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審決分類 審判    B7
管理番号 1259680 
審判番号 無効2011-880002
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-02 
確定日 2012-06-18 
意匠に係る物品 ヘア・ドライヤー 
事件の表示 上記当事者間の登録第1237140号「ヘア・ドライヤー」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1237140号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は,「登録第1237140号意匠についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証の書証を提出した。

1.意匠登録無効の理由の要点
登録第1237140号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)は,本件意匠登録出願前に外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された意匠(以下「公知意匠1」という。)と同一の意匠であり,意匠法第3条第1項第2号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであり(理由1),また,本件意匠登録出願前に日本国内おいて頒布された刊行物である甲第2号証に記載された意匠(以下「公知意匠2」という。)と類似する意匠であり,同法第3条第1項第3号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので(理由2),本件意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由1:公知意匠1との同一
(1)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,意匠登録第1237140号の意匠公報に記載のとおり,意匠に係る物品を「ヘア・ドライヤー」とする。以下,本件登録意匠の基本的態様及び具体的態様について説明する。なお,理解の容易のため,添付の本件意匠公報に符号を付し,それに基づいて説明する。
本件登録意匠の基本的態様は,縦長の支持部材10の上側端部に,左右に広がるように形成されたシェード20の中心が取り付けられた構成である。また,具体的態様は,以下のとおりである。
1)支持部材10は,上下方向に延びる断面略横長矩形である柱状の部材下部11の上端に連続して,外径が部材下部11の幅よりもやや大きいボウル状の部材上部12が,曲面側を背面側にして正面側斜め上方に湾曲しながら延びるように一体に設けられた構成を有する。
2)部材下部11の正面側には,上部に複数の小孔13が略八角形の配列構成を有するように穿孔され,またその直下に横長矩形凹部14が設けられ,さらに,下部に横長矩形の正面側開口15が設けられ,その正面側開口15には,両側に縦格子が設けられていると共に中央部に横格子が設けられている。また,部材下部11の正面側には,四隅(複数の小孔の両側及び正面側開口の下方両側)に小径の丸穴16が穿孔されている。
3)部材下部11の背面側には,上側に縦長矩形に区画された操作盤17が設けられ,また,その下側に略矩形の背面側開口18が設けられている。操作盤17には,上から順に,一対の矩形表示部D,4つの小ボタンb,及び3つの大ボタンB三列が,それぞれ左右に並ぶように配設されており,最下段の大ボタンBのうち右端のものの下側にも1つ大ボタンBが設けられている。背面側開口18には横格子が設けられている。
4)部材上部12の背面側には,部材下部11に連続して延びるように設けられた幅広突条12aがボウル形状に乗り上げるように形成されていると共に,その幅広突条12aの中央にさらに幅狭突条12bが形成されている。なお,部材上部12の正面側の斜め下方を向く面がシェード取付部に構成されている。
5)シェード20は,平板状の中央部分21の左右両側のそれぞれに連続して,中央部分21よりもやや幅広の小判形状の翼部分22が斜め外向きに延びるように一体に設けられ,全体としてブーメランのような形状の構成を有する。シェード20は,全体として,縁部分23では薄肉に形成されているが,中央部分では正面側凸部24及び背面側凸部25を有することにより厚肉に形成されている。なお,シェード20は,中央部分21の背面側が支持部材10の部材上部12に取り付けられているので,中央部分21の正面側の面が正面側の斜め下方を向き,また,両翼部分22の正面側の面が正面側よりやや内側の斜め下方を向くように設けられている。
6)中央部分21の正面側には,中央に円形凹部26が設けられている。
7)翼部分の正面側には,正面側凸部24の上に,翼部分22の幅方向に並行に延びる複数の線材で構成された矩形網状の保護ネット27が設けられている。保護ネット27は,翼部分22の長さ方向に長尺に形成されている。
8)翼部分22の背面側には,背面側凸部25の上に,翼部分22の幅方向に並行に延びる格子が形成された,中央部分21側の辺が長く且つ先端側の辺が短い略台形状の格子部28が設けられている。
(2)公知意匠1が存在する事実及び証拠の説明
甲第1号証は,本件登録意匠の出願前の1998年(平成10年)4月7日に大韓民国に頒布された刊行物,意匠登録第209951号公報(日本語翻訳付)である。
この甲第1号証には,本件意匠公報の斜視図,正面図,背面図,右側面図,平面図,及び底面図と全く同一のヘア・ドライヤーの意匠(公知意匠1)の図面が開示されている。従って,当然,その基本的態様は,縦長の支持部材の上側端部に,左右に広がるように形成されたシェードの中心が取り付けられた構成である。また,具体的態様も,本件登録意匠が有する上記1)?8)の具体的態様と同一である。
なお,甲第3号証は,本件登録意匠の出願前の2000年(平成12年)2月15日に大韓民国内に頒布された刊行物,実用新案第20-0167285号公告公報である。この甲第3号証には,図2として,本件意匠公報の正面図と全く同一の公知意匠1の図面が開示されている。
また,甲第4号証は,本件登録意匠の出願前の2000年(平成12年)5月に大韓民国内に頒布された刊行物,(社)大韓美容師会発行の「美容回報ビューティーマガジン」2000年5月号第139頁である。甲第5号証は,本件登録意匠の出願前の2002年(平成14年)9月に大韓民国内に頒布された刊行物,(社)大韓美容師会発行の「美容回報 ビューティーマガジン」2002年9月号第182頁である。甲第6号証は,本件登録意匠の出願前の2003年(平成15年)1月に大韓民国内に頒布された刊行物,(社)大韓美容師会発行の「美容回報 ビューティーマガジン」2003年1月号第168頁である。これらの甲第4号証乃至第6号証には,公知意匠1と同一であって,大韓民国法人ロイヤル美容器具社が製造販売するヘア・ドライヤー「ビューティコール+」の意匠が開示されている。そして,その基本的態様は,縦長の支持部材の上側端部に,左右に広がるように形成されたシェードの中心が取り付けられた構成である。また,具体的態様も,本件登録意匠が有する上記1)?8)の具体的態様と同一である。さらに,甲第7号証は,製造年は不明であるが,請求人が入手した日本国内向けに販売されたロイヤル美容器具社の「ビューティーコール+」の写真である。また,甲第8号証は,その「ビューティーコール+」の取扱説明書である。これらの甲第7号証及び第8号証にも,「ビューティーコール+」の意匠が本件登録意匠と基本的態様と具体的態様を共通にすることが示されている。
(3)本件登録意匠と公知意匠1との対比
意匠に係る物品は,本件登録意匠及び公知意匠1ともにヘア・ドライヤーであって同一である。形態については,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に外国である大韓民国において,頒布された刊行物である甲第1号証に記載された公知意匠1と同一である。

