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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010880015 審決 意匠
無効2010880018 審決 意匠

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審決分類 審判    D3
審判    D3
管理番号 1247921 
審判番号 無効2010-880009
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2011-12-05 
意匠に係る物品 照明器具用反射板 
事件の表示 上記当事者間の登録第1378188号「照明器具用反射板」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯
(1)本件意匠登録第1378188号の意匠(以下、「本件登録意匠」という。)は、被請求人より、平成21(2009)年2月9日に意匠登録出願(意匠に係る物品「照明器具用反射板」)され、平成21(2009)年12月18日に意匠権の設定の登録がなされたものである。
(2)請求人は、特許庁に対し、平成22年8月5日に(平成22年8月4日付審判請求書)本件無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成22年10月7日に審判事件答弁書(平成22年10月6日付審判事件答弁書)を提出した。
(4)これに対して、本件審判の合議体は、平成23年1月14日に通知書(平成23年1月12日付審理事項通知書)を請求人及び被請求人双方に送付した。
(5)その後、請求人は、平成23年2月22日に口頭審理陳述要領書(平成23年2月22日付口頭審理陳述要領書)、被請求人は、平成23年2月22日に口頭審理陳述要領書(平成23年2月22日付口頭審理陳述要領書)を提出した。
(6)本件審判の合議体は、平成23年2月22日に口頭審理を行った。

第2 本件登録意匠
本件登録意匠は、平成21年(2009年)2月9日の出願に係り、平成21年12月18日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1378188号の意匠であって、願書の記載並びに願書に添付した写真及び図面によれば、意匠に係る物品を「照明器具用反射板」とし、その物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形態」という。)は、願書に添付した写真により現され、図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 請求人の請求の趣旨及び理由
請求人は、意匠登録第1378188号の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との趣旨の無効審判を請求し、その理由として、要点以下のとおり主張し、証拠方法として、審判請求書につき、甲第1?第26号証(一部枝番を含む)、及び、口頭審理陳述要領書につき、甲第27?第30号証を提出した。
1.請求の理由の要旨
本件登録意匠は、平成21年2月9日に意匠登録出願されたものであるが、当該意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠又は当該意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1号又は第3号に該当し、同法第48条により登録を無効にすべきものである。

2.本件登録意匠と同一の意匠に係る製品製造の経緯(審判請求書2頁20行?4頁11行目)
(1)本件登録意匠の権利者である株式会社オプトデザイン(被請求人)と請求人とは、被請求人の開発したLEDフラットパネル製品についての被請求人と請求人とによる共同開発事業の是非を検討するに際し、秘密保持契約を平成19年12月13日に締結した(甲第4号証)。
そして、被請求人が所有するフラッター技術に係る「面照明光源装置」についての特許や意匠について、請求人に独占的通常実施権を許諾するライセンス基本契約を平成20年6月12日に締結した(甲第5号証)。
(2)請求人は、従来から電気掲示器を製造、販売し、平成20年1月頃この電気掲示器の光源をLEDに代え、当該LED光源を掲示器の内部上部に1列に配置した新S型掲示器を開発した。さらに、請求人は、被請求人にこの新S型掲示器の光源装置(光源及びその周辺の構造を含む)の改良を依頼し、その後、被請求人とは何度も協議を重ね、光源装置のSE型試作品を作った。
(3)これらのSE型試作品は、掲示面に輝度の均一性について未だ完全なものではなく、その上製造単価が高い等の理由から、平成20年9月中旬頃には「SE型用特殊リフレクターフラッター」と称した光源装置(エコ薄型掲示器に用いるSE型)(甲第2号証。別紙第2参照。)を開発し完成した。この開発にも請求人は被請求人に対して開発費用を支払い、両者で何回も打ち合わせ、製品改良を行っている。「SE型用特殊リフレクターフラッター」光源装置(但し、光源を除く部分)は、本件登録意匠とほぼ同一のものである。

3.本件登録意匠と「SE型用特殊リフレクターフラッター」の比較(審判請求書4頁2行?11行目)
本件登録意匠に対し、「SE型用特殊リフレクターフラッター」と称する、LED光源を除く光源装置は、全く同様の構成及び形状を有している。

4.「SE型用特殊リフレクターフラッター」と称した光源装置及び同光源装置を用いた電気掲示器「エコ薄型掲示器(SE型)」について(請求人口頭審理陳述要領書2頁1行?3頁20行目)
(1)「SE型用特殊リフレクターフラッター」と称した光源装置(請求人口頭審理陳述要領書2頁2行?3頁4行目)
当該光源装置(ただし、光源を除く部分)は、甲第2号証及び甲第27号証に示すように、内壁面が外側リフレクターとして形成された反射フード、一対の光偏向反射板からなる内側リフレクター及び点光源を設ける各穴の間が仕切られて、内側リフレクターが支持される仕切り反射板とによる構成である。
(2)電気掲示器「エコ薄型掲示器(SE型)」(請求人口頭審理陳述要領書3頁5行?20行目)
当該電気掲示器は、甲第27号証に示すように、箱型本体の内部の上部に、前記光源装置を配置し、本体の下方に光を照射する直下型方式で、箱型本体の両側面又は一側面に文字等を表示した表示板を設け、これらの表示板の裏面から光源を照射して、各表示板の表面の文字等を鮮明にするものである。
さらに詳しく述べると、前記光源装置は、SE型用特殊リフレクターフラッターとは別に設けた基板に、複数のLEDを間隔をあけて、一列に配して取付け、当該LED基板にSE型用特殊リフレクターフラッターを、反射フードの底部に設けた穴からLEDが顔を出すように取り付け、この状態でSE型用特殊リフレクターフラッターとLED基板を断面逆U字型のアルミ枠に収納、固定してLEDカセットとし、当該LEDカセットを箱体本体内の上部に取り付けたものである。また、箱体本体の一側面は扉式に成っており、電気掲示器を所定の場所に取り付けたり、ブレーカー等の電源スイッチを開閉したり、その他内部の点検、修理の際に扉を取り外すことができる。

