• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
平成23ワ3361意匠権侵害差止等請求事件 判例 意匠

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判    C4
審判    C4
管理番号 1268322 
審判番号 無効2011-880012
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-10-04 
確定日 2012-12-18 
意匠に係る物品 電動歯ブラシ 
事件の表示 上記当事者間の登録第1419789号「電動歯ブラシ」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第1419789号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 手続の経緯及び両当事者が提出した証拠
1.手続の経緯概要
本件意匠登録第1419789号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)は,概要以下の(1)及び(2)の手続を経た後,当審において,概要以下(3)の手続を経たものである。

(1)意匠登録出願
・2010年(平成22年)11月16日 意匠登録出願(意匠登録出願人の名義:株式会社丸隆,意匠の創作をした者の名義:E)

(2)意匠登録
・2011年(平成23年) 7月 1日 意匠権の設定の登録
・2011年(平成23年) 8月 1日 意匠公報 発行

(3)本件意匠登録無効審判請求事件
・本件審判請求 平成23年10月 4日
・無効審判の予告登録 平成23年11月 4日
・上申書(請求人)提出 平成24年 3月23日

(4)登録の抹消
・放棄による本意匠権の登録の抹消 受付日 平成23年10月12日


2.請求人が提出した証拠
(注:「甲第1号証」は,「甲1」と記し,その他の各甲号証も同様とする(以下,同じ。)。)

・「審判請求書」に添付
(1)甲1:寧波社の法人登記簿謄本の写し(全訳付き)
(2)甲2:寧波社のホームページ抜粋の写し(抄訳付き)
(3)甲3:羅寧氏の大学卒業証書の写し(全訳付き)
(4)甲4:羅寧氏の電動歯ブラシに関する中国意匠登録の一例を示す公報の写し
(5)甲5:羅寧氏の電動歯ブラシに関する中国実用新案登録の一例を示す公報の写し
(6)甲6:羅寧氏の電動歯ブラシに関する独国実用新案登録の一例を示す公報の写し
(7)甲7:寧波社のA氏から恒理社【当審注:恒利社の誤記と認め,以下修正する。】のB氏に送られた電子メールの写し(全訳付き)
(8)甲8:恒利社のホームページ抜粋の写し
(9)甲9:電動歯ブラシ(型番SG-923)の創作者に関する寧波社のA氏の陳述書
(10)甲10:電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する中国意匠登録出願関連公報等一式の写し
(11)甲11:寧波社と金型製造メーカである寧海県橋頭胡日奕模塑廠との間に交わされた金型発受注契約書の写し(全訳付き)
(12)甲12:寧波社からある顧客企業の担当に送られた商品推奨のための電子メールの写し(全訳付き)
(13)甲13:電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書の写し
(14)甲14:寧波社による広州フェア搬人品の梱包状態を示す写真
(15)甲15:寧波社ブース来訪の株式会社丸隆社員から入手した名刺及び見本請求書が貼り付けられた羅寧社【当審注:寧波社の誤記と認め,以下修正する。】担当の所持するメモ帳を撮影した写真
(16)甲16:DHL社の発送伝票控えの写し(全訳付き)
(17)甲17:DHL社のホームページ抜粋の写し
(18)甲18:寧波社と株式会社丸隆との間に交わされた契約書の写し(全訳付き)
(19)甲19:寧波社から株式会社丸隆に発行された納品請求書(INVOICE)の写し(全訳付き)
(20)甲20:金型製作を含む電動歯ブラシ(型番SG-923)製作の工程表(抄訳付き)
(21)甲21:第4次金型設計変更の前後における電動歯ブラシを比較して示す書類一式
(22)甲22:広州フェアの展示説明に関する株式会社マルマンプロダクツのC氏及び株式会社矢島コーポレーションのD氏の陳述書の写し
(23)甲23:株式会社マルマンプロダクツのC氏のバイヤーとしての広州フェア入場証の写し
(24)甲24:香港エレクトロニクスフェアにおける寧波社ブースを撮影した2枚のスナップ写真の写し
(25)甲25:香港エレクトロニクスフェアにおいて寧波社担当が身に付けていた出展考証を撮影した写真の写し
(26)甲26:広州フェア及び香港フェアにて配布用のパンフレット発注関連資料一式の写し
(27)甲27:広州フェアにおけるパンフレット配布に関する株式会社マルマンプロダクツのC氏及び株式会社矢島コーポレーションのD氏の陳述書の写し
(28)甲28:広州交易会にて寧波社が配布したパンフレットの写し
(29)甲29:寧波社の証拠保全の求めに応じて,中国浙江省寧波市天一公証役場により,平成23年(2011年)9月9日付けにて公証された業者間取引サイトの画面写し
(30)甲30:羅寧氏の陳述書の写し(全訳付き)

(31)資料1:(意匠登録第1419789号公報)
(32)資料2:(株式会社丸隆より株式会社マルマンプロダクツ,株式会社ヤザワコーポレーションにそれぞれ宛てて送られた警告書の写し)
(33)資料3:(株式会社丸隆から株式会社マルマンプロダクツ宛てに送られた通知書の写し)
(34)資料4:(本件意匠公報記載の意匠図面の符号付き拡大図)
(35)資料5:(甲13の仕様書に含まれ図面の符号付き拡大図)
(36)資料6:(甲26パンフレットに含まれ図面の符号付き拡大図)
(37)資料7:(業者間サイト上の外観写真のクリック操作による通常拡大図)
(38)資料8:(業者間サイト上の外観写真の符号付き拡大図)
(39)証拠説明書
(40)株式会社マルマンプロダクツのC氏に関する証人尋問申出書
(41)株式会社マルマンプロダクツのC氏に関する尋問事項書
(42)株式会社丸隆のE氏に関する証人尋問申出書
(43)株式会社丸隆のE氏に関する尋問事項書
(44)株式会社丸隆のF氏に関する証人尋問申出書
(45)株式会社丸隆のF氏に関する尋問事項書



第2 請求人の申し立て及び理由の要点
請求人は,結論同旨の審決を求める,と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲1ないし甲30,及び,資料1ないし資料8等を提出した。

1. 意匠登録無効理由の要点
1.1 無効理由1(冒認)
審判請求人会社である中華人民共和国(以下,「中国」と略記)の法人である寧波賽嘉電器有限公司(以下,「寧波社」と略記)は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,同社の代表取締役であって,もう一名の審判請求人でもある羅寧氏の創作に係る電動歯ブラシ(型番SG-923)を商品化した(甲1?13)。
審判請求人である株式会社丸隆の代表取締役であるE氏は,電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を入手して,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠を知るに至った(甲14?19)。
本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である(甲7,10,12,13)。
してみると,本件意匠登録は,株式会社丸隆が,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を通じて知り得た意匠を,株式会社丸隆の代表取締役であるE氏が創作した意匠であると偽って,しかも承継すべき意匠登録を受ける権利を有しない同氏から承継した意匠であると偽ってなした意匠登録出願に対してされたものとしか考えられない。
したがって,本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものであるから,意匠法第17条第4号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項第3号の規定により,無効とされるべきである。

1.2 無効理由2(出願前外国展示による公知意匠と同一又は類似)
本件登録意匠は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会(広州フェア),及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会(香港エレクトロニクスフェア)において展示されたことにより公然知られた意匠と殆ど同一である(甲1?14,20?23)。
したがって,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において公然知られた意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第1号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。

1.3 無効理由3(出願前外国頒布刊行物記載の意匠と同一又は類似)
本件登録意匠は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会(広州フェア),及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会(香港エレクトロニクスフェア)において頒布されたパンフレットに記載された意匠と殆ど同一である(甲1?13,24?28)。
したがって,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。

1.4 無効理由4(出願前インターネット掲載意匠と同一又は類似)
本性登録意匠は,平成22年9月30日にインターネット上の業者間取引サイト(http://www.ecplaza.net/tradeleaders/seller/7155555/portable_sonic_toothbrush.html)において閲覧可能とされた意匠と殆ど同一である(甲1?13,29?30)。
したがって,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。


2. 審判請求人の有する法律上の利害関係
審判請求人である寧波社は,同社の代表取締役社長であって,もう一名の審判請求人でもある羅寧氏が創作した意匠に係る物品である電動歯ブラシ(型番SG-923)を商品化すると共に,審判被請求人である株式会社丸隆の他,複数の日本国商社等を通じて,同商品(型番SG-923)を日本国へ輸出していたところ,株式会社丸隆は,突然,平成23年8月2日付けにて,同商品を取り扱う日本国における競業他社等の約30社(株式会社マルマンプロダクツ,株式会社ヤザワコーポレーションを含む)に対して,「同商品は,同社の所有する本件意匠権に抵触するため,同商品の日本国への輸入及び販売等々の行為を直ちに中止すべき」旨の警告状を送付した。そのため,株式会社丸隆と競合関係にある日本国商社等への寧波社の同商品輸出及び販売等の事業は,上記の警告状送付によって,不当に妨害された。その後,株式会社丸隆は,平成23年8月29日付けにて,「警告相手先のうちの1社からの回答により,本件意匠登録は中国広州における展示会での寧波社の出願前展示に起因する新規性喪失により無効理由を含むことを知ったので,警告に対する回答は最早不要である」旨の通知書を警告相手先各社に送る一方,同通知書において,「審判請求人である寧波社は同商品の単なる製造委託先に過ぎない」旨の虚偽の事実の主張を行うことにより,寧波社の信用を著しく毀損すると共に,真の創作者である寧波氏の名誉をも著しく毀損した。


