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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 E2
管理番号 1267053 
審判番号 不服2012-12141
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-06-27 
確定日 2012-11-27 
意匠に係る物品 パチンコ機の前面枠 
事件の表示 意願2011- 8639「パチンコ機の前面枠」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする、2011年(平成23年)4月14日の、本意匠を意願2011-8638号とする関連意匠の意匠登録出願であって、その意匠は、願書及び願書添付図面の記載によれば、意匠に係る物品を「パチンコ機の前面枠」とし、その形態を願書及び願書添付図面に記載のとおりとしたものであって、実線で表した部分を部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とするものである(以下、本願について意匠登録を受けようとする部分の意匠を「本願意匠」という。)。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当する(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)とするものであって、拒絶の理由に引用した意匠は、本願出願前、日本国特許庁発行の公開特許公報(公開日:2004年(平成16年)7月8日)特開2004-187784号(発明の名称「遊技機」。以下、「引用文献」という。)に記載されたパチンコ遊技機の本願意匠に相当する部分の意匠であって、その形態は、引用文献の図6に十字キー(203)として記載されたとおりのものである(以下、本願意匠に相当する部分の意匠を「引用意匠」という。)。(別紙第2参照)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品はパチンコ機の前面枠であり、引用意匠の意匠に係る物品も、パチンコ遊技機の前面枠であって、両意匠の意匠に係る物品は共通する。
(2)意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能
本願意匠の意匠登録を受けようとする部分と引用意匠の相当部分の用途及び機能は、いずれも、パチンコ機を介した遊技を行うに際して用いられる操作ボタンである点において共通する。一方、より詳細にみた場合には、本願意匠はパチンコ機の横に設置される玉貸機を操作するための操作ボタンであり、引用意匠はパチンコ遊技機の台番号や遊技情報内容等を選択するための操作ボタンであるという点において、個別具体的な用途及び機能には相違する部分がある。
(3)形態、部分意匠としての位置、大きさ、範囲
本願意匠と引用意匠の形態を対比すると、両意匠の形態には、物品全体の形態に占める部分意匠としての位置、大きさ、範囲の点を含め、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、引用意匠にもあてはめることとする。)
(i)共通点
両意匠は、(A)下方を正面側に膨出させたパチンコ機前面枠の膨出部上面、左右枠部よりも内側の位置に配置された一つの凸ボタンであり、その具体的態様の共通点として、(B)平面視形状を太幅の略十字形状とした点、(C)表面は起伏のない平滑面とし、全体を周囲からわずかに隆起させた平坦な段部として構成した点、が認められる。
(ii)相違点
一方、両意匠の具体的態様の相違点として、略十字形状凸ボタンの、(ア)配置の向きが、本願意匠は、正面に対向して「×」の向きに配置しているのに対して、引用意匠は、正面に対向して「+」の向きに配置している点、(イ)平面視形状について、両意匠とも、長辺と短辺の比を略3対1とした二つの隅丸矩形を中央で直交させることで形成される太幅の十字形状を基本としつつも、引用意匠は、縦方向の長さ(奥行)を左右幅よりもわずかに長く形成した点、が認められる。

2.本願意匠と引用意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価、総合して、両意匠の意匠全体としての類否を判断する。
両意匠は、意匠に係る物品が共通し、部分意匠としての用途及び機能も共通する。形態の類否に係る評価については、当該部分の具体的な用途及び機能との関係性、並びに、物品全体の形態に占める部分意匠としての位置、大きさ、範囲の点を含め、以下のとおりである。
(1)共通点の評価
両意匠の共通点としてあげた共通点(A)について、パチンコ機前面枠膨出部上面の、左右幅中央部付近から遊技玉発射ハンドル上方にかけた位置に、遊技に係る各種操作ボタン配置することは、この種物品の先行意匠にも数多く見られる態様であるから、この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいとはいえない。また、共通点(B)及び同(C)についても、両意匠の具体的態様に係る共通点ではあるものの、当該部分の形態を取り出して対比した場合の共通点であるから、これをもって直ちに両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいということはできず、それら全共通点を総合しても、両意匠全体の類否判断を決定付けるまでには至らない。
(2)相違点の評価
一方、具体的態様に係る相違点については、両意匠の当該部分が操作ボタンとしての用途及び機能を有していることに鑑みると、形態の具体的態様の相違が両意匠の類否判断に与える影響は、その使用方法や使用状態をも考慮した上で評価する必要がある。すなわち、相違点(ア)について、本願意匠は玉貸機を操作するためのボタンであり、通常、パチンコ機に隣接する玉貸機をパチンコ機の台上から操作する場合には、玉貸し及びカード返却の二つの機能により操作するのが一般的であることから、本願意匠は、これらいずれかの機能に対応した単機能の操作ボタンとして、「×」の形状が強く視覚観察されるといえる。これに対し、引用意匠は、パチンコ機の情報表示部に表示される遊技情報等を選択操作する際に、選択エリアを上下左右に移動させるために用いられる操作ボタンであることから、引用意匠は、その移動方向に合わせた四つの端部がそれぞれ押下可能な操作ボタンとして、「+」の形状が強く視覚観察されるといえる。
この「×」形状を呈する向きに配された太幅略十字形状の操作ボタンという本願意匠の具体的態様は、この種物品の先行意匠に照らして本願意匠に特有の特徴であり、本願意匠を大きく特徴付けるものとなっている。また、相違点(イ)は、相違点(ア)と相まって、両意匠の違いをさらに強めるものとなっている。
これら相違点を総合した意匠全体の視覚的効果において、両意匠の形態の相違点は、共通点が醸成する共通の印象を凌駕して、看者に対し、両意匠を別異なものと認識させるに十分な強い別異の印象を与えるものといえる。
(3)小括
したがって、両意匠は、意匠に係る物品が共通し、形態においても、共通点は存するものの、具体的態様に係る相違点が看者に与える印象は共通点のそれを凌駕し、両意匠は、意匠全体としては視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同条同項柱書によって本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、本願意匠と、本願意匠と同様の意匠的特徴を有する本願の本意匠とは、相互に類似するものといえ、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2012-11-12 
出願番号 意願2011-8639(D2011-8639) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (E2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 温品 博康 
特許庁審判長 遠藤 行久
特許庁審判官 伊藤 宏幸
早川 治子
登録日 2012-12-21 
登録番号 意匠登録第1460635号(D1460635) 
代理人 上田 千織 
代理人 飯田 昭夫 
代理人 江間 路子 

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