ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 B1 |
---|---|
管理番号 | 1244640 |
審判番号 | 不服2011-4369 |
総通号数 | 143 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2011-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-02-28 |
確定日 | 2011-09-16 |
意匠に係る物品 | 弔事用シャツ |
事件の表示 | 意願2009- 11927「弔事用シャツ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2009年(平成21年)5月28日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した写真に現されたものによれば,意匠に係る物品は,「弔事用シャツ」であり,その形態は,願書の記載及び願書に添付した写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照) 第2 原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。 本願意匠は,シャツに係る創作であるが,当該物品分野において襟端部,袖端部及びポケット上端部等の端部に縁を設けることは極めて普通に行われているところ(参考意匠1及至5参照),本願意匠は,公知のシャツ(参考意匠6参照)に上記手法により前身頃片方及び襟横端に縁を設けたまでのものであって,この程度では容易に創作できたものと認められる。 参考意匠1(別紙第2参照) 特許庁総合情報館が1996年 5月 9日に受け入れた ドイツ意匠公報 1996年 2月10日 第627頁所載 シャツの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HH09024898号) 参考意匠2(別紙第3参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 7月 9日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 7月13日 掲載者 株式会社ワールド 表題 テープつきストライプシャツ TK(ティーケー) 掲載ページのアドレス http://directstyle.world.co.jp/webshop/index.html? CON=__detail_RECO__&SELECT_ORDER_NO=1WJ0220 に掲載された「シャツ」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ19029905号) 参考意匠3(別紙第4参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 7月17日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 7月20日 掲載者 株式会社ワールド 表題 ストライプシャツ TK(ティーケー) 掲載ページのアドレス http://directstyle.world.co.jp/webshop/detail. html?BRAND_CODE=170-00&ITEM_CODE=87300&PAGE=2&BRAND=TK%81i%83e%83B%81%5B%83P%81%5B%81j に掲載された「シャツ」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ19031810号) 参考意匠4(別紙第5参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 7月30日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 8月 3日 掲載者 株式会社ユナイテッドアローズ 表題 ZOZOTOWER | PHONO / ポロシャツ 掲載ページのアドレス http://zozo.jp/shop/cignq/goods.html?did=659918&cid=1865&pno=1 に掲載された「ポロシャツ」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ19035651号) 参考意匠5(別紙第6参照) 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年 9月 3日 受入日 特許庁意匠課受入2007年 9月 7日 掲載者 株式会社ワールド 表題 ストライプシャツ TK(ティーケー) 掲載ページのアドレス http://directstyle.world.co.jp/webshop/detail. html?BRAND_CODE=170-00&ITEM_CODE=87300&PAGE=3&BRAND=TK%81i%83e%83B%81%5B%83P%81%5B%81j に掲載された「シャツ」の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ19045274号) 参考意匠6(別紙第7参照) 特許庁総合情報館が2000年 8月23日に受け入れた 2000年 7月15日発行の大韓民国意匠商標公報 (CD-ROM番号:2000-16)に記載された 意匠登録 第 30-0260328号のシャツ (特許庁意匠課公知資料番号第HH14588105号) 第3 請求人の主張の要点 請求人は,請求書において,要旨以下のとおり主張した。 