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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010880011 審決 意匠

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審決分類 審判    D3
管理番号 1241300 
審判番号 無効2010-880012
総通号数 141 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-09-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-08-20 
確定日 2011-05-06 
意匠に係る物品 天井埋め込み灯 
事件の表示 上記当事者間の登録第1390395号「天井埋め込み灯」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
(1)本件意匠登録第1390395号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。別紙第1参照。)は,平成21(2009)年7月10日付けで出願され,同年12月22日付けで,意匠登録第1325525号に類似するとして,意匠法第3条第1項第3号の規定による拒絶理由が通知され,平成22(2010)年1月29日付けで意見書提出の後,同年5月21日に意匠権の設定登録がされたものである。
(2)これに対し請求人は,平成22年8月20日付けで本件無効審判を請求し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証を,そして,添付資料として,参考意匠1及び参考意匠2を提出し,本件登録意匠の登録を無効とするとの審決を求めた。
(3)被請求人は,平成22年10月29日付けで審判事件答弁書及び証拠方法として乙第1号ないし乙第33号を提出した。
(4)その後,証拠人から平成23(2011)年1月11日付けで口頭審理陳述要領書と,証拠方法として甲第9号証及び甲第10号証が提出され,被請求人から平成23年1月11日付けで口頭審理陳述要領書と,証拠方法として乙第34号証が提出された。
(5)当審は,平成23年1月25日に口頭審理を実施した。
口頭審理において,請求人は,口頭審理陳述要領書の8頁,下から5行目「端子台の高さの略2/5の高さの壁面を形成し,その」を削除した。
また,被請求人は,審判事件答弁書の6頁,上から9行目「中華人民共和国 意匠公報CN3403259(2004年11月3日 公告 乙第8号証),」を削除した。
(6)なお,口頭審理において,当審は,審理終結を告知した。

第2 請求人の申立及び理由
請求人は,「登録第1390395号意匠の登録を無効とする。審判請求費用は,被請求人の負担とする。との審決を求める。」と申し立て,その理由として,審判請求書の記載及び口頭審理陳述要領書は削除箇所を除いて記載のとおりの主張をし,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第10号証を,添付資料として,参考意匠1及び参考意匠2を提出している。
請求人の主張は,概ね次のとおりである。

1.無効理由の要点
本件登録意匠は,その出願前に頒布された刊行物である甲第3号証(意匠登録第1325525号,別紙第2参照。)に示す意匠に類似するものであり,意匠法第3条第1項第3号の規定により登録を受けることができないものであるので,本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,その登録は無効とすべきものである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は,意匠登録第1390395号の意匠公報(甲第2号証)に記載のとおり,意匠に係る物品を「天井埋め込み灯」とし,その形態について,全体の基本的な構成態様を,本体部を略円筒状とし,その下面にリング形板状の化粧枠を鍔状に形成し,その内側に4個の発光ダイオード(LED)を「四つ蛇の目」状に形成して光源部とし,本体部の両側面に帯状の板バネを略逆「ハ」の字状に形成し,本体部の上面に端子台を取り付けた態様とするものである。