3. 本件登録意匠の説明(要旨等)
本件登録意匠は,意匠登録第1419789号の意匠公報に記載のとおり,意匠に係る物品を「電動歯ブラシ」とし,その形態は,電動歯ブラシ本体部分と円筒状のキャップ部分とからなるものであって,キャップをした状態における同物品全体の外観は,その全長に亘り外径が等しく,かつ全長対外径の比が大凡の目分量で8対1程度となる断面真円の円筒状を呈するものと認められる。
また,キャップをした状態における同物品の全長は,長さを有する円筒状の握り部分と幅を有する押ボタン配置用の環状部分と長さを有する円筒状のキャップ部分との3つの領域に区分されると共に,長さと幅と長さとの比は,大凡の目分量で約3:1:6程度に設定され,加えて,握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色(黄色)であり,環状部分の外観は無模様一色ではあるが,握り部分及びキャップ部分とは異色(金属色)とされている。そして,環状部分には,幅の2/3程度の直径を有しかつ環状部分の色彩(金属色)とは異色(白色)の押ボタンに相当する円形領域が現れている。
一方,電動歯ブラシ本体部分は,その全長を,円筒状の握り部分と押ボタン配置用の環状部分と先細り状の柄の部分とブラシ部分との4つの領域に区分されると共に,先細り状の柄の部分は,さらに,付け根から1/3程度の部分を占める急な先細り領域と残りの2/3程度の部分を占める穏やかな先細り領域に区分され,それらの境界には,細帯状の環状部分が配置されている。加えて,急な先細り領域と穏やかな先細り領域の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色(白色)とされ,細帯状の環状部分の外観は無模様一色ではあるが,急な先細り領域及び緩やかな先細り領域の色彩とは異色(黒色)とされている。
なお,本件意匠公報の正面図,背面図,平面図,底面図,及び斜視図を子細に観察すると,先細り状の柄の部分の基部近傍には,これを取り巻くようにして,周囲の色(白色)とは異色(青色)の線状リングの存在が認められ,この線状リングには,外周に沿って適当な間隔で小突部が,ボタンを挟んで対称的に配置されている。


4. 本件意匠登録を無効とすべき理由(無効理由1)
本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものである。

4.1 審判請求人である寧波社は,同社の代表取締役社長であって,もう一人の審判請求人でもある羅寧氏が創作した意匠にかかる電動歯ブラシ(型番SG-923)を商品化した。

(1)寧波社の存在及びその事業内容
寧波社は,甲1(寧波社の法人登記簿の写し)から明らかなように,平成15年(2003年)8月1日に設立され,一貫して輸出販売業務を行なう中国企業であって,甲2(寧波社のホームページ抜粋)から明らかなように,主たる製品は,電動歯ブラシ,歯ブラシ消毒器などを含む口腔内ケア関連商品であり,主たる輸出先は,日本国及び米国である。

(2)羅寧氏の創作能力及び創作実績
羅寧氏は,甲1(寧波社の法人登記簿の写し)から明らかなように,寧波社の代表取締役社長(法定代表者)であって,同氏は,甲3(羅寧氏の大学卒業証書の写し)から明らかなように,技術者であり,本件登録意匠にかかる電動歯ブラシに関して,十分なる創作能力を身につけている。
羅寧氏は,現在のところ,自己の創作に係る12件の意匠登録,7件の実用新案登録,及び1件の特許を中国において所有すると共に,その他数件の産業財産権を外国において所有するものであり,それらの中には,電動歯ブラシに関する中国意匠登録(甲4),中国実用新案登録(甲5),及び独国実用新案登録(甲6)も存在する。

(3)電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する寧波社から恒利礼へのモックアップ製作依頼
甲7(寧波社のA氏から恒利社のB氏に送られた電子メールの写し)から明らかなように,寧波社の技術部所属のA氏は,平成22年(2010年)6月24日,恒利(ヘンリー)社のB社長のメールアドレス宛てに電子メールを送信し,電動歯ブラシ(型番SG-923)に関するモックアップ(手作りサンプル)の製作を依頼した。ここで,恒利社(正式名称:深せん恒利手板有限公司)とは,甲8(恒利社のホームページ抜粋の写し)から明らかなように,中国広東省深せん市に実在するモックアップのメーカである。
甲7電子メールの記載内容を詳説すれば,同メールの左上部には,発信日付として「2010/6/24 16:37:46」とあり,メール本文の最後にも「2010-06-24」とあり,同メールは,平成22年6月24日に発信されたものである。また,同メールのタイトルには,「モックアップ製作(手板制作)」とあり,同メールの件名記載欄には,「SG-921.rar921.jpg」とあり,同メールの下部にも,「「921.jpg)」とあり,同メールは,型番SG-921(型番SG-923に相当する電動歯ブラシの開発当初の型番)に相当する商品のモックアップ製作を依頼する内容のメールである。また,同メール本文の内容は,「B社長,このモックアップは,合計6つの部品で,一組を作ります。写真の要件の赤色はピンク色で作ることに変更しました。2010-06-24」である。
寧波社は,平成22年6月24日に,電動歯ブラシ(型番SG-923(旧型番SG-921))に関するモックアップ(手作りサンプル)の製作を恒利(ヘンリー)社に依頼した(甲9A氏の陳述書)。

なお,同メールの下半分には,型番SG-921(現型番SG-923)に相当する電動歯ブラシの分解斜視図相当の羅寧氏作成による三次元CAD図面が貼り付けられているので,この三次元CAD図面に基づいて,現型番SG-923(旧型番SG-921)に相当する電動歯ブラシの形態(意匠)をある程度具体的に特定することができる。本件電動歯ブラシの登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との同一性については,後に詳細に論ずることとする(「第2」項 4.3)。

(4)電動歯ブラシ(型番SG-923)の創作者
電動歯ブラシ(型番SG-923)の創作者は,寧波社の社長兼開発担当でもある羅寧氏であり,このことは,先に説明した羅寧氏の開発能力(甲3),電動歯ブラシに関する過去の出願例(甲4?6),及びA氏の陳述(甲9)からも明らかであるが,さらに,次の事実からも明白である。
すなわち,羅寧氏は,甲10(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する中国意匠登録出願関連公報等一式の写し)から明らかなように,電動歯ブラシ(型番SG-923)に関して,平成22年(2010年)11月24日付けにて,中国特許庁へ意匠登録出願を行うと共に,同出願は平成23年4月20日付けにて,意匠登録(第1523102号)が認められている。また,甲10に含まれる意匠登録証には,意匠の名称として「電動歯ブラシ(SG-923)」,意匠の創作者として「羅寧」が明確に記載されている。してみると,電動歯ブラシ(型番SG-923)の創作者が羅寧氏であることは,甲10からも明白である。このことは,甲30(羅寧氏の陳述書)のとおりである。
もっとも,電動歯ブラシ(型番SG-923)の中国意匠登録出頭日である平成22年11月24日は,本件登録意匠の日本国意匠登録出頭日である平成22年11月16日よりも8日間遅れている。これは,電動歯ブラシ(型番SG-923)については,後述するように,平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会(国際的博覧会),及び平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会(国際的博覧会)において,出願前公知とされたことを理由とする新規性喪失例外規定の適用により,公知日から6ヶ月の出願猶予期間が与えられるため,慌てて出願する必要がなかったための遅れである。

なお,甲10に含まれる登録公告公報には,型番SG-923に相当する電動歯ブラシの意匠図面が含まれているので,この意匠図面に基づいて,型番SG-923に相当する電動歯ブラシの形態を具体的に特定することができる。本件電動歯ブラシの登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との同一性については,後に詳細に論ずることとする(「第2」項 4.3)。

(5)電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する寧波社から恒利社への金型製作依頼
甲11(寧波社と金型製造メーカである寧海県橋頭胡日奕模塑廠との間に交わされた金型発受注契約書の写し)から明らかなように,平成22年7月6日,寧波社は寧海県橋頭胡日奕模塑廠に対して,電動歯ブラシ(型番SG-923)のための金型製作を依頼した。
甲11の記載内容を詳説すれば,同契約書の初めの頁の上部には,左右に分離して,受注者(寧海県橋頭胡日奕模塑廠)と発注者(寧波社)に関する基本的事項が記述されると共に,それに続く,次行には,契約対象として「<<SG-923>>電動歯ブラシ」とあり,続く部品一覧表には,6個の部品の番号として「SG-923-1?6」とあり,これは,受注者(寧海県橋頭胡日奕模塑廠)と発注者(寧波社)との間で,「<<SG-923>>電動歯ブラシ」の部品「SG-923-1?6」について締結された金型製作に関する契約である。また,同契約書の最終頁の下部には,左右に分離して,受注者(寧海県橋頭胡日奕模塑廠)と発注者(寧波社)に関する署名捺印が存在すると共に,最下段には,発注及び受注の日付として「2010年7月6日」(本件意匠登録に係る意匠登録出願前)とある。
寧波社は,寧海県橋頭胡日奕模塑廠社との間で,平成22年(2010年)7月6日に,電動歯ブラシ(型番SG-923)の金型製作に関する契約を交わした(甲30羅寧氏の陳述書)。

(6)電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する寧波社から顧客への商品推奨の開始
甲12(寧波社からある顧客企業の担当に送られた商品推奨のための電子メールの写し)から明らかなように,平成22年(2010年)10月7日,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,ある顧客企業の担当であるG氏へ,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付された電子メールを送信し,同歯ブラシを推奨すると共に,平成22年(2010年)10月15?19日開催予定の広州フェアにおける第1.2L46ブース,及び平成22年(2010年)10月13?16日開催予定の香港エレクトロニクスフェアにおける第3FH11ブースヘの来場を勧誘した。
甲12電子メールについて詳説すれば,同メールの左上欄には,送信者として「H」,受信者として「G」,送信日時として「2010年10月7日」,添付書類として「sg-923JPEG」,件名として「超音波歯ブラシ」とあり,また同メールの後段には,発信者として「H, NINGBO SEAGO ELECTRICO(寧波社の英文表記)」とある。同メールは,平成22年10月7日,HからGへ送信された,電動歯ブラシ(超音波歯ブラシ)に関する電子メールである。また,電子メールの本文として,「拝啓,G様,いかがお過ごしでしょうか。お久しぶりで御座います。きっと,お元気のことと存じます。さて,このたびは,添付の超音波歯ブラシの新製品についてご推奨させていただきたく存じます。もしも,ご興味がおありでしたら,見積書を送らせていただきます。また,私共は,このたび,広州フェアに参加することとなりました。もしも,ご来場いただけるようでしたら,2010年10月15?19日開催の広州フェアの第1.2L46ブース,又は2010年10月13?16日開催の香港エレクトロニクスフェアの第3FH11ブースまでお立ち寄りください。敬具」とある。
平成22年10月7日,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,ある顧客企業の担当であるG氏へ,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付された電子メールを送信し,同歯ブラシを推奨すると共に,平成22年(2010年)10月15?19日開催予定の広州フェアにおける第1.2L46ブース,及び平成22年(2010年)10月13?16日開催予定の香港エレクトロニクスフェアにおける第3FH11への来場を勧誘した(甲30羅寧氏の陳述書)。