3.本件登録意匠を無効とすべき理由2:公知意匠2との類似
(1)本件登録意匠の要部の説明
意匠の要部,すなわち看者の注意を最も引く意匠の構成がどこであるかは,当該物品の性質,目的,用途,使用態様等に基づいて認定されるべきものである。また,意匠の類否判断は,実際に当該意匠が実施される状況を念頭に置いた上で,その要部が看者に異なった美観を与えるか否かによって行われるべきである。そして,本件登録意匠の要部は,本件登録意匠に係る物品であるヘア・ドライヤーの性質,目的,用途,使用態様に基づけば,支持部材に支持されたシェードの中心から左右両側に設けられたヒーター部分(シェード下側両端部の略長方形の保護ネットに被われた部分)とそれを支えるシェード部分にあるものと考えられ,それらのヒーター部分とシェード部分とが重なり合って一体となった部分の特徴的なブーメラン的形状にあると言える。つまり,本件登録意匠は,その基本的態様として,シェードが,側面視において,その中心部分の中央の円形凹部の縦中心線において支持部材に支持され,その支持部から略帯状の翼部分が左右に逆への字状とへの字状とに分かれ,左右に分かれた翼部分の下側両端部には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,その上側両端部には,略台形状の格子部が設けられ,全体としてブーメランのような形状を有する点が特徴である。
(2)公知意匠2が存在する事実及び証拠の説明
甲第2号証は,本件登録意匠の出願前の1994年(平成6年)6月9日に発行された刊行物,意匠登録第900962号の意匠公報である。甲第2号証には,シェードが支持部材に支持されたヘアドライヤ本体の公知意匠2が開示されている。そして,この公知意匠2は,シェードが,側面視において,その中心部分の中央のオゾンの送風口の縦中心線において支持部材に支持され,その支持部から略帯状の翼部分が左右に逆への字状とへの字状とに分かれ,左右に分かれた翼部分の下側両端部には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,その上側両端部には略台形状の格子部が設けられ,全体としてブーメランのような形状を有する形態である。
(3)本件登録意匠と公知意匠2との対比
意匠に係る物品は,本件登録意匠がヘア・ドライヤー,及び公知意匠2がヘアドライヤ本体であって,実質的に同一である。形態については,本件登録意匠及び公知意匠2は,基本的態様として,シェードが,側面視において,その中心部分の中央の円形凹部の縦中心線において支持部材に支持され,その支持部から略帯状の翼部分が左右に逆への字状とへの字状とに分かれ,左右に分かれた翼部分の下側両端部には横長の略長方形で網状の保護ネットが装着され,その上側両端部には略台形状の格子部が設けられ,全体としてブーメランのような形状を有する点で共通する。一方,各部の具体的態様につき,本件登録意匠は,シェードの両端部の翼部分の形状がやや曲線的であるのに対して,公知意匠2は,翼部分の形状が直線的である点で相違する。また,本件登録意匠は,シェードの形状が,中央部分よりも両端部の翼部分の方が幅広であって,厚さ方向の背面側部分が均一な幅を有するものの正面側部分より外側にはみ出ているのに対して,公知意匠2は,シェードの形状が,中央部分から翼部分までほぼ均一幅であって,背面側部分が細めのほぼ均一幅を有して正面側部分に被さっている点で相違する。
(4)本件登録意匠と公知意匠2との類否
本件登録意匠及び公知意匠2は,本件登録意匠の要旨部分であるところの全体としてブーメランのような形状を有するシェードが,その中心で支持部材に支持されているという基本的態様の点で共通する。ここで,本件登録意匠及び公知意匠2の意匠に係る物品であるヘア・ドライヤーの意匠について検討してみるに,ヘア・ドライヤーは,その意匠に基づいて,帯状シェード回転タイプ(甲第9号証参照),環状シェード回転タイプ(甲第10号証参照),弓形シェード可動タイプ(甲第11号証参照),複数シェード点在固定タイプ(甲第12号証参照),及び円筒シェード固定タイプ(甲第13号証参照)に大別することができる。このような事情から,本件登録意匠の出願当時,帯状シェード回転タイプのヘア・ドライヤーの意匠は,需要者の混同の範囲すなわち類似の幅が極めて広く,基本的態様が共通すれば類似範囲に含まれたものと解される。つまり,本件登録意匠及び公知意匠2は,いずれも帯状シェード回転タイプのヘア・ドライヤーであり且つ基本的態様が共通し,類似関係にあったということになる。また,そのため,シェードの両端部の翼部分の形状及びシェードの幅構成についての具体的態様の小さな相違点は,類否判断に与える影響は微弱であり,これらの相違点を総合しても,本件登録意匠及び公知意匠2の共通感を凌駕するものではない。
(5)むすび
以上より,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第2号乃至第3号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである。