また,その具体的態様を,(A)光源部について,下面視リング形板状の化粧枠の内周縁部を僅かな段差状に形成し,その段差部に円形透明板を填め込み,その奥の上下左右4箇所に略椀状の反射面を形成し,その反射面の中心に発光ダイオードを取り付けて「四つ蛇の目」状の光源部とし,反射面の底面が円形透明板に接する態様のもので,(B)本体部について,径と高さの比が略5:6のやや縦長の略円筒状とし,その内部に電源を収納し,その上面に横長略直方体状の端子台を取り付けたものとし,(C)本体部周面の態様について,周面の上方に,端子台の高さに等しい高さの壁面を形成し,その前側左方及び両側の3箇所を縦長略長方形状に切截し,前側左方を電源コードの導入部とし,その余を端子台の保護壁面としたものであり,周面下方寄りの前側に筋状のリブを,後側の上端から下端にも筋状のリブを形成し,(D)化粧枠部について,径の略1/9幅の帯状を環状に形成したリング形板状とし,その表面(下面)を外周方向に薄くなる斜面状に形成し,化粧枠の内周縁部の段差部を斜状に形成したものであり,化粧枠部が本体部と一体に形成され,(E)端子台部について,正面にコネクタ部を有する横長略直方体状のものであり,中央やや後方寄りに,保護壁面の上端と高さを合わせて取り付けたものであり,(F)取り付けバネ部について,周面両側を浅い凹陥状に形成し,略矩形状のバネ取り付け片を設け,その取り付け片に,帯板状の板バネを略V字状に取り付けた態様とするものである。
(2)本件登録意匠の特徴
本件登録意匠の特徴は,本体部を略円筒状とし,その下面にリング形板状の化粧枠を鍔状に形成し,その内側に4個の発光ダイオード(LED)を「四つ蛇の目」状に形成して光源部とした態様とした点,また,需要者がその使用に際して,常に視覚に訴える光源部及び化粧枠の具体的態様,すなわち,下面視リング形板状の化粧枠の内周縁部を段差状に形成して,その段差部に円形透明板を填め込み,その奥の上下左右4箇所に略椀状の反射面を形成し,その反射面の中心に発光ダイオードを取り付けて「四つ蛇の目」状の光源部とし,反射面の下面が円形透明板に接する態様とした点である。
(3)引用意匠の要旨
引用意匠は,甲第3号証の記載によれば,本件登録意匠の出願前,平成18年12月22日の意匠登録出願(意願2006-35278)に係り,平成20年2月29日に設定の登録がなされた登録第1325525号意匠であり,意匠に係る物品が「天井埋込み灯」であり,その形態について,全体の基本的な構成態様を,本体部を略円筒状とし,その下面にリング形板状の化粧枠を鍔状に形成し,その内側に4個の発光ダイオード(LED)を「四つ蛇の目」状に形成して光源部とし,本体部の両側面に帯状の板バネを略逆「ハ」の字状に形成し,本体部の上面に端子台を取り付けた態様とするものである。
また,その具体的態様を,(a)光源部について,下面視リング形板状の化粧枠の内周縁部を僅かな段差状に形成し,その段差部に円形透明板を填め込み,その奥の上下左右4箇所に略椀状の反射面を形成し,その反射面の中心に発光ダイオードを取り付けて「四つ蛇の目」状の光源部とし,反射面の底面が円形透明板に接する態様のもので,(b)本体部について,径と高さの比が略等しい略円筒状とし,その内部に電源を収納し,その上面に縦長略直方体状の端子台を取り付けたもので,(c)本体部周面の態様について,周面の上方に,端子台の高さに等しい高さの壁面を形成し,その前側及び後側の2箇所を横長略長方形状に切截し,前側を電源コードの導入部とし,その余を端子台の保護壁面とした態様のものであり,周面下方寄りに筋状のリブを等間隔に形成し,(d)化粧枠部について,径の略1/9幅の帯状を環状に形成してリング形板状とし,表面(下面)を外周方向に薄くなる斜面状に形成し,その化粧枠の内周端部を凸状に立ち上げて,本体部に嵌合させた態様とし,(e)端子台部について,正面にコネクタ部を有する縦長略直方体状のものであり,中央前方に,保護壁面の上端と高さを合わせて取り付けたもので,(f)取り付けバネ部について,帯板状の板バネを略V字状に屈曲し,その片側上端を,本体部の上方に取り付け,他方が外側に略V字状に開いている態様とするものである。
(4)引用意匠の特徴
引用意匠は,社団法人発明協会主催の「平成20年度関東地方発明表彰」(後援,文部科学省,特許庁,中小企業庁,関東経済産業局,東京都,日本弁理士会)において,特許庁長官奨励賞を受賞(甲第4号証)した意匠であり,いわゆるLEDダウンライトの創作に係り,光源部について,略椀状の反射面を形成してその反射面の中心に発光ダイオードを「四つ蛇の目」状に形成し,その光源部の周側にリング形板状の化粧枠を形成し,その化粧枠の表面を外周方向に薄く斜面状に形成し,電源を略円筒状の本体に収納し,すっきりしたコンパクトなボディーを実現し,シンプルな外観にまとめた態様に特徴が発揮されているものである。
(5)本件登録意匠と引用意匠の対比と類否
両意匠に共通する基本的構成態様の共通点(あ),すなわち,全体が,本体部を略円筒状とし,その下面にリング形板状の化粧枠を鍔状に形成し,その内側に4個の発光ダイオード(LED)を「四つ蛇の目」状に形成して光源部とし,本体部の両側面に帯状の板バネを略逆「ハ」の字状に形成し,本体部の上面に端子台を取り付けた態様は,形態全体の骨格を構成し,意匠の基調を成すところであり,両意匠の類否判断を支配する要部である。
また,両意匠の具体的態様の共通点(い),光源部について,下面視リング形板状の化粧枠の内周縁部を僅かな段差状に形成し,その段差部に円形透明板を填め込み,その奥の上下左右4箇所に略椀状の反射面を形成し,その反射面の中心に発光ダイオードを取り付けて「四つ蛇の目」状の光源部とし,反射面の下面が円形透明板に接する態様は,先行周辺意匠に見られない特徴であり,この種の物品の意匠において,需要者が注視し,その使用時に注意を強く惹き付けるところであり,類否判断に大きな影響を及ぼすところである。