なお,同電子メールには,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付されているので,同画像によっても,型番SG-923なる電動歯ブラシの形態をある程度特定することができる。本件電動歯ブラシの登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との同一性については,後に詳細に論ずることとする(「第2」項 4.3)。

(7)電動歯ブラシ(SG-923)に関する仕様書の完成
寧波社は,甲13(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書の写し)に示されるように,平成22年(2010年)10月25日,電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書を作成した。
同仕様書の第2頁には,型番SG-923に相当する電動歯ブラシのキャップを被せた状態及びキャップを取り外した状態に対応する2つの正面図が描かれている。そのため,それら2つの正面図によっても,型番SG-923なる電動歯ブラシの形態を明確に特定することができる。本件電動歯ブラシの登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との同一性については,後に詳細に論ずることとする(「第2」項 4.3)。
以上の事実(1)?(7)によれば,審判請求人である寧波社が,同社の代表取締役社長であって,もう一人の審判請求人でもある羅寧氏が創作した意匠にかかる電動歯ブラシ(型番SG-923)を商品化するに至ったことは明らかである。

4.2 丸隆の代表取締役であるE氏は,寧波社から入手した電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を通じて,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)の形態(意匠)を知るに至った。

(1)寧波社による広州フェアヘの出展
寧波社は,甲14(寧波社による広州フェア搬入品の梱包状態を示す写真)からも明らかなように,平成22年(2010年)10月15?19日開催の広州フェアにおける第1.2L46ブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を含む同社商品を出展した。
すなわち,甲14について詳述すれば,同写真に写っている4個の段ボール箱の側面には,「寧波交易団A区」,「第108回広州交易会出展商品」,「展示ブース番号:1.2L46」,「参加企業:寧波賽嘉電器有限公司」とあり,寧波社は,平成22年(2010年)10月15?19日開催の広州フェアにおけるNo.1.2L46ブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を含む同社商品を出展した(甲30羅寧氏の陳述書)。

(2)寧波社ブースヘの株式会社丸隆営業課長の来訪並びに商品見本の送付要求
甲15(寧波社ブース来訪の株式会社丸隆社員から入手した名刺及び見本請求書が貼り付けられた寧波社担当の所持するメモ帳を撮影した写真)から明らかなように,株式会社丸隆の営業部課長であるF氏は,平成22年10月17日,上記広州フェアにおける寧波社のブースを訪問し,電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を日本の株式会社丸隆のE宛に送付するように要求した。
すなわち,甲15は,同ブースの寧波社担当が所持したメモ帳の上に,株式会社丸隆の側で持参した汎用の見本要求票(Request of Sample)及びF氏の名刺がホッチキスで留められたものをカメラで撮影した写真のコピーである。同見本要求票は,名刺の2倍程度のサイズの小紙片であって,その表面には,「商品送り先」,「国際宅配便番号」,「対象商品」の各記載欄が設けられている。「商品送り先」記載欄には,会社名称として「株式会社丸隆」,受取人として「E」,電話番号及びファックス番号として「株式会社丸隆の該当番号」,住所として「株式会社丸隆の日本国住所」がローマ字にて予め印刷されている。「国際宅配便番号」記載欄には,株式会社丸隆に割り当てられたDHL社の国際宅配便番号及びFedex社の国際宅配便番号が予め印刷されている。「対象商品」記載欄だけは空欄とされているが,見本要求票の上部枠外のメモ帳上には,「SG-923」なる手書きメモが残されている。さらに,同見本要求票の右端には,「商品見本を送付のこと」なる担当者のメモ書きが残されている。
株式会社丸隆の営業部課長であるF氏は,上記の広州フェアにおける寧波社のブースを訪問し,電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を日本の株式会社丸隆のE宛に送付するように要求した(甲30羅寧氏の陳述書)。

(3)寧波社から株式会社丸隆のE氏への商品見本送付
甲16(DHL社の発送伝票控え)から明らかなように,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,平成22年(2010年)11月2日(本件意匠登録の出願前),上記広州フェアにてF氏から要求された電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を株式会社丸隆のE氏宛に発送した。
すなわち,甲16はDHL社の発送伝票控えであって,左上部に位置する第「1」欄には,支払人口座番号として株式会社丸隆のDHL社口座番号が手書きされている。続く第「2」欄には,発送人担当者として「H」,発送入会社名として「NINGBO SEAGO ELECTRIC CO. LTD(寧波社の英文表記)」が手書きされている。続く第「3」欄には,受取人会社名として「MARUTAKA CO.LTD」,受取人住所として「東京都渋谷区笹塚1-62-3」,受取人担当者として「Mr.E」が,それぞれ手書きされている。ひとつ飛んで第「5」欄には,発送物品の詳細として「TOOTH BRUSH(歯ブラシ)」が手書きされている。さらに,1つ飛んで第「7」欄には,発送人の同意署名として「H」,日付として「2010,11,2」が手書きされている。
Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,平成22年(2010年)11月2日(本件意匠登録に係る出願日の14日前),上記広州フェアにてF氏から要求された電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を株式会社丸隆のE氏宛に発送した(甲30羅寧氏の陳述書)。
なお,甲17(DHL社のホームページ抜粋)から明らかなように,DHL社の国際宅配便における中国から日本への所要期間は2日程度であるから,平成22年11月2日に発送された電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本が,本件意匠登録に係る出願日である平成22年11月16日以前に,株式会社丸隆のE氏の手元に届いていることは明白である。

以上の事実(1)?(3)によれば,株式会社丸隆の代表取締役であるE氏は,寧波社から入手した電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を通じて,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)の形態(意匠)を知るに至ったことは明らかである。

4.3 本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である。

(1)寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠を特定するための最適書面
先に述べたように,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠を特定するための書面(図面又は写真)としては,下記のイ?ニが存在する。
イ 甲7(寧波社のA氏から恒利社のB氏に送られた電子メールの写し)の下半分に貼り付けられたモックアップ作成用の三次元CAD図面(平成22年6月24日作成)
ロ 甲10(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する中国意匠登録出願一件書類の写し)に含まれる意匠登録公告公報に記載の意匠図面(平成22年11月16日(当審注:11月24日の誤記と認める。)中国特許庁提出)
ハ 甲12(寧波社からある顧客企業の担当に送られた商品推奨のための電子メールの写し)に添付された電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する商品見本の写真(平成22年10月7日作成)
ニ 甲13(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書の写し)に含まれるキャップ付き,無しにそれぞれ対応する2つの正面図(平成22年10月25日作成)
それらの書面(イ?ニ)は,いずれも,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の形態の特徴をよく表しているが,なかでも,書面ロ(意匠図面)は,同歯ブラシの形態の特徴をあらゆる角度から表している点で,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠を特定するための最適書面と言える。もっとも,電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する意匠であるごとに確かであるものの,書面ロ(意匠図面)の中国特許庁提出日は,本件意匠登録の出願日よりも8日遅れている。一方,書面ニ(仕様書)は,書面ロに比べれば,情報量は幾分劣るものの,それでも,同歯ブラシの形態の特徴をかなり詳細に表している。そのため,以下,書面ニ(仕様書)を中心としつつも,これを書面イ?ハにて補いつつ,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の形態(意匠)を説明するものとする。

(2)寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠の説明
寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,意匠に係る物品を「電動歯ブラシ(超音波歯ブラシ)」とし,その形態は,電動歯ブラシ本体部分と円筒状のキャップ部分とからなるものであって,キャップをした状態における同物品全体の外観は,その全長に亘り外径が等しく,かつ全長対外径の比が大凡の目分量で8対1程度となる断面真円(20φ)の円筒状を呈するものと認められる。
また,キャップをした状態における同物品の全長は,長さを有する円筒状の握り部分と幅を有する押ボタン配置用の環状部分と長さを有する円筒状のキャップ部分との3つの領域に区分されると共に,長さと幅と長さとの比は,大凡の目分量で約3:1:6程度に設定され,加えて,握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色(書面イ及びハ参照)であり,環状部分の外観は無模様一色ではあるが,握り部分及びキャップ部分とは異色(金属色)とされている(書面イ及びハ参照)。そして,環状部分には,幅の2/3程度の直径を有しかつ環状部分の色彩(金属色)とは異色(書面イ及びハ参照)の押ボタンに相当する円形領域が現れている(書面イ及びハ参照)。
一方,電動歯ブラシ本体部分は,その全長を,円筒状の握り部分と押ボタン配置用の環状部分と先細り状の柄の部分とブラシ部分との4つの領域に区分されると共に,先細り状の柄の部分は,さらに,付け根から1/3程度の部分を占める急な先細り領域と残りの2/3程度の部分を占める穏やかな先細り領域に区分され,それらの境界には,細帯状の環状部分が配置されている。加えて,急な先細り領域と穏やかな先細り領域の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色(書面イ及びハ参照)とされ,細帯状の環状部分の外観は無模様一色ではあるが,急な先細り領域及び緩やかな先細り領域の色彩とは異色(書面イ及びハ参照)とされている。

(3)本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との対比
本件登録意匠の内容は,先に3.項において説明した通りであり,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,前(2)項にて説明した通りであり,両者間には,以下のような一致点と相違点とが存在する。