4.証拠方法
(1)甲第1号証 大韓民国 意匠登録第209951号公報
(2)甲第2号証 意匠登録第900962号公報
(3)甲第3号証 大韓民国 実用新案第20-0167285号公告公報
(4)甲第4号証 (社)大韓美容師会発行の「美容回報 ビューティーマガジン」2000年5月号 表紙及び裏表紙,第139頁
(5)甲第5号証 (社)大韓美容師会発行の「美容回報 ビューティーマガジン」2002年9月号 表紙及び裏表紙,第182頁
(6)甲第6号証 (社)大韓美容師会発行の「美容回報 ビューティーマガジン」2003年1月号 表紙及び裏表紙,第168頁
(7)甲第7号証 ロイヤル美容器具社のビューティーコール+の写真
(8)甲第8号証 ビューティーコール+の取扱説明書 表紙,第2頁,裏表紙
(9)甲第9号証 帯状シェード回転タイプのヘア・ドライヤーの写真
(10)甲第10号証 帯状シェード回転タイプのヘア・ドライヤーの写真
(11)甲第11号証 弓形シェード可動タイプのヘア・ドライヤーの写真
(12)甲第12号証 複数シェード点在固定タイプのヘア・ドライヤーの写真
(13)甲第13号証 円筒シェード固定タイプのヘア・ドライヤーの写真

第2 被請求人の答弁及び理由
被請求人は,請求人の申立及び理由に対して,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める旨の答弁をし,証拠として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。