また,共通点(う),本体部周面の態様について,周面の上方に,端子台の高さに等しい高さの周面を形成し,その数箇所を横長略長方形状に切截し,その前側を電源コードの導入部とし,その余を端子台の保護壁面とし,周面下方寄りに筋状のリブを形成した態様は,従来のこの種の物品の意匠の多くが,放熱フィンを露出させた態様のものであることを考慮すると,この種の物品の需要者,また,取引者が強い関心を寄せるところであり,類否判断に大きな影響を及ぼすところである。
さらに,共通点(え),化粧枠部について,径の略1/9幅の帯状を環状に形成したリング形板状のものとして本体部から鍔状に形成し,その表面を外周方向に薄くなる斜面状に形成した態様は,天井面と自然に調和し,両意匠の意匠的効果が発揮されているところであって,類否判断に大きな影響を及ぼすところである。
一方,両意匠の差異点について,差異点(イ),本体部について,本件登録意匠は径と高さの比が略5:6のやや縦長の略円筒状であり,他方,引用意匠は径と高さが略等しいものであるが,意匠全体として見ればその差異は僅かなものである。
差異点(ロ),本体部の周面の態様について,本件登録意匠は周面の前側左方及び両側の3箇所を横長略長方形状に切截したものであり,他方,引用意匠は前側及び後側の2箇所を切截したものであるが,両意匠は,本体部の上面に略直方体状の端子台を取り付けている点,本体部周面の上方の数箇所を横長略長方形状に切截している点,その余の周面を端子台の保護壁面とした点において共通しており,前記の差異はその共通点に包摂される高さの差異及び切截部の数の相違であり,両意匠の差異としてさほど評価されるものではない。
また,本件登録意匠は周面下方寄りの前側に筋状のリブを形成し,後側の上端から下端に筋状のリブを形成しており,他方,引用意匠は周面下方寄りに筋状のリブを等間隔に形成したものであるが,両意匠はリブの数に差異はあるものの薄い化粧板と本体部との接合部を強化するためにリブを設けている点では共通している。
差異点(ハ),化粧枠部について,本件登録意匠は内周縁部の段差部を斜状に形成したものであるが,他方,引用意匠は段差状であり,段差面が細幅の環状に形成されているが,両意匠は,「四つ蛇の目」状の光源部及びその外側に形成した略1/9幅のリング形板状の化粧枠が目立つものであり,その間に位置する段差部が斜状か平坦かの差異は看者の注意を強く惹くところではない。
また,本件登録意匠は,化粧枠が本体部と一体に形成されているのに対し,引用意匠は本体部に嵌合させたものであるが,意匠の外観から把握されるものではない。
差異点(ニ),端子台部について,本件登録意匠は本体部上面の中央やや後方寄りに取り付けているのに対して,引用意匠は本体部上面の中央前方寄りに取り付けたものであるが,その取り付け位置の差異は,本件登録意匠がやや左方寄りに設けられていると認識される程度の僅かな差異である。
差異点(ホ),取り付けバネ部について,本件登録意匠は周面両側に形成した浅い凹陥状部に,略矩形状のバネ取り付け片を設け,その取り付け片に帯板状の板バネを略V字状に取り付けた態様のものであり,他方,引用意匠は略V字状の板バネの片側上端を本体部の上方に取り付けたものであるが,その差異は,本体部の両側面に帯状の板バネを略逆「ハ」の字状に形成した顕著な共通点がある中で,取り付けバネが本体部側でバネ取り付け片に接合しているか否かの差異であって,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものではない。
また,本件登録意匠の取り付けバネ部の態様は,本件登録意匠の出願前に,先行周辺意匠として摘示した(a)登録第1293407号意匠の意匠公報(甲第5号証)及びその願書(甲第6号証),また,(b)1293408号意匠の意匠公報(甲第7号証)及びその願書(甲第8号証)に見られ,本件登録意匠の出願前に,既に公然知られた形態であって特異性がなく,取引者の注意をさほど惹くものではない。
また,取り付けバネ部は,天井に埋め込まれて日常視認されないこと,この種の物品の創作においては二義的な創作であり,意匠の創作としてさほど評価されるものではないことを考慮すると,類否判断に大きな影響を及ぼすものではない。
以上,前記(イ)ないし(ホ)の差異点はいずれも類否判断に及ぼす影響は小さいと判断され,差異点が相侯って生じる意匠的効果を考慮しても,両意匠の差異点は,いずれも類否判断に及ぼす影響は小さく微弱なものである。
したがって,両意匠は意匠に係る物品が共通しており,意匠に係る形態の共通点は,本件登録意匠と引用意匠の特徴を発揮している天井埋め込み灯の光源部及び化粧枠部に係り,この種の物品の需要者の注意を強く惹くところである。また,本体部においても,全体を略円筒状とし,その周面の上方の数箇所を横長略長方形状に切截して電源コードの導入部とし,その余の周面を端子台の保護壁面とした態様は,取引者の注意を強く惹くところであり,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼす要部である。
