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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20122837 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K3
管理番号 1251544 
審判番号 不服2011-15172
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-07-14 
確定日 2012-01-20 
意匠に係る物品 破砕機用破砕刃 
事件の表示 意願2009-12806「破砕機用破砕刃」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2009年(平成21年)6月8日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品が「破砕機用破砕刃」であり,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである(別紙第1参照)。


第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,要旨以下のとおりである。

本願意匠は,公知意匠1を基礎とし,その刃部の数を2本増やして10本とし,その刃部の前端面部を公知意匠2と略同形の前倒し斜面状とし,胴部側面に公知意匠2に設けられた2個の小円孔を設けたまでのものであって,この程度の公知意匠の変形は,当業者において容易に想到できたものと認められる。

公知意匠1(別紙第2参照)
特許庁普及支援課が2008年9月4日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報 2008年7月25日08-14号
破砕刃(登録番号30-0499753)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH20431437号)

公知意匠2(別紙第3参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2007年6月1日に受け入れた
2007 environmental friendly SEIHOの環境機器
廃棄物破砕機用刃の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC19014208号)


第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,請求の理由において,要旨以下のとおり主張した。

本願意匠では,刃部で特に広い範囲に表される外周逃げ面が,女性的な滑らかな外観を呈しており,公知意匠1の折れ曲がり状で折り紙形の風車状で,男性的な荒々しい外観とは明らかに相違している。なお,公知意匠2の外周逃げ面が,複数の直線を折り曲げて構成され,メカニックな印象が強い点も留意すべきである。
本願意匠の外周部における刃部の外周逃げ面の構成は,公知意匠1および公知意匠2に見られないものであり,円弧状のこれら外周逃げ面とすくい面との組み合わせにより想到される女性的で柔らかな印象の外周刃の形状が,本願意匠独自の特徴となるものである。
したがって,公知意匠1の刃部の配置を,8個から10個に増やしてピッチを小さくし,これらの刃部を公知意匠2と同形の前端刃面(すくい面)を前倒しにして傾斜させ,さらに公知意匠2の小径孔を設けた,寄せ集めの意匠は,男性的で荒々しい外周逃げ面の印象が強く表れ,女性的な穏やかな外周逃げ面を有する本願意匠との差異感を,需要者に顕著に想起させるものである。したがって,本願意匠は公知意匠1および公知意匠2の各部分の寄せ集めから容易に創作することができない。
以上のように,本願意匠は,公知の意匠の各部分の寄せ集めにより容易に想到されたものではなく,意匠法第3条第2項に該当するものではない。


第4 当審の判断
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が,容易に創作をすることができたものであるか否かについて,以下検討する。

1.本願意匠
本願意匠は,「第1 本願意匠」において記載したとおりであるが,具体的には,意匠に係る物品を「破砕機用破砕刃」とし,その形態は,(A)全体を略円形板状体とし,その中央に略正6角形状の軸孔を設け,(B)その軸孔の大きさを,全体の外径に対し,軸孔の内接円の内径が約25%となるものとし,(C)外周部に10個の刃部を等間隔に形成し,各刃部における刃底円から隣接する刃先に至る外周逃げ面を,円弧状の滑らかな面とするとともに,当該刃先から刃底円の最深部までの深さを全体の外径の約8%程度とし,(D)刃先から刃底円に至るすくい面は,凹凸等を設けず滑らかな面とし,(E)当該すくい面は刃底円部を除き,軸方向から見て湾曲のない直線状のものとしたものであって,(F)軸方向から見て軸孔を挟んだ左右対称の位置に,一対の小円孔を設け,(G)当該一対の小円孔の位置を,軸孔の内接円の外周と全体の外周との略中間とした態様のものである。

2.各公知意匠と本願意匠の関係性
公知意匠1は,本願意匠における上記(A)について共通するものの,全体の外径に対し,軸孔の内接円の内径を約35%としている点,刃部の数を計8個とし,各刃部の外周逃げ面を,隣接する刃底円から外周側に伸ばした長い直線と,当該直線の端部から小さい円弧部を介して刃先側に接続した短い直線とで折れ線形に形成した点,刃先から刃底円最深部までの深さを全体の外径の約15%程度とした点,等において本願意匠と相違している。
公知意匠2のすくい面の態様について,(D)については本願意匠と共通するものの,軸方向から見て刃底円から刃先にかけて半径の大きい弧状に形成した点において相違しており,また,同公知意匠2の小円孔について,(F)については本願意匠と共通するものの,軸孔に接近した位置に設けた点で相違している。

3.本願意匠が容易に創作することができたか否かの判断
本願意匠における上記(A)については,公知意匠1において見られる態様であるが,(B)と(C)については,公知意匠1及び2のいずれにも見られない態様である。
また,本願意匠の刃部のすくい面の態様について,(D)については,公知意匠2において見られる態様であるものの,(E)については,公知意匠1及び2のいずれにも見られない態様である。
さらに,本願意匠の小円孔について,(F)については公知意匠2において見られる態様であるものの,(G)については,公知意匠1及び2のいずれにも見られない態様である。
そうすると,本願意匠は,公知意匠1を基礎とし,刃部の数を10個にし,刃部のすくい面の態様を公知意匠2のものとするとともに,公知意匠2に見られる小円孔を設けることのみによっては導き出すことのできない態様のものであり,また,この種物品分野においては,全体を略円形板状体とし,その中央に軸孔,外周部に刃部を設けることが一般的に行われている中にあって,その刃部の数,外周逃げ面及びすくい面等の各具体的態様と,それらの組み合わせが,両意匠の使用目的に関わるものであり,意匠全体の美感に大きく影響を及ぼすものであることを考慮すると,公知意匠1及び公知意匠2においては見られない,種々の態様を選択し,本願意匠の形態にまとめ上げた点は,当業者が容易になす変形の域を超えており,一定の創作がなされたものというべきである。
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。

4. むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,同条同項により,拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2011-12-27 
出願番号 意願2009-12806(D2009-12806) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 本多 誠一 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 下村 圭子
橘 崇生
登録日 2012-02-24 
登録番号 意匠登録第1436900号(D1436900) 
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所 

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