本願意匠は,クールビズに対応し,スーツの上衣を着用していなくても葬儀において失礼のないように創意工夫したものであり,白色半袖シャツに下記の具体的形態が併せ適用されている点を特徴とするものである。 (a)襟の下端部(首回り全体)及び前身頃縁部に形成された黒のライン。 (b)左胸ポケットの上端部に形成された黒のライン。 (c)左腕の袖端部に形成された黒のライン。 本願意匠は上記(a),(b)及び(c)の形態を併せ具備する点に独創性ある特徴を有するものであり,このうち(c)のシャツの袖部のうち左袖部にのみ喪章である腕章をイメージした黒ラインを施し,右袖部には施さない左右非対称なデザインは,「左腕にのみ巻くのが常識」とされる喪章である腕章をイメージしたものであり,葬儀用礼服の開発に従事する出願人(請求人)であればこそ創作し得たもので一般のシャツに係るデザイナーが創作し得たものではない。しかも,この左腕のみの袖端部を黒色としたことと(a)及び(b)の形態とが重なって認識されることにより,(a)の形態から黒色ネクタイを表しているとの連想が生まれ,また(b)の形態から黒色ポケットチーフを表しているとの連想が生まれるものである。 本願意匠は,前記(a),(b)及び(c)の形態を併せ具備することにより葬儀の場においてクールビズに対応すべく,喪服の上衣に欠かせない黒色ネクタイ(上記a)に加えて,黒色ポケットチーフ(上記b)及び喪章である腕章(上記c)の三品に見立てた黒色ラインを白色半袖シャツに施したものであり,スーツを着用していなくても失礼のないような弔事用シャツを提供すべく開発したものである。 前記(a),(b)及び(c)の形態を併せ具備したシャツは従来全く出現しておらず,当業者が引用意匠1乃至6の形態に基づいたとしても,弔辞用シャツの提供を全く意識していない引用各意匠から,前記(a),(b)及び(c)の形態を併せ具備した本願意匠を創作し得たとは到底いえない。 第4 当審の判断 本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠は,当事者であれば容易に創作をすることができたか否かについて検討し,判断する。 1.本願意匠 本願意匠は,葬儀などの弔事の際に着用する半袖のシャツであって,意匠に係る物品を「弔事用シャツ」とし,その形態は,(1)襟縁部,左前身頃縁部,左胸ポケットの開口上縁部,左袖の袖口部に,黒のラインを形成した前開きの白色の半袖シャツであって,(2)背中側の中央にタックを設け,前身頃の合わせを左前とし,そこにボタンを6つ配設し,襟部は台襟を有して襟先をやや鋭角とし,袖部は袖口に向かって漸次窄まり,胴部は脇回りから裾回りまで身幅を変えないストレート状とし,裾部も水平方向に直線状にカットしたストレート状とし,左右両脇の裾部にはスリット部を形成し,左胸部に下側2つの角部を隅丸に形成した縦長長方形状のポケット部を形成しており,(3)喉元から襟先と襟先から首回りに渡る襟縁部全体に,1条の等幅帯状の黒いラインを形成し,襟先部ではその形状に合わせて鋭角にとがって屈曲したラインとし,(4)最上部のボタンを配設した台襟部を除いた左前身頃の縁部分に,1条の等幅帯状の黒いラインを形成し,合わせ部に形成されたボタンには重ならない範囲に,正面視して黒いラインの右側に白色のボタンが縦列するように形成しており,(5)左胸ポケットの開口上縁部全体に,1条の等幅帯状の黒いラインを形成し,(6)左袖の袖口部全体に,1条の等幅帯状の黒いラインを,上記襟部,左前身頃縁部,ポケット部の黒いラインよりもやや幅広に形成したものである。 2.各参考意匠について 参考意匠1に形成された黒いラインについて,襟部の喉元から襟先,襟先から首回りに渡って1条の等幅帯状に形成されているが,襟縁からは狭い等幅の余白部を設けて黒いラインを形成し,また,襟先の形状が丸いことに伴い黒いラインが襟先においては丸く屈曲し,さらに,左右両胸ポケット部に形成された1条の等幅帯状の黒いラインについても,開口上縁部からは黒いラインと同程度の幅の余白部を設けた位置に形成されているものである。 参考意匠2,同3及び同5に形成された黒いラインについて,最上部のボタンを配設した台襟部を含む前身頃の縁部全体に形成された1条の等幅帯状の黒いラインであり,合わせ部のボタンは,そのライン中央に縦列して形成されているものである。 参考意匠4に形成された黒いラインについて,襟縁部に1条の等幅帯状に形成されているが,襟先から首回りに渡って形成されるものであり,袖口には,左右の袖両方に,1条のラインが等幅帯状に形成されているものである。 