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審決分類 審判 判定   属さない(申立不成立) L2
管理番号 1264273 
判定請求番号 判定2011-600052
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2012-11-30 
種別 判定 
判定請求日 2011-12-02 
確定日 2012-09-05 
意匠に係る物品 地下浸透桝 
事件の表示 上記当事者間の登録第1035100号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面,イ号写真及びその説明書に示す「地下浸透桝」の意匠は、登録第1035100号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1.請求人の申立て及び理由
請求人は,「イ号図面,イ号写真及びその説明書に示す『地下浸透桝』の意匠は,登録第1035100号の意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないとの判定を求める。」と申立て,その理由として判定請求書に記載のとおりの主張をし,証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出した。

第2.被請求人の答弁及び理由
被請求人は,「イ号写真に示されたイ号意匠は,登録第1035100号の意匠およびこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と答弁し,その理由として判定請求答弁書に記載のとおりの主張をし,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。

第3.当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,1995年(平成7年)12月12日に意匠登録出願された意願平7-37480号の分割出願である意願平9-62403号に係る,1999年(平成11年)1月14日に意匠権の設定の登録がなされた意匠登録第1035100号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)であり,願書の記載によれば意匠に係る物品を「地下浸透桝」とし,その形態は願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
2.イ号意匠
本件判定請求の対象とされるイ号意匠(以下,「イ号意匠」という。)は,判定請求書においてイ号図面(1)ないし(4),イ号写真(1)ないし(3)及びイ号説明書によって,イ号意匠として示されたものであり,その形態を当該図面,写真及び説明書に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)
なお,被請求人は,イ号図面(1)ないし(4)とイ号写真(1)ないし(3)との関係が不明であるとして,イ号写真(1)に表された意匠のみを対象として類否判断を行うことが適当である旨主張しているが(判定請求答弁書第2頁 7 答弁の理由 第1(イ)ないし(オ)),イ号写真(1)ないし(3)に表された意匠は,イ号図面(1)ないし(4)に表された意匠の,この種物品において通常用いられる材質による実施物であると認められる。
3.本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
(1)両意匠の対比
両意匠を対比すると,両意匠の意匠に係る物品について,本件登録意匠は,「地下浸透桝」であり,イ号意匠は「浸透桝」であり,意匠に係る物品は一致する。
形態については,主として以下の共通点と差異点がある。
【共通点】
(A)全体は,断面を略正方形状とする角筒ブロックを段重ねしてなる略縦長四角柱形状の桝であり,最上段ブロックは,上面を天井とし,その一部に出入りのための円形開口部を設け,下段のブロック四側壁面には,水を地中に浸透させるため多数の排水孔を設けた構成態様とした点

(B)排水孔は小孔で,各ブロック側壁面に横に複数列,縦に複数段として整列配設した点

【相違点】
(ア) 上方開口部の位置について,
本件登録意匠は,略正方形状の天井面の中心に位置するのに対し,
イ号意匠は,略正方形状の天井面の偏心に位置する点

(イ) 開口部の形態について,
本件登録意匠は,開口部の切断面が垂直であり,開口部周囲上方には環状ブロックを重設し,その上面内側をしゃくり面状に切欠いて蓋受け部としたのに対して,
イ号意匠は,開口部の切断面が,下方に向かって口径をやや広くするように傾斜しており,開口部の周囲上方に環状の金属板を重設し,この環状金属板の上面内側をしゃくり面状に屈曲成形して蓋受け部とし,その内部に金属製円形蓋を嵌設したものである点

(ウ) 排水孔の態様について,
本件登録意匠は,各排水孔の形態を,外壁面の開口部の正面視形状を縦に細長い長方形とし,外壁面から内壁面に向かって,横幅は等幅のまま縦の長さを減縮させた,またこの減縮率は下方が上方よりやや大きい,全体として逆狭間様の略縦長偏四角錐台形状を呈する形態であり,配設態様は,各側壁面毎に横に4列,縦に4段整列配設した態様であるのに対して,
イ号意匠は,各排水孔の形態を,外壁面開口部の正面視形状を縦に極く細長い略小判形状とする壁厚略中心までの長溝部と,この長溝の底部から内壁面かけて縦に等間隔に穿設した,長溝底部側開口部の正面視形状を略小小判形状とする5個の小排水孔とを組み合わせた形態としたもので,外壁側の長溝部は,外壁面から壁厚略中心に向かって,その横幅を略等幅とし縦の長さを減縮させた略縦長楕円錐台形状であり,内壁側の小排水孔は,壁厚略中心から内壁面に向かって,その横幅をやや狭くし,縦の長さを減縮させた,またこの減縮率は上方が下方より大きい,全体として略小縦長偏楕円錐台形状であり,配設態様は,各側壁面毎に,横に6列,縦に2段整列配設した態様である点
(エ)底部の態様について,
本件登録意匠は,底版が無いものであるのに対して,
イ号意匠は,底版が有り,その中心に天井の開口部よりやや小さい円形開口部を設けている点
(オ)角筒ブロックと天版の態様について
本件登録意匠は,4段重ねで,下方3段のブロックは同じ大きさで横幅と高さが略同じであり,最上段のブロックは横幅に対して,高さをやや低いものとし,側壁版から天版を一体として形成したものであり,下方3段のブロックに排水孔を設けたのに対して,
イ号意匠は,3段重ねで,3段のブロックは全て同じ大きさで,横幅に対して,高さをやや低いものとし,側壁版の上に天版を載置しており,下方2段のブロックに排水孔を設けた点。

