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審決分類 審判    D6
審判    D6
管理番号 1244654 
審判番号 無効2011-880001
総通号数 143 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2011-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-31 
確定日 2011-08-15 
意匠に係る物品 衣料用ハンガー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1396663号「衣料用ハンガー」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1396663号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は、結論同旨の審決を求めると申立て、その理由を要旨以下のとおり主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。

1.登録無効の理由の要点
登録第1396663号意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、甲第1号証および甲第2号証に記載された意匠(以下、甲第1号証に記載された意匠を「公知意匠1」といい、甲第2号証に記載された意匠を「公知意匠2」という。)と同一の意匠(当審注:審判請求書の「6.2登録無効の理由の要点(新規性の喪失)」には「同一又は類似の意匠」と記載されているが、これは審判請求書全体の趣旨から「同一の意匠」と認められる。)であり、意匠法第3条第1項第2号の規定により意匠登録を受けることができないものであるから、無効とすべきものである。

2.本件登録意匠の登録を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は、甲第11号証に示す意匠公報に記載するとおり、意匠に係る物品が「衣料用ハンガー」であり、その形態は図面に示す通りの構成である。
(2)対比と検討
(2-1)本件登録意匠と公知意匠1との対比、新規性の検討
(ア)意匠に係る物品について、本件登録意匠は「衣服用ハンガー」であり、公知意匠1は「水着用ハンガー」である。本件登録意匠に係る物品である衣服用ハンガーには水着用ハンガーも含まれるものである。したがって、本件登録意匠と公知意匠1とはその物品が同一である。
また、本件登録意匠の形態は、無模様の丸形ハンガーであり、色彩は特に特定していない。一方、公知意匠1の形態については、その色彩は白色透明で構成されているが、無模様の丸形ハンガーである点で本件登録意匠の模様と形状とは同一である。したがって、本件登録意匠の形態として特定している形状および模様と同一の形状および模様の意匠として公知意匠1が存在しているといえる。
(イ)本件登録意匠の新規性の検討
本件登録意匠の出願日は、平成21年10月9日である。これに対して公知意匠1は、これを掲載する甲第1号証に示す商品カタログが2007年度版である。
(ウ)したがって、このことと上記(ア)に述べる両意匠の同一性とに鑑みて、本件登録意匠は、その意匠登録出願前に刊行物に記載されている意匠と同一であるといえ、意匠法第3条第1項第2号の意匠に該当し(当審注:請求人は、審判請求書の第6頁の上から9行目において「意匠法第3条第1項第3号」と記載しているが、これは審判請求書全体の趣旨からみて、同条同項第2号の誤記と認められる。)、新規性を喪失していると考えられる。
(2-2)本件登録意匠と公知意匠2との対比、新規性の検討
(ア)本件登録意匠と公知意匠2についても、両意匠の意匠に係る物品が同一である。
また、その形態についても、本件登録意匠の形態として特定している形状および模様と同一の形状および模様の公知意匠2が存在しているといえる。
(イ)本件登録意匠の新規性の検討
本件登録意匠の意匠登録出願日は、平成21年10月9日である。これに対して公知意匠2は、これを掲載する甲第2号証に示す商品カタログの発行日が明示されていない。しかしながら、甲第3号証から甲第10号証に示すように、公知意匠2は、本件登録意匠の意匠登録出願日(平成21年10月9日)前に当該商品カタログの発行者である中央パッケージング工業株式会社から取引業者に販売されていることが明白であり、該取引業者内では同社が一般市場で公知意匠2を使用し、公開したものであると認識されている。
(ウ)したがって、このことと上記(ア)に述べる両意匠の同一性とに鑑みて、本件登録意匠は、その意匠登録出願前に刊行物に記載されている意匠と同一であるといえ、意匠法第3条第1項第2号の意匠に該当し(当審注:請求人は、審判請求書の第7頁の上から6行目において「意匠法第3条第1項第3号」と記載しているが、これは審判請求書全体の趣旨からみて、同条同項第2号の誤記と認められる。)、新規性を喪失していると考えられる。
(3)むすび
したがって、本件登録意匠は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された意匠、すなわち、公知意匠1及び公知意匠2に基づいて、「意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠」に該当するから、意匠法第3条第1項第2号の規定により意匠登録を受けることができないものであり、意匠法第48条第1項第1号に該当し、本件意匠登録は無効とすべきものである。