<一致点>
・電動歯ブラシの全体が,電動歯ブラシ本体部分と円筒状のキャップ部分とからなる点(第1の一致点)
・キャップをした状態における同物品全体の外観は,その全長に亘り外径が等しく,かつ全長対外径の比が大凡の目分量で8対1程度となる断面真円の円筒状を呈する点(第2の一致点)
・キャップをした状態における同物品の全長は,長さを有する円筒状の握り部分と幅を有する押ボタン配置用の環状部分と長さを有する円筒状のキャップ部分との3つの領域に区分される点(第3の一致点)
・長さと幅と長さとの比は,大凡の目分量で約3:1:6程度に設定される点(第4の一致点)
・握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色(書面イ及びハ参照)である点(第5の一致点)
・環状部分の外観は無模様一色ではあるが,握り部分及びキャップ部分とは異色(金属色)(書面イ及びハ参照)とされている点(第6の一致点)
・環状部分には,幅の2/3程度の直径を有しかつ環状部分の色彩(金属色)とは異色(書面イ及びハ参照)の押ボタンに相当する円形領域が現れている点(第7の一致点)
・電動歯ブラシ本体部分は,その全長を,円筒状の握り部分と押ボタン配置用の環状部分と先細り状の柄の部分とブラシ部分との4つの領域に区分される点(第8の一致点)
・先細り状の柄の部分は,さらに,付け根から1/3程度の部分を占める急な先細り領域と残りの2/3程度の部分を占める穏やかな先細り領域に区分され,それらの境界には,細帯状の環状部分が配置されている点(第9の一致点)
・急な先細り領域と緩やかな先細り領域の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色とされ,細帯状の環状部分の外観は無模様一色ではあるが,急な先細り領域及び緩やかな先細り領域の色彩とは異色(書面イ及びハ参照)とされている点(第10の一致点)

<相違点>
・握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者(すなわち,握り部分とキャップ)は同色であるが,本件登録意匠のように,黄色ではない点(第1の相違点)
・本件登録意匠にあっては,先細り状の柄の部分の基部近傍には,これを取り巻くようにして,周囲の色(白色)とは異色(青色)の線状リングの存在が認められ,この線状リングには,外周に沿って適当な間隔で小突部がボタンを挟んで対称的な配置されているのに対して,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)には,このような線状リング及び小突部が存在しない点(第2の相違点)
このように,本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,大部分の点(第1?10の一致点)において一致し,相違するのは全体としての美的印象に殆ど影響を及ぼさないと思われる僅かの点(第1,2の相違点)に過ぎない。
以上の事実(1)?(3)によれば,本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である。

(4)通知書(資料3)における株式会社丸隆の主張について
同通知書(資料3)には,「・・・当社が「電動歯ブラシ」の製造を委託している中国のニンボー社(NINGBO SEAGO ELECTRIC CO.,LTD)から「電動歯ブラシ」が日本国内に輸出されていること及び,ニンボー社が本件意匠の日本での出願が行われる前である昨年10月に本件意匠権に係る「電動歯ブラシ」を中国の広州で開催されていたフェアに出展していたことがわかりました。」とある。
同通知書には,さらに,「このように混乱した今回の事態になりましたのは,本件意匠権に係る「電動歯ブラシ」の開発経緯について,当社が理解しているところと,ニンボー社が理解しているところとが相違しているところに原因があることがわかりました。そこで,本件は,当社とニンボー社と間での交渉のみとさせていただくことになり,御社からご回答をいただくまでもないことになりました。」とある。
しかし,電動歯ブラシ(型番SG-923)について,株式会社丸隆がこれを独自に開発した等という開発経緯,さらには株式会社丸隆が寧波社にその製造を委託した等という事実は全く存在しない。このことは,株式会社丸隆の代表取締役であるE氏,及び営業部課長であるF氏の証言により立証する。
なお,寧波社が広州フェアで「電動歯ブラシ(型番SG-923)」を展示した事実を知らなかったとする株式会社丸隆の主張は虚偽としか考えられない。このことは,甲15及び甲16から明らかである。なぜなら,株式会社丸隆の営業部課長であるF氏は,広州フェアの寧波社ブースを確かに訪れているし,その見本は株式会社丸隆のE氏に確かに送付されているからである。
また,寧波社と株式会社丸隆とは,平成22年(2010年)12月3日契約を交わすことで,平成22年(2010年)1月24日付けにて,寧波社から株式会社丸隆への電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する第1回目の納品(INVOICE)が行われているが(甲18),その際に交わされた契約書は通常の売買契約書であって,製造委託契約書の類ではない(甲19)。

4.4.無効理由1のむすび
以上で明らかなように,寧波社は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)を開発しかつ商品化した(甲1?13)。
株式会社丸隆の代表取締役であるE氏は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,その商品見本を通じて,電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠を知るに至った(甲14?17)。
本件登録意匠と電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である(甲7,10,12,13)。
したがって,本件意匠登録は,株式会社丸隆が,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を通じて知得した意匠を,株式会社丸隆の代表取締役であるE氏が創作した意匠であると偽って,しかも承継すべき意匠登録を受ける権利を有しない同氏から承継した意匠であると偽ってなした意匠登録出願に対してされたものであるとしか考えられない。
また,先に説明したように,本件登録意匠にあっては,先細り状の柄の部分の基部近傍には,これを取り巻くようにして,周囲の色(白色)とは異色(青色)の線状リングの存在が認められ,この線状リングには,外周に沿って適当な間隔で小突部がボタンを挟んで対称的に配置されているのに対して,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)には,このような線状リング及び小突部が存在しない(第2の相違点)。
しかし,上記の相違点は,金型設計変更に関する次の事情によるものである。すなわち,甲20(電動歯ブラシ(型番SG-923)の工程表)及び甲21(第4次金型設計変更の前後における電動歯ブラシを比較して示す写真)から明らかなように,金型完成に至るまでには,数次の設計変更がなされ,上記の小突部付き線状リングは,平成22年(2010年)10月11日の第2次設計変更により導入された特徴事項(甲21の左側写真参照)であって,その後,平成22年(2010年)11月29日の第4次設計変更により廃止された特徴事項(甲21の右側写真参照)であり,現行の電動歯ブラシ(型番SG-923)にはそのような特徴事項は残存しないものの,株式会社丸隆へ商品見本が送付された平成22年11月2日当時,電動歯ブラシ(型番SG-923)には,そのような特徴事項が現に存在したのである。このことから,本件意匠登録に係る図面代用写真は,寧波社の商品見本を撮影することで作成されたものと考えられる。
加えて,電動歯ブラシ(型番SG-923)について,株式会社丸隆自身が開発したのち,寧波社に製造を委託したと言った株式会社丸隆の主張はすべて虚偽の主張である(甲15,16,18,19)。
してみると,本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものであるから,意匠法第17条第4号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項第3号の規定により,無効とされるべきである。


5. 本件意匠登録を無効とすべき理由(無効理由2)
本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において公然知られた意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものである。

5.1 寧波社は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会,における自社のブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を展示した。

(1)電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品化
先に,4.1項にて述べたように,寧波社は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)を開発しかつ商品化した(甲1?13)。

(2)電動歯ブラシ(型番SG-923)の顧客への推奨,並びに,広州フェア及び香港フェアヘの来場勧誘
先に,4.1(6)項にて述べたように,平成22年(2010年)10月7日,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,ある顧客企業の担当であるG氏へ,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付された電子メールを送信し,同歯ブラシを推奨すると共に,平成22年(2010年)10月15?19日開催予定の広州フェアにおける第1.2L46ブース,及び平成22年(2010年)10月13?16日開催予定の香港エレクトロニクスフェアにおける第3FH11への来場を勧誘した(甲12)。

(3)広州フェアヘの寧波社商品の出展
先に,4.2(1)項にて述べたように,寧波社は,平成22年(2010年)10月15?19日開催の広州フェアにおける第1.2L46ブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を含む同社商品を出展した(甲14)。

(4)広州フェア来場者の証言
甲22(株式会社マルマンプロダクツのC氏及び株式会社ヤザワコーポレーションのD氏の陳述書)及び甲23(株式会社マルマンプロダクツのC氏のバイヤーとしての広州フェア入場証の写し)から明らかなように,株式会社マルマンプロダクツ企画部次長のC氏及び株式会社ヤザワコーポレーションのD氏は,平成22年10月15日?19日の期間に,中国の広州で開催された展示会(広州交易会)において,寧波SEAGO ELECTRIC CO.,LTD社の展示ブースを10月17日に訪問し,同社の商品である電動歯ブラシ(型番SG-923)が展示されているのを目視すると共に,係員より同商品の説明を受けた。

(5)香港フェアにおける寧波社ブース等の状況写真
甲24(香港エレクトロニクスフェアにおける寧波社ブースを撮影した2枚のスナップ写真の写し)及び甲25(香港エレクトロニクスフェアにおいて寧波社担当が身に付けていた出展者証を撮影した写真の写し)から明らかなように,寧波社は,平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会(エレクトロニクスフェア)における自社ブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を展示した。
すなわち,甲24として提示する2枚のスナップ写真の最初の真の写真は,寧波社のブースを人口側の斜め左方向から撮影したものである。同ブースは,左側壁,正面壁,右側壁からなるコの字壁により囲まれている。右側壁の前に置かれた陳列棚の最上段には,黄色,青色,赤色からなる3本の電動歯ブラシ(型番SG-923)がキャップを取り外した起立状態にて陳列されていることが認められる。なお,同写真に写っている3人の男性のうち,中央に座っているのが寧波社の羅寧社長である。左側壁には3段の陳列棚が設けられ,その中段の棚には,寧波社の開発に係る他の電動歯ブラシが陳列されている。2頁目の写真は,寧波社のブースを入口側の斜め左方向から撮影したものである。黄色,青色,赤色からなる3本以上の電動歯ブラシ(型番SG-923)は,より鮮明に写っている。
甲25として提示する香港エレクトロニクスフェアにおいて寧波社担当が身に付けていた出展者証を撮影した写真の写しには,寧波社ブースの識別番号として「3F-H11」とあり,展示会の名称として「Hong Kong Electronics Fair(Autumn Edition 香港秋季電子産品展」とあり,開催期間として「13-16/10/2010」とある。
以上の事実(1)?(5)によれば,寧波社が,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会,及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会における自社のブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を展示したことは明らかである。

5.2 本件登録意匠と上記展示会にて展示された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である。

(1)展示状況を撮影した写真からの同一性判断
甲24として提示する2枚のスナップ写真には,キャップ及び握り部が黄色の電動歯ブラシ(型番SG-923)が含まれているが,この黄色の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,一見して,本件登録意匠と全く同一である。

