の先端側を照明用透光部とし、その上方の内部にランプ体を収容し、下面の基端側をポール取付け部とした全体構成としている点。
(イ)上部ケース体は、横長で上下に扁平な、略変形六角錐台状の伏皿状で、上面を、変形六角形の水平面状とし、周側面について、下寄り一定幅を急傾斜とし、上面寄りを緩傾斜とする、上下2段の異なる角度の傾斜面からなるもので、周側面を構成する各面が、上下左右に明瞭な稜線を形成して、多面体状に構成されている点。
(ウ)下部ケース体は、横長で上下に扁平な、略変形六角錐台状の皿状で、下面を、変形六角形の水平面状とし、周側面について、上寄り一定幅を略垂直とし、下面寄りをやや内寄りの急傾斜とする、上下2段の異なる角度の傾斜面からなるもので、周側面を構成する各面が、上下左右に明瞭な稜線を形成して、多面体状に構成されている点。
(エ)平面視の輪郭形状(上部ケース体の下端及び下部ケース体の上端の形状)について、左辺(道路灯の先端辺)を緩やかな凸弧状とし、これに連続する前後両辺の左半部を緩やかな凸弧状として右方へ漸次拡幅し、右半部を緩やかな凹弧状として右方へ漸次縮幅し、右辺(ポール取付け部側の辺)を直線状に閉じたものである点。
(オ)道路灯としての嵌着状態において、上部ケース体下寄りの急傾斜面と、下部ケース体上寄りの略垂直面の幅が略等幅で、該部が中央横水平の嵌着ラインを挟んで2本の帯状面となって、道路灯の側面を周回する態様となっている点。
(カ)上部ケース体について、上面の略変形六角形は、左辺、及び前後両辺の左半部が平面視の輪郭形状と略同じ曲率の凸弧状、ないし漸次拡幅する凸弧状で、右半部が浅い凹弧状で右方へ短く伸ばされ、右辺の位置を平面視での中央やや右寄りとし、その前後両端から右へ、稜線を平行とする横長長方形状の緩やかな傾斜面が形成されている点。
(キ)下面について、平面視の輪郭形状とほぼ相似の略変形六角形状で、右寄り略1/3が直線状に区画されて、その右方がポール取付け部となっており、右辺中央に略正方形の取付け区画が形成されている点。
そして、上記の一致点は道路灯全体の基本的な構成とその具体的な態様を表すもので、各稜線の方向、曲がり具合、またこれらの稜線によって区画された構成各面の形状に至るまで、両意匠はほぼ一致しており、本件登録意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とは、形態において、強い一致性が認められるものである。しかも、この種の道路灯における本件登録意匠の出願前の既存意匠としては、近似するものに、東芝「PREA-road」と岩崎「PAZU」(別紙第4参照)が見られる程度であることを考慮すると、上記一致点のうちの(イ)(ウ)(エ)(オ)及び(カ)の点は、本件登録意匠が持つ、独自の特徴というべきものであって、甲第14号証意匠(C意匠)は、この形態を本件登録意匠と共有するものである。
なお、両意匠を仔細に見ると、差異点として、(a)上部ケース体上面の大きさ、及び緩傾斜面の角度差、(b)道路灯先端の縦長矩形の開閉ラッチについて、本件登録意匠は、上端部分が上部ケース体の水平面へと続く傾斜面まで食い込む態様で形成されているのに対し、甲第14号証意匠(C意匠)は、下寄りの急傾斜面にとどまる範囲に形成されている点、(c)下部ケース体下面の照明用透光部周囲について、甲第14号証意匠(C意匠)は傾斜状の面処理がなされた態様となっているが、本件登録意匠はこの面処理がなされていない点、が認められる。
しかしながら、これらはいずれも、この種物品の製品化の段階において、材料、加工技術等の観点からごく普通に行われる程度の、寸法比率の微調整、あるいは部分的な修正といった程度のものであり、新たな形態的特徴が加わったものとはいえない。
したがって、本件登録意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とは形態がほぼ一致し、また本件登録意匠のもつ形態的特徴を甲第14号証意匠(C意匠)はそのまま備えているものであり、両意匠は、実質的に同一というべきものである。

(2)甲第14号証意匠(C意匠)の創作の経緯及び創作者について
甲第14号証意匠(C意匠)は、請求人が提出したCG図であって、請求人が提出した甲第15号証のCD-Rに、プロパティの最終更新日を本件登録意匠の出願前の日付の平成11年8月17日として記録されているものである。したがって、この図は、本件登録意匠の出願前に、少なくとも請求人の手により、CG化されたものであると認められる。
被請求人はこのCG図について、請求人が、被請求人の指示によって描いたに過ぎず、道路灯のデザイン製作に関与した者の一人に過ぎず、本件登録意匠に関するただ一人の創作者ではない旨を主張しているので、これを検討する。