他方,両意匠の主たる差異点は,端子台部及び取り付けバネ部に係るもので,この種の物品の需要者においては,日常目に触れないところの差異であり,また,「意匠の審査基準」第2章新規性の22.1.3.1.2(意匠の類否判断の手法)の(4)(i)対比観察した場合に注意を引く部分か否かの認定及び評価の「(e)物品の流通時にのみ視覚観察される形態の評価」によれば,「使用時・設置時にはその一部が目にふれないような物品(例えば,一部が土に埋まるフェンスや,壁や天井に一部が埋め込まれる照明器具等。)の場合,物品の流通時にのみ視覚観察される部位が注意を引く程度は,原則として,その他の部位よりも小さい。」とあるように,これらの差異は,その類否判断に及ぼす影響は小さく,共通点が差異点を凌駕していることは明らかであって,両意匠は類似する意匠である。

<証拠方法>
甲第1号証:本件登録意匠(登録第1390395号意匠)の願書の謄本
甲第2号証:本件登録意匠が記載された意匠公報
甲第3号証:引用意匠(登録第1325525号意匠)
甲第4号証:平成20年度 関東地方発明表彰 受賞者一覧の表紙,目次及び同3頁
甲第5号証:登録第1293407号意匠
甲第6号証:意匠登録第1293407号の願書の謄本
甲第7号証:登録第1293408号意匠
甲第8号証:意匠登録第1293408号の願書の謄本
参考資料1:本件登録意匠と引用意匠の対比図
参考資料2:天井埋め込み灯(ダウンライ卜)に係る先行周辺意匠
甲第9号証:2005年7月25日発行「National LEDダウンライト(一般屋内用)取扱説明書」
甲第10号証:「Panasonic LEDダウンライト(一般屋内用)取扱説明書」

第3 被請求人の答弁及び理由
被請求人は,「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」と申し立て,その理由として,審判事件答弁書の記載及び口頭審理陳述要領書は削除箇所を除いて記載のとおりの主張をし,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第34号証を提出している。
被請求人の主張は,概ね次のとおりである。
設置した際に視認できる「光源部及び化粧枠部の態様」については,乙第14号証に照らして,ありふれた構成態様であることが明らかであり,かかる共通点は新規且つ創作性あるものではなく,格別の美感を提供するものではないことが明らかである。
一方,天井埋め込み灯という意匠に係る物品は,電気工事を伴う施工業者という専門家により施工されるものであって,物品の強度や性能の確保,施工の安全性,施工の容易性等の観点から,本体部下面の照射面光源部のみでなく,物品背面に相当する本体部上面の端子台まわりも,専門家たる当該需要者の注意を惹き易い部分,部位であることに相違はない。
そこで,円筒状本体を見ると,本件登録意匠と甲第3号証の意匠は,保護壁の構成態様の相違,保護壁に形成される電源線導入用の切截部の形状ないしは切欠きの位置の相違,板ばねの収納部の相違(板ばね収納部が,ガイド壁を含む保護壁中央部に存するのか,保護壁間に形成された切截部に存するのか)等々の相違により,本件登録意匠は,全体に偏って規則性に乏しく,凹凸感に富んだダイナミックな印象を看者に与えるのに対し,甲第3号証の意匠は,規則性に富み,整然としてシンプルで安定感ある印象を看者に与え,全く異なる美感が創出されており,両意匠の相違点が共通点を凌駕することが明らかである。

<証拠方法>
乙第1号証:意匠登録第1390395号
乙第2号証:意匠登録第1325525号
乙第3号証:松下電工株式会社 商品カタログ「LIGHTINGMODE Expert 2004-2005」第573頁 品番LB70055の意匠
乙第4号証:乙第3号証の部分拡大図
乙第5号証:中華人民共和国 意匠公報CN3540317
乙第6号証:公開特許公報2006-278656号
乙第7号証:中華人民共和国 意匠公報CN3414358
乙第8号証:中華人民共和国 意匠公報CN3545985
乙第9号証:意匠登録第1256573号
乙第10号証:中華人民共和国 意匠公報CN3398316
乙第11号証:中華人民共和国 意匠公報CN3403259
乙第12号証:意匠登録1348013号
乙第13号証:意匠登録1348461号
乙第14号証:雑誌「lightingj July 2006 34頁記載の意匠
乙第15号証:乙第14号証の発行元 http://www.lighting.comuk/home/contact-us/
乙第16号証:米国 意匠公報 Des.326,537
乙第17号証:韓国 意匠公報 30-0430524
乙第18号証:中華人民共和国 意匠公報CN3242727
乙第19号証:中華人民共和国 意匠公報CN3466035
乙第20号証:中華人民共和国 意匠公報CN3591731
乙第21号証:中華人民共和国 意匠公報CN3582896
乙第22号証:説明資料1
乙第23号証:中華人民共和国 意匠公報CN3285133
乙第24号証:中華人民共和国 意匠公報CN3305339