(2)展示状況を撮影した写真からの類似性判断
甲24として提示する2枚のスナップ写真には,キャップ及び握り部が赤色又は青色の2本の電動歯ブラシ(型番SG-923)が含まれているが,これらの電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,本件登録意匠とは色彩が異なる以外は同一であり,本件登録意匠と殆ど同一である。

(3)ブース来訪者の証言に基づく類否判断
甲24として提示する2枚のスナップ写真に写っている3個の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,実際に,その場で目視して説明を聞いた株式会社マルマンプロダクツの企画部次長であるC氏の印象としても,本件登録意匠と殆ど同一とされる。このことについては,証人である株式会社マルマンプロダクツ株式会社企画部次長のC氏の証言により,立証する。
以上の事実(1)?(3)によれば,本件登録意匠と上記展示会にて展示された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一であるごとに明らかである。

5.3 無効理由2のむすび
以上で明らかなように,寧波社は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会,及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会における自社のブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を展示した(甲1?14,22?25)。
本件登録意匠と上記展示会にて展示された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である(甲24,C氏の証言)。
してみると,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において公然知られた意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第1号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。


6. 本件意匠登録を無効とすべき理由(無効理由3)
本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものである。

6.1 寧波社は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会,及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会において,電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真が掲載されたパンフレットを頒布した。

(1)電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品化
先に,4.1項にて述べたように,寧波社は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)を開発しかつ商品化した(甲1?13)。

(2)電動歯ブラシ(型番SG-923)の顧客への推奨,並びに,広州フェア及び香港フェアヘの来場勧誘
先に,4.1(6)項にて述べたように,平成22年(2010年)10月7日,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,ある顧客企業の担当であるG氏へ,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付された電子メールを送信し,同歯ブラシを推奨すると共に,平成22年(2010年)10月15?19日開催予定の広州フェアにおける第1.2L46ブース,及び平成22年(2010年)10月13?16日開催予定の香港エレクトロニクスフェアにおける第3FH11への来場を勧誘した(甲12)。

(3)パンフレットの発注並びに納品
甲26(広州フェア及び香港フェアにて配布用のパンフレット発注関連資料一式の写し)から明らかなように,平成22年9月27日,寧波社はパンフレット印刷業者であるYUENG羽豊印刷(日本漢字表記)に対して,広州フェア及び香港フェアにて配有用の6枚のパンフレット1500部を納期平成22年(2010年)9月30日として発注すると共に,当該発注に係るパンフレットは平成22年(2010年)10月7日,寧波社に納品された。なお,甲26には,白地の発注書1枚,ピンク地の納品書1枚,及び両面刷りのパンフレット6枚が含まれ,それら6枚のパンフレットの最上部に重ねられた1枚が,電動歯ブラシ(型番SG-923)が掲載されたパンフレットである。

(4)パンフレットの配布
甲27(株式会社マルマンプロダクツのC氏及び株式会社ヤザワコーポレーションD氏の陳述書)から明らかなように,寧波社は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会の自己のブースにおいて,上記のパンフレットを来場者に配布した。
すなわち,甲27(C氏の陳述書)のとおり,同氏等は,平成22年10月15日?19日の期間に,中国の広州で開催された展示会(広州交易会)において,寧波SEAGO ELECTRIC CO.,LTD社の展示ブースを10月17日に訪問し,同社の商品である電動歯ブラシ(型番SG-923)が掲載されたパンフレットの配布を受けた。

(5)パンフレットの記載内容
甲28(広州交易会にて寧波社が配布したパンフレットの写し)から明らかなように,同パンフレットには,電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真が掲載されている。
すなわち,同パンフレットの右下4半分の領域には,3個の電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真が鮮明に描かれている。それら3個のうちの,1個はキャップを取り外した状態,残りの2個はキャップを被せた状態とされているため,それらの外観写真に基づいて,型番SG-923に相当する電動歯ブラシの形態(意匠)を明確に把握することができる。

以上の事実(1)?(5)によれば,寧波社が,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会,及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会において,電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真が掲載されたパンフレットを頒布したことは明らかである。

6.2 本件登録意匠と上記展示会にて頒布されたパンフレットに記載された意匠とは,殆ど同一である。

(1)パンフレットに記載の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠の説明
上記パンフレットに記載の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,意匠に係る物品を「電動歯ブラシ(超音波歯ブラシ)」とし,その形態は,電動歯ブラシ本体部分と円筒状のキャップ部分とからなるものであって,キャップをした状態における同物品全体の外観は,その全長に亘り外径が等しく,かつ全長対外径の比が大凡の目分量で8対1程度となる断面真円の円筒状を呈するものと認められる。
また,キャップをした状態における同物品の全長は,長さを有する円筒状の握り部分と幅を有する押ボタン配置用の環状部分と長さを有する円筒状のキャップ部分との3つの領域に区分されると共に,長さと幅と長さとの比は,大凡の目分量で約3:1:6程度に設定され,加えて,握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色であり,環状部分の外観は無模様一色ではあるが,握り部分及びキャップ部分とは異色(金属色)とされている。そして,環状部分には,幅の2/3程度の直径を有しかつ環状部分の色彩(金属色)とは異色の押ボタンに相当する円形領域が現れている。
一方,電動歯ブラシ本体部分は,その全長を,円筒状の握り部分と押ボタン配置用の環状部分と先細り状の柄の部分とブラシ部分との4つの領域に区分されると共に,先細り状の柄の部分は,さらに,付け根から1/3程度の部分を占める急な先細り領域と残りの2/3程度の部分を占める緩やかな先細り領域に区分され,それらの境界には,細帯状の環状部分が配置されている。加えて,急な先細り領域と穏やかな先細り領域の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色とされ,細帯状の環状部分の外観は無模様一色ではあるが,急な先細り領域及び緩やかな先細り領域の色彩とは異色(黒色)とされている。

(2)本件登録意匠とパンフレットに記載の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠との対比
本件登録意匠の内容は,先に3.項において説明した通りであり,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,前(1)にて説明した通りであり,両者間には,以下のような一致点と相違点とが存在する。

<一致点>
・電動歯ブラシの全体が,電動歯ブラシ本体部分と円筒状のキャップ部分とからなる点(第1の一致点)
・キャップをした状態における同物品全体の外観は,その全長に亘り外径が等しく,かつ全長対外径の比が大凡の目分量で8対1程度となる断面真円の円筒状を呈する点(第2の一致点)
・キャップをした状態における同物品の全長は,長さを有する円筒状の握り部分と幅を有する押ボタン配置用の環状部分と長さを有する円筒状のキャップ部分との3つの領域に区分される点(第3の一致点)
・長さと幅と長さとの比は,大凡の目分量で約3:1:6程度に設定される点(第4の一致点)
・握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色である点(第5の一致点)
・環状部分の外観は無模様一色ではあるが,握り部分及びキャップ部分とは異色(金属色)とされている点(第6の一致点)
・環状部分には,幅の2/3程度の直径を有しかつ環状部分の色彩(金属色)とは異色の押ボタンに相当する円形領域が現れている点(第7の一致点)
・電動歯ブラシ本体部分は,その全長を,円筒状の握り部分と押ボタン配置用の環状部分と先細り状の柄の部分とブラシ部分との4つの領域に区分される点(第8の一致点)
・先細り状の柄の部分は,さらに,付け根から1/3程度の部分を占める急な先細り領域と残りの2/3程度の部分を占める緩やかな先細り領域に区分され,それらの境界には,細帯状の環状部分が配置されている点(第9の一致点)
・急な先細り領域と緩やかな先細り領域の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者は同色とされ,細帯状の環状部分の外観は無模様一色ではあるが,急な先細り領域及び緩やかな先細り領域の色彩とは異色(黒色)とされている点(第10の一致点)
・先細り状の柄の部分の基部近傍には,これを取り巻くようにして,周囲の色(白色)とは異色(青色)の線状リングの存在が認められ,この線状リングには,外周に沿って適当な間隔て小突部がボタンを挟んで対称的に配置されている(第11の一致点)

<相違点>
・握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者(すなわち,握り部分とキャップ)は同色であるが,本件登録意匠のように,黄色ではない点(第1の相違点)
このように,本件登録意匠と寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,大部分の点(第1?11の一致点)において一致し,相違するのは全体としての印象に殆ど影響を及ぼさないと思われる僅かの点(第1の相違点)に過ぎない。

以上の事実(1)及び(2)によれば,本件登録意匠と甲26パンフレット記載の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である。

6.3.無効理由3のむすび
以上で明らかなように,寧波社は,平成22年10月15?19日に中国の広州で開催された展示会,及び平成22年10月13?16日に中国の香港で開催された展示会において,電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真が掲載されたパンフレットを頒布した(甲1?13,24?28)。
本件登録意匠と上記展示会にて頒布されたパンフレット(甲28)に記載された意匠とは,殆ど同一である。
してみると,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。


7. 本件意匠登録を無効とすべき理由(無効理由4)
本件意匠登録は,意匠登録出願前に,電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものである。

7.1 寧波社は,平成22年9月30日にインターネット上の業者間取引サイト(http://www.ecplaza.net/tradeleaders/seller/7155555/portable_sonic_toothbrush.html)に,同社の商品である電動歯ブラシ(型番SG-923)を販売対象商品として投稿(posting)した。

(1)電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品化
先に,4.1項にて述べたように,寧波社は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,電動歯ブラシ(型番SG-923)を開発しかつ商品化した(甲1?13)。

(2)電動歯ブラシ(型番SG-923)の業者間取引サイトヘの投稿
甲29(寧波社の証拠保全の求めに応じて,中国浙江省寧波市天一公証役場により,平成23年(2011年)9月9日付けにて公証された業者間取引サイトの画面写し)から明らかなように,少なくとも,平成23年9月9日現在において,インターネット上の業者間取引サイト(http://www.ecplaza.net/tradeleaders/seller/7155555/portable_sonic_toothbrush.html)には,電動歯ブラシ(型番SG-923)が販売対象商品として投稿(posting)されていることを確認することができる。
すなわち,その投稿内容は,画面左側には電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真を表示する一方,画面中央乃至左側には,寧波社に関する書誌的事項,すなわち「会社名」,「会員の有無」,「国籍」,「住所」,「連絡先担当者」,「電話番号」,「ファクシミリ番号」,「携帯電話番号」,「商品名」等々が表示されている。電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真については,所定のクリック操作で拡大可能とされており,またキャップが取り外された状態とキャップが被せられた状態との2つの状態の写真が用意されている。書誌的事項の表示領域の下部には,「Contact Now」ボタンと「Add to Cart」ボタンからなる2個の操作ボタンが設けられている。そのため,クリック操作で外観写真を拡大して商品内容を確認の上,上記2つの操作ボタンを選択的に操作することで,インターネットのユーザは商品の購入やサイト業者との連絡が可能とされている。