1.答弁の理由
(1)無効とすべき理由2(公知意匠2)について
本件登録意匠に係る商品は,ヘアサロン用のヘアードライヤであり,通常はヘアサロン等が購入するものである。したがって,本件で問題となる商品の取引者・需要者は,主として,ヘアサロン等の経営者,従業者であると考えられる。スイッチが設けられた支持部及び操作者がパネルを操作しているときに操作者の正面に位置する円柱部は,取引者・需要者の注意を最も惹きやすい部分であり,本件登録意匠の要部といえる。ヒータを用いて乾燥処理を行う際,人の頭部と一定の間隔をおいてシェードのヒータが位置するように目視でシェードの位置を決めることから,本件登録意匠の要部であるといえる。よって,本件登録意匠は,シェード,円柱及び支持部からなる登録意匠の全体形態が,本件登録意匠の類否判断における「要部」であるといえる。
(2)両意匠の共通点
1)本件登録意匠の第1シェード31(答弁書における本件登録意匠の説明書参照)
と第2シェード33とが線対称の形状を有し,一体的に形成される。また,同様に,公知意匠2のシェード111は,第1シェード131と第2シェード133とが線対称の形状を有し,一体的に形成されている。同様に,本件登録意匠の説明に記載したように,これらの形態において,両意匠は共通する。しかしながら,このような形態は,本件登録意匠の出願前,並びに公知意匠2に係る意匠登録出願の出願前において既に公知であり(乙第1号証),特徴的な形態ではない。
2)両意匠は,支持部15,115の背面に操作パネル51,151が設けられている点で共通する。しかしながら,両意匠の物品の機能及び操作性を考えると,支持部15,115の背面に操作パネルを設けることが普通であり,支持部15,115の背面に操作パネル51,151が設けられているという点は特徴的な形態ではない。
(3)両意匠の差異点
1)シェードの態様
本件登録意匠のシェード11は,シルエットの曲線が全体的に緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している(本件登録意匠の説明書の斜視図参照)。これに対し,公知意匠2のシェード111は,「ゴツゴツ」とした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している(公知意匠2の説明書の右側面図参照)。両意匠の正面視,平面視,底面視,右側面視において比較して分かるように,本件登録意匠のシェード11と公知意匠2のシェード111とは,全く異なる印象を看者に与えている(本件登録意匠の説明書及び公知意匠2の説明書参照)。
2)円柱部の態様
本件登録意匠の円柱部13は,厚みが薄く,正面視,背面視,平面視,底面視からは見えず,本件登録意匠の全体形態に与える影響は小さい(本件登録意匠の説明書の右側面図,正面図,背面図,平面図,底面図参照)。これに対し,公知意匠2の円柱部113の上側は上方に突出しており,上側はやや丸みを帯びた曲面171を形成している(公知意匠2の説明書の平面図及び右側面図参照)。当該やや丸みを帯びた曲面171は,公知意匠2の最も高い位置にあり,公知意匠2の意匠公報の正面図,背面図,平面図,右側面図に表出されるように,公知意匠2の正面,背面,右側面及び左側面の5方向から見え,看者の注意を特に惹く要部である。また,本件登録意匠の円柱部13の端部には,丸みを帯びた曲面はない。特に,右側面視において比較して分かるように,本件登録意匠の円柱部13と公知意匠2の円柱部113とは全く異なる印象を看者に与えている(公知意匠2の説明書の右側面図参照)。
3)支持部の態様
本件登録意匠の支持部15は,シルエットの曲線が連続的かつ緩やかであるため,滑らかな女性的な印象を与える美感を表出している(本件登録意匠の説明書の背面図,平面図及び右側面図参照)。また,支持部の外径は「さじ」を立てたような形状をし,全体的に姿勢が真っ直ぐに延びた印象を与える(本件登録意匠の説明書の右側面図参照)。これに対し,公知意匠2の支持部115は,第1支持部115Aに対して第2支持部115Bが屈曲し,第2支持部115Bに対して第3支持部115Cが屈曲している(公知意匠2の説明書の平面図及び右側面図参照)。また,第2支持部115B及び第3支持部115Cの断面は略矩形である。さらには,第1支持部115Aには蛇腹部分が設けられている。そのため,公知意匠2の支持部115は,外形が不連続に折れ曲がり,「ゴツゴツ」とした荒削りで男性的な印象を与える美感を表出している。また,全体的に下側にうつむいた印象を与える。両意匠の背面視,平面視及び右側面視において比較して分かるように,公知意匠2の支持部115と,本件登録意匠の支持部15とは全く異なる印象を看者に与えている(本件登録意匠の説明書及び公知意匠2の説明書の背面図,平面図及び右側面図参照)。特に,本件登録意匠及び公知意匠2の支持部15,115は,意匠全体において,視覚的に大きな部分を占めているとともに,操作者が操作を行う際に操作者の正面に位置し,看者の注意を特に惹くものであって,要部である。
(4)請求人の主張に対しての反論
原告は,美容業界におけるヘアードライヤの意匠一般について,ことさらシェード部分のみを取り上げ,帯状シェード回転タイプ,環状シェード回転タイプ,弓形シェード可動タイプ,複数シェード点在固定タイプ及び円筒シェード固定タイプなどと名付け,本件登録意匠と公知意匠2のタイプが単に同一の帯状シェード回転タイプに属することを理由として,本件登録意匠と公知意匠2とが類似である旨を主張する。しかしながら,当該主張は,シェード部分(及びヒーター部分)のみが本件登録意匠の要部であることを前提とするものであり,これをもって,本件登録意匠と公知意匠2とが類似するとするのは誤りである。原告は,美容業界におけるヘアードライヤを5種類に大別しているが,そもそもこのような分類は美容業界には存在せず原告独自の見解によるものである。また,仮にこのとおり分類できるとしても,その累計に属するか否かで直ちに意匠の類否判断ができるものではない。意匠の類否という観点からすれば,本件登録意匠と公知意匠2との類否判断は,シェード部だけでなく,円柱部及び支持部の全てを対象としなければならないのであって,単に,本件登録意匠において,シェード部分(及びヒータ部分)のみを要部とすることは誤りであるし,また,シェード部分が一定の類型に属するから即両意匠が類似であるとすることは,論理の飛躍があるというほかない。以上述べた差異点が,意匠全体の美感に影響を与えることは明白であり,取引者・需要者に対して,本件登録意匠と公知意匠2とは異なる美感を与えているから,本件登録意匠は公知意匠2に類似しない。