5.本件登録意匠と同一の光源装置を含む電気掲示器の販売、取付(審判請求書4頁12行?5頁28行目)
(1)請求人は、「SE型用特殊リフレクターフラッター」光源装置の製品の製造を被請求人に依頼した。そこで、被請求人は、平成20年9月19日付け見積書(甲第9号証の1)を発行し、請求人は9月30日付けで発注書を被請求人に送り(甲第9号証の2)、これらの製品を同日受領した(甲第9号証の3)。そして、被請求人は平成20年9月30日付けの納品書兼請求書を請求人会社の多摩境テクノセンター(工場)宛発行し(甲第9号証の5)、その後、この代金は、請求人が他の機材の代金とともに被請求人に平成20年10月31日に支払っている(甲第9号証の4)。
(2)請求人は、光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」を用いて、電気掲示器である「エコ薄型掲示器(SE型)」(甲第7号証及び甲第27号証)を製造し、東日本旅客鉄道株式会社(以下、「JR東日本」という。)に4台販売した(甲第10号証の1及び2)。小規模工事となるため、請求人が直接、取付け作業を行った。場所は、一つはJR線舞浜駅のコンコースの電気掲示器であり、既設の電気掲示器を取り外し、前記「エコ薄型掲示器(SE型)」を1台取り付けるもので、この取付け作業は、平成20年12月8日の深夜から翌9日の午前6時までである(甲第10号証の3、5、7、8、9)。また、他は、JR線成田空港駅のコンコース及びホームの電気掲示器3台であり、これも、既設の電気掲示器を取り外し、「エコ薄型掲示器(SE型)」を取り付けるもので、この取付け作業は、平成20年12月11日の深夜から翌12日の午前6時まで及び同12日の深夜から翌13日の午前6時までである(甲第10号証の4、6、7、8、9)。これらの「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付けに当たっては、JR東日本の係員も内部の「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状、構造を確認している(審判請求書5頁2行?4行目)。
この様にして、光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、平成20年12月8日以降現在まで、JR線舞浜駅のコンコースの電気掲示器に取り付けられており、また、平成20年12月11日以降現在まで、JR線成田空港駅のコンコース及びホームの電気掲示器に取り付けられている。
(3)請求人は、光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」を用いて製造した前記「エコ薄型掲示器(SE型)」を他にもJR東日本に平成20年12月22日及び23日に販売した(甲第14号証の1?10、甲第15号証の1?10、甲第16号証の1?10)。ただし、この販売は、JR東日本が指定する工事業者(下請け業者を含む)に運送業者を介して納品した。
この場合は、販売台数が51台となり、工事規模が大きいため、請求人は「エコ薄型掲示器(SE型)」をJR東日本に販売するだけであり、当該電気掲示器の取付け作業は行っていない。取付け箇所は、JR線市ヶ谷駅及び目白駅のコンコース及びホームであり、市ヶ谷駅に26台、目白駅に25台である。取付工事業者は日本電設工業株式会社であり、市ヶ谷駅の取付工事については、平成21年1月12日、1月16日、1月17日、1月18日の何れも深夜から翌日の午前5時までに行った。また、目白駅の取付工事については、平成21年2月17日、2月19日、2月20日、3月3日の何れも深夜から翌日の午前5時までに行った。これらの「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付けに当たっては、JR東日本の係員も内部の「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状、構造を確認している。
この様にして、光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、平成21年1月18日以降現在まで、JR線市ヶ谷駅のコンコース及びホームの電気掲示器に取り付けられており、また、平成21年3月3日以降現在まで、JR線目白駅のコンコース及びホームの電気掲示器に取り付けられている。
(4)当該電気掲示器の取付け作業の具体的作業手順(請求人口頭審理陳述要領書3頁最終行?6頁下から4行目)。
天井直接取付け方法手順(請求人口頭審理陳述要領書4頁10行?5頁15行目)
a)工場出荷梱包状態
甲第28号証に示すように、箱型本体内に光源部を取付、扉を閉め た状態で、その外周必要箇所に緩衝材を当ててその上から包装紙で包 んで、梱包する。
b)現地でのSE型開梱状態
現地での梱包されている掲示器(SE型)を開梱する。
c)本体から扉を外す作業
掲示器下部のビスを緩めてから扉を外す。
d)扉を外した後の内部点検
e)本体からLEDカセット(LED光源部)を取外す。
本体からLEDカセットを引き離した状態で本体とカセットを繋ぐ 電源線が付いているので注意。このLEDカセットが取り付けられた 裏面の本体上板に取付け穴がある。
f)取外したLEDカセットの状態
g-1)電源線の本体への引き込み
電源線を本体内に引き込む。
h-1)天井ボルト取付け/確認
天井から垂下しているボルトを本体の上板の取付け穴に通して、本 体上板を天井に当て、当該ボルトが本体内部に突出していることを確 認する。
i-1)天井ボルトと本体の締め付け
天井から垂下したボルトにナットを螺着し、当該ナットを締め付け て本体を天井に固定する。
j)本体にLEDカセットコネクターを取付け
LEDカセットから導出されたリード線の先端のコネクターを本体 の電源部に接続する。
k)本体にLEDカセット取り付け
本体から一度外したLEDカセットを、本体内部にセットしてビス により取り付ける。
l)電源線のつなぎ込み
本体内のブレーカーへ電源線を接続する。
m)点灯確認/内部確認
n)本体に扉を取り付け
o)据付完了

パイプ吊り下げ方法手順(請求人口頭審理陳述要領書5頁16行?最終行目)
前記a)?d)までは同様の作業
g-2)電源線の引き込み
電源線を本体内に引き込む。
h-2)吊りパイプ取り付け/確認
二本の吊りパイプの下端を本体の両端側面にあて、本体内部からボ ルトを本体の両端側面に穿った穴を通して吊りパイプに設けられた埋 め込みナットに螺着し、これを確認する。
i-2)吊りパイプと本体締め付け
前記ボルトを締め付けて本体を二本の吊りパイプに固定する。
以下前記l)?o)と同様の作業。
(5)前記の取付け作業におけるJR東日本の係員の内部の形状及び構造の確認状態について(請求人口頭審理陳述要領書6頁下から3行?8頁10行目)
平成21年1月12日、16日17日18日に行われたJR市ヶ谷駅への「エコ薄型掲示器(SE型)」の26台の取付けにおいてJRの係員は、取付工事に立ち会い、作業を傍らで監視していた。「エコ薄型掲示器(SE型)」取り付ける場合、特に天井部に直に取り付ける場合は、製品として出来上がっているものの扉を開けて本体内部を露出し、さらにLED光源部(LEDカセット)を本体から一旦取り外し、本体を天井に取り付け、固定してからLED光源部を本体に取り付ける。従って、LED光源部である「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、現場の床等に一旦置かれるため、前記係員はその外形を確認している。また、「エコ薄型掲示器(SE型)」の本体の取付け、扉の取付けが行われ、作業が終了するまで、作業を確認している。
また、「エコ薄型掲示器(SE型)」をパイプに吊り下げる場合、壁に取り付ける場合でも、「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付けに当たっては、一旦、本体の扉をあけて、扉を外し、この状態で本体の中からボルトやナットで吊り下げパイプや壁に本体を固定する。従って、本体内部の「SE型用特殊リフレクターフラッター」は本体内上部に露出されており、作業者等が中をのぞけば、その形状及び構造は分かる。

6.本件登録意匠の出願前公知の事実(審判請求書5頁下から5行?6頁18行目)
被請求人と請求人との間で販売された前記光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」に関しては、内部構造についての秘密保持の契約はない。この点について、被請求人は、前記秘密保持契約及び前記ライセンス基本契約の範囲外のものであることを、平成20年9月?12月の両者の打ち合わせにおいて主張し(甲第8号証の1?3)、少なくとも請求人に対して、光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」を平成20年9月30日には公然と販売し、その時点で請求人会社では、複数の社員が光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」を目にしている。従って、本件登録意匠は、当該意匠登録の出願日である平成21年2月9日前に秘密の状態を脱している。
また、請求人と前記JR東日本との間の光源装置「SE型用特殊リフレクターフラッター」を用いた「エコ薄型掲示器(SE型)」の電気掲示器の、本件意匠の出願前の譲渡についても、内部構造についての秘密保持の契約はない。また、JR東日本では、「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付けに際しても、内部の光源装置である「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状や構造を確認している。
さらに、JR東日本は前記各駅において、当該電気掲示器の不具合や故障に際し、自ら又は工事業者により当該電気掲示器の側面板を開け、内部の点検、修理を行っており、内部の光源装置の構造を隠したりして行うものではない。従って、この様な修理等の工事の際、工事業者、旅客等の不特定多数の者が内部の光源装置の構造を見られる状態で行っている。

