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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 F2 |
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管理番号 | 1267048 |
審判番号 | 不服2012-5601 |
総通号数 | 157 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-03-27 |
確定日 | 2012-11-16 |
意匠に係る物品 | 万年筆 |
事件の表示 | 意願2010-16311「万年筆」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,2010年(平成22年)7月5日付けの意匠登録出願であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「万年筆」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとするものである(別紙第1参照)。 2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,その出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠,若しくは,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似する意匠と認められるので,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するというものであって,具体的には下記のとおりである。 記 「この意匠登録出願の意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠に類似するものと認められますので,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当します。 記 両意匠は,ともに万年筆であり,略紡錘形状のキャップ部,根本から先端に向かい徐々に幅狭となるクリップ部,リング状の別部材部を設けた略円錐台形状の首軸部,前端から後端へ向かい先細りとなる後軸部の態様において共通し,これらが両意匠に共通する美感をもたらしていますので,両意匠は類似するものと認められます。 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2007年3月27日 受入日 特許庁意匠課受入2007年4月13日 掲載者 セーラー万年筆 表題 http://www.sailor.co.jp/BUNGU/PDF/11-7002.pdf 掲載ページのアドレス http://www.sailor.co.jp/BUNGU/PDF/11-7002.pdf に掲載された「万年筆」の意匠(以下,「引用意匠」という。)(別紙第2参照) (特許庁意匠課公知資料番号第HJ18038526号)」 3.当審の判断 本願意匠と引用意匠を対比すると,意匠に係る物品は,共に「万年筆」であって,一致している。 そして,両意匠の構成及び形態においては,本体とキャップで構成し,全体形状がキャップを閉めた状態で略紡錘形を成すものであって,当該本体は,先端に正面視において縦長略五角形状のペン先があり,略円錐台形状の首軸部と後端へ向かい先細りとなる後軸部から成り,当該キャップは,先端が略半球状の先細りであって,キャップには,正面視において中央に,キャップ先端の略半球状部分強下がった位置に根本がくるようにクリップ部が設けてあり,そのクリップ部は根本から先端に向かい徐々に幅狭となる態様であって,前記,首軸部中程には,別部材のリングを設けている点で主に共通している。 これに対し,(A)キャップの直径が一番太い箇所につき,本願意匠は,キャップの先端から約3分の2下がった所であるのに対し,引用意匠は,キャップ後端縁部である点,(B)後軸部の形状につき,本願意匠は,キャップ後端縁部との接合部から約4分の1長さまでを,凹曲線にて縮径し,続く中程の約8分の3長さを,同径とし,残り約8分の3長さの後端部を放物線状に縮径しているのに対して,引用意匠は,放物線状に縮径している点,(C)キャップを閉めた状態におけるキャップと後軸部における輪郭形状につき,本願意匠は,キャップの輪郭線と後軸部輪郭線が,一体的に滑らかなつながりとしているのに対し,引用意匠は,キャップの肉厚分の段差を有する点,(D)クリップ部の正面視形状につき,本願意匠は,根本から約3分の1長さまでを,凹曲線にて縮幅し,その後の約3分の1長さをやや拡幅し,残りの約3分の1長さでクリップ部先端をとがらせているのに対し,引用意匠は,根本から約5分の1長さまでを縮幅し,その余をおおむね同幅としてクリップ部先端を半円弧状とした点,(E)クリップ部の根本付近につき,正面視すると本願意匠は,根本側から約4分の1の位置に,くさび形の凹状部を設けているのに対し,引用意匠は,設けていない点,(F)首軸部のリングにつき,本願意匠は,やや幅広で首軸部略中央に設けているのに対し,引用意匠は,細幅で首軸部先端から約3分の2の位置に設けている点,等で主に相違する。 本願意匠と引用意匠の共通点及び相違点を検討すると,共通点は,両意匠の態様を概括したにすぎないものであり,これらの共通性のみをもって,両意匠の類否判断を決定付けるものとすることはできないのに対して,相違点(A)ないし(C)により,全体が略紡錘形であって,キャップ縁部で段差のある従来から良くある形態の引用意匠と比べると,本願意匠は,別異のものとの印象を与える。すなわち,キャップを閉めた状態において,万年筆先端から後端に向けて凸曲線にて徐々に拡径し,全体長さの約3分の1で最大径となり,そこから全体長さの約5分の3の位置まで,凸曲線と凹曲線によって縮径し,同径部分がややあってから放物線状に縮径して後端に達し,キャップ縁部における段差も無く,一体的に滑らかにつながった態様にした結果,縦長にした略ひょうたん形を成すもので,それは独特の形状という印象を与え,類否判断に大きな影響を及ぼすものである。相違点(D)と(E)は,全体から見ると,クリップ部のみの限定した部分の相違ではあるが,この種物品においては,クリップ部の態様にて企業または製品の個性を表すこともあり,その分看者の注意を引く所と認められ,小さな相違であっても,類否判断において,一定程度の影響を与えるものと認められる。 よって,その他の相違点も含め,相違点全体が,共通点によって生じる共通感をしのぎ,見る者に両意匠が別異であるとの印象を与えていることから,両意匠の形態に係る共通点及び相違点を総合的に判断すると,両意匠の意匠に係る物品が一致するも,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 4.結び 以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,原査定における,拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-11-06 |
出願番号 | 意願2010-16311(D2010-16311) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(F2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 神谷 由紀、千葉 祥子、井上 和之 |
特許庁審判長 |
川崎 芳孝 |
特許庁審判官 |
橘 崇生 遠藤 行久 |
登録日 | 2012-12-07 |
登録番号 | 意匠登録第1459217号(D1459217) |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 特許業務法人浅村特許事務所 |
代理人 | 高原 千鶴子 |
代理人 | 大塚 一貴 |
代理人 | 浅村 肇 |