第2.被請求人の答弁
当審では、期間を指定して被請求人に答弁書の提出を求めたが、期間内に被請求人からは何らの応答もなされなかった。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、2009年(平成21年)10月9日の出願に係り、2010年(平成22年)8月13日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1396663号の意匠であって、願書の記載によれば、意匠に係る物品を「衣料用ハンガー」とし、その形態は、次のとおりとしたものである(別紙第1参照)。
すなわち、その基本的構成態様は(1)全体が、主に細い線材によって構成された略円形の外枠体と略「T」形の内枠体とからなる衣類係止用の枠体部と、その上端部において起立する吊り下げ部とで構成され、各部の具体的な態様は、(2)枠体部につき、内枠体は上辺を円弧状にたわませ、その両端部で下端を開口させた弧状部を介して外枠体と結合させ、外枠体の上部と内枠体の縦枠の中間位置にそれぞれ左右対称に一対の止部が形成されたものとし、(3)吊り下げ部は、上部が半円弧状で下部が斜状に形成され、その下方に枠体部と連結する筒状部と正面視略「π」字状に縁取られた台座部を備えたものとし、(4)その下方の外枠体に、外枠体を覆うように略楕円形部が設けられ、(5)外枠体の外周側に、ごく小さな三角形状の突起が左右及び上下に離れて一つずつ計4個設けられている。

2.公知意匠1
公知意匠1は、POPPY PACK CO.,LTD.が発行した商品カタログ「2007 DISPLAY RACK CATALOGUE」(甲第1号証)の、第25頁最下段右側の写真版に記載された水着用ハンガー(BH330)の意匠であり、その形態は次のとおりとしたものである(別紙第2参照)。
すなわち、その基本的構成態様は(1)全体が、主に細い線材によって構成された略円形の外枠体と略「T」形の内枠体とからなる衣類係止用の枠体部と、その上端部において起立する吊り下げ部とで構成され、各部の具体的な態様は、(2)枠体部につき、内枠体は上辺を円弧状にたわませ、その両端部で下端を開口させた弧状部を介して外枠体と結合させ、外枠体の上部と内枠体の縦枠の中間位置にそれぞれ左右対称に一対の止部が形成されたものとし、(3)吊り下げ部は、上部が半円弧状で下部が斜状に形成され、その下方に枠体部と連結する筒状部と正面視略「π」字状に縁取られた台座部を備えたものとし、(4)その下方の外枠体に、外枠体を覆うように略楕円形部が設けられ、(5)外枠体の外周側に、ごく小さな三角形状の突起が左右に離れて下方に一つずつ計2個設けられている。
ところで、この商品カタログには明示的な発行日等の記載はないが、その表紙頁上方の表題中に記載された「2007」の数字及びその下方中央の「2007年度 JSAキャンペーンガール」の記載から、本件登録意匠の出願前、遅くとも2007年度中には発行、頒布されたものと認められる。