(3)投稿日の確定
電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真の真上には,「Posting Date:Sep 30 2010 GMT」として,投稿日に相当する日付表示(平成22年9月30日)が存在する。商品の投稿は,サイト側とは無関係に,ユーザの側の操作で自由勝手に行うことができる。そして,投稿日に相当する日付に関しては,ユーザ側の投稿操作と連動して,その投稿操作完了の日付が投稿日(Posting Date)として自動的に決定される。つまり,ユーザの側で投稿日(Posting Date)を任意の日付に設定したり,ましてや,実際の投稿日よりも遡った日付に設定することはできない。また,技術的には可能であるとしても,何のメリットもない以上,サイト側で投稿日を変更したり,遡らせることはないと見るのが相当である。
してみると,現在の投稿内容である電動歯ブラシ(型番SG-923)の外観写真は,平成22年9月30日(本件意匠登録の出願日より約45日前)に投稿されたものである。

以上の事実(1)?(3)によれば,寧波社は,平成22年9月30日にインターネット上の業者間取引サイト(http://www.ecplaza.net/tradeleaders/seller/7155555/portable_sonic_toothbrush.html)に,同社の商品である電動歯ブラシ(型番SG-923)を販売対象商品として投稿(posting)したことは明らかである。


7.2 本件登録意匠と上記インターネット上の業者間取引サイトに掲載された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,大部分の点において一致し,相違するのは全体としての印象に殆ど影響を及ぼさないと思われる僅かの点,「握り部分及びキャップ部分の外観はそれぞれ無模様一色かつ両者(すなわち,握り部分とキャップ)は同色であるが,本件登録意匠のように,黄色ではない点」(第1の相違点),「本件登録意匠にあっては,先細り状の柄の部分の基部近傍には,これを取り巻くようにして,周囲の色(白色)とは異色(青色)の線状リングの存在が認められ,この線状リングには,外周に沿って適当な間隔で小突部がボタンを挟んで対称的な配置がされているのに対して,業者間取引サイトの電動歯ブラシ(型番SG-923)には,このような線状リング及び小突部が存在しない点」(第2の相違点)に過ぎず,殆ど同一である。


7.3 無効理由4のむすび
以上で明らかなように,寧波社は,平成22年9月30日にインターネット上の業者間取引サイト(http://www.ecplaza.net/tradeleaders/seller/7155555/portable_sonic_toothbrush.html)に,同社の商品である電動歯ブラシ(型番SG-923)を販売対象商品として投稿(posting)した(甲1?13,29)。
本件登録意匠と上記インターネット上の業者間取引サイトに掲載された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠とは,殆ど同一である。
してみると,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。


8.むすび
(1)本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものであるから,意匠法第17条第4号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項第3号の規定により,無効とされるべきである。
(2)本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において公然知られた意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第1号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。
(3)本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。
(4)本件意匠登録は,意匠登録出願前に,電子通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。



第3 被請求人の答弁及び理由の要点
本件無効審判被請求人(以下,「被請求人」という。)に対して,審判請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,その期間を経過しても被請求人からは,何ら応答がなかったものである。



第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1419789号の意匠)は,第1の1.に記載したとおりの手続を経たものであって,2010年(平成22年)11月16日に意匠登録出願され,2011年(平成23年)7月1日に,意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「電動歯ブラシ」とし,その「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)」は,願書の記載及び願書に添付された写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照)

すなわち,本件登録意匠の形態は,
基本的構成態様として,
(A)全体は,
(A-1)全体構成が,「歯ブラシ部」,及び,「押しボタン部」を含む「握り部」からなる「電動歯ブラシ本体部」と,その歯ブラシ部をカバーする「キャップ部」からなり,
(A-2)全体形状が,キャップをした状態において,有頂略円筒形状のキャップ部と略円柱形状の電動歯ブラシ本体部が一体化して,全体において,真っ直ぐで細長く,径の等しい略円柱形状をなすものであって,
(A-3)その寸法比率は,「全体の長さ」対「略円柱形状の直径」の比が約8:1であり,「キャップ部の長さ」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を含む『握り部』の長さ」の比が約4:3であり,「キャップ部の長さ」対「押しボタン部の幅」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を除く握り部の長さ」の比が約6:1:3であるものであって,
(A-4)キャップをした状態における全体の色彩は,押しボタンを除く環状の押しボタン部が,銀色の金属色を呈し,押しボタンが,明調子の薄い水色を呈し,その他の部分が,黄色を呈しているものである。
具体的構成態様として,
(B)キャップ部は,
(B-1)左側面側の頂部は,軸方向に対して垂直平面状に形成され,その頂面に略三角形状に配置された3つの小孔(穴)を有し,
(B-2)右側面側の端部は,軸方向に対して,垂直平面状に形成され,その端面は,歯ブラシ部を収納するために開放されており,
(C)電動歯ブラシ本体部は,
(C-1)歯ブラシ部は,青色と無色透明な2色の毛からなる「刷毛部」を形成した正面視横長楕円厚板状で白色の「頭部」,細長い略円錐台状で白色の「頸部」,及び,略偏心円錐台状の「基台部」からなり,基台部は,頸部側の端部に「暗調子の細幅環状部」が形成され,握り部側の端部に,「やや暗調子の細幅帯状模様」と,薄い水色を基調とした「帯状部」が平行して形成されており,帯状部はさらにその区域内に,白色で断続した態様の「細幅帯状部」が形成されているものであって,
(C-2)握り部の歯ブラシ部寄りに握り部と同径で太い環状の押しボタン部が形成され,押しボタン部の正面中央に円板状で中央に同心円状に配置された略小円状模様が施された押しボタンが形成されているものである。


2.無効理由1(冒認)
まず,当審は,無効理由1,本件意匠登録が,「その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合において,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないとき」に該当する意匠登録出願に対してされたものであるから,意匠法第17条第4号の規定によって,意匠登録を受けることができないものであるにもかかわらず意匠登録を受けたものであって,本件意匠登録は,「その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してなされたとき」に該当し,意匠法第48条第1項第3号の規定によって,無効とされるべきであるという,いわゆる,「冒認出願」に関して,検討し,判断する。

(1)利害関係
無効理由1の判断の前提として,請求人適格,すなわち,本件無効審判事件請求人(以下,「請求人」という。)が意匠法第48条(意匠登録無効審判)第2項ただし書に関し,「利害関係人」であるか否かを検討する。(なお,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日は,2010年(平成22年)11月16日であって,平成23年改正意匠法の施行日(2012年(平成24年)4月1日)より前であるので,本件無効審判請求は,改正前の旧法に基づくものである。)

「第2」(請求人の申し立て及び理由の要点)項の「2.」(審判請求人の有する法律上の利害関係),同項の「4.1 (1)」及び「同(2)」,並びに同項の「4.3 (4)」に記載されているとおりであって,請求人である寧波社は,本件登録意匠の意匠に係る物品である「電動歯ブラシ」の輸出販売業務を行う企業であり,主たる輸出先は,日本国及び米国であり,また,もう一名の請求人である羅寧氏は,同社の代表取締役社長であって,かつ,電動歯ブラシに係る意匠等の創作者であり,同意匠登録等の保有者である(甲1,甲2,甲4ないし甲6,甲9,甲10)ことから,請求人は,本件意匠登録の利害関係人であり,請求人適格を有するものと認められる。

(2)無効理由1の判断
当審は,請求人が提出した証拠に基づくところ,以下に示すとおり,本件登録意匠の真の創作者は,寧波社代表取締役社長である羅寧氏であり,本件意匠登録の意匠登録を受ける権利を有する者は,寧波社であると認める。
そして,本件意匠登録の意匠権者,すなわち,被請求人は,寧波社が創作・製造した「型番SG-923」の「電動歯ブラシ」の商品見本を入手し,それに基づいて意匠写真を作成して,創作者をE氏とし,自らの名義によって,日本国特許庁に意匠登録出願し,意匠登録を受けたものであって,いわゆる冒認出願に基づいて意匠登録を受けたものであるから,無効理由1は理由があり,本件意匠登録は,意匠法第48条第1項第3号の規定により,無効とされるべきである。
以下,詳述する。

(i)「型番SG-923」の「電動歯ブラシ」の意匠の創作の経緯と本件登録意匠に係る意匠登録出願との関係

(ア)2010年(平成22年)6月24日 甲7(寧波社のA氏から恒利社のB氏に送られた電子メールの写し)(別紙第2参照)及び甲9(A氏の陳述書)によれば,寧波社の技術部所属のA氏は,恒利(ヘンリー)社のB社長のメールアドレス宛てに電子メールを送信し,電動歯ブラシ(型番SG-921)に関するモックアップの製作を依頼した。同メールには,イメージ・ファイルである「SG-921.rar921.jpg」が添付されている。同メールの下半分には,型番SG-921(現型番SG-923)に相当する電動歯ブラシの分解斜視図相当の羅寧氏作成による三次元CAD図面が貼り付けられている。「型番SG-921」は,「型番SG-923」に相当する電動歯ブラシの開発当初の型番である。


(イ)2010年(平成22)年7月6日 甲11(寧波社と金型製造メーカである寧海県橋頭胡日奕模塑廠との間に交わされた金型発受注契約書の写し)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,寧波社は寧海県橋頭胡日奕模塑廠に対して,電動歯ブラシ(型番SG-923)のための金型製作を依頼した。
この事実は,遅くともこの日までに,型番SG-923の電動歯ブラシの意匠の創作が完成したことを示しており,本件登録意匠に係る日本国特許庁への意匠登録出願日である2010年(平成22年)11月16日よりも4カ月以上も前ということになる。