乙第25号証:中華人民共和国 意匠公報CN3416052
乙第26号証:意匠登録第1326075号
乙第27号証:意匠登録第1326076号
乙第28号証:意匠登録第1354112号
乙第29号証:意匠登録第1354112号の意見書
乙第30号証:岩波書店 広辞苑第五版
乙第31号証:本件登録意匠と引用意匠の対比表
乙第32号証:部分名称図
乙第33号証:説明図
乙第34号証:両意匠比較対象図

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「天井埋め込み灯」とし,その形態を別紙第1に示すとおりとするものである。
すなわち,(1)本体部を略円筒状とし,本体左右中段から張り出す一対の帯状板バネを略逆「ハ」の字状に設け,本体下面を光源部とし,上面に端子台を有するもので,(2)光源部について,外周を,直径に対して略10分の1幅となるリング形板状の化粧枠とし,外周方向に薄くなる斜面状とするもので,化粧枠の内周縁部に僅かな段差の斜面部を,その内側にわずかな平坦部を形成し,その内側の垂直段差部に円形透明板を填め込み,略椀状反射面を左右の板バネ部と平行に2つ,垂直に2つ,四つ蛇の目状に円形透明板に接して設け,略椀状反射面の底部水平面中央にドーム状の発光ダイオードを配した態様とするもので,(3)本体部について,(3-1)直径対周面全体の高さを略2:3とし,(3-2)周面について,本体部上面の端子台を囲繞するように,端子台の高さに等しい高さまで周面が延設(以下,「延設部」という)されており,周面全体の高さの略10分の3を延設部とするもので,その正面左寄り,及び,左右に矩形状の切り欠き部を設けることにより,延設部は,大・中・小の3種類が形成され,左右の切り欠き部における延設部端部は,平面視で略直角三角形状にあらわれる厚みを設け,その左右の切り欠き部が設けられた位置に板バネを配し,(3-3)周面全体の外形状について,光源部から周面全体の高さの略5分の1までを上方に向かって窄まる態様とし,それ以降を上方へ向けて末広がりの態様とするもので,正面側の左右方向中央に,下面から周面全体の高さ略5分の1の筋状のリブを1つ,背面側の左右方向中央に,下面から周面頂部に及ぶ筋状のリブを1つ設け,(4)板バネ留め部周辺の態様について,切り欠き部下方の周面を,頂部から垂直平板状とし,左右の切り欠き部が下方に連続して切り欠き部の高さが周面全体の高さの略8分の7に及ぶように見えるものとし,板バネ留め部となる切り欠き部下方の周面を,頂部から垂直平板状とし,下端を外周に向けて斜面状に張り出すことで縦長長方形状凹部を形成して,板バネの本体側取付片配置部とし,その取付片は,端子台が設置された本体部上面板から垂下状に延伸された,切り欠き部と同幅の長方形状薄板とするもので,左右の切り欠き部から張り出させ,上部を本体とネジ留めし,その下方に斜面部を一段形成したうえで垂直面を設け,その略中腹に板バネ留め部を設けた態様とし,(5)端子台について,その高さ対本体の光源部から上面までの高さを略5:9とする平面視略横長直方体状とし,本体部上面の後方に配したものである。

2.請求人が無効の理由として引用した意匠(甲第3号証意匠)
請求人が無効の理由として引用した甲第3号証に記載の意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁が,本件登録意匠の出願前,平成20(2008)年3月31日に発行した意匠公報に掲載された意匠登録第1325525号の意匠であり,その意匠は,意匠に係る物品を「天井埋込み灯」とし,その形態を別紙第2に示すとおりとするものである。
すなわち,(1)本体部を略円筒状とし,本体左右上段から張り出す一対の帯状板バネを略逆「ハ」の字状に設け,本体下面を光源部とし,上面に端子台を有するもので,(2)光源部について,外周を,直径に対して略9分の1幅となるリング形板状の化粧枠とし,外周方向に薄くなる斜面状とするもので,化粧枠の内周縁部に僅かな段差部を垂直状に形成し,そこから化粧枠の幅の略2分の1となる平板状部をリング状に設け,その内縁に円形透明板を填め込み,略椀状反射面を左右の板バネ部と平行に2つ,垂直に2つ,四つ蛇の目状に円形透明板に接して設け,底面視円形の発光ダイオードを有する略長方形状の基台部を,板バネ部と平行に設けた略椀状反射面の底部水平面中央には横向きに,垂直に設けた略椀状反射面の底部水平面中央には縦向きに配した態様とし,(3)本体部について,(3-1)直径対周面全体の高さを略5:6とし,(3-2)周面について,本体部上面の端子台を囲繞するように,左右に同幅の延設部を端子台の上面スイッチ部よりわずかに上の高さまで延設し,周面全体の高さの略10分の2.7を延設部とするもので,前後には,左右の延設部と同幅とする矩形状の切り欠き部を設け,その厚みは一定とし,左右の延設部上部に板バネを配し,(3-3)周面全体の外形状について,全体を略垂直状とし,光源部から周面全体の高さの略4分の1の径をわずかに太く,それ以降の径をわずかに小さくして,それぞれを垂直状とし,その太径部に,同じ高さの筋状のリブを8本均等に配し,(4)板バネ留め部について,周面左右の延設部上部に,帯状板バネの幅に合わせた枠部を設け,そこに帯状板バネを填め込ませ,(5)端子台について,頂部に横長の細い直方体状スイッチを有し,そのスイッチを除いた端子台の高さ対本体の光源部から上面までの高さを略1:3とする平面視で僅かに縦に長い略直方体状とし,本体部上面の前方に配した態様とするものである。

