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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 B2
管理番号 1259677 
審判番号 不服2012-1053
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-01-19 
確定日 2012-07-03 
意匠に係る物品 ウエスト調整ベルト 
事件の表示 意願2010- 15614「ウエスト調整ベルト」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,2010年(平成22年)6月25日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書添付の図面によれば,意匠に係る物品を「ウエスト調整ベルト」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのものであり,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,本願意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。
この意匠登録の意匠は,ウエスト調整ベルトに係る創作であるが,当該物品分野においてベルト端部に別生地を設けることは本願出願より前に広く見られるところ(例えば,参考意匠1ないし3参照),本願意匠は,公知の意匠(意匠1参照)の端部に周知の略楕円形状の別生地を設けたまでのものであって,この程度では容易に創作できたものと認められる。

意匠1 意匠登録第1333690号の意匠 (別紙第2参照)
参考意匠1 意匠登録第1353613号の意匠 (別紙第3参照)
参考意匠2 意匠登録第1354149号の意匠 (別紙第4参照)
参考意匠3 意匠登録第1361026号の意匠 (別紙第5参照)

第3 請求人の主張の要点
本願意匠における「飾り片」は,ベルト帯体の端部に単に周知の楕円型状の別生地を設けたものではなく,当業者にとってありふれた手法によって創作されたものではない。
「飾り片」は,ズボンのループへベルト装着部を取着したとき,ベルト装着部の折り返し部分を越えて,突出する形態を有する。
「飾り片」を本願意匠のようなものとすることは,単なる公知形態の置換でも,当業者が容易に想起しうるものでもない。
したがって,本願意匠は,参考意匠1ないし3及び意匠1に基づいて容易に創作できるものではなく,意匠法第3条第2項の規定に該当するものではない。

第4 当審の判断
本願意匠が,当業者であれば容易に創作することができたか否か,すなわち,本願意匠が,意匠法第3条第2項の規定に該当するか否かについて,以下検討する。

1.本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品が「ウエスト調整ベルト」であって,ベルト帯体と,当該ベルト帯体の両端に取り付けられた,ズボンのループに装着可能とするベルト装着部,及び当該ベルト装着部に設けられた飾り片とからなり,本願実線部分は,両端のベルト装着部,及び飾り片である。
そして,両端のベルト装着部,及び飾り片は,同形同大の左右対称形状をなし,平面視すると,ベルト装着部は,ズボンのループに装着可能とするため,2つ折りにされ,また,正面視すると,飾り片は,全体を長円形状とし,やや内側寄りに偏心した位置でベルト装着部と小径の円形状ホックにより重合されて,ベルト装着部の折り曲げ部を覆い隠す態様で突出しているが,背面側には,ベルト装着部の端部が,飾り片の左右幅の略1/3の幅で倒略扇面形状に露呈している。
そして,ベルト装着部を開いた状態では,正面視すると,ベルト装着部は,先端部が,略円形状で,その略中心位置に小径の円形状ホックが1つ設けられ,それに延設するベルト帯体と接合する部分は,倒略細長台形状で,その左右略中心位置に,小径の円形状ホックが1つ設けられ,全体として略「前方後円墳」形状を呈している。

2.原査定の拒絶の理由に引用された意匠1について
意匠1は,意匠に係る物品が,ウエスト調整ベルトであって,その形態は,ベルト帯体と,当該ベルト帯体の両端に取り付けられた,ズボンのループに装着可能とするベルト装着部から構成されている。
両端のベルト装着部は,同形同大の左右対称形状をなし,平面視すると,ベルト装着部は,ズボンのループに装着可能とするため,2つ折りにされ,また,正面視すると,略円形状を呈し,その略中心位置に,小径の円形状ホックが1つ設けられ,そして,ベルト装着部の折り曲げ部が先端に僅かに突設し,逆側には,ベルト装着部の端部が細幅略弧状に露呈している。
そして,ベルト装着部を開いた状態では,正面視すると,ベルト装着部は,先端部が,略円形状で,その略中心位置に小径の円形状ホックが1つ設けられ,それに延設するベルト帯体と接合する部分は,倒略細長台形状で,その左右略中心位置に,小径の円形状ホックが1つ設けられ,全体として略「前方後円墳」形状を呈している。

3.本願意匠が容易に創作することができたか否かの判断
検討するに,本願実線部分のベルト装着部につき,開いた状態では,意匠1のベルト装着部とほぼ同形状の略「前方後円墳」形状をなしている。
次に,本願実線部分の飾り片につき,意匠1には,それに相当すものは存在しないが,本願実線部分と同様に,2つ折りのベルト装着部に飾り片を設けた意匠は,本願出願前,参考意匠1及び2に既に見られるところである。
しかしながら,参考意匠1及び2の飾り片は,略5弁の花の形状であって,ベルト装着部を折り曲げたときには,いずれも折り曲げ部を覆い隠す大きさのものではなく,装飾のみを目的としたものと認められる。
それに対し,本願実線部分の飾り片は,装飾の目的の他に,本物品の使用時に,ベルト装着部の折り曲げ部が,ズボンのループ部を引っ張り,結果,ズボンのループ部が引きつった状態となることから,ズボンのループ部及びベルト装着部の折り曲げ部を覆い隠す目的をも有しているものと認められる。
そのために,本願実線部分の飾り片は,参考意匠1及び2とは異なり,ベルト装着部との重合位置を偏心させて,ベルト装着部の折り曲げ部を覆い隠すのに十分な左右幅を有する長円形状を呈している。
そうすると,本願実線部分において,正面図に表れているように,長円形状の飾り片の小径の円形状ホック部が偏心した位置に設けられて,ベルト装着部の折り曲げ部が覆い隠され,さらに,逆側のベルト装着部の端部が,飾り片の左右幅の略1/3の幅で倒略扇面形状を呈している態様は,従来の意匠に見られない態様のものであることから,本願実線部分は,参考意匠1ないし3を参酌したとしても,意匠1のベルト装着部に,単に周知の長円形状の飾り片を設けた程度のものとはいえない。
以上のとおりであるので,本願意匠は,その出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られた意匠1に基づいて容易に創作することができた意匠とはいえない。

第5 むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当せず,原査定の拒絶の理由によっては,拒絶すべきものとすることができない。
また,本願意匠について,他に拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-06-19 
出願番号 意願2010-15614(D2010-15614) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (B2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 斉藤 孝恵
遠藤 行久
登録日 2012-07-20 
登録番号 意匠登録第1449133号(D1449133) 
代理人 向山 正一 

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