3.公知意匠2
公知意匠2は、中央パッケージング工業株式会社が発行した商品カタログ第8版「CP-CATALOGUE Vol.7」(甲第2号証)の、第19頁下段右側の写真版に記載された水着用ハンガー(BH330N)の意匠であり、その形態は次のとおりとしたものである。
すなわち、その基本的構成態様は(1)全体が、主に細い線材によって構成された略円形の外枠体と略「T」形の内枠体とからなる衣類係止用の枠体部と、その上端部において起立する吊り下げ部とで構成され、各部の具体的な態様は、(2)枠体部につき、内枠体は上辺を円弧状にたわませ、その両端部で下端を開口させた弧状部を介して外枠体と結合させ、外枠体の上部と内枠体の縦枠の中間位置にそれぞれ左右対称に一対の止部が形成されたものとし、(3)吊り下げ部は、上部が半円弧状で下部が斜状に形成され、その下方に枠体部と連結する筒状部と正面視略「π」字状に縁取られた台座部を備えたものとし、(4)その下方の外枠体に、外枠体を覆うように略楕円形部が設けられ、(5)外枠体の外周側に、ごく小さな三角形状の突起が左右及び上下に離れて一つずつ計4個設けられている。
ところで、この商品カタログには発行日等の記載がなされておらず、その頒布時期が不明であり、また、請求人が発行日等を推認できる証拠として提出した甲第3号証ないし甲第10号証によっても、本商品カタログが本件登録意匠の出願前に発行され、頒布されたと直ちに推認することは困難である。しかしながら、これら甲第2号証ないし甲第10号証の各書証全体から、この商品カタログに記載された水着ハンガー(BH330N)と同一の形態を有する水着ハンガーの意匠が、品名を「55350000433025 BH330ハンガー(ナチュラル)レンタル」または「55350000633025 BH330ハンガー(ナチュラル)レンタル」と記載されて、本件登録意匠の出願前に請求人により販売され、公然知られるに至ったと認めることができる。

4.本件登録意匠と公知意匠1の対比及び同一か否かの判断
そこで上記認定を踏まえ、本件登録意匠とその出願前に発行・頒布されたと認められる甲第1号証の商品カタログに記載された公知意匠1とを対比すると、両意匠の意匠に係る物品は、ともに水着等を吊持する際に使用される衣服用ハンガーであって一致し、形態については、その基本的な構成態様(1)が一致し、各部の具体的な態様においても、(2)ないし(4)が一致しているので、両意匠の(5)の態様について、以下、検討する。
本件登録意匠が外枠体の外周に三角形状の突起を4個設けているのに対し、公知意匠1が外枠体の下方部に2個設けている点については、公知意匠1として右方の写真版に小さく現された形態を観察した場合には、外枠体の上方部においても2個の突起を認めることができるものであって、いずれにせよ、撮影の状況によってその突起が写るか否か左右される程度のごく小さな突起と認められることから、その突起の有無の差異は形態上の差異としてほとんど意味をなすものではない。
なお、公知意匠2が、その品名に公知意匠1に用いられた製品番号「BH330」を含むものであることから、公知意匠1と同一の意匠として販売され公然知られるに至っていると認められ、公知意匠2の商品カタログを参酌すれば、公知意匠1も「3.公知意匠2」で述べたとおり、突起が、外枠体の外周に4個設けられたものと認められる。
以上を総合すると、本件登録意匠と公知意匠1とは、基本的構成態様が一致し、具体的な態様も一致するというべきであるから、両意匠は形態において一致するものである。
そうすると、本件登録意匠と公知意匠1とは、意匠に係る物品が一致し、形態においても一致するものであるから、両意匠は同一の意匠である。
5.むすび
以上のとおりであって、本件登録意匠は、公知意匠1に基づき意匠法第3条第1項第2号に掲げる意匠に該当し、その意匠登録は同条同項柱書の規定に違反してされたものであるから、同法第48条第1項第1号の規定に該当し、その意匠登録を無効にすべきである。
よって、結論の通り審決する。
別掲
審理終結日 2011-06-07 
結審通知日 2011-06-24 
審決日 2011-07-07 
出願番号 意願2009-25160(D2009-25160) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (D6)
D 1 113・ 111- Z (D6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植山 陽子 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 瓜本 忠夫
杉山 太一
登録日 2010-08-13 
登録番号 意匠登録第1396663号(D1396663) 
代理人 芦北 智晴 
代理人 山口 修之 

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