3.本件登録意匠と引用意匠との対比
本件登録意匠と引用意匠とは,ともに天井埋め込み灯であるから意匠に係る物品が一致し,形態については,主として以下の一致点と相違点がある。
(1)一致点
(A)全体の構成について,本体部を略円筒状とし,本体左右から張り出す一対の帯状板バネを略逆「ハ」の字状に設け,本体下面を光源部とし,本体部上面に端子台を設けた構成とした点,(B)光源部について,(B-1)細幅のリング状化粧枠を外周方向に薄くなる斜面状に形成し,(B-2)化粧枠の内側に設けられた円形透明板に,略椀状反射面を4つ蛇の目状に円形透明板に接して設けた点,(C)本体部について,(C-1)周面を,本体部上面の端子台を囲繞するように本体部上面より高く延設し,(C-2)延設部は,端子台の高さと略同じとする高さに形成し,(C-3)複数の矩形状切り欠き部を設けた点,(D)端子台について,略直方体状の端子台を中央からずらしてバネと平行に配した点,において一致する。
(2)相違点
一方,相違点として,(a)光源部について,(a-1)本件登録意匠は,化粧枠の内周縁部に僅かな段差の斜面部を,その内側にさらに細い平坦部を形成しているのに対し,引用意匠は,化粧枠の幅の略2分の1となる平板状部を形成している点,(a-2)本件登録意匠は,略椀状反射面の底部にドーム状の発光ダイオードを配した態様としているのに対し,引用意匠は,底面視円形の発光ダイオードを有する略長方形状の基台部を,板バネ部と平行に設けた略椀状反射面の底部水平面中央には横向きに,垂直に設けた略椀状反射面の底部水平面中央には縦向きに配した態様としている点,(b)本体部について,(b-1)直径対周面全体の高さを,本件登録意匠は,略2:3としているのに対し,引用意匠は,略5:6としている点,(b-2)端子台を囲繞する延設部について,本件登録意匠は,周面全体の高さの略10分の3を延設部とし,左右と正面左寄りの3箇所に切り欠き部を設けることにより,大・中・小の3種類の延設部が形成され,左右の切り欠き部における延設部端部は,平面視で略直角三角形状にあらわれる厚みを設け,その左右の切り欠き部が設けられた位置に板バネを配しているのに対し,引用意匠は,周面全体の高さの略10分の2.7を延設部とし,前後2箇所に同幅の切り欠き部を設け,切り欠き部の幅と同幅とする延設部を端子台の左右に設け,その厚みは一定とし,左右の延設部上部に板バネを配している点,(b-3)周面全体の外形状について,本件登録意匠は,光源部から周面全体の高さの略5分の1までを上方に向かって窄まる態様とし,それ以降を上方へ向けて末広がりの態様とするもので,正面側の左右方向中央に,下面から周面全体の高さ略5分の1の筋状のリブを1つ,背面側の左右方向中央に,下面から周面頂部に及ぶ筋状のリブを1つ有しているのに対し,引用意匠は,全体を略垂直状とし,光源部から周面全体の高さの略4分の1の径をわずかに太く,それ以降の径をわずかに小さくし,それぞれを垂直状とし,その太径部に,同じ高さの筋状のリブを8本均等に配している点,(c)板バネ留め部周辺の態様について,本件登録意匠は,左右の切り欠き部下方に板バネ留め部を連続して設け,これにより,切り欠き部の高さが周面全体の高さの略8分の7に及ぶように見えるものとし,板バネ留め部となる切り欠き部下方の周面を,頂部から垂直平板状とし,下端を外周に向けて斜面状に張り出すことで縦長長方形状凹部を形成して,板バネの本体側取付片配置部とし,その取付片は,端子台が設置された本体部上面板から垂下状に延伸された,切り欠き部と同幅の長方形状薄板とするもので,左右の切り欠き部から張り出させ,上部を本体とネジ留めし,その下方に斜面部を一段形成したうえで垂直面を設け,その略中腹に板バネ留め部を設けた態様としているのに対し,引用意匠は,左右の延設部上部に,帯状板バネの幅に合わせた枠部を設け,そこに帯状板バネを填め込ませた態様とした点,(d)端子台について,本件登録意匠は,平面視略横長直方体状とし,本体部上面の後方に配しているのに対し,引用意匠は,平面視で僅かに縦に長い略直方体状とし,本体部上面の前方に配している点,において相違する。

4.本件登録意匠と引用意匠との類否
本件登録意匠と引用意匠の類否を判断するに当たっては,意匠を全体として観察することを要するが,この場合,意匠に係る物品の性質,用途,使用態様,さらに登録されたものである引用意匠の出願前の公知意匠にはない新規な創作部分の存否等を参酌して,取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分を意匠の要部として把握し,本件登録意匠と引用意匠が,意匠の要部において構成態様を共通にしているか否かを観察することを要する。
