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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 H1 |
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管理番号 | 1268305 |
審判番号 | 不服2012-9046 |
総通号数 | 158 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2013-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2012-05-17 |
確定日 | 2012-11-20 |
意匠に係る物品 | コイル部品 |
事件の表示 | 意願2010- 28377「コイル部品」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,平成22(2010)年11月29日の意匠登録出願であって,その意匠は,意匠に係る物品が「コイル部品」であり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのものである(別紙第1参照)。 2.原査定における拒絶の理由 本願意匠に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。 この種物品分野において圧粉磁心の外形を偏平略八角柱状に形成することは,例えば意匠1乃至3のように本願出願前より極普通に見られるありふれたものであって,本願の意匠は,単に,本願出願前より公然知られたコイル(意匠4)の外形を偏平略八角柱状に形成して表したものと認められます。 なお,意匠4のコイルは左右の電極の引き出し位置について不明確ですが,左右非対称に引き出したものも,この種物品分野においては極普通に見られる公然知られたものです。 意匠1(別紙第2参照) 特許庁発行の意匠公報記載 意匠登録第1315080号の意匠 (意匠に係る物品の名称,コイル部品)の意匠 意匠2(別紙第3参照) 特許庁意匠課が2004年 5月31日に受け入れた Bee-Ryong Electronics Co., Ltd.発行のカタログ『MAGNETIC SOLUTIONS for Technologies』第79頁所載 面実装用パワーインダクタの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HD16007416号) 意匠3(別紙第4参照) 特許庁意匠課が2005年 5月31日に受け入れた DELTA ELECTRONICS,INC.発行のカタログ『Power Inductor & Common Mode Choke』表紙所載 チョークコイルの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HD17007095号) 意匠4(別紙第5参照) 独立行政法人工業所有権情報・研修館が2009年10月23日に受け入れた Trade Media Holdings Ltd.発行の雑誌『Global Sources Electronic Components』5号 第138頁所載 チョークコイルの意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HB21006408号) 3.請求人の主張の要旨 (1)本願意匠と引用意匠との差異点 本願意匠は,参考資料1に示すように,圧粉磁心の外形が偏平略八角形で形成され,対向する左方側面6と右方側面10から第1の電極端子2及び第2の電極端子3が引き出され,このとき,参考資料2に示すように,各電極端子2,3の引き出し位置は異なっており,したがって,各電極端子2,3の高さ寸法が異なっている。参考資料3に示すように,第2の電極端子3の高さ寸法はH2であり,参考資料4に示すように,第1の電極端子2の高さ寸法はH1であり,側面6,10の見え方が電極端子2,3の高さの違いにより随分異なることがわかる。 これに対して,各引用意匠には,偏平略八角形の圧粉磁心の対向側面から二つの電極端子を引き出し,しかも引き出し位置を異ならせて,各電極端子2,3の高さ寸法を異ならせた構成は開示されていない。 なお,拒絶査定謄本には,左右の電極の引き出し位置について非対称となるものは例示するまでもなく極普通に見られるものであると指摘されているが,何の公知意匠も示されていない以上,各引用意匠の電極構成が本願意匠とほとんど同一の範囲であると認めることはできない。 (2)創作非容易性に関し 参考資料5(意匠登録番号1409955号)は,平成22年5月12日に出願され,平成23年2月25日に意匠登録された「コイル部品」に関する意匠である。 また参考資料6(意匠登録番号1272417号)は,平成17年7月21日に出願され,平成18年6月5日に意匠公報が発行された「コイル封入型磁性部品」に関する意匠である。 また参考資料7(意匠登録番号1273022号)は,平成17年7月21日に出願され,平成18年6月5日に意匠公報が発行された「コイル封入型磁性部品」に関する意匠である。 参考資料5に記載された意匠は,参考資料6及び参考資料7に記載された意匠に基づいて容易に創作されたものではないと判断され,意匠法第3条第2項に該当しないものとして登録されている。 参考資料5のコイル部品は六面体形状で,両側から同じ高さ位置の電極端子が裏面にかけて引き出されている。参考資料5の全体形状は,参考資料6とほぼ同じである。ただし,参考資料5と参考資料6とでは電極端子の引き出し部分の形状がやや違っている。参考資料5の参考図に示すように,参考資料5には電極端子の引き出し部分の中央が凹んで両側に突出部がありますが,参考資料6の同部分はフラット形状であり参考資料5に示すような中央が凹んだことにより形成された突出部は存在していない。 これに対して,参考資料7には,参考資料5のように引き出し部分の中央を凹ませた電極端子が開示されている。 参考資料6の電極端子を参考資料7の電極端子に置換した場合,引き出し部分が参考資料6のようなフラットなものでなく,参考資料7のように中央がやや凹んだ電極端子に変えることは容易に創作できるはずであるが,それでも参考資料5のコイル部品の意匠が,参考資料6及び参考資料7の意匠に対して創作非容易性を有するのは,電極端子の引き出し部分の凹み具合が,参考資料7とは異なっており,看者に異なった印象を与えることに違いない。 