7.結語(審判請求書6頁19行?26行目)
以上のように、本件登録意匠の出願日である平成21年2月9日より前に、本件意匠とほぼ同一の形状を有する「SE型用特殊リフレクターフラッター」は電気掲示器の光源に使用されており、これらの光源装置である「SE型用特殊リフレクターフラッター」及びこれを用いた電気掲示器「エコ薄型掲示器(SE型)」は公然と知られたものである。
従って、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号又は3号に該当し、登録を無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする趣旨の答弁をし、その理由として、要点以下のとおり主張し、証拠方法として、審判事件答弁書につき、乙第1号証及び乙第2号証及び口頭審理陳述要領書につき、乙第3号証?乙第6号証を提出した。
1.被請求人の開発した「LEDフラットパネル製品」について(被請求人口頭審理陳述要領書2頁18行?5頁8行目)
「被請求人は、従来、LEDの点光源を掲示面(パネル)全体に均一(フラット)に行き渡るように拡散する光拡散技術を有しており、かかる技術を応用した光拡散部品を『LEDフラットパネル製品』として、開発してきました(乙第3号証)。従来の『LEDフラットパネル製品』は、例えば特許第4280283号(特願2006-348670)に示されるような『面照明光源装置』などがあり、『フラッターユニット』のように称されてきました。」(被請求人口頭審理陳述要領書2頁21行?2頁26行目)
「ところが、従来の『フラッターユニット』を光拡散部品として用いた新・S型掲示器の試作モデルでは光の均一化(フラット化)が不十分であったため、さらに当該光拡散部品の改良を進め、『被請求人(オプトデザイン)』は、リフレクタ(反射)方式という新しい光拡散技術を用いた光拡散部品を開発しました。この光拡散部品が、従来の『フラッターユニット』ないし『フラッター』とはまったく異なる『SE型用リフレクター』ないし『SE型用特殊リフレクターフラッター』であり、同製品が組み込まれた掲示器はSE型掲示器(エコ薄型掲示器)と称されることになりました(審判請求書3頁15行?19行目)。」(被請求人口頭審理陳述要領書3頁11行?17行目)
「『LEDフラットパネル製品』は、『点発光のLED光源から均質な面発光を実現する光拡散部品』を指しており、『被請求人(オプトデザイン)』が開発した『SE型用リフレクター(請求人が『SE型用特殊リフレクターフラッター』と称しているもの)』が含まれることは明らかであります。」(被請求人口頭審理陳述要領書4頁24行?27行目)

2.平成20年9月30日の、「SE型用リフレクターフラッター」製品の被請求人から請求人への納品について(答弁書13頁4行?15頁14行目)
[秘密保持義務の存在](答弁書13頁6行?15頁14行目)
(1)甲第4号証(「秘密保持契約書」)に示すように、被請求人と請求人との間では秘密保持契約が締結されており、平成20年9月30日の時点でも有効であるから、請求人には秘密保持義務がある以上、本件登録意匠が「公然知られた」とすることはできない。
すなわち、本件登録意匠に係る照明器具用反射板(SE型用特殊リフレクターフラッター)は、「甲(被請求人)の開発したLEDフラットパネル製品」であり、公開前の本件登録意匠の内容は「甲と乙(請求人)とによる共同開発事業の是非を検討する目的において、自己が保有する情報」(甲第4号証「秘密保持契約書」第1条参照)に該当するものであるから、「相手方(請求人)に対して開示または提供」されたとしても、「被開示者(請求人)はこれを秘密情報として開示または提供を受け」ている(甲第4号証「秘密保持契約書」第1条?第3条第1項参照)。
なるほど、本件登録意匠は、「ライセンス基本契約書」(甲第5号証)の範囲外といえるし、甲第8号証の2(「(株)オプトデザインとの打ち合わせ・議事録」)より、被請求人は、SE型掲示器(SE型用特殊リフレクターフラッターを内部に組み込んだ掲示器を指すものと思われる。)がライセンス範囲外であることを認めている。しかし、「ライセンス基本契約」の範囲外であることを両者間で認識している事実はあっても、「秘密保持契約」の範囲外であることまでは、何ら記載も示唆もない。
(2)秘密保持義務のある相手方に販売することが「公然」」とはいえないことは明らかであるし、特許法の規定とは異なり、「販売」という実施行為だけで新規性を喪失するようなことはない。
(3)したがって、請求人会社で複数の社員が「SE型用特殊リフレクターフラッター」を目にしようとも、それは「秘密保持義務」の及ぶ範囲内の事実であるから、何ら「公然知られた」ことにはならない。
以上より、本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

3.平成20年12月8日、同11日及び同12日の、「エコ薄型掲示器(SE型)」の請求人からJR東日本への販売、及びJR舞浜駅・成田空港駅への取付け作業について(答弁書15頁14行?19頁13行目)
[内部の視認性](答弁書15頁14行?17頁20行目)
(1)請求人は、「SE型用特殊リフレクターフラッター」(甲第2号証参照)を用いて製造した「エコ薄型掲示器(SE型)」(甲第7号証参照)をJR東日本に販売した旨、主張している(審判請求書第4頁第22?24行)点、甲第10号証の1(「納品・発送(製造本部控」)及び甲第10号証の2(「納品・発送(製造本部控)」)によって、当該掲示器が「SE型用特殊リフレクターフラッター」を実際に用いたものかどうかは確認できない。
(2)請求人は、「これらのエコ薄型掲示器(SE型)の取付けに当たっては、JR東日本の係員も内部の「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状、構造を確認している。」と主張している(審判請求書5頁2行?4行目)点につき、本件登録意匠に係る「照明器具用反射板」は、掲示器に使用される場合も、「背面をネジ等でケーシング内に固定し、正面手前側上面および下面に、光の透過を制限・調整する透過部材をさらに組み合わせて」使用される(甲第1号証参照)ものであるから、その背面、正面手前側上面および下面(平面および底面)は外部から視認できない。「側断面詳細」図(甲第7号証9頁)で明らかなように、扉固定用ネジを完全に取り外し、かつLED光源部のネジ固定を外しでもしない限り、その形状および構造を確認することは不可能である。「扉の外し方」を表した図(甲第7号証10頁)に示すように、扉上部を外したとしても、LED光源部がまったく見えないか、わずかな隙間から平面ないし底面の一部が見え得るのみであり、背面および両側面を視認することはできない。電気掲示器取替工事施工前後の写真(甲第10号証の9「工事写真帳」)において、「SE型用リフレクターフラッター」の形状及び構造が分かるような写真は存在しない。
特に、夜間における迅速な取付け作業が求められる現場において、「SE型用リフレクターフラッター」部のネジ固定を取外してその形状及び構造を確認することは考えられず、「保安確認書」(甲第11号証「証明願」17頁)内で「保安打合せ票等で承認された作業以外は行いません。」と取決めされていることからも、立会いのJR東日本の係員に「SE型用リフレクターフラッター」を取外してその形状及び構造を見せるようなことは到底考えられない。
(3)なお、甲第11号証(「証明願」)に示すように、取り替え工事の際に「LED光源部」を含めて内部構成を目視し、確認しているとの証明がなされているが、この証明者は、「JR東日本千葉電力技術センター所長」であり、工事の打合せ参加者でも立会人でもない。かかる者が意思決定者としての権限を有することと事実を証明できる立場にあることとは別のことである。したがって、甲第11号証は証明力のない資料である。
仮に証明力が認められたとしても、意匠法第3条第1項第1号の「公然知られた意匠」とは、その意匠が一般第三者たる不特定人又は多数者にとって、単に知りうる状態にあるだけでは足りず、現実に知られている状態にあることを要し、「SE型用リフレクターフラッター」の形状及び構造を確認したなどの特段の事情がない限り、「公然知られた意匠」ということはできない。
(4)以上より、「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付けに立ち会ったJR東日本の係員は、「SE型用リフレクターフラッター」の形状及び構造を確認することはできないから、上記事実によって本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