なお,請求人の主張するように,「意匠の審査基準」第2章新規性の22.1.3.1.2(4)(i)対比観察した場合に注意を引く部分か否かの認定及び評価の「(e)物品の流通時にのみ視覚観察される形態の評価」によれば,「使用時・設置時にはその一部が目にふれないような物品(例えば,一部が土に埋まるフェンスや,壁や天井に一部が埋め込まれる照明器具等。)の場合,物品の流通時にのみ視覚観察される部位が注意を引く程度は,原則として,その他の部位よりも小さい。」といった一般的な考え方について考慮した上で,両意匠を全体として観察して判断することはいうまでもない。
そこで,上記一致点の態様及び相違点の態様について,以下に公知意匠との対比も行い,検討する。
(1)一致点の検討
一致点(A)全体の構成について,本体部を略円筒状とし,本体左右から張り出す一対の帯状板バネを略逆「ハ」の字状に設け,本体下面を光源部とし,上面に端子台を有する構成とした態様は,乙第7号証の他,公知意匠1(特許庁意匠課が2002年10月11日に受け入れた,内国カタログ「三菱施設照明2002/2004」第498頁所載の天井埋め込み灯の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HC14050866号,平成14年度内国カタログNO,227),別紙第3参照)がある。
一致点(B-1)光源部における化粧枠の態様について,細幅のリング状化粧枠を外周方向に薄くなる斜面状に形成した態様は,乙第7号証,乙第10号証の他,公知意匠2(意匠登録第1096284号,別紙第4参照)がある。
一致点(B-2)略椀状反射面の態様について,略椀状反射面を4つ蛇の目状に円形透明板に接して設けた態様は,乙第14号証がある。
一致点(C)本体部について,端子台を囲繞し,本体部上面より高く周面を延設した点(C-1),延設部を端子台の高さと略同じに設けた点(C-2),延設部に,複数の矩形状切り欠き部を有する点(C-3),については,引用意匠の公知日と同じ日に公知となった,乙第26号証,乙第27号証,乙第28号証の他,公知意匠3(意匠登録第1293692号,別紙第5参照),引用意匠の実施例と考えられる公知意匠4(独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年9月3日に受け入れた日経BPマーケティングが発行した内国雑誌「日経アーキテクチャ858号第128頁に記載された「ダウンライト」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HA19012224号),別紙第6参照)があるが,いずれも本件登録意匠の出願日前の公知例ではあるものの,引用意匠の出願前公知のものではない。
一致点(D)本体部上面に略直方体状の端子台を配した点については,乙第16号証,乙第23号証の他,公知意匠5(特許庁特許情報課が2005年11月4日に受け入れた大韓民国意匠公報2005年7月25日 登録番号30-0382669-1号(特許庁意匠課公知資料番号HH17536625号),別紙第7参照)がある。
以上のとおり,両意匠一致する全体の構成や各部分について上記の公知意匠がそれぞれ別々に知られているところであるが,各部の態様が相俟って構成された態様についてみると,両意匠の出願前には,(A)から(D)までのすべてが一致するものはなく,光源部が一致する乙第14号証は,(A)の構成を有さず,延設部の有無の点でも相違する。
したがって,本件登録意匠と引用意匠には,引用意匠の出願前にはなかった(C)の態様に加え,一致点として揚げた(A)ないし(D)の要素を併せ持つ点において,一致点だけをみれば,本件登録意匠は,引用意匠の特徴を有していると一応みることもできる。
しかしながら,上記一致点(B)光源部,(C)本体部,(D)端子台の態様を具体的にみると,以下のような相違点があり,これら一致点をもって直ちに類否判断を決することはできず,加えて,板バネ留め部周辺の態様の相違点がある。
よって,以下,両意匠の相違点について検討する。
(2)相違点の検討
光源部における(a-1)の相違点は,化粧枠の幅の略2分の1となる平板状部を有しているか否かの相違であり,光源部における細幅の化粧枠の態様が一致しているとはいえ,設置した際に視認できる部分であることから,類否判断に一定の影響を与えるものということができる。しかしながら,(a-2)の発光ダイオードを有する基台部の態様の相違は,略椀状反射面の底部という奥まった部分で,面積も小さいことから,意匠全体の中では埋没する程度のものである。本体部における(b-1)の相違点は,直径対周面全体の高さの比率を,本件登録意匠が略2:3,引用意匠が略5:6とするもので,それほど大きな相違ではなく,各部の構成に比べ,類否判断に与える影響は小さいが,(b-2)の端子台を囲繞する延設部の態様における相違は,本件登録意匠が切り欠き部を3箇所に設け,大・中・小の3つの延設部とし,左右の切り欠き部が設けられた位置に板バネを配しているのに対し,引用意匠は,切り欠き部は前後の2箇所で,切り欠き部と同幅とする延設部を端子台の左右に設け,左右の延設部上部に板バネを配する態様としたもので,(c)の板バネ留め部周辺の態様における相違点と相俟って,本件登録意匠の左右の切り欠き部が下方に連続して切り欠き部の高さが周面全体の高さの略8分の7に及ぶように見えるものである点からも,引用意匠とは異なる視覚的効果を有する。