2.むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,公知意匠2に類似しないため,請求人の「本件登録意匠は,本件登録意匠出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された意匠と類似する意匠であり,同法第3条第1項第3号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので(理由2),本件登録意匠は同法第48条第1項1号に該当し,無効とすべきである」との主張は認められるべきものではない。

3.証拠方法
(1)乙第1号証 特開昭60-96204の特許公開公報
(2)乙第2号証 請求人のホームページ

第3 口頭審理
本件審判について,当審は,平成23年12月26日に口頭審理を行った。(平成23年12月26日付口頭審理調書)(口頭審理において,審判長は,両者に対して審理終結を告知した。)

1. 請求人は,審判請求書及び平成23年12月12日付口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述した。口頭審理陳述要領書において,本件登録意匠が公知意匠2に類似すると主張し,口頭審理陳述要領書とともに,証拠として甲第14号証?第43号証の書証(請求人会社が製造販売していた公知意匠2に係る製品「ブーメラン」の周知性を立証する趣旨で,本件登録意匠に係る出願までに,日本国内において広報や宣伝を目的として作成した製品「ブーメラン」を掲載したカタログ及びチラシ等の写し)を提出した。
(証拠方法)
(1)甲第14号証 平成5年(1993年)3月女性モード社発行の美容業界紙「HAIRMODE」表紙及び掲載広告
(2)甲第15号証 平成6年(1994年)9月女性モード社発行の美容業界紙「HAIRMODE」表紙及び掲載広告
(3)甲第16号証 平成10年(1998年)1月女性モード社発行の美容業界紙「HAIRMODE」表紙及び掲載広告
(4)甲第17号証 平成4年(1992年)請求人発行の「OOHIRO 新商品ご案内」のチラシ
(5)甲第18号証 平成4年(1992年)請求人発行の「ブーメラン」のカタログ
(6)甲第19号証 平成4年(1992年)請求人発行の「ブーメラン」のカタログ
(7)甲第20号証 平成5?6年(1993?1994年)請求人発行の「PLUS Sensitive oohiro salon project」のカタログ 表紙及び裏表紙,「ブーメラン」掲載頁抜粋
(8)甲第21号証 平成6年(1994年)請求人発行の「プロセッサー/エステティックカタログ」表紙及び裏表紙,第4?5頁
(9)甲第22号証 平成6年(1994年)請求人発行の「バーバーカタログ」表紙及び裏表紙,第10?11頁
(10)甲第23号証 平成6年(1994年)請求人発行の「Thanks Fair’94」のチラシ
(11)甲第24号証 平成7年(1995年)請求人発行の「オオヒロ理容総合カタログ」表紙及び裏表紙,第22?23頁
(12)甲第25号証 平成7年(1995年)請求人発行の「’95 SUPPORT FAIR」のチラシ
(13)甲第26号証 平成8年(1996年)請求人発行の「’96 オータムフェア」のチラシ
(14)甲第27号証 平成9年(1997年)請求人発行の「’97 リフレッシュフェア」のチラシ
(15)甲第28号証 平成10年(1998年)請求人発行の「OOHIRO Thanks Fair 40周年」のチラシ
(16)甲第29号証 平成13年(2001年)請求人発行の「新製品」のカタログ
(17)甲第30号証 平成13年(2001年)請求人発行の「オオヒロ心斎橋スタジオ クレアーレ開設記念大感謝祭」のチラシ
(18)甲第31号証 平成14年(2002年)請求人発行の「Autumn Exhibition 2002」のチラシ
(19)甲第32号証 平成15年(2003年)4月請求人発行の「Processors Hair Dryers」のカタログ 表紙及び裏表紙,「ブーメラン」掲載頁抜粋
(20)甲第33号証 平成16年(2004年)6月20日請求人発行の「折りたたみカタログ SALON EQUIPMENT」表紙及び裏表紙,「ブーメラン」掲載頁抜粋
(21)甲第34号証 平成7年(1995年)請求人配布の暑中見舞葉書
(22)甲第35号証 昭和58年(1983年)請求人発行の「会社案内」
(23)甲第36号証 平成4年(1992年)請求人発行の「会社案内」のチラシ
(24)甲第37号証 平成4年(1992年)請求人発行の大阪本店のショールームでの「Blooming Fair’92」のチラシ
(25)甲第38号証 平成4年(1992年)請求人発行のお茶の水のショールームオープンの案内チラシ
(26)甲第39号証 平成4年(1992年)請求人発行の原宿のショールームの案内パンフレット
(27)甲第40号証 平成13年(2001年)請求人発行の心斎橋のショールームの案内パンフレット
(28)甲第41号証 平成14年(2002年)請求人発行の心斎橋のショールームでの「Choice product fair」のチラシ
(29)甲第42号証 平成14年(2002年)請求人発行の心斎橋のショールームでの「開設記念大感謝祭」のチラシ
(30)甲第43号証 「ブーメラン」年度別出荷実績

