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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H1
管理番号 1238194 
審判番号 不服2010-24319
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-10-28 
確定日 2011-05-24 
意匠に係る物品 配線用遮断器 
事件の表示 意願2009- 24148「配線用遮断器」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は、平成21年10月15日の意匠登録出願であって、その意匠(以下、「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品が「配線用遮断器」であり、その形態が願書及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。

2.原審の拒絶理由の要旨
本願意匠に対し、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められ、意匠法第3条第2項の規定に該当するとして原審が通知した拒絶の理由は、要旨以下のとおりである。
この意匠登録出願の意匠は、本願の出願前に公然と知られた公知意匠1の正面視左側の端子部に、本願の出願前に公然と知られた公知意匠2の正面視左側の差込み接続アダプタをほとんどそのまま単に接続して表した程度にすぎないので、当業者であれば容易に創作をすることができた意匠と認められる。
【公知意匠1】(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1286354号の意匠
【公知意匠2】(別紙第3参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1033013号の意匠

3.審判の請求理由の要旨
本願意匠と引例意匠(意匠登録第1033013号)においては、明らかな創作性の差異が存在する。
(1)本願意匠には、平面端部に階段状のレリーフ形状があり、機能的な形状のみが目立ち易い「遮断器」のデザインに一石を投じている。一方、引例意匠には、このような配慮が見られない。
(2)(1)の階段状のレリーフ形状の影響により、サイド面(正面図から見た面)においては絞られた曲線形状が確認でき、スタイリッシュでコンパクトなイメージを強調している。一方、引例意匠には、このような配慮が見られない。
(3)本願意匠には、正面図左下部角に、少しでも小さくスタイリッシュに見せるための、曲線による抉り形状が見受けられる。引例意匠には、このような配慮による造形が見受けられない。
(4)本願意匠には、正面図左下部に、右上がりの傾斜形状が見受けられ、本体を小さくスタイリッシュに見せるための工夫がなされているが、引例意匠には、このような配慮による造形が見受けられない。
以上、(1)?(4)で詳述したように、本願意匠には、デザイン性を向上させるような創作性の工夫がなされているが、引例意匠にはそれが見られず、その創作性の差は、明らかである。よって、本願意匠は、安易に他の意匠を真似るような(容易な創作性を意図したような)発想から生まれたものでは決してない。
以上のとおり、意匠法第3条第2項の規定により登録することができないものであるとした原査定は理由が無く不当であると思料する。よって、請求の趣旨のとおり、原査定を取り消す、本願意匠は登録すべきものとする、との審決を求める。

4.当審の判断
本願意匠が、容易に意匠の創作をできたものか否かについて、以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は、意匠に係る物品を「配線用遮断器」とし、その形態は、全体を略横長直方体状とし、正面形状を略凸字状とし、背面形状を略逆凸字状とする本体部(以下、「本体部」という。)の正面視右側上方寄りに略直方体状の接続用アタッチメント(以下、「アタッチメント」という。)を設け、本体部の正面視左側に3つの矩形状凹部を縦に配した略直方体状の凹凸状接続部(以下、「凹凸状接続部」という。)を設けたもので、本体部は、上面に低い段部を有する矩形状スイッチ部を設け、略直方体状の棒状のスイッチを設け、正面視中央に浅い隅丸矩形状の凹部を設け、正面視右側上方寄りには隅丸三角形状の切り欠き部を、左側には略隅丸矩形状の切り欠き部を設け、背面視左右の下方寄りを浅く切り欠き、正面側及び背面側の四隅に小型二重円部を配し、アタッチメントは、右上角部の内側に斜状の接続部を設けた箱状部を2個並列し、正面側に2個、背面側に1個の小型円形状部を設け、凹凸状接続部の上面から本体部の上面にかけて、平面視正方形状の板状体を設け、凹凸状接続部は、正面視上下の矩形状凹部内に略円弧状の接続部を設け、上面を浅く段状に切り欠き、上面端部は、端部に向かって下方に傾斜する浅い階段状の面を設け、下面は本体部に向かって上方に傾斜する傾斜面と水平面を経て角部寄りに円弧状の切り欠き面を設け、上方の突条を薄く設けたものである。
(2)本願意匠と公知意匠の対比
1)公知意匠1は、本体部とアタッチメントの形状が本願意匠とほぼ共通するが、本体部正面視中央に隅丸矩形状の浅い凹部を有さず、左側面側の接続部は端子接続部が外部から視認できる状態で正面側を低く、背面側を高く設けている。2)公知意匠2は、本体部の上面にスイッチ部を有し、凹凸状接続部を設けた点は本願意匠とほぼ共通するが、アタッチメントは有さず、本体部の輪郭形状が本願意匠とは異なり、本体部正面中央に隅丸矩形状の浅い凹部を有さず、スイッチの形状も異なり、凹凸状接続部の上面はスイッチ部まで一体で、凹凸状接続部の上下の面は水平状で端部は上下が直角状で全体が角張っていて、上方の突条を厚めに設けたものである。
(3)創作容易性の判断
まず、(a)本願意匠と公知意匠1は、凹凸状接続部の有無を除いて、アタッチメントと本体部の形状が共通するものではあるが、この種の配線遮断器の分野においては、本体部と接続部の関係については、アタッチメントを有するものも、有さないものも、凹凸状接続部を取り外しできるものも、一体型としたものも、各種のものが見受けられる。そして、本体部と各種の接続部は一体となってデザインされるものであって、常に各部分が別々の部材となっているものではない。その接続部の態様をいずれの態様とするかは、必要に応じて機能に基づき決定されるものであるが、凹凸状接続部の存在により、接続部の態様が異なることは、当業者であれば、容易に認識でき、また、機能の違いは看者の注意を強く惹くところでもあるので、アタッチメントと本体部の形状のみが共通することにより、本体部左側の形状がどのような態様であっても直ちに創作が容易といえるものではない。次に、(b)凹凸状接続部の形状について、本願意匠は、上面を浅く段状に切り欠き、上面端部は、端部に向かって下方に傾斜する浅い階段状の面を設け、下面は本体部に向かって上方に傾斜する傾斜面と水平面を経て角部寄りに円弧状の切り欠き面を設け、上方の突条を薄く設けているのに対して、公知意匠2は、上下の面は水平状で端部は上下が直角状で全体が角張っていて、突条部の厚みも本願意匠とは異なり、公知意匠1の本体部の左側に公知意匠2の凹凸状接続部を組み合わせたとしても本願意匠の態様とはならず、本願意匠を容易に創作することができたとはいえない。
また、本願意匠には、凹凸状接続部の上面から本体部の上面にかけて、平面視正方形状の板状体を設けているのに対して、そのような板状体は、公知意匠2には存在せず、凹凸状接続部の上面はスイッチ部まで一体で、公知意匠1の本体部の左側に公知意匠2の凹凸状接続部を組み合わせたとしても本願意匠の態様を導き出すことはできない。
そして、本願意匠の凹凸状接続部は、浅い階段状の面や角部寄りの円弧状切り欠き面により、複雑で変化に富んだ態様であり、本願意匠の独自の特徴をなすものであり、従来のものに見られない新規な態様といえ、このような凹凸状接続部を有する本願意匠は、その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。

5.むすび
したがって、本願意匠は、意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり、同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-05-10 
出願番号 意願2009-24148(D2009-24148) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和江塚 尚弘 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
遠藤 行久
登録日 2011-06-03 
登録番号 意匠登録第1417977号(D1417977) 
代理人 稲葉 忠彦 
代理人 高橋 省吾 

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