[秘密保持義務の存在](答弁書17頁21行?18頁24行目)
(1)請求人が「SE型用リフレクターフラッター」を掲示器から取り外してその形状及び構造をJR東日本の係員に確認させていたような場合であっても、乙第2号証(被請求人「株式会社新陽社」の大塚省三氏から請求人「株式会社オプトデザイン」宛の送信メールを転送したメールの写し)により、JR東日本には、秘密保持義務が認められる。
(2)甲第4号証の秘密保持契約書第2頁、第6条第2項によれば、「前条の規定に従って第三者(JR東日本)に秘密情報が開示された場合、被開示者(株式会社新陽社)は、第三者に自己と同様の秘密保持義務を課する。」とある。したがって、被請求人で開発を進めたと述べている「新・S型掲示器」の試作モデルの検証報告の際(甲第6号証「新・S型掲示器の試作モデルの検証結果について・報告」)に言及された「『新・S型掲示器』に適用する、光拡散方式は、特許出願・ライセンス契約中の技術です。取り扱いに関しては、ご配慮の程お願い致します。」(同報告書3頁「5.まとめ(5)」)といった趣旨の取決めが、「SE型用リフレクターフラッター」の取り扱いの際にも行われていることは当然期待される。
そうとすれば、当然、請求人は、JR東日本に対しても、「SE型用リフレクターフラッター」部分が「秘密情報」であるとして、取り扱いについて厳密に管理すべき「秘密保持義務」を負わせているはずであり、明文の約定がなくとも、JR東日本には社会通念上又は商慣習上、「秘密保持義務」を負うべき立場にある者である。(甲第4号証「秘密保持契約書」2頁、第6条第2項)
(3)したがって、このような立場にある者に「SE型用リフレクターフラッター」の形状及び構造が知られたからといって、本件登録意匠が「公然知られた意匠」であるとはいえない。

[新規性の喪失の例外の適用](答弁書18頁25行?19頁13行目)
(1)請求人側で、被請求人に対し乙2号証(被請求人「株式会社新陽社」の大塚省三氏から請求人「株式会社オプトデザイン」宛の送信メールを転送したメールの写し)に示されるような約束をしていたにもかかわらず、「SE型用リフレクターフラッター」が「秘密情報」であるとして取り扱いに際し厳密な管理を要求していなかった場合、JR東日本に「SE型用リフレクターフラッター」を開示する請求人の行為は「被開示者(請求人、株式会社新陽社)の責」によって公知とするものであり、「秘密保持義務」違反を構成するものである。(甲第4号証「秘密保持契約書」2頁、第4条(3)、第5条第6条第1項及び第2項)
このような、秘密保持義務違反行為によって、JR東日本へ「SE型用リフレクターフラッター」の形状及び構造が開示されたとしても、そのような開示は、秘密を保持して欲しいという、「意匠登録を受ける権利を有する者」の「意に反して」「公然知られた」ものということができる。そして、本件登録意匠は、平成21年2月9日に意匠登録出願されているから、「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR舞浜駅への取り付け工事が行われた、平成20年12月8日から6ヶ月以内に出願されたものである。
(2)したがって、意匠法第4条第1項に規定する、新規性の喪失の例外適用を受けることができ、本件登録意匠は意匠法第3条第1項第1号に該当するに至らなかったものとみなされる。
以上より、上記事実によって本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

4.平成20年12月22日及び23日の、「エコ薄型掲示器(SE型)」の請求人からJR東日本への販売について(答弁書19頁14行?20頁8行目)
(1)請求人は、「SE型用特殊リフレクターフラッター」を用いて製造した「エコ薄型掲示器(SE型)」をJR東日本に販売した旨、主張している点(審判請求書5頁9行?13行目)、甲第12(電気掲示器の「見積照会票兼見積書」)、14(電気掲示器の「注文書」)、15(電気掲示器の「注文請書」)、16号証(電気掲示器の「納品書(控)」)によって、当該掲示器が「SE型用特殊リフレクターフラッター」を実際に用いたものかどうかは確認できない。
しかし、上述のとおり、JR東日本には契約上ないし社会通念上又は商慣習上の「秘密保持義務」が認められるし、そのような義務を課していなくとも、JR東日本が「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状及び構造を確認することで本件登録意匠が「公然知られた」状態になることは、「意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して」公然知られることとなったものであるから、意匠法第4条第1項にいう「新規性の喪失の例外」が適用される。
(2)請求人は、「この販売は、JR東日本が指定する工事業者(下請け業者を含む)」に運送業者を介して納品した。」と主張している(審判請求書5頁12行?13行目)が、当該事実は甲号証(甲第12?16号号証)において確認できないし、仮にその事実があったとしても、かかる者が掲示器を分解して「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状及び構造を確認するような立場にないことは明らかである。また、JR東日本と同様の契約上ないし社会通念上又は商慣習上の「秘密保持義務」が認められるし、秘密保持義務なき場合も、かかる者への意匠の開示は意匠法第4条第1項にいう「新規性の喪失の例外」が適用される。
(3)以上より、上記事実によって本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

5.日本電設工業株式会社による、平成21年1月12日、1月16日、1月17日、1月18日の、JR市ヶ谷駅への取付け作業、及び平成21年2月17日、2月19日、2月20日、3月3日の、JR目白駅への取付け作業について(答弁書20頁9行?21頁下から2行目)
(1)甲第8号証の2(「(株)オプトデザインとの打ち合わせ・議事録」)、甲第17号証(「現場内容説明会記録」)、甲第18号証(「保安確認書」)、甲第20号証の1ないし5(「保安打合せ票」)等によっても、当該掲示器が「SE型用特殊リフレクターフラッター」を実際に用いたものかどうかは確認できない。
(2)日本電設工業株式会社の作業内容は、請求人が直接JR舞浜駅及び成田空港駅で行った「取付け作業」と同様、旧来の「電気掲示器撤去」と「LED掲示器新設」であるが、そうであれば、上述のとおり、「SE型用特殊リフレクターフラッター」を掲示器から外してその形状及び構造を確認したなどの特段の事情がない限り、「公然知られた意匠」ということはできない。
(3)甲第17号証に示す現場内容説明会等において、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状及び構造を、仕様書等を示して説明したことも考えられるが、そうだとしても、JR東日本は「SE型用特殊リフレクターフラッター」部分が意匠登録出願に係る製品であり、取り扱いに関しては十分配慮するよう説明をしているものと考えれる(甲第6号証「新・S型掲示器の試作モデルの検証結果について・報告」3頁「5.まとめ(5)」)。
とすれば、日本電設工業株式会社にも、JR東日本と同様の契約上ないし社会通念上又は商慣習上の「秘密保持義務」が認められる(甲第4号証「秘密保持契約書」2頁、第5条第6条第1項及び第2項)し、秘密保持義務なき場合も、かかる者への意匠の開示は意匠法第4条第1項にいう「新規性の喪失の例外」が適用される。
(4)請求人は、「これらのエコ薄型掲示器(SE型)の取付けに当たっては、JR東日本の係員も内部の「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形状、構造を確認している。」と主張している(審判請求書5頁23行?24行目)点も、上述と同様、JR東日本には契約上ないし社会通念上又は商慣習上の「秘密保持義務」が認められるし、秘密保持義務なき場合も、かかる者への意匠の開示は意匠法第4条第1項にいう「新規性の喪失の例外」が適用される。
(5)なお、甲第26号証(「証明願」)に示すように、取り替え工事の際に「LED光源部」を含めて内部構成を目視し、確認しているとの証明がなされているが、この証明者は、「日本電設工業株式会社鉄道統括本部電力支社長」であり、現場内容説明会の参加者、工事責任者、作業責任者、現場代理人、監督員、その他の工事関係者のいずれにも該当しない。かかる者が意思決定者としての権限を有することと事実を証明できる立場にあることとは別のことである。したがって、甲第26号証は証明力のない資料である。
(6)いずれにしても、上述の理由により、上記事実によって本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