2. 被請求人は,審判事件答弁書及び平成23年12月12日付上申書のとおり陳述した。上申書において,本件登録意匠に係る意匠は,甲第4号証?第6号証の意匠とは同一ではない,また,甲第7号証及び第8号証は,日付が明確でない旨主張した。

第4 当審の判断
当審は,本件登録意匠が本件意匠登録出願前に外国において頒布された刊行物である甲第1号証(無効理由1)に記載された意匠(以下「公知意匠1」という。)と同一の意匠であり,意匠法第3条第1項第2号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであると判断する。その理由は,以下のとおりである。
また,本件意匠登録出願前に日本国内おいて頒布された刊行物である甲第2号証(無効理由2)に記載された意匠(以下「公知意匠2」という。)とは類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号には該当しないと判断する。その理由は,以下のとおりである。

1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1237140号の意匠)は,平成16年10月29日に意匠登録出願され,平成17年3月11日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「ヘア・ドライヤー」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。
すなわち,本件登録意匠は,ヘアーサロン用のヘアードライヤーのドライヤー本体部に係るものであり,椅子にかけたヘアーサロンの客の髪を乾燥させたり温風でパーマ液の浸透を促進したりするためのもので,通常は,下方に高さを調節できる細長い棒状の軸部とそれを支える脚部が接続されるものである。その形態は,側面視略倒「へ」の字状の縦長の支持部材(以下,「支持部材」という。)と支持部材の先端部底面から回転軸部を介して略ブーメラン形状の翼部(以下,「翼部」という。)を設けたものであって,翼部は,正面視左右対称状で回転可能とし,正面視略帯状で,左翼部を平面視逆「へ」の字状,右翼部を「へ」の字状とし,翼部の左右先端部が丸みを帯び,翼部の上面側両端部には略台形状の桟状部を設け,底面側両端部には横長の略長方形状で網状の保護枠を装着し,翼部の底面側中央に円形状凹部を有し,支持部材の上端部を略半球形状に膨出して形成し,支持部材の背面側に縦長長方形状の枠部を有し,枠部内に操作ボタンを配し,枠部の下側に矩形状の桟状部を設け,支持部材の正面側において,下方に横長長方形状の桟状部を設け,上方部に横長長方形状の凹状部,さらにその上方に略八角形状に多数の小孔を配したものである。