(ウ)2010年(平成22年)10月7日 甲12(寧波社からある顧客企業の担当に送られた商品推奨のための電子メールの写し)(別紙第4参照)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,寧波社のセールスマネージャー,Hは,ある顧客企業の担当であるG氏へ,電動歯ブラシ(型番SG-923)のJPEG画像が添付された電子メールを送信した。同メールによって,Hは,G氏に対して,同電動歯ブラシを推奨するとともに,2010年(平成22年)10月15?19日開催予定の広州フェアにおける第1.2L46ブース,及び2010年(平成22年)10月13?16日開催予定の香港エレクトロニクスフェアにおける第3FH11ブースヘの来場を勧誘した。

(エ)2010年(平成22年)10月25日 甲13(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書の写し)(別紙第5参照)によれば,寧波社は,電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する仕様書を作成した。

(オ)平成22年(2010年)10月15?19日 甲14(寧波社による広州フェア搬入品の梱包状態を示す写真)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,寧波社は,の広州フェアにおける第1.2L46ブースにおいて,電動歯ブラシ(型番SG-923)を出展した。

(カ)2010年(平成22年)10月17日 甲15(寧波社ブース来訪の株式会社丸隆社員から入手した名刺及び見本請求書が貼り付けられた寧波社担当の所持するメモ帳を撮影した写真)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,株式会社丸隆の営業部課長であるF氏は,上記広州フェアにおける寧波社のブースを訪問し,電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を日本の株式会社丸隆のE宛に送付するように要求した。

(キ)2010年(平成22年)11月2日 甲16(DHL社の発送伝票控え)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,Hこと,寧波社のセールスマネージャーは,上記広州フェアにてF氏から要求された電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を株式会社丸隆のE氏宛に発送した。
甲17(DHL社のホームページ抜粋)によれば,DHL社の国際宅配便における中国から日本への所要期間は2日程度であるから,2010年(平成22年)11月2日に発送された電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本が,本件意匠登録に係る日本国特許庁への意匠登録出願日である2010年(平成22年)11月16日よりも前に,株式会社丸隆のE氏の手元に届いたと推認することができる。

(ク)2010年(平成22年)11月16日 本件登録意匠に係る日本国特許庁への意匠登録出願(意匠登録出願人の名義:株式会社丸隆,意匠の創作をした者の名義:E)

(ケ)2010年(平成22年)11月24日 甲10(電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する中国意匠登録出願関連公報等一式の写し)(別紙第3参照)及び甲30(羅寧氏の陳述書)によれば,羅寧氏は,意匠の名称「電動歯ブラシ(型番SG-923)」とする意匠登録出願を中国特許庁へ行った。同出願は2011年(平成23)年4月20日付けで,意匠登録(第1523102号)された。甲10に含まれる意匠登録証には,意匠の創作者及び権利者として「羅寧」が記載されている。
上記の電動歯ブラシ(型番SG-923)の中国意匠登録出頭日である2010年(平成22年)11月24日は,本件登録意匠の日本国特許庁への意匠登録出頭日である2010年(平成22年)11月16日よりも8日間後であるが,上記の甲10の意匠登録証及び意匠公報には,「電動歯ブラシ(SG-923)」として,意匠の名称に型番がはっきりと併記されており,上述の(ア)の事実と関連させて考えれば,甲7のイメージ・ファイルによってその形態がほぼ明らかな電動歯ブラシ(型番SG-921)の創作が,本件登録意匠に係る日本国特許庁への意匠登録出願日より前に完成し,モックアップの製作が依頼され,その後,一部設計が変更されて「電動歯ブラシ(SG-923)」の創作が完成した経緯に関する認定には影響はせず,一部設計に変更があったとしても,本件登録意匠に係る意匠登録出願日よりも前に,羅寧氏が,電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠について創作を完成していたという創作の経緯は明らかであって,この認定に何ら影響しない。
なお,請求人の主張によれば,この中国意匠登録出願日が本件登録意匠に係る日本国特許庁への意匠登録出願日より遅れた理由は,2010年(平成22年)10月13?16日に中国の香港で開催された展示会(国際的博覧会),及び,2010年(平成22年)10月15?19日に中国の広州で開催された展示会(国際的博覧会)において,出願前公知とされたことを理由とする新規性喪失例外規定の適用により,公知日から6ヶ月の出願猶予期間が与えられていたためであるとのことであるが,意匠登録出願に関する通常の出願行動として極ありふれた対応であって,係る説明は,信頼するに足るものである。


(ii)寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠と本件登録意匠の対比
寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠と本件登録意匠を対比するにあたり,甲10の中国意匠登録公報に記載の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠(以下,「甲10記載意匠」という。別紙第3参照。)と甲13の電動歯ブラシ(型番SG-923)の仕様書に記載された意匠(以下,「甲13記載意匠」という。別紙第5参照。)を主として使用し,甲7の電子メールの写しの下半分に貼り付けられた電動歯ブラシ(型番SG-921)のモックアップ作成用三次元CAD図面によって現された意匠(以下,「甲7記載意匠」という。別紙第2参照。)及び甲12の電子メールの写しに添付された電動歯ブラシ(型番SG-923)に関する商品見本の写真によって現された意匠(以下,「甲12記載意匠」という。別紙第4参照。)から得られる形態情報,主として色彩や質感等を補うこととする。甲10記載意匠及び甲13記載意匠は,意匠に係る物品及び形状がほぼ同一であり,また,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠は,一貫した型番管理により開発製造が行われていること,及び,上述の(ケ)に述べたとおり,甲10の中国意匠登録出願の日が本件登録意匠に係る日本国特許庁への意匠登録出願日よりも8日間後であることは,本件登録意匠の冒認出願の該当性の審理,すなわち,電動歯ブラシ(型番SG-923)として開発製造され,創作された意匠を,別の経路をたどって知得したに過ぎない者が,意匠登録を受ける権利を有しないまま意匠登録出願するに至ったか否を判断するにあたっては問題とならないからである。(別紙第6及び別紙第7参照)

まず,本件登録意匠と甲10記載意匠・甲13記載意匠を対比すると,意匠に係る物品がいずれも「電動歯ブラシ」であって,一致し,形態については,以下のとおり,主な一致点・共通点及び相違点がある。(なお,対比の便宜のため,本件登録意匠の図面における正面,平面等の向きを,以下,各甲号証の意匠の各図面にもあてはめることとする。)

(形態の一致点・共通点)
基本的構成態様について,
(a)全体は,
(a-1)全体構成が,歯ブラシ部,及び,押しボタン部を含む握り部からなる電動歯ブラシ本体部と,その歯ブラシ部をカバーするキャップ部からなり,
(a-2)全体形状が,キャップをした状態において,有頂略円筒形状のキャップ部と略円柱形状の電動歯ブラシ本体部が一体化して,全体において,真っ直ぐで細長く,径の等しい略円柱形状をなすものであって,
(a-3)その寸法比率は,「全体の長さ」対「略円柱形状の直径」の比が約8:1であり,「キャップ部の長さ」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を含む握り部の長さ」の比が約4:3であり,「キャップ部の長さ」対「押しボタン部の幅」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を除く握り部の長さ」の比が約6:1:3であるものである点。
具体的構成態様について,
(b)キャップ部は,
(b-1)左側面側の頂部は,軸方向に対して垂直平面状に形成され,その頂面に略三角形状に配置された3つの小孔(穴)を有し,
(b-2)右側面側の端部は,軸方向に対して,垂直平面状に形成され,その端面は,歯ブラシ部を収納するために開放されている点,
(c)電動歯ブラシ本体部は,
(c-1)歯ブラシ部は,刷毛部を形成した正面視横長楕円厚板状の頭部,細長い略円錐台状の頸部,及び,略偏心円錐台状の基台部からなり,基台部は,頸部側の端部に細幅環状部が形成され,握り部側の端部に,環状線模様による帯状部が形成されているものであって,
(C-2)握り部の歯ブラシ部寄りに握り部と同径で太い環状の押しボタン部が形成され,押しボタン部の正面中央に円板状で中央に同心円状に配置された略小円状模様が施された押しボタンが形成されているものである点。

(形態の相違点)
(あ)キャップをした状態における全体の色彩・質感について,本件登録意匠は,押しボタンを除く環状の押しボタン部が,銀色の金属色を呈し,押しボタンが,明調子の薄い水色を呈し,その他の部分が,黄色を呈しているものであるのに対して,甲10記載意匠・甲13記載意匠は,線図のみによって表されているものであって,色彩・質感は表されていない(甲13の仕様書中にキャップ部,押しボタン部を含む握り部等の外観を構成する主たる材料が「ABS」であることは記載されている。)ものである点,
(い)歯ブラシ部の色彩・質感について,本件登録意匠は,刷毛部が青色と無色透明な2色の毛からなり,頭部及び頸部は,白色であり,基台部は,頸部側の端部に形成された細幅環状部が暗調子であり,握り部側の端部に形成された帯状部について,帯状部全体が薄い水色を基調としつつ,さらにその区域内に形成された断続した態様の細幅帯状部が白色であるのに対して,甲10記載意匠・甲13記載意匠は,線図のみによって表されているものであって,色彩・質感は表されていないものである点,
(う)歯ブラシ部の基台部の具体的構成態様について,本件登録意匠は,基台部の握り部側の端部に,やや暗調子の細幅帯状模様と帯状部が平行して形成されており,帯状部はさらにその区域内に,白色で断続した態様の細幅帯状部が形成されているものであるのに対して,甲10記載意匠・甲13記載意匠は,やや暗調子の細幅帯状模様,帯状部及び細幅帯状部のような明確な態様は明示されておらず,同程度の幅の区域に,数条の平行する環状線模様が形成されてやや幅の広い「線状帯状部」が形成されているものである点,
(え)押しボタン部の背面側の態様について,甲10記載意匠・甲13記載意匠は,握り部との境界の部分に略逆「L」字状部があるのに対して,本件登録意匠には,そのようなものがない点。