6.「SE型用特殊リフレクターフラッター」が、平成20年12月8日以降現在までJR舞浜駅のコンコースにおいて、平成20年12月11日以降現在までJR成田空港駅のコンコース及びホームにおいて、平成21年1月18日以降現在までJR市ヶ谷駅のコンコース及びホームにおいて、平成21年3月3日以降現在までJR目白駅(なお、答弁書では「JR市ヶ谷駅」と記載されているが、正しくは「JR目白駅」とすべき誤記である。)のコンコース及びホームにおいて、電気掲示器に取り付けられている事実について(答弁書21頁最終行?22頁下から4行目)
(1)請求人は、「JR東日本は前記各駅において、当該電気掲示器の不具合や故障に際し、自ら又は工事業者により当該電気掲示器の側面板を開け、内部の点検、修理を行っており、(中略)この様な修理等の工事の際、工事業者、旅客等の不特定多数の者が内部の光源装置の構造を見られる状態で行っている。」(審判請求書6頁13行?18行目)と主張している点、まず、「SE型用特殊リフレクターフラッター」が電気掲示器に取り付けられている状態においては、その形状および構造を確認することは不可能であるから、この状態で本件登録意匠が不特定多数の者に「公然知られ」ることはない。
また、掲示器の不具合や故障の際に内部の点検及び修理を行うことはあるとしても、点検や修理が行われたという証明はなされていない。また、意匠法第3条第1項第1号の「公然知られた意匠」とは、その意匠が一般第三者たる不特定人又は多数者にとって、単に知りうる状態にあるだけでは足りず、現実に知られている状態にあることを要し、「SE型用リフレクターフラッター」を掲示器から外してその形状及び構造を確認したという証拠がない限り、「公然知られた意匠」ということはできない。もっとも、その証拠についても、契約上ないし社会通念上又は商慣習上の「秘密保持義務」を有する者の証明では、「公然知られた」ことにはならないし、秘密保持義務なき者が証明できたとしても、平成21年2月9日前6ヶ月以内のかかる者への意匠の開示は、意匠法第4条第1項にいう「新規性の喪失の例外」が適用される。
(2)以上より、上記事実によって本件登録意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である。

7.むすび(答弁書22頁下から3行?23頁2行目)
以上述べましたように、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号又は第3号に該当しない。
以上の次第ですので、本件無効審判請求は成り立たない。

第5 当審の判断
無効理由(意匠法第3条第1項第1号・第3号違反)について
[1]本件登録意匠と「SE型用特殊リフレクターフラッター」意匠との類否
請求人は、「本件登録意匠の出願日である平成21年2月9日より前に、本件意匠とほぼ同一の形状を有する『SE型用特殊リフレクターフラッター』は電気掲示器の光源に使用されており、これらの光源装置である『SE型用特殊リフレクターフラッター』及びこれを用いた電気掲示器「エコ薄型掲示器(SE型)」は公然と知られたものである。」と主張することから、まず、本件登録意匠と「SE型用特殊リフレクターフラッター」意匠(以下、「甲号意匠」といい、内部構造の説明等に係るときは、そのまま「SE型用特殊リフレクターフラッター」という。)との類否について検討する。
1.本件登録意匠
本件登録意匠は、前記「第2 本件登録意匠」の項で記載したとおりであり、その形態の具体的な態様については(なお、形態の認定に当たって、反射フードのLEDを通す貫通孔側を上部として、下方を開放した状態で、「平面図」を正面側、「背面図」を平面側、「正面図」を底面側としながら、他の図面も、それに揃えて認定する。)、以下のとおりである。
(A)全体は、下方が開放する縦断面略半円形状で、左右方向に奥行の約6倍弱の長さを有して、左右両側面に略半円板状の側板を嵌め込んだ反射フードと、その反射フードの内側において、反射フードの下半部に、反射フードの長手方向に沿って、一対の略横長長方形状の光偏向反射板を略逆「ハ」の字状に設け、また、その光偏向反射板を支持しながら、反射フードの内側を左右方向に6等分に仕切り、反射フードの左右両側板と同形状とする略半円板状の仕切り反射板を5枚嵌め込んだものである。
さらに各部の具体的構成態様として、
(B)反射フードにつき、反射フードの上部で、仕切り反射板で仕切られる中間位置に、略正方形状のLED貫通孔を等間隔に計6個設け、左右の両側板が、それぞれ反射フードの左右端より僅かに内方位置とし、その左右両側板の下部が、それぞれ反射フードの長手方向の前後の下辺より下方にやや突出して水平状とし、その両端を弧状とし、上部が、反射フードの上部頂点より前後にやや下がった位置から、それぞれ前後対称状に上方に突出し、それぞれ上辺が水平状で、外側の側辺が垂直状、内側の側辺が傾斜する略変形四角形状とした突片を設けたものである。
(C)光偏向反射板の左右両端は、光偏向反射板の下半部分と上端部分とが、反射フードの左右両側板から、僅かに外方向に突出する突起部を形成したものである。
(D)各仕切り反射板は、反射フードの左右両側板と同形状とし、仕切り反射板の下部が、それぞれ反射フードの長手方向の前後の下辺より下方にやや突出して水平状とし、その両端を弧状とし、上部が、反射フードの上部頂点より前後にやや下がった位置から、それぞれ前後対称状に上方に突出し、それぞれ上辺が水平状で、外側の側辺が垂直状、内側の側辺が傾斜する略変形四角形状とした突片を設けたものである。

2.甲号意匠
甲号意匠は、甲第2号証の「SE型用特殊リフレクターフラッター」の意匠であり、その写真及び図面によれば、意匠に係る物品を、「光源装置用反射板」とし、その形態は、写真により現され、図面に記載されたとおりである(別紙第2参照)。すなわち、形態の具体的な態様については(なお、甲号意匠の形態の認定に当たっては、本件登録意匠の形態の認定における写真等の配置の向きに揃えて認定する。)、以下のとおりである。
(a)全体は、下方が開放する縦断面略半円形状で、左右方向に奥行の約6倍弱の長さを有して、左右両側面に略半円板状の側板を嵌め込んだ反射フードと、その反射フードの内側において、反射フードの下半部に、反射フードの長手方向に沿って、一対の略横長長方形状の光偏向反射板を略逆「ハ」の字状に設け、また、その光偏向反射板を支持しながら、反射フードの内側を左右方向に6等分に仕切り、反射フードの左右両側板と同形状とする略半円板状の仕切り反射板を5枚嵌め込んだものである。
さらに各部の具体的構成態様として、
(b)反射フードにつき、反射フードの上部で、仕切り反射板で仕切られる中間位置に、略正方形状のLED貫通孔を等間隔に計6個設け、左右の両側板が、それぞれ反射フードの左右端より僅かに内方位置とし、その左右両側板の下部が、それぞれ反射フードの長手方向の前後の下辺より下方にやや突出して水平状とし、その両端を弧状とし、上部が、反射フードの上部頂点より前後にやや下がった位置から、それぞれ前後対称状に上方に突出し、それぞれ上辺が水平状で、互いに外側の側辺が垂直状、内側の側辺が傾斜する略変形四角形状とした突片を設けたものである。
(c)光偏向反射板の左右両端は、光偏向反射板の下半部分と上端部分とが、反射フードの左右両側板から、僅かに外方向に突出する突起部を形成したものである。
(d)各仕切り反射板は、反射フードの左右両側板と同形状とし、仕切り反射板の下部が、それぞれ反射フードの長手方向の前後の下辺より下方にやや突出して水平状とし、その両端を弧状とし、上部が、反射フードの上部頂点より前後にやや下がった位置から、それぞれ前後対称状に上方に突出し、それぞれ上辺が水平状で、外側の側辺が垂直状、内側の側辺が傾斜する略変形四角形状とした突片を設けたものである。

3.両意匠の類否判断
両意匠は、意匠に係る物品が、ともに照明器具用の反射板であって、同一で、形態についても、同一であるから、意匠全体として美感が一致し、同一である。

