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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 F4 |
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管理番号 | 1256320 |
審判番号 | 不服2011-3901 |
総通号数 | 150 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-02-22 |
確定日 | 2012-04-18 |
意匠に係る物品 | 包装用容器 |
事件の表示 | 意願2010-4428「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,2010年(平成22年)2月25日の意匠登録出願に係り,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。 すなわち,本願意匠の形態は,基本的構成態様において,全体が略有底円筒状であり,口部,肩部,胴部,及び底部からなるものであって,具体的態様においては,口部は,円筒状で,下端に鍔を設けたものであって,肩部は,前記鍔部直下から垂直面を設け,続いて凹み曲線から凸曲線とした緩やかなすそ広がり状であって,胴部は,下端部を残してほぼ全体を,6枚の略角丸縦長長方形状パネルによって,略六角柱状とし,そのパネル部は,側面視で左右辺の上下をややすぼめてから角丸とし,中央に縦長楕円形状の凹部を形成したもので,その水平断面形状は,小Rにて凹ませてパネル底面とし,パネル底面は中央に向けてほんの少し浅くなるように傾斜し,そこから中央凹部として,その中央凹部は円弧による凹みとしているものであって,該パネルの垂直断面形状は,まず,上下端にて略台形状の溝を深く彫り込んで,約3分の1深さまで戻った所で,中に向かってやや下る緩凹面状部があり,そこから中央凹部となっているものであって,胴部下端は,極小段差を設け,その下部をすそすぼみにして曲線を介して底面へとつながり,底部は,略凹湾曲面状の凹部とその周縁に極小段差部が形成されているものである。 第2 当審の拒絶の理由 本願意匠に対して,当審が通知した拒絶の理由は,以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠は,下記に示すように,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当する。 記 本願意匠は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,意匠に係る物品を『包装用容器』とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合については,形状のみに係るものと認められるもの(以下,本願意匠の「形状」を「形態」という。)である。 本願意匠が含まれる,この種の包装用容器,すなわち,包装用瓶の意匠の分野において,瓶の形状の構成要素である口部,肩部,胴部,及び底部などについて,その一部を公然知られた種々の態様から選択して,単に置き換えることはごく普通に行われているところであり,本願意匠は,本願出願前,公然知られた引用意匠1又は同2について,その胴部のパネル部を,同じく公然知られた引用意匠3に表れている胴部のパネル部形状と単に置き換えたものにすぎない。 引用意匠1(別紙第2参照) 物品名 包装用瓶 受入日 2008.08.29 公知日 2008.08.25 文献コード J580 文献名 キッコーマンニュースリリース No.08035 発行国 (JP)日本 発行者 キッコーマン株式会社 住所 http://www.kikkoman.co.jp/news/08035.html?kh=top0728 製品名 塩ちゃんこ鍋つゆ 製造者/販売者 キッコーマン株式会社 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ20022998号) 引用意匠2(別紙第3参照) 物品名 包装用容器 受入日 2008.09.12 公知日 2008.09.08 文献コード L582 文献名 ミツカングループウェブサイト?ニュースリリース? 発行国 (JP)日本 発行者 株式会社ミツカングループ本社 住所 http://www.mizkan.co.jp/company/newsrelease/2008news/080807_2.html 製品名 鶏がらつゆ 製造者/販売者 株式会社ミツカングループ本社 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ20026840号) 引用意匠3(別紙第4参照) 意匠登録第1247560号の意匠」。 第3 請求人の主張の要旨 請求人は,平成23年10月24日付けの意見書において,本願意匠が登録されるべき理由をおおむね以下のように述べた。 本拒絶理由通知に示された引用意匠1及び2についてはまだしも,引用意匠3に関しては,単にこの引用意匠3の胴部パネル部の形状を,本願意匠の当該パネル部の形状に置き換えたに過ぎないとは言い難く,当該パネル部,また,本願意匠全体としても十分に創作的価値を有するものであると思料する。 