2.無効理由1について
(1)公知意匠1との同一について
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された公知意匠1と同一の意匠であり,意匠法第3条第1項第2号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである旨主張するので,以下,検討する。
甲第1号証に記載された公知意匠1は,1998(平成10)年4月7日に大韓民国で頒布された刊行物である大韓民国特許庁が発行した意匠公報に記載された登録番号第209951号の「ヘア・ドライヤー」の意匠である(別紙第2参照)。
すなわち,公知意匠1は,ヘアーサロン用のヘアードライヤーのドライヤー本体部に係るものであり,椅子にかけたヘアーサロンの客の髪を乾燥させたり温風でパーマ液の浸透を促進したりするためのものである。その形態は,側面視略倒「へ」の字状の縦長の支持部材と支持部材の先端部底面から回転軸部を介して略ブーメラン形状の翼部を設けたものであって,翼部は,正面視左右対称状で回転可能とし,正面視略帯状で,左翼部を平面視逆「へ」の字状,右翼部を「へ」の字状とし,翼部の左右先端部が丸みを帯び,翼部の上面側両端部には略台形状の桟状部を設け,底面側両端部には横長の略長方形状で網状の保護枠を装着し,翼部の底面側中央に円形状凹部を有し,支持部材の上端部を略半球形状に膨出して形成し,支持部材の背面側に縦長長方形状の枠部を有し,枠部内に操作ボタンを配し,枠部の下側に矩形状の桟状部を設け,支持部材の正面側において,下方に横長長方形状の桟状部を設け,上方部に横長長方形状の凹状部,さらにその上方に略八角形状に多数の小孔を配したものである。
本件登録意匠と公知意匠1を対比し判断すると,公知意匠1は,本件登録意匠と意匠に係る物品が一致し,形状も一致しており,両意匠は,同一の意匠であると認められる。
なお,答弁書においても,上申書においても,被請求人は,この点について何ら言及していない。
(2)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に外国において頒布された刊行物である甲第1号証に記載された公知意匠1と同一の意匠であり,意匠法第3条第1項第2号に該当し,意匠登録を受けることができないものであるので,無効理由を有するものであって,無効理由1により,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当するものと認められる。

