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審決分類 審判 判定  審理一般(別表) 属さない(申立不成立) B1
管理番号 1256329 
判定請求番号 判定2011-600044
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 判定 
判定請求日 2011-09-29 
確定日 2012-05-08 
意匠に係る物品 トレーニングウエア 
事件の表示 上記当事者間の登録第1288137号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号意匠は、登録第1288137号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は,「イ号物件ならびにその説明書に示す水着は,登録第1288137号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申立て,その理由として判定請求書に記載のとおりの主張をし,証拠方法として,見本,資料1,資料2,甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は,「イ号物件ならびにその説明書に示す水着(以下,「イ号意匠」という。)は,登録第1288137号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)及びこれに類似する意匠の範囲には属さない,との判定を求める。」と答弁し,その理由として判定請求答弁書に記載のとおりの主張をし,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,2005年(平成17年)12月5日に意匠登録出願され,2006年(平成18年)10月27日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1288137号の意匠であり,願書の記載によれば意匠に係る物品を「トレーニングウェア」とし,その形態は願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

2.イ号意匠
本件判定請求の対象とされるイ号意匠は,判定請求書において見本及び甲10号ないし12号証によって示されたものであり,その形態を当該見本及び写真に現されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

3.本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると,両意匠の意匠に係る物品について,本件登録意匠は,「トレーニングウェア」であり,イ号意匠は「水着」であるが,本件登録意匠は,意匠に係る物品の説明において,「着用者の胸に当たる部分の布地を二重にしたトレーニングウェアである。」とし,「裏返した状態の斜視図」によれば,胸部の裏側に別布を当てたものであるから,意匠に係る物品は共通する。
そして,形態については,主として以下の共通点と差異点がある。
【共通点】
(A)全体は,襟がラウンドネックで,袖は,襟ぐりから袖下にかけて斜めの切り替え線があり,肩先にわずかにかかる程度のごく短いラグラン袖の,暗調子のプルオーバーシャツである点

(B)前身頃の略上半部,左右切り替え線の裏側内域には,明調子の裏布が縫着されており,その縫着箇所は,左右切り替え線,脇,及び襟ぐりであり,裏布の下端部は,表布に縫着されていない点

【相違点】
(ア)襟について,本件登録意匠は,やや深めの略U字状であり,襟元にギャザーがないのに対し,イ号意匠は,やや浅めの円弧状であり,襟元にギャザーがある点

(イ)模様について,本件登録意匠は,全体が模様の無い単一調子のシャツであるのに対して,イ号意匠は,ラグラン袖の切り替え線と袖口に,本体より明調子の糸による縫製ラインがあり,また前身頃胸部片側に,リスの模様とアルファベットの「CHOOP」という文字が小さくワンポイント模様状に刺繍によって現されている点

(ウ)裏布について,本件登録意匠は,裏布が1枚であり,胸に当たる部分は表布と裏布が二重になっているのに対して,イ号意匠は,裏布が2枚あり,胸に当たる部分は表布1枚と裏布2枚で三重になっており,この2枚の裏布は,下端と前中心が,略逆T字状に縫着されており,さらに,内側の裏布,すなわち体に直接当たる裏布のみ,その脇下部を,前中心に向かって略小円弧状に切り欠いている点

(2)両意匠の類否判断
この種物品は,主として女子学童・生徒が,水中あるいは水辺での運動着として着用するものであり,その機能として,体にぴったりフィットして内側に水が流入せず,腕が回しやすく動きやすいことが要求されるものであり,また,着用にあたって,胸部が透けて見えないこと,胸部の形をそのまま見せないことも,重要視されることから,この種物品の意匠において,需要者の注意を惹くのは,表側だけでなく,体に直接当たる裏側の構成態様を含む,表裏全体の意匠であると認められる。
両意匠の類否判断は,これを踏まえて,共通点と相違点を,意匠全体として比較して,判断することとする。

共通点(A)及び同(B)は,両意匠の表側及び裏側の形態全体にわたる基本的構成態様をなすものであり,袖がラグラン袖である点,襟がラウンドネックである点,前身頃胸部に裏布が縫着されている点は,この種の水中における運動着の機能として要求される,動きやすさと胸部をカバーすることを形態として表現しているものである。しかしながら,ラグラン袖である点,ラウンドネックである点は,この種の運動用シャツにおいては,例示するまでもなく,極めてありふれた形態であり,前身頃胸部に明調子の裏布が縫着されている点も,水着の分野においては,従来より見られる,ごくありふれた態様にすぎないから,共通点(A)及び同(B)が類否判断に与える影響は,大きいとは言えず,類否判断を決定付けるには到らないものである。
次に,相違点についてみると,まず,襟についての相違点(ア)は,この種ラウンドネックの襟において,襟ぐりの深さは,浅いものから深いものまで様々で,その中から適度な襟ぐりを選択するのであり,両意匠の襟ぐりについては,その深さや形が,どちらも極めてありふれており,襟元のギャザーの有無についても,この位置にギャザーを入れること自体ありふれており,また,この種物品として要求される体にぴったりフィットする形態であるために,伸縮性素材を採用すると,襟ぐりの始末としての折り返し部の布と本体布との引っ張り加減の差として,襟元にギャザーが生まれることもあるから,相違点(ア)が類否判断に及ぼす影響は微弱である。
模様についての相違点(イ)は,この種ラグラン袖のシャツにおいて,イ号意匠のライン模様は極めてありふれており,また,胸元のワンポイント模様も,公然知られた小さな模様にすぎないから,この相違点(イ)が類否判断に及ぼす影響は,微弱である。

しかし,裏布についての相違点(ウ)は,両意匠の類否判断において大きな影響を及ぼしている。すなわち,本件登録意匠は,裏布が1枚であり,この種物品の機能として要求される,胸部が透けて見えないこと,胸部の形をそのまま見せないことのうち,主として胸部が透けて見えないことに関して有効であるのに対して,イ号意匠は,裏布が2枚あって,2枚の裏布の下端及び前中心が縫着されており,そのうち内側に位置する布には,その脇下部を,前中心に向かって略小円弧状に切り欠いているから,2枚の裏布には,前中心を境にして,左右胸部に,それぞれ脇下の円弧状切り欠き部を開口部とするポケット部が形成されているのであり,このポケット部はブラ用カップの収納スペースとしての機能を果たして,胸部が透けて見えないこととともに,胸部の形をそのまま見せないことに大きく寄与する形態として,看者の注意を強く惹くところとなっており,相違点(ウ)は類否判断において,非常に大きな影響を及ぼしている。
そして,相違点(ア)ないし(ウ)は,全体として,類否判断に非常に大きな影響を及ぼしている。

以上のとおりであって,本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品は共通するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,イ号意匠は,本件登録意匠には類似しない。

4.結び
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲には属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2012-04-24 
出願番号 意願2005-35859(D2005-35859) 
審決分類 D 1 2・ 0- ZB (B1)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 文子 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 早川 治子
瓜本 忠夫
登録日 2006-10-27 
登録番号 意匠登録第1288137号(D1288137) 
代理人 長谷川 好道 
代理人 杉山 浩康 
代理人 築山 正由 

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