[2]甲号意匠が本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」であるか否かについて
ところで、請求人は、本件登録意匠を無効とすべき請求の理由について、本件登録意匠は、当該意匠登録出願前に日本国内において公然知られた意匠又は当該意匠に類似する意匠であり、意匠法第3条第1項第1号又は3号に該当し、同法48条の規定により登録を無効にすべきものである旨主張し、本件登録意匠と同一である甲号意匠につき、「本件意匠の出願日である平成21年2月9日より前に、本件意匠とほぼ同一の形状を有する『SE型用特殊リフレクターフラッター』は電気掲示器の光源に使用されており、これらの光源装置である『SE型用特殊リフレクターフラッター』及びこれを用いた電気掲示器『エコ薄型掲示器(SE型)』は公然と知られたものである。」(審判請求書6頁20行?24行目)と主張するのに対して、一方の被請求人は、「本件意匠が公然知られたとする請求人の主張は失当である」(審判事件答弁書22頁24行)旨主張し、甲号意匠が、本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」であるか否かが主要な争点とするところであり、この点、本件登録意匠の無効理由の成否に大きな影響を及ぼすものであるから、次に、甲号意匠が「公然知られた意匠」であるか否かについて検討する。
1.甲号意匠の製造の経緯
(1)請求人は、平成20年1月頃、従来の電気掲示器の光源をLEDに代え、当該LED光源を掲示器の内部上部に1列に配置した新S型掲示器を開発した。
(2)請求人は、被請求人に新S型掲示器の光源装置(光源及びその周辺の構造を含む)の改良を依頼し、その後、請求人と被請求人とは何度も協議を重ね、光源装置のSE型試作品を作った。
(3)これらのSE型試作品は、掲示面に輝度の均一性について未だ完全なものではなく、その上製造単価が高い等の理由から、平成20年9月中旬頃には甲号意匠(エコ薄型掲示器に用いるSE型)を開発し、完成した。この開発にも、請求人は、被請求人に対して開発費用を支払い、両者で何回も打合せ、製品改良を行っている。
(4)その後、請求人は、甲号意匠の製品の製造を被請求人に依頼した。そこで、被請求人は、平成20年9月19日付けの見積書(甲第9号証の1)を発行し、請求人は9月30日付けで発注書を被請求人に送り(甲第9号証の2)、これらの製品を同日受領した(甲第9号証の3)。

2.「エコ薄型掲示器(SE型)」及びその取付け作業
(1)「エコ薄型掲示器(SE型)」とはどのようなものか(請求人口頭審理陳述要領書3頁5行?下から2行目)
当該掲示器は、箱型本体の内部の上部に、「SE型用特殊リフレクターフラッター」光源装置(甲号意匠)を配置し、下方に光を照射する直下型方式で、箱型本体の両側面又は一側面に文字等を表示した表示板を設け、これらの裏面から光を照射して、各表示板の文字等の表示を鮮明にするものである(甲第7号証、甲第27号証。)。(別紙第3参照)
さらに、詳しく、「SE型用特殊リフレクターフラッター」光源装置は、「SE型用特殊リフレクターフラッター」とは別に設けた基板に、複数のLEDを等間隔をあけて一列に配して取り付け、当該LED基板に「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フードの上部に設けられた孔がLEDを嵌め込むように取り付け、この状態で「SE型用特殊リフレクターフラッター」とLED基板とを断面逆U字型のアルミ枠に収納・固定してLEDカセットとし、当該LEDカセットを箱型本体内の上部に取り付けるものである。また、当該掲示器の箱型本体の一側面は扉式になっており、当該掲示器を所定の場所に取り付けたり、ブレーカー等の電源スイッチを開閉したり、その他内部の点検、修理の際に扉を外すことができる。
梱包状態については、箱型本体内に光源部を取り付け、扉を閉めた状態で、その外周必要箇所に緩衝材を当ててその上から包装紙で包んで、梱包する(甲第28号証)。
(2)「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付け作業手順(請求人口頭審理陳述要領書3頁最終行?6頁下から4行目)
《天井直接取り付け作業手順》
ア)現地でのSE型開梱状態
現地で梱包されているエコ薄型掲示器(SE型)を開梱する。
イ)箱型本体から扉を外す作業
ウ)扉を外した後の内部点検
エ)箱型本体からLEDカセットを取り外す。
箱型本体からLEDカセットを引き離した状態で箱体本体とLE
Dカセットを繋ぐ電源線が付いている。このLEDカセットが取り
付けられる裏面の箱型本体上板に取付け穴がある。
カ)取り外したLEDカセットの状態
キ)電源線の本体への引き込み
ク)天井ボルト取付け/確認
天井から垂下しているボルトを箱型本体の上板の取付け穴に通し
て、箱型本体上板を天井に当て、当該ボルトが箱型本体内部に突出
していることを確認する。
ケ)天井ボルトと箱型本体の締め付け
天井から垂下したボルトにナットを螺着し、当該ナットを締め付
けて箱型本体を天井に固定する。
コ)箱型本体にLEDカセットコネクターを取付け
LEDカセットから導出したリード線の先端のコネクターを箱型
本体の電源部に接続する。
サ)箱型本体にLEDカセット取付け
一度取り外したLEDカセットを、箱型本体内部にセットしてビ
スにより取り付ける。
シ)電源線のつなぎ込み
箱型本体内のブレーカーへ電源線を接続する。
ス)点灯確認/内部確認
セ)箱型本体に扉を取り付け
ソ)据付完了

《パイプ吊り下げ作業手順》及び《壁面取付け作業手順》
LEDカセットを箱型本体から取り外さない他は、上述の《天井直接取り付け方法手順》と、箱型本体のパイプ又は壁面への固定方法の違いだけで、ほぼ同様の作業である。

3.「エコ薄型掲示器(SE型)」の販売及び取付
(1)「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売及び当該掲示器のJR舞浜駅及びJR成田空港駅への取付け作業
請求人は、「エコ薄型掲示器(SE型)」を製造し、JR東日本に4台販売した(甲第10号証の1及び2)。小規模工事となるため、請求人が直接、取付け作業を行った。場所は、一つはJR線舞浜駅のコンコースであり、他は、JR線成田空港駅のコンコース及びホームである。この取付け作業は、いずれも既設の電気掲示器を取り外し、「エコ薄型掲示器(SE型)」を取り付けるもので、前記「(2)『エコ薄型掲示器(SE型)』の取付け作業」の項に記載の作業手順のとおりであり、JR線舞浜駅に1台、平成20年12月8日の深夜から翌9日の午前6時まで行われ(甲第10号証の3、5、7、8、9)、JR線成田空港駅には3台、平成20年12月11日の深夜から翌12日の午前6時まで及び同12日の深夜から翌13日の午前6時まで行われた(甲第10号証の1?甲第11号証)。
(2)「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売及び当該掲示器のJR市ヶ谷駅及びJR目白駅への取付け作業
請求人は、製造した「エコ薄型掲示器(SE型)」を、JR東日本に51台販売した(甲第14号証の1?甲第16号証の10)。この場合、工事規模が大きいため、請求人は「エコ薄型掲示器(SE型)」をJR東日本に販売するだけで、当該電気掲示器の取付け作業は行っていない。取付け箇所は、JR線市ヶ谷駅及び目白駅のコンコース及びホームであり、市ヶ谷駅に26台、目白駅に25台である。取付工事業者は日本電設工業株式会社であり、市ヶ谷駅の取付工事については、平成21年1月12日、1月16日、1月17日、1月18日の何れも深夜から翌日の午前5時まで、また、目白駅の取付工事については、平成21年2月17日、2月19日、2月20日、3月3日の何れも深夜から翌日の午前5時までに行われた(甲第20号証の1?甲第26号証)。