具体的に,引用意匠3との対比における本願意匠の創作性につき着目すると,本願意匠の胴部パネル部は,中央に縦長楕円形状の凹部が形成されている点において引用意匠3の胴部パネル部と共通しているが,パネル外枠部において,その構成態様が明白に異なっている。 引用意匠3においては,パネル外周の細い傾斜面が外枠として形成され,この外枠は1つのみという比較的シンプルな構成を呈している。 これに対し,本願意匠においては,パネル外周に細い傾斜面が2つ存在し,外枠が二重に形成されたかのような構成よりなるものである。 従って,本願意匠の胴部パネル外枠部においては,やや複雑で入り組んでいる印象や,立体感がより強調されているような印象を感じられる点に特徴を有しているのに対し,引用意匠の胴部パネル外枠部においては,上記のように枠が1つのみであるというシンプルな構成よりなることから,本願意匠のような立体感は然程感じられず,寧ろ平面的な印象すら感じられる。このように,両意匠の胴部パネル部より生ずる印象,美感には明白な差異が存在し,それぞれに全く別異の創作的価値が認められるものとなっている。 以上より,本願意匠には,引用意匠からは感じ取ることのできない着想の新しさや独創性が存在していることから,引用意匠3の胴部パネル部の形状を「単に置き換えた」という域を完全に脱しており,そこには格別な創意が存在している。また,胴部において上記のような着想の新しさや独創性を表出させることは,「ごく普通に行われている」とも到底言い得ないものである。 本願意匠に係る包装用容器の胴部は,需要者が購入等する際に最も目に付きやすく,特に需要者の注意を惹く部分であることからすれば,かかる部分における創作の所産は,意匠の創作が容易か否かの判断にあたって最大限評価されるべきものであり,何らの具体的根拠も無く,ごく普通に行われている単なる置き換えであると認定されるべきでないことは明らかである。 第4 当審の判断 以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,請求人の主張を踏まえて,検討し,判断する。 (1)本願意匠の形態 本願意匠の形態は,「第1 本願意匠」に記載のとおりである。 (2)本願意匠の創作の容易性について 意匠が容易に創作することができたか否かの判断は,その意匠の構成態様について,(A)それらの基礎となる構成や具体的な態様などが当該意匠の出願前に公知又は周知であり,そして,(B)それらの構成要素を,ほとんどそのまま表すか,(C)当該物品分野において周知の創作手法であるところの,単なる組合せ,若しくは,構成要素の全部又は一部の単なる置き換えなどがされたに過ぎないものであるか否か等によって行うことを要するので,この観点を踏まえて検討する。 本願意匠の「基本的構成態様において,全体が略有底円筒状であり,口部,肩部,胴部,及び底部からなるものであって,具体的態様においては,口部は,円筒状で,下端に鍔を設けたものであって,肩部は,前記鍔部直下から垂直面を設け,続いて凹み曲線から凸曲線とした緩やかなすそ広がり状であって,胴部下端は,極小段差を設け,その下部をすそすぼみにして曲線を介して底面へとつながる構成」とした態様は,引用意匠1及び引用意匠2に現れているとおりであるので,この本願意匠の胴部のパネル部を,引用意匠3に表れている胴部のパネル部形状に置き換えたものに過ぎないか否かを検討するに,該パネル部形状は,引用意匠3において,「側面視で左右辺の上下をややすぼめてから角丸とし,中央に縦長楕円形状の凹部を形成したもので,その水平断面形状は,小Rにて凹ませてパネル底面とし,パネル底面は中央に向けてほんの少し浅くなるように傾斜し,そこから中央凹部として,その中央凹部は円弧による凹みとしているもの」であって,上下辺を除くパネル部のほぼ全体が本願意匠と同様のシンプルな構成で,平面的な印象を感じさせる態様であるが,しかし,パネル部垂直断面形状においては,引用意匠3は,小Rを介して中に向かってやや下る緩斜面状部があり,そこから中央凹部となっているものであって,本願意匠の上下端にある深く彫り込んだ略台形状の溝が存在せず,この点において本願意匠と異なる。 そして,この相違点は,側面視にて,パネル部外枠の上辺内側と下辺内側というごく限定的な部分の違いではあるが,パネル部上下辺外枠が二重に形成してあるような構成になり,やや複雑で入り組んだ印象を与えるものであって,多少の創意が認められ,単に置き換えたもの,とは言いづらく,容易に創作ができたものということはできない。 (3)結び したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,当審の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-04-05 |
出願番号 | 意願2010-4428(D2010-4428) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(F4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 樫本 光司 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 瓜本 忠夫 |
登録日 | 2012-05-25 |
登録番号 | 意匠登録第1444795号(D1444795) |
代理人 | 棚井 澄雄 |
代理人 | 鈴木 三義 |
代理人 | 高柴 忠夫 |
代理人 | 志賀 正武 |