まず甲第14号証意匠(C意匠)の創作の経緯については、前項2.(6)のとおり、甲第14号証意匠(C意匠)のCG化に先立ち、A意匠のCG化が請求人によって行われていることが認められる。したがって、本件登録意匠の創作の経緯を、ア.請求人が道路灯のデザイン製作を委託されて、A意匠をCG化し、被請求人に提供するまでの創作の経緯と、イ.A意匠に対する被請求人の指摘、意見等を受けた後、甲第14号証意匠(C意匠)をCG化し、被請求人に提供するまでの創作の経緯に分けて検討する。
ア.A意匠の創作の経緯、及び被請求人の創作への関与
まず、被請求人は、請求人に道路灯のデザイン製作を委託する際に、同業他社の先行製品である、東芝「PREA-road」と岩崎「PAZU」のカタログを参考として提供し、道路灯の仕様(外形、反射板サイズ)を指示し、道路灯の希望するデザインイメージを伝えたとしている(平成22年9月2日付口頭審理陳述要領書5.(1)6行?13行)。
しかしながら、一般に、デザイン製作を委託する際に、市場や既存製品の情報、あるいは製品に関する企画等を提供し、希望する製品イメージを伝えることは、委託者として、ごく普通で、また当然のことであり、意匠の創作はこれら様々の情報を前提として適宜選択し、統合して物品の形態として具体化することであるから、この種の情報伝達、あるいはカタログ提供等の情報提供があったとしても、意匠の創作者としての地位が失われるとはいえない。本件において、他社の同種製品のカタログ等を提供し、また技術上の制限事項を示したことについても、この範囲を出るものとは認められず、そして新たにデザインする道路灯は、他社製品との競合製品の位置づけであるから、当然に、これらカタログに記載された道路灯とは類似しない、独自の製品デザインとすることを前提に業務委託したことは明らかである。したがって、被請求人がこれらカタログの提示や道路灯の仕様を指示したことをもって、A意匠の創作に関与したとすることはできない。
また、その後のA意匠の創作に関して、請求人と被請求人のデザイン担当社員とが言葉を交わしながら作業を行っていた(平成22年9月2日付口頭審理陳述要領書5.(1)14行?17行)とする点についても、平成22年9月10日の口頭審理における、請求人の、道路灯のデザイン製作を受託後、CG化作業を一人で行いA意匠を完成した、とする創作の経緯の説明に特に不自然な点は認められないこと、また、被請求人において、A意匠製作に関するメモやスケッチ、あるいは請求人を含むチームとして製作したことを類推させる何らかの文書の提示や、本件登録意匠の創作に関与した他のデザイナーやチームとしてのデザイン体制等についての説明が特になされていないこと、また、請求人が、デザイナーとして、被請求人から道路灯のデザイン製作を委託された経緯があること、を照らし合わせれば、仮にA意匠製作時に、被請求人会社の担当社員とデザインに関して言葉を交わし、また、交わされた言葉が、A意匠のデザインに何らかの影響を与えた可能性があるとしてもなお、請求人が、デザイナーとしての責任下において、自らの創作としてA意匠を完成させたと判断せざるをえない。
したがって、請求人及び被請求人の主張、及び提出された証拠の限りでは、A意匠の創作に、被請求人の実質的な関与があったととは認めることができず、A意匠は請求人による創作とされるべきである。
イ.甲第14号証意匠(C意匠)の創作の経緯及び被請求人の創作への関与
被請求人は、提供されたA意匠に対して、他社製品と酷似しているとの印象を抱き、請求人に「透光部分(ガラス)の形状「角型」に合わせて灯具の形状を角型イメージに変更すること」、「括れ部(シャクレ部ともいう)を少なくすることにより、道路灯の特徴を更に表現する必要があること」を指示したとしている(平成22年9月2日付口頭審理陳述要領書2頁5.(2)5行?9行)。
しかし、この「透光部分」及び「括れ部」の形状について、A意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とを対比すると、両意匠は道路灯下面の照明用透光部の形状についてはほとんど差異は見られず、括れ部に該当する、平面視での、前後両辺の右半部の凹弧状の曲率、縮幅の度合いにもほとんど差異は認められない。したがって、被請求人の指示が、意匠上の特徴をなすものとして、直接的に甲第14号証意匠(C意匠)の形状を構成しているとはいえない。
なお、A意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とは、(a)上部ケース体の上面やその右の緩やかに下降する傾斜面の稜線の形状、及び(b)下部ケース体の後面形状や下面のポール取付け部の、略正方形の取付け区画の有無、の点に差異がある。