4.甲号意匠の請求人への販売並びに「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売及び当該掲示器の取付け作業における甲号意匠が本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」であるか否かについて
公然知られた意匠」であるためには、甲号意匠が不特定の者に現実に知られている状態にあることを要するが、甲号意匠の販売又は甲号意匠が内蔵した「エコ薄型掲示器(SE型)」の販売若しくは取付け作業において、甲号意匠が不特定の者に現実に知られている状態にあるか否かについて、順次検討していくこととする。
(1)被請求人の甲号意匠の請求人への平成20年9月30日の販売について
請求人は、「被請求人は少なくとも請求人に対して、前記光源装置『SE型用特殊リフレクターフラッター』を平成20年9月30日には公然と販売している。」旨、主張する。しかし、甲号意匠の製造の経緯によれば、甲号意匠の開発自体は、請求人が、被請求人に新S型掲示器の光源装置(光源及びその周辺の構造を含む)の改良を依頼し、その後、請求人と被請求人とは何度も協議を重ね、光源装置のSE型試作品を作り、これらのSE型試作品のさらなる製品改良の結果、平成20年9月中旬頃に完成したものであり(審判請求書3頁15行?31行目)、甲号意匠の開発に当たって、両者が密接な関係にあることは明白であり、なおかつ、甲号意匠の製造は、もとより、請求人が、被請求人に対して依頼したものであって(審判請求書4頁13行?21行目)、被請求人が被請求人の依頼を受けて製造及び販売した特定の取引関係にあって、不特定の者を対象とした販売ではなく、たとえ請求人の複数の社員が甲号意匠を目にすることがあったとしても、特定の関係者に限られ、不特定の者に対して知られたものとすることができないことから、この販売事実によって、甲号意匠が不特定の者に現実に知られている状態にあるものということはできない。
(2)「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売及び取付け作業について
(2-1)「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売について
「SE型用特殊リフレクターフラッター」(甲号意匠)は、「エコ薄型掲示器(SE型)」の箱型本体の内部の上部に取り付けられるものであり、「エコ薄型掲示器(SE型)」のJR東日本への販売(JR舞浜駅及びJR成田空港駅に取り付けられる4台及びJR線市ヶ谷駅及び目白駅に取り付けられる51台)において、「エコ薄型掲示器(SE型)」は、複数のLEDが等間隔に一列に配したLED基板に、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フードの上部に設けられた孔がLEDを嵌め込むようにして取り付けられ、この状態で「SE型用特殊リフレクターフラッター」とLED基板とを断面逆U字型のアルミ枠に収納・固定してLEDカセットとし、当該LEDカセットが箱型本体内の上部に取り付けられているものである(請求人口頭審理陳述要領書3頁5行?17行目)。また、当該掲示器の梱包状態では、箱型本体内に光源部を取り付け、扉を閉めた状態で、その外周必要箇所に緩衝材を当ててその上から包装紙で包んで、梱包される(請求人口頭審理陳述要領書3頁21行?下から2行目)。
そうとすれば、JR東日本への「エコ薄型掲示器(SE型)」の販売だけをみれば、JR東日本自身が直接取付け作業を行うわけではなく、取付工事業者へと梱包状態のまま引き渡されるものと考えられ、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は箱型本体内に組み込まれた状態で納品されることになるから、JR東日本では、外部から「SE型用特殊リフレクターフラッター」を視認することはできない。
(2-2)「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付け作業について
まず、請求人が直接取付け作業を行ったJR舞浜駅及びJR成田空港駅への取付け作業についてみると、被請求人と請求人とが、密接な関係があり、なおかつ、特定の取引関係であることは、前述したとおりであって、請求人が取付け作業を行ったからといって、直ちに甲号意匠が不特定の者に現実に知られている状態にあるものとできるものではない。ましてや、取付け方法の違いによる天井直接取付け作業においても、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、LED基板に取り付けられ、その状態でアルミ枠に収納・固定されたLEDカセットとして取り扱われているものであり、既に梱包状態でLEDカセットが箱型本体内に光源部として取り付けられているし、開梱された後の取付け作業も、LEDカセットが箱型本体から取り外されることがあっても、電源線の箱型本体への引き込み、箱型本体の天井への固定、箱型本体へのLEDカセットコネクター取付けの後、再びLEDカセットが箱型本体内部にそのまま戻して取り付けられるものであって、LEDカセットがエコ薄型掲示器(SE型)を構成する一の単位部品を成立させ、そのLEDカセットからは、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、底面側と側面側からようやく視認することができるだけであって、反射フードの裏側の態様は、視認することはできないし、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フード上部から上方に突出する突片も、LEDカセット及び「SE型用特殊リフレクターフラッター」自身を形作る上において、無視することはできず、現に突出部を有するのか、突出するとすれば突出する位置や形状が不明であり、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の全体の形態が必ずしも認識できたとすることができない状態であるから、「SE型用特殊リフレクターフラッター」が不特定の者に現実に知られている状態にあるものとすることはできないと言わざるを得ない。また、パイプ吊り下げ作業や壁面取付け作業にしても、天井直接取付け作業とはLEDカセットを箱型本体から取り外さない他は、箱型本体のパイプ又は壁面への固定方法の違いを伴うだけで、ほぼ同様の作業であり、箱型本体の扉を外して内部を覗いたとしても、天井直接取付け作業と比べ、側面側方向からの認識が困難となって、なおさら視認できる方向が限られてきて、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形態を認識できるものではなく、「SE型用特殊リフレクターフラッター」が不特定の者に現実に知られている状態にあるものとは到底できない。
次に、請求人がJR東日本に「エコ薄型掲示器(SE型)」を販売し、JR東日本が指定する工事業者である日本電設工業株式会社が行ったJR線市ヶ谷駅及び目白駅への取付け作業については、請求人からJR東日本への納品で、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は「エコ薄型掲示器(SE型)」の箱型本体内に組み込まれ状態であり、天井直接取付け作業やパイプ吊り下げ作業等の取付け作業の手順については、請求人が直接行った取付け作業と特段変わるものではなく、日本電設工業株式会社の作業員にあっても、一連の取付け作業工程から、あえて作業現場においてLEDカセットを分解するものとは考えられず、LEDカセットが単に「エコ薄型掲示器(SE型)」を構成する一の単位部品として取り扱われるだけであって、天井直接取付け作業において、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フードの裏側の態様が視認することができないことには変わりはなく、パイプ吊り下げ作業や壁面取付け作業にしても、天井直接取付け作業と比べ、なおさら視認できる方向が限られることから、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形態を認識できるものとは言えず、「SE型用特殊リフレクターフラッター」が不特定の者に現実に知られている状態にあるものとすることはできない。
(2-3)JR東日本の係員の甲号意匠の確認について
請求人は、「これらの『エコ薄型掲示器(SE型)』の取付けに当たっては、JR東日本の係員も内部の『SE型用特殊リフレクターフラッター』の形状、構造を確認している。」(審判請求書5頁2行?4行目)と主張する。
しかし、取付け作業においてJR東日本の係員が、取付工事に立ち会い、作業を傍らで監視していたとしても、すなわち、箱型本体から扉を外して、LEDカセットを箱型本体から一旦外し、LEDカセットが床等に置き、再びLEDカセットを箱型本体内部に戻して取り付ける一連の取付け作業を見たとしても、LEDカセットの状態では、やはり「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、底面側と側面側から視認できるだけであって、反射フードの裏側の態様が視認することができないことには変わりはなく、加えて、JR東日本の係員は、作業をやや離れた位置から監視することになり、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の大きさでは、奥行幅(甲第7号証「SE型 製品仕様書」9頁の「側断面詳細」における横幅)が約50ミリとやや狭いものであって、光偏向反射板や仕切り反射板も含めて、その奥に隠れる反射フードの内部形状を認識することが甚だ困難な状態となることも考慮すれば、JR東日本の係員にとって、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の一部の形態が確認できたととしても、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の全体の形態は認識できないというべきであって、「SE型用特殊リフレクターフラッター」が不特定の者に現実に知られている状態にあるものとすることはできない。
ところで、請求人の提出した甲第11号証及び甲第26号証の「証明願」によれば、前者において、JR東日本の千葉電力技術センター所長小関文彦氏が、「2.この『エコ薄型掲示器(SE型)』は、光源にLEDを使用し、前記仕様書第9頁の『側断面詳細図』の『LED光源』の部分に、添付写真及び図面の『LED光源』を使用しているものです。」、「4.前記『エコ薄型掲示器(SE型)』は、前記取り替え工事の際、『LED光源』を含めて内部構成を目視し、確認しております。」の事項につき相違ないことを証明し、後者において、日本電設工業株式会社鉄道統括本部電力支社長小野英美氏が、「2.上記新設の電気掲示器は、添付の『SE型 製品仕様書』に記載された『エコ薄型掲示器(SE型)』です。この『エコ薄型掲示器(SE型)』は、光源にLEDを使用し、前記仕様書第9頁の『側断面詳細図』の『LED光源』の部分に、添付写真及び図面の『LED光源』を使用しているものです。」、「3.前記『エコ薄型掲示器(SE型)』は、前記取り替え工事の際、『LED光源』を含めて内部構成を目視し、確認しております。」の事項につき、相違ないことを証明している。しかしながら、いずれの証明願も、同仕様書第9頁の「側断面詳細図」の「LED光源」部分に、添付写真及び図面の『LED光源』を使用しているとしても、「エコ薄型掲示器(SE型)」とは、上述したとおりであり、「SE型用特殊リフレクターフラッター」とLED基板とをアルミ枠に収納・固定したLEDカセットを箱型本体内の上部に取り付けているものであり、「エコ薄型掲示器(SE型)」の取替え工事の際、箱型本体の扉を外した状態で内部構成を目視しても、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フードの裏側の態様が視認できないばかりか、視認できる方向が底面側の一定の狭い範囲に限られてくることから、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形態を認識できないものであり、証明者が内部構造を目視し、確認したとしても、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の底面側からの限られた方向から見える一面に限って、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の全体の形態を確認できたものと即断したものと考えられることから、この点につき、証明願の内容をにわかに措信できるものではなく、証明願は直ちに採用することはできない。
また、JR東日本の係員に限らず、取付け作業中、一般人の旅客が「SE型用特殊リフレクターフラッター」を見られる状態で行われていたかどうかについても、取付け作業時間が、JR線舞浜駅が平成20年12月8日の深夜から翌9日の午前6時まで(甲第10号証の3)、JR線成田空港駅が平成20年12月11日の深夜から翌12日の午前6時まで及び同12日の深夜から翌13日の午前6時まで(甲第10号証の4、甲第10号証の6)、JR市ヶ谷駅が、平成21年1月12日、1月16日、1月17日、1月18日の何れも深夜から翌日の午前5時まで(甲第20号証の1?2)、JR目白駅が、平成21年2月17日、2月19日、2月20日、3月3日の何れも深夜から翌日の午前5時までに(甲第20号証の3?5)行われたものであって、仮に終電までの旅客と始発からの早朝の旅客の時間帯が重なり、作業現場において(「工事写真帳(甲第10号証の9)」、「工事写真帳(甲第23号証)」)、旅客が近づかないように、作業現場周辺に保安用コーンをコーンバーで繋いで囲みを設置して、旅客にとって、囲みの枠外の離れた位置から、「エコ薄型掲示器(SE型)」の取付け作業を見ることが可能であったとしても、「エコ薄型掲示器(SE型)」の箱型本体の内部から一旦外されたLEDカセットの状態では、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、底面側と側面側から視認できるだけであって、反射フードの裏側の態様が視認できないばかりか、反射フードの光偏向反射板や仕切り反射板の内部形状をも認識することが甚だ困難であることから、旅客にとって、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形態は認識できないものである。
また、請求人は、「JR東日本は前記各駅において、当該電気掲示器の不具合や故障に際し、自ら又は工事業者により、当該電気掲示器の側面を開け、内部の点検、修理を行っており、これらの工事は、昼夜を問わず、故障等があった際速やかに行われるもので、その際、内部の光源装置の構造を隠したりして行うものではない。従って、この様な修理等の工事の際、工事業者、旅客等の不特定の者が内部の光源装置の構造を見られる状態で行っている。」(審判請求書6頁13行?18行目)と主張する。しかしながら、当該電気掲示器の不具合や故障に際しては、当該電気掲示器の扉を外して、箱型本体の内部の上部にLEDカセットを取り付けた状態で、内部の点検、修理を行うものであって、その限りでは、「SE型用特殊リフレクターフラッター」を視認できる方向が底面側の一定の狭い範囲に限られて、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の形態を認識できないものであり、LEDカセットに関しては、「SE型用特殊リフレクターフラッター」とLED基板及びアルミ枠とが直ぐさま外せたり、動かせたりできる単なる寄集めの組合せではなく、「エコ薄型掲示器(SE型)」を構成する一の単位部品として、容易に外れないように固定されたものであり、もとより、LEDによる光源は蛍光灯で照射する方式よりも製品寿命がかなり長く、従来と比べて保守、点検が殆ど不要とされる程であり、劣化によりLEDの交換が必要となったとしても、LED基板の交換に伴って、むしろ、新たなLEDカセット全体の交換をするものと考える方が自然であり、そのLEDカセットの交換に当たっても、LEDカセットからは、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、底面側と側面側から視認できるだけで、「SE型用特殊リフレクターフラッター」の反射フードの裏側の態様は、視認することはできない以上、当該電気掲示器の不具合や故障に際して、「SE型用特殊リフレクターフラッター」は、不特定の者に現実に知られている状態にあるものとすることはできない。