このようにコイル部品において,電極端子の形状はわずかな違いでも創作性を有するとして登録されてきた経緯があり,そうすると本願意匠のように,電極端子の引き出し位置が異なって参考資料2?4のように左右両側の側面に非対称とされた電極端子が設けられた形態は,各引用意匠を結合されたとしても,看者に異なった印象を与えることに間違いなく,したがって本願意匠は,各引用意匠に基づいて容易に創作できたものではないと思料する。 4.当審の判断 本願意匠が,当業者であれば,容易に意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。 (1)本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を「コイル部品」とし,その形態は,外形が偏平な略八角柱形状の磁心を設け,平面視形状を対向する4辺を長く,他の4辺を短くした変形八角形としたもので,左右の対向する長辺の側面から底面にかけて側面視略「L」字状及びその対称形状である略逆「L」字状とし,中間部に僅かに隙間を設けて電極端子を設け,正面視左側の電極端子を左側面の下から約5分の4の位置までの高さとし,正面視右側の電極端子を右側面の下から約5分の2の位置までの高さとし,底面において,略矩形状の同形同大の浅い凹陥部を左右対称位置に対向させ,それぞれの凹陥部内の両角部は略4分の1円弧状を呈し,外方縁を除いた外周縁を細幅傾斜面部とし,長方形状の電極端子を,その上下辺はそれぞれの凹陥部の高さ方向一杯に,細幅傾斜面部に接し,内方に凹陥部内両角部とで形成される略倒かまぼこ形状を想起させる平坦部を残して設けたものである。 (2)本願意匠と意匠1ないし意匠4に表された構成態様の関連性 (a)意匠1には,平面視を変形八角形状とする偏平な略八角柱形状の磁心を有する「コイル部品」が表されているが,周側面の中央部に浅い凹部を有し,磁心の全体形状及び電極端子の形状や位置が異なり,本願意匠のように底面に浅い凹陥部が形成されておらず,正面の左右に略瓢箪形状の小型金具が設けられている。(b)意匠2には,偏平な正八角柱形状の磁心を有する「面実装用パワーインダクタ」が表されているが,対向する2つの面を除いて,6つの側面の下方寄りに略正方形状の電極端子が3つずつ連続して設けられており,本願意匠のような電極端子は表されてはいない。(c)意匠3には,偏平な正八角柱形状の磁心を有する「チョークコイル」が表されているが,対向する4つの側面の下方寄りに側面視すると円弧状に形成された電極端子が1つおきに4個設けられており,本願意匠のような電極端子は表されてはいない。(d)意匠4には,底面に浅い凹陥部を有する「チョークコイル」が表されているが,磁心の形状が略直方体形状で平面及び底面が隅丸正方形状で,電極端子の側面における高さは不明で,浅い凹陥部は長方形状で,底面部と浅い凹陥部の間に本願意匠のような傾斜面を設けてはいない。 (3)創作容易性の判断 まず,この種のコイル部品の分野においては,全体を平面視変形八角形状の偏平な略八角柱形状の磁心とすることは,意匠1に見られるように,本願出願前より既に行われていることである。また,その底面に浅い凹陥部を設け,対向する左右側面から底面にかけて電極端子を設けることは,意匠4に見られるように本願出願前より既に行われていることである。しかしながら,本願意匠の左右の対向する長辺の側面から底面にかけて側面視略「L」字状及びその対称形状である略逆「L」字状とし,中間部に僅かに隙間を設けて電極端子を設け,正面視左側の電極端子を左側面の下から約5分の4の位置までとし,正面視右側の電極端子を右側面の下から約5分の2の位置までとし,底面において,浅い凹陥部内の両角部が略4分の1円弧状を呈し,外方縁を除いた外周縁を細幅傾斜面部とし,電極端子をそれぞれの凹陥部の高さ方向一杯に,細幅傾斜面部に接し,内方に凹陥部内両角部とで形成される略倒かまぼこ形状の平坦部を残して設けたという具体的構成態様についてみると,意匠1は,磁心の平面視の形状については共通するが,周側面の中央部に浅い凹部を有し,磁心の全体形状及び電極端子の形状や位置が異なり,また,本願意匠と意匠2及び意匠3は,下方寄りに電極端子が設けられた点については共通するが,電極端子の数,大きさや形状が本願意匠とは異なり,さらに,本願意匠と意匠4は,底面に浅い凹陥部を設けた点については共通するが,本願意匠のような傾斜面も略倒かまぼこ形状の平坦部も設けてはいない。本願意匠の電極端子は,対向する左右の電極端子の高さが異なるものであり,また,意匠4の浅い凹陥部は,形状も異なり,傾斜面も有さないのであるから,本願意匠の電極端子の構成態様及び浅い凹陥部の具体的な態様は,先行する意匠には見当たらないし,導き出すこともできないのであるから,本願意匠に係る具体的な態様がこれらの意匠から容易に創出し得るものということはできない。 そうすると,本願意匠は,対向する長辺の側面から底面にかけて側面視略「L」字状及びその対称形状である略逆「L」字状とし,中間部に隙間を設けて電極端子を設け,正面視左側の電極端子を左側面の下から約5分の4の位置までの高さとし,正面視右側の電極端子を右側面の下から約5分の2の位置までの高さとし,底面において,浅い凹陥部内の両角部が略4分の1円弧状を呈し,外方縁を除いた外周縁を細幅傾斜面部とし,電極端子をそれぞれの凹陥部の高さ方向一杯に,細幅傾斜面部に接し,内方に凹陥部内両角部とで形成される略倒かまぼこ形状の平坦部を残して電極端子を設けたもので,高さの異なる電極端子を設け,浅い凹陥部の外方縁を除いた外周縁を細幅傾斜面部とし,浅い凹陥部を略倒かまぼこ形状とした態様は,本願意匠の独特の態様といえるもので,当業者であれば容易に創作することができたとはいえず,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しない。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,同法同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2012-11-05 |
出願番号 | 意願2010-28377(D2010-28377) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(H1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 井上 和之 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
川崎 芳孝 遠藤 行久 |
登録日 | 2012-12-28 |
登録番号 | 意匠登録第1460868号(D1460868) |
代理人 | 野▲崎▼ 照夫 |