しかしながら、上記(a)(b)を除くその余の態様については、両意匠は細部に至るまでほぼ一致しており、A意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とは、形態上、及び創作上の極めて強い一貫性が認められ、それと同時に、本件登録意匠及び甲第14号証意匠(C意匠)が持つ独自の形態的特徴を、ほとんどそのままA意匠は備えている。そしてA意匠と甲第14号証意匠(C意匠)とは上記(a)(b)の差異が認められるとしても、いずれも面処理に関する部分的な修正、変更の範囲のもので、また、この種のデザイン過程、とりわけ最終段階において、製作したデザインを委託者やクライアントに見せ、意向、要望を再度確認して、デザインに修正を加えることは、それ自体がデザイン上の必須の課程として、創作上当然に行われることであり、これにより創作者としての地位が失われるとすることはできない。そして、本件における上記(a)(b)の差異も、この範囲の修正と認められ、請求人がデザイナーとして、被請求人から、道路灯のデザインを委託された経緯を併せ考慮すれば、仮に、被請求人から何らかの要望、指示等があったとしても、請求人はこれらを吸収した上で、請求人のデザイナーとしての責任下において、A意匠の創作に引き続き、道路灯の最終形態として甲第14号証意匠(C意匠)を完成させたと解するのが自然である。
したがって、甲第14号証意匠(C意匠)においても、その創作者は、A意匠の創作者と同じ者であって、請求人とされるべきである。
ウ.小括
以上のとおりであって、請求人が、被請求人からデザイン製作の委託を受けた後、A意匠の製作を経て甲第14号証意匠(C意匠)を完成して被請求人に提供するまで過程において、被請求人が、その創作に実質的に関与したとは認めることができず、そして、本件登録意匠は、A意匠及び甲第14号証意匠(C意匠)と、創作の一貫性ともいうべき形態上の強い一致性が認められ、また本件登録意匠がその先行意匠に対して持つ独自の形態的特徴が、ほぼそのまま、A意匠及び甲第14号証意匠(C意匠)に認められるところであり、以上を総合すると、本件登録意匠の創作者は、A意匠及び甲第14号証意匠の創作者と同じ者であって、請求人とされるべきである。

(3)意匠登録を受ける権利の被請求人への承継の有無
被請求人は、請求人との間で締結した業務委託契約に基づいて、請求人が創作した甲第14号証意匠(C意匠)の提供を受けたものと認められるが、この提供を受けた甲第14号証意匠(C意匠)を被請求人自らが意匠登録出願して意匠登録を受ける行為が、本契約によって許諾されている範囲に含まれるか否かについて検討する。 本契約の「記」3.に記載された「委託業務は製品全般からカタログ編集に関するデザイン関係全般業務及び会社が指示する関連業務とする。」の文言は、極めて概括的な表現となっており、作業内容を具体的に特定したものとはなっていない。そして、このような概括的な表現がなされている場合、受託者が費やす作業時間やその他のコストは、委託業務の内容によって大きく変化するものと予想され、これに応じて、委託業務によって生じる成果物の内容も大きく変化し、その経済価値をあらかじめ予測することは困難であるから、通常は、成果物の意匠登録を受ける権利の帰属の問題に関しては、別途に条項を設けることが必要と解せられ、この点に関する条項がない以上、本契約の内容からは除外されていると解するほかない。また、「記」欄8.の「この契約に定めのない事項は、双方が誠意を持って協議の上定めるものとする。」との記載に則って、特に協議がなされたことを伺わせる証拠はない。
したがって、「委託業務料は月額320,000円とし、・・・」の記載に照らせば、その金額は受託者が費やす作業時間に見合う範囲のものであって、本契約には意匠登録を受ける権利の承継は含まれていないと解すべきであり、本件業務契約の委託者である被請求人は、委託業務の成果物である甲第14号証意匠(C意匠)の意匠登録を受ける権利までを承継していたとはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本件意匠登録は、意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから、意匠法第48条第1項第3号の規定に該当し、その登録は無効とされるべきである。
よって、結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2010-11-29 
結審通知日 2010-12-02 
審決日 2011-01-07 
出願番号 意願平11-30780 
審決分類 D 1 113・ 15- Z (D3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 並木 文子 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 市村 節子
杉山 太一
登録日 2001-10-26 
登録番号 意匠登録第1129314号(D1129314) 
代理人 特許業務法人あーく特許事務所 
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