[3]小まとめ
本件登録意匠と甲号意匠(「SE型用特殊リフレクターフラッター」)とは同一であるが、甲号意匠が本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」であるか否かについて、上記の事実から、甲号意匠の形態は認識することができないものであり、甲号意匠は、不特定の者に現実に知られている状態にあるものとはできず、本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」ではない。したがって、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号又は同項第3号に掲げる意匠のいずれにも該当するものではない。
なお、被請求人は、請求人の甲号意匠は公然と知られたものである旨の主張に対して、一つに、被請求人と請求人との間で締結された秘密保持契約書(甲第4号証)の存在故、本件登録意匠が「公然知られた」とすることはできない旨、また、一つに、秘密保持義務違反行為によって、甲号意匠が開示されたとしても、意匠登録を受ける権利を有する者の意に反して公然知られたものであり、意匠法第4条第1項に規定する新規性の喪失の例外適用を受けることができ、本件登録意匠が意匠法第3条第1項第1号に該当するに至らなかったものとみなされる旨主張するが、いずれの主張も、甲号意匠が本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」であることを前提とした主張であって、甲号意匠が本件登録意匠の出願前に「公然知られた意匠」でないことは、上述したとおりであり、これらの主張について、敢えて言及するまでもない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件登録意匠は、意匠法第3条第1項第1号又は同項第3号に掲げる意匠に該当せず、請求人の提出した証拠及び主張によっては、本件登録意匠の登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-03-22 
出願番号 意願2009-2616(D2009-2616) 
審決分類 D 1 113・ 111- Y (D3)
D 1 113・ 113- Y (D3)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 小林 佑二 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 杉山 太一
関口 剛
登録日 2009-12-18 
登録番号 意匠登録第1378188号(D1378188) 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 特許業務法人ウィンテック 
代理人 藤沢 昭太郎 
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