(判断)
本件登録意匠と甲10記載意匠・甲13記載意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態についても,基本的構成態様について,詳細な寸法比率を含む全体構成及び全体形状は,ほぼ一致するが,相違点(あ)の色彩・質感の有無による相違が存在し,また,具体的構成態様についても,主たる外形状は,ほぼ一致するが,相違点(い)の色彩の有無による相違,相違点(う)の歯ブラシ部の基台部の帯状部の態様の相違,及び,相違点(え)の押しボタン部背面側の略逆「L」字状部の有無による相違が存在するものである。
しかしながら,相違点(あ)及び相違点(い)の色彩・質感の有無による相違については,甲7記載意匠及び甲12記載意匠を補助的に考慮すれば,電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠にも,キャップ部及び握り部の色彩について,本件登録意匠が黄色であり,甲7記載意匠及び甲12記載意匠に現されたものはショッキングピンクまたは青色であるという色相の相違はあるものの,本件登録意匠とほぼ一致する色彩・質感が現されているものであり,また,甲24(香港エレクトロニクスフェアにおける寧波社ブースを撮影した2枚のスナップ写真の写し)によれば,形状等の詳細まではこれらの写真から認定できないとしても,寧波社が,電動歯ブラシの色彩のバリエーションとして,黄色,赤,青などを用意していた事実が認められるところであり,さらに,これらの色相は電動歯ブラシ等の家庭用衛生用品の物品分野の創作の実態という観点から考慮しても,格別の創意もなく,意匠を実施するに際して,需要者の嗜好に合わせて用意するバリエーションの範囲内にあるものと言い得るから,この点については,本件登録意匠と電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠に相違は存在しないという他ない。
次に,相違点(う)の歯ブラシ部の基台部の帯状部の態様の相違についても,同様に甲12記載意匠を補助的に考慮し,電動歯ブラシという物品におけるキャップ部が電動歯ブラシ本体部に陥合する通常の態様を前提とすれば,電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠も本件登録意匠とほぼ一致する帯状部の態様(色彩を含む。)を有しており,また,甲20(金型製作を含む電動歯ブラシ(型番SG-923)製作の工程表(抄訳付き))及び甲21(第4次金型設計変更の前後における電動歯ブラシを比較して示す書類一式)によれば,通常よく行われるところの実施前の詳細部分に係る設計変更の事実も認められるところであって,この点についても,本件登録意匠と電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠に相違は存在しないという他ない。
また,相違点(え)の押しボタン部背面側の略逆「L」字状部の有無による相違については,この略逆「L」字状部の用途・機能は全く不明であるが,電動歯ブラシという物品の特性や使用の態様を考慮した場合,必要不可欠のものでもなく,意匠上格別のものであるといえず,形態的にも,その部位が目立たない背面であることや全体から見た場合に小さいこと,さらに,相違点(う)で述べた甲20及び甲21に示される設計変更の事情などを踏まえれば,この点についても,本件登録意匠と電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠に相違は存在しないという他ない。

以上のとおりであって,総合すれば,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠と本件登録意匠は,意匠に係る物品及び形態が一致し,意匠として同一であるというべきである。


(iii)小括
そうであるとすれば,被請求人が本件登録意匠に係る意匠登録出願前に,寧波社の電動歯ブラシ(型番SG-923)の商品見本を入手し,その商品見本に基づいて本件登録意匠の意匠登録出願をしたと見るのが相当であって,無効理由1は理由があるという他ない。

なお,当審は,無効理由1(冒認)についても他の無効理由と同様に,職権審理に基づいて上記判断を行ったものであるが,付け加えるに,冒認出願を理由とする無効審判の立証責任分配に関しては,平成21年6月29日判決言渡知的財産高等裁判所審決取消請求訴訟(平成20年(行ケ)第10427号,平成20年(行ケ)第10428号及び平成20年(行ケ)第10429号)の判決において,「冒認出願(123条1項6号)を理由として請求された特許無効審判において,『特許出願がその特許に係る発明の発明者自身又は発明者から特許を受ける権利を承継した者によりされたこと』についての主張立証責任は,特許権者が負担すると解すべきである。」等と判示されていることに鑑みる(意匠法第48条第1号第3号も前記特許法の条文と同趣旨である。)と,本件無効審判事件において,請求人が,本件登録意匠について,冒認出願を疑わせる具体的な事情を,多数の裏付け証拠を提出して,具体的かつ詳細に指摘しているのであるから,被請求人は,本件登録意匠に係る意匠登録出願がその意匠に係る創作の創作者自身または創作者から意匠登録を受ける権利を承継した者によりされたことについて,主張立証責任を負担すると解すべきであるところ,本件意匠登録の意匠権者である被請求人は,本件無効審判に関して答弁書を提出せず,何らの反論もしておらず,主張立証責任を果たしているとはいえない以上,上記判決が判示するところに従えば,本件登録意匠に係る意匠登録出願が冒認出願であるか否かが真偽不明であったとしても(実際には,各甲号証の事実関係に照らして,当審の見解は,冒認出願であると認めるところであるが),無効理由1(冒認)は,理由があり,請求人の主張は成立するという他ない。


3.無効理由3(出願前外国頒布刊行物記載の意匠と同一又は類似)
前記「2.」のとおりであって,無効理由1によって,本件登録意匠は,無効とすべきものであるが,念のため,無効理由3,「本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠であるから,意匠法第3条第1項第2号又は第3号に掲げる意匠に該当し,その意匠登録は,同法同条同項柱書の規定に違反してされたものであり,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであって,同法第48条第1号の規定により,その登録を無効とすべきものとする。」に関して,検討し,判断する。

(1)甲26(広州フェア及び香港フェアにて配布用のパンフレット発注関連資料一式の写し)について
本項「2.(2)(i)(オ)」で述べたとおり,甲14及び甲30によれば,平成22年10月15?19日に中国の広州で展示会(広州フェア)が,そして,平成22年10月13?16日に中国の香港で展示会(香港エレクトロニクスフェア)がそれぞれ開催され,型番SG-923の電動歯ブラシが出展され,その意匠が掲載されたパンフレット(甲26のうちの第3ページから第14ページまで(両面刷りの部分))が頒布された。
このパンフレットは,甲26の1枚目(白地の発注書1枚)及び甲26の2枚目(ピンク時の納品書1枚)(別紙第8参照)によれば,2010年(平成22年)9月27日に寧波社がパンフレット印刷業者であるYUENG羽豊印刷(日本漢字表記)に対して,広州フェア及び香港フェアにて配布用の6枚のパンフレット1500部を納期を2010年(平成22年)9月30日として発注し,当該発注に係るパンフレットとして,2010年(平成22年)10月7日,寧波社に納品されたものであり,甲27(広州フェアにおけるパンフレット配布に関する株式会社マルマンプロダクツのC氏及び株式会社矢島コーポレーションのD氏の陳述書の写し)によれば,2010年(平成22年)10月15日?19日の期間に,中国の広州で開催された展示会(広州交易会=広州フェア)において,寧波SEAGO ELECTRIC CO.,LTD社の展示ブースを訪問した者に配布されたものであるから,本件登録意匠に係る意匠登録出願日(2010年(平成22年)11月16日)前に,外国において,頒布された刊行物であると認められる。

そこで,無効理由3について,甲26に含まれる両面刷りのパンフレット6枚(甲26の第3ページから第14ページまでの全12ページ)の最上部に重ねられた1枚目(甲26の第3ページ,パンフレットの第1ページ)の右側に掲載された電動歯ブラシ(型番SG-923)の意匠(以下,「甲26記載意匠」という。別紙第9参照。)と本件登録意匠を対比し,類似判断することにより,検討し,判断する。

(2)本件登録意匠と甲26記載意匠の対比
本件登録意匠と甲26記載意匠を対比すると,意匠に係る物品がいずれも「電動歯ブラシ」であって,一致し,形態については,以下のとおり,主な一致点及び相違点がある。

(形態の一致点)
基本的構成態様について,
(a’)全体は,
(a’-1)全体構成が,「歯ブラシ部」,及び,「押しボタン部」を含む「握り部」からなる「電動歯ブラシ本体部」と,その歯ブラシ部をカバーする「キャップ部」からなり,
(a’-2)全体形状が,キャップをした状態において,有頂略円筒形状のキャップ部と略円柱形状の電動歯ブラシ本体部が一体化して,全体において,真っ直ぐで細長く,径の等しい略円柱形状をなすものであって,
(a’-3)その寸法比率は,「全体の長さ」対「略円柱形状の直径」の比が約8:1であり,「キャップ部の長さ」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を含む『握り部』の長さ」の比が約4:3であり,「キャップ部の長さ」対「押しボタン部の幅」対「電動歯ブラシ本体部の押しボタン部を除く握り部の長さ」の比が約6:1:3であるものであって,
(a’-4)キャップをした状態における全体の色彩は,押しボタンを除く環状の押しボタン部が,銀色の金属色を呈し,押しボタンが,明調子の薄い水色を呈し,その他の部分が,単色を呈しているものである点。
具体的構成態様について,
(b’)キャップ部は,
(b’-1)左側面側の頂部は,軸方向に対して垂直平面状に形成され,その頂面に略三角形状に配置された3つの小孔(穴)を有し,
(b’-2)右側面側の端部は,軸方向に対して,垂直平面状に形成され,その端面は,歯ブラシ部を収納するために開放されている点,
(c’)電動歯ブラシ本体部は,
(c’-1)歯ブラシ部は,青色と無色透明な2色の毛からなる「刷毛部」を形成した正面視横長楕円厚板状で白色の「頭部」,細長い略円錐台状で白色の「頸部」,及び,略偏心円錐台状の「基台部」からなり,基台部は,頸部側の端部に「暗調子の細幅環状部」が形成され,握り部側の端部に,「やや暗調子の細幅帯状模様」と,薄い水色を基調とした「帯状部」が平行して形成されており,帯状部はさらにその区域内に,白色で断続した態様の「細幅帯状部」が形成されているものであって,
(c’-2)握り部の歯ブラシ部寄りに握り部と同径で太い環状の押しボタン部が形成され,押しボタン部の正面中央に円板状で中央に同心円状に配置された略小円状模様が施された押しボタンが形成されているものである点。

(形態の相違点)
(あの1)キャップをした状態における全体の色彩のうち,押しボタン部以外の部分が