(2)両意匠の類否判断
この種物品は,洪水等の防止を目的として,降った雨水を一時的に貯留しその後適宜地下に浸透させるために地下に埋設して使用する桝であり,作業員は上方の開口部から出入りする。
両意匠の類否判断は,上記の使用状態を踏まえて,共通点と相違点を,意匠全体として比較して,判断することとする。

共通点(A)及び同(B)については,この種地下浸透桝において,桝本体の形状を角筒ブロックを段重ねして略縦長四角柱状とし,上方を天井面とし,その一部に円形開口部を設けた形態は,例を挙げるまでもなくごく一般的な形態であり,小孔からなる排水孔を桝の上方を除いた側壁面に,各ブロック毎に横に複数列,縦に複数段として整列配設した態様は,本件登録意匠の出願前に甲第1号証,甲第2号証に見られるように公然知られているから,共通点(A)及び同(B)が類否判断に与える影響は,大きいとは言えず,類否判断を決定付けるには到らないものである。
次に相違点について見ると,上方開口部の位置についての相違点(ア)は,作業時に出入りする際,開口部が筒ブロック天井面の中心に位置するか偏心に位置するかという作業環境の相違として認識されるものであるから,需要者の注意を強く惹く相違点であり,また,開口部の形態についての相違点(イ)は,桝本体を地中に埋設した後も地表面に露出する部位として,作業者のみならず一般の看者の目にも触れる部位であることを考慮すると,本件登録意匠の厚みのある形態とイ号意匠の薄板による形態の相違は,需要者の注意を惹く点であるから,開口部についての相違点(ア)及び同(イ)が類否判断に及ぼす影響は大きい。

排水孔についての相違点(ウ)は,雨水をスムーズに地中へ浸透させることが,この物品の最も重要な機能であって,排水孔部はこの機能に直接関わる部位として,看者の注意を強く惹く部位であるところ,本件登録意匠は,各排水孔の形態が,単純な逆狭間様の略縦長偏四角錐台形状で角張った形状であるのに対して,イ号意匠は,外壁面から壁厚略中心までを略細長小判形状の一つの長溝として,この長溝部内に,縦に等間隔に5個,その開口部の正面視形状を略小小判形状とする小排水孔を穿設してなる,長溝と小排水孔を組み合わせた態様で,形状も細長い略縦長楕円錐台形状を基本とする丸みのある形状となっており,需要者の視覚に異なる印象を与えるものとなっているから,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,非常に大きい。
底部の態様についての相違点(エ)は,本件登録意匠は,使用状態を示す参考図及び意匠に係る物品の説明の記載によれば,掘削された地盤に形成された基礎の上に設置するため底版を設けないものであるが,イ号意匠は,底版を有し,その中心に天井の開口部よりやや小さい円形開口部を設けたものであるから,地中に埋設される箇所とはいえ,視覚的には異なる効果を与えるから,この相違点(エ)が類否判断に及ぼす影響は大きい。
角筒ブロックと天版の態様についての相違点(オ)については,類否判断に及ぼす影響は小さい。すなわち,この種物品は人が中に入れるほど大きなものであるから,施工にあたっては,重量のあるコンクリートをあらかじめいくつかのブロックとして製作しておき,それらを現場で上下に段重ねして埋設する施工方法が一般的である。その際,全体をいくつのブロックに分割するかというブロック分割個数,各ブロックの横幅と高さの比率設定,また,天井面を最上段ブロックと一体とするか,別体とするかなどは各ブロックの重量や運搬の容易さに応じて適宜選択されるものである。相違点(オ)は,これらの選択の結果として生じたものにすぎず,視覚的には,単なる細い切り替え線の位置等の相違でしかないから,類否判断に及ぼす影響は小さい。
以上述べたとおり相違点(ア)ないし(オ)は,それぞれが類否判断に及ぼす影響の程度には差があるものの,相違点を総合すると,類否判断において非常に大きな影響を及ぼしている。

以上のとおりであって,本件登録意匠とイ号意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が,本件登録意匠の類似登録意匠(登録第1035100号の類似第1号の意匠)を参酌しても,未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,相違点の印象は,共通点の印象を凌駕し,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,イ号意匠は,本件登録意匠に類似するものとすることはできない。

4.結び
したがって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲には属しない。
よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2012-08-23 
出願番号 意願平9-62403 
審決分類 D 1 2・ - ZB (L2)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 弘樹 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 樫本 光司
早川 治子
登録日 1999-01-14 
登録番号 意匠登録第1035100号(D1035100) 
代理人 神戸 真 
代理人 神戸 真 
代理人 今井 彰 

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