3.無効理由2について
(1)公知意匠2との類似について
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された公知意匠2と類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである旨主張するので,以下,検討する。
公知意匠2は,平成3(1991)年12月11日に意匠登録出願され,平成6(1994)年3月25日に意匠権の設定の登録がなされ,平成6(1994)年6月9日に発行された,意匠登録第900962号の意匠公報に記載されたものであって,意匠に係る物品を「ヘアドライヤ本体」とし,その形態は,甲第2号証に記載された当該意匠公報に掲載されたとおりのものである(別紙第3参照)。
すなわち,公知意匠2は,ヘアーサロン用のヘアードライヤーの「ヘアドライヤ本体」に係るものであり,椅子にかけたヘアーサロンの客の髪を乾燥させたり温風でパーマ液の浸透を促進したりするためのもので,使用状態を示す参考図1に示されたように,通常は,下方に高さを調節できる細長い棒状の軸部とそれを支える脚部が接続されるものである。(なお,形態については,翼部を90度回転させ,本件登録意匠と翼部の向きを合わせて認定する。)
その形態は,側面視略倒「へ」の字状の略薄板状の支持部材の上端部に略円柱形状の大きな支柱部(以下,「支柱部」という。)を設け,その下方寄りにリング状の切り替え部を設けて回転軸部とし,これを介して略ブーメラン形状の翼部を設けたものであって,翼部は,支柱部を中心として正面視左右対称状で回転可能とし,正面視略帯状で,左翼部を平面視略逆「へ」の字状,右翼部を略「へ」の字状とし,翼部の左右先端部がやや先細状で角張り,翼部の上面側に正面視略三角形状の膨出部を設け,その膨出部に略長方形状の桟状部を設け,底面側の両側には横長の略台形状で格子状の保護枠を装着し,翼部の底面側中央に円形状凹部を有し,略薄板状の支持部材の上端部を平面視略台形状とし蛇腹状部を設け,支持部材の背面側に縦長長方形状の枠部を有し,枠部内に操作ボタンを配し,枠部の下側に横長矩形状の桟状部を設け,支持部材の正面側において,下方に横長長方形状の桟状部を設けたものである。
(2)本件登録意匠と公知意匠2との対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「ヘア・ドライヤー」であり,公知意匠2は,「ヘアドライヤ本体」であるが,両意匠は,いずれもヘアサロン用のヘアードライヤーのドライヤーの本体部に係るものであり,椅子にかけたヘアーサロンの客の髪を乾燥させたり温風でパーマ液の浸透を促進したりするためのものであるから,意匠に係る物品が共通する。
1)形態における共通点
両意匠は,(a)側面視略倒「へ」の字状の縦長の支持部材から回転軸部を介して略ブーメラン形状の翼部を設けたものであって,翼部は,正面視左右対称状で回転可能とし,正面視略帯状で,左翼部を平面視逆「へ」の字状,右翼部を「へ」の字状としている点,(b)翼部の上面側両端部には桟状部を設け,底面側両端部には保護枠を装着し,翼部の底面側中央に円形状凹部を有している点,(c)支持部材の背面側に縦長長方形状の枠部を有し,枠部内に操作ボタンを配し,枠部の下側に矩形状の桟状部を設け,支持部材の正面側において,下方に横長長方形状の桟状部を設けている点において主に共通する。
2)形態における差異点
両意匠には,(ア)本件登録意匠は,支持部材の先端部底面から回転軸部を介して翼部を設けているのに対して,公知意匠2は,略薄板状の支持部材の上端部に略円柱形状の大きな支柱部を設け,その下方寄りにリング状の切り替え部を設けて回転軸部とし,これを介して翼部を設けている点,(イ)支持部材の上端部において,本件登録意匠は,上端部を略半球形状に膨出して形成しているのに対して,公知意匠2は,略薄板状の支持部材の上端部の先端部を略台形状に窄めて蛇腹状部を設けている点,(ウ)翼部について,本件登録意匠は,左右先端部が丸みを帯び,上面側両端部には平面視略台形状の桟状部を設け,底面側の両側には横長の略長方形状で網状の保護枠を装着しているのに対して,公知意匠2は,先端部がやや先細状で角張り,上面側に正面視略三角形状の膨出部を設け,その膨出部に略長方形状の桟状部を設け,底面側の両側には横長の略台形状で格子状の保護枠を装着している点,(エ)支持部材の正面側について,本件登録意匠は,上方部に横長長方形状の凹状部,さらにその上方に略八角形状に多数の小孔を配したものであるのに対して,公知意匠2は,上方部には何も設けていない点に主な差異が認められる。
(3)両意匠の類否判断
そこで検討するに,共通点の態様のうち,(a)の側面視略倒「へ」の字状の縦長の支持部材と支持部材から略円柱形状部を介して略ブーメラン形状の翼部を設けた態様は,両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度あるというべきではあるが,この種の物品の分野においては,同様の支持部材や可動する翼部を有するドライヤーが,公知意匠2の出願前より他にも公然と認められ(例えば,乙第1号証に示された特開昭60-96204の特許公開公報の第1図及び第2図の「毛髪促進装置」(参考意匠1,別紙第4参照),実開昭63-8803の実用新案公開公報の第1図?第7図の「毛髪処理促進装置」(参考意匠2,別紙第5参照)),その構成を有する点のみをもって両意匠の類否判断を決定付ける共通点ということはできない。また,共通点(b)及び同(c)の支持部材や翼部の各部の構成態様に係る共通性は,台形状や長方形状の保護枠を翼部に設けた態様は上記参考意匠1及び上記参考意匠2にも認められ,支持部材に略長方形状の桟状部や支持部材の背面側に操作ボタンを設けることも,既に公知意匠2の出願前から認められるありふれた態様といえるもので,これらの共通点は,両意匠のみの特徴ではないから,この共通性が,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。
これに対して,両意匠全体を観察すると,下記考察のとおり,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,看者の注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
すなわち,差異点(ア)及び同(イ)に係る態様は,支持部材及び翼部の全体形状に係る大きな差異で,その差異は,看者の注意を強く惹くところであり,両意匠の形態全体の骨格的な態様に係り,両意匠の印象を大きく異ならせるものといえる。特に略円柱形状の大きな回転軸である支柱部の有無は,両意匠を別異のものと印象付ける目立つ相違であり,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。次に,差異点(ウ)に係る態様についても,翼部の具体的な形状に係る差異で,上面側の造形や全体の丸みが異なるといえるもので,その差異は,看者の注意を強く惹くところであり,両意匠の印象を大きく異ならせるものといえる。さらに,差異点(エ)に係る態様については,支持部材の正面に係る差異であって,看者の注意を惹く部位といえ,差異点(ア)ないし同(ウ)に係る態様と相俟って,両意匠の類否判断に影響を与えるものであるから,これらの差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるに十分なものである。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似するということはできない。
(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に外国において頒布された刊行物である甲第2号証に記載された公知意匠2と類似しないものであり,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,無効理由を有さないものであって,本件登録意匠は,無効理由2によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

第5.むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,無効理由1(公知意匠1)により,意匠法第3条第1項2号の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものであり,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当するから,その登録を無効とされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-02-09 
出願番号 意願2004-32981(D2004-32981) 
審決分類 D 1 113・ 113- Z (B7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 真珠 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 橘 崇生
遠藤 行久
登録日 2005-03-11 
登録番号 意匠登録第1237140号(D1237140) 
代理人 松下 昌弘 
代理人 玉置 健 
代理人 後藤 秀継 
代理人 竹内 祐二 
代理人 前田 弘 

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