参考意匠6について,その形態は,合わせを右前とし,そこにボタンを5つ配設した前開きの白色半袖シャツとし,襟開きを広くして台襟は有さず,襟先は鋭角にし,袖部は袖幅をほぼ一定にし,胴部は脇回りから裾回りに向かって身幅を漸次大きくする裾広がりとし,前身頃の裾部を弧状にカットしたラウンド状とし,左右両裾部にスリット部はなく,左胸部においては別布を表面に縫い付ける態様とするポケット部はなく,また,喉元から襟先までの襟縁部に,1条の等幅帯状で,黒地に赤色の抽象模様の入ったラインを形成し,左胸部に,横1条の等幅帯状で,黒地に赤色の細い筋状の抽象模様の入ったラインを形成し,その下に小さなマーク模様を形成したものである。 3.本願意匠が容易に創作することができたか否かの判断 検討するに,まず,(2)の黒いラインの態様を除くシャツ全体の形態について,参考意匠6は,襟部における台襟の有無,袖部の窄まりの有無,胴部の広がりの有無,合わせを左前とするか右前とするか,裾部が直線状か弧状か,別布体のポケットが表面にあらわれるか否か等において,本願意匠とはその形態を異にするものである。次に,(1)の黒いラインの態様について,襟部,前身頃縁部,ポケット上縁部,袖口部の4つの部位ごとに検討するに,(3)の襟部について,参考意匠1は,ラインが襟の縁に形成されたものではなく,縁から余白部をもってラインが形成されている点,ラインが襟先部で角を丸くして屈曲している点において,ラインの位置と形状が本願意匠とは異なっており,参考意匠4は襟先から首回りに渡る部分にのみ,参考意匠6は喉元から襟先の部分にのみラインが形成され,ラインを形成する範囲が本願意匠とは異なっており,2つの参考意匠のラインの構成を組み合わせて初めて,本願意匠と同じ襟縁全体の範囲に形成されるラインとなるものであり,また,参考意匠6のラインには,本願意匠にはない細い筋状の抽象模様が形成されており,(4)の前身頃縁部については,参考意匠2,同3及び同5の全てについて同様に,ライン上端が最上部のボタンを配設した台襟部にまで及び,長さ方向上部におけるラインを形成する範囲が本願意匠とは異なっており,また,合わせ部のボタンがライン上に重なって形成され,ボタンとの配置関係として,幅方向におけるラインを形成する範囲も本願意匠とは異なっており,(5)のポケット上縁部については,参考意匠1は,ラインがポケットの縁に形成されたものではなく,縁から余白部をもってラインが形成されている点,ラインが両胸ポケットに及ぶ点において,ラインを形成する位置及び範囲が本願意匠とは異なっており,参考意匠6は,前身頃表面にはポケット部の形状があらわれていないことから,ポケット部との配置関係として,ラインを形成する範囲が本願意匠のラインとは異なっており,また,本願意匠のラインにはない赤色の細い筋状の抽象模様が形成されており,本願意匠とは異なっており,さらに,(6)の袖口部については,参考意匠4は両袖口に及んでラインを形成し,左袖のみにラインを形成する本願意匠とは,ラインを形成する範囲が異なっており,そうしてみると,参考意匠6のシャツ全体の形態は,そのままでは本願意匠の創作のベースとしたものということはできず,また,それぞれの黒いラインの態様についても,4つの部位のいずれにおいても,そのままで本願意匠の構成要素であるということができるラインの態様を有する参考意匠はないのであるから,参考意匠を組み合わせても,本願意匠の態様を導き出すことはできない。したがって,公知のシャツに,当該物品分野において極普通に行われている黒いラインの態様を単純に組み合わせれば,本願意匠の構成態様を容易に導き出すことができたものということはできない。 加えて,本願意匠の黒いラインは,襟縁全体,上端を除く左前身頃縁部,左胸のみのポケット開口上縁部全体,左袖のみの袖口部全体に構成されるところであり,この本願意匠の黒いラインの配置構成全体は,2つの参考意匠の単純な組み合わせによってできるものではなく,いくつもの参考意匠の黒いラインの構成を基にして,それらを複雑に足し引きしてようやくできるものであって,これをもって当業者が容易に創作することができたとは到底いえるものではない。 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。 第5 むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,同条同項により,拒絶すべきものとすることはできない。 また,更に当審において審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
|
審決日 | 2011-09-02 |
出願番号 | 意願2009-11927(D2009-11927) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(B1)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 佐々木 朝康 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 瓜本 忠夫 |
登録日 | 2011-10-21 |
登録番号 | 意匠登録第1427867号(D1427867) |
代理人 | 川角 栄二 |
代理人 | 福島 三雄 |
代理人 | 向江 正幸 |
代理人 | 高崎 真行 |