なお,請求人は,取り付けバネ部について,甲第5号証,甲第7号証,及び甲第9号証が本件登録意匠の出願前から公知となっており,特異性がなく,取引者の注意をさほど惹くものではない旨主張するが,そもそもこれら各甲号証の取付片部は,本件登録意匠のものと,その上部の左右取付片を連結する部分の形状において相違するうえに,需要者は,取付にかかわる部位であるので注意を向けないことはなく,本件登録意匠と引用意匠におけるバネ部の相違は,バネ部自体や取付片自体の形状のみならず,本件登録意匠が本体部の曲面による周面を削って平板状凹部を形成したところに設けられたもので,本体部自体の形状も完全な円筒ではなくなっており,さらに取付片が填め込まれているので円筒状との印象が相当程度弱められているのに対し,引用意匠は,左右の曲面状の延設部上部に,帯状板バネの幅に合わせた枠部を付加して設け,填め込ませたもので,本体部の円筒状の印象を弱めるものではないので,取り付けバネ部においても両意匠は異なる視覚的効果を有するものである。
(b-3)の周面全体の外形状における相違点は,わずかな広がり,段差,細いリブによるもので,視覚的効果は大きなものではないが,一定の評価をすることができる。また,(d)の端子台における配置等の態様の相違は,意匠全体からみれば部分的なものに過ぎず,類否に与える影響は小さい。
(3)まとめ
以上を総合すれば,本件登録意匠と引用意匠は,両意匠一致する(A)全体の構成や(B)光源部,(D)端子部について公知意匠がそれぞれ別々に知られているところであるが,引用意匠の出願前にはなかった本体部における(C)の態様,さらには,一致点(A)から(D)までの各部の態様が相俟って構成された態様について,本件登録意匠は,一応引用意匠の特徴を有しているとみることもできる。
しかしながら,上記一致点の態様を具体的にみると,相違点があり,とりわけ,延設部における(b-2)及び板バネ留め部周辺における(c)の相違点は顕著であり,設置後には視認されない部分であるが,このような埋め込み型の照明器具は,一般需要者が購入して自ら取り付けるようなものではなく,専門業者が施工するという使用態様を考慮すれば,需要者を施主ないしは工事発注者という一般需要者よりも広く施工行者や流通業者まで含めてとらえるべきであり,そうすると,延設部や板バネ留め部周辺といった,施工の安全性,容易性等に影響を及ぼす部位の具体的態様まで注意を惹くので,類否判断に大きな影響を与えるものである。また,相違点(a-1)及び(b-3)については,それらのみでは両意匠の類否判断に与える影響は小さいが,上記相違点に係る態様と相俟って,意匠の類否判断に影響を与えるものであるから,これらの相違点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は,両意匠の類否判断を左右するに十分のものである。
すなわち本件登録意匠は,引用意匠の新規な創作部分に係る態様を一定程度有しているが,そのままあらわしたものでなく,独自の新たな創作部分が加わることで,需要者の注意を惹く部分における意匠の外観が変更され,異なる視覚的効果が形成され,意匠全体としてみた場合,異なる美感を起こさせるものとなっている。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,その形態については,両意匠の一致点が類否判断に大きな影響を及ぼすものではないのに対し,相違点が類否判断に及ぼす影響は大きいので,類似するということはできない。

第5.結び
以上のとおり,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当せず,請求人の提出した証拠および主張によっては,本件登録意匠の登録は,同法第48条第1項に該当しないから,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-03-25 
出願番号 意願2009-15851(D2009-15851) 
審決分類 D 1 113・ 113- Y (D3)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 佑二 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 樋田 敏恵
北代 真一
登録日 2010-05-21 
登録番号 意匠登録第1390395号(D1390395) 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 吉田 親司 
代理人 中川 文貴 
代理人 岩切 淳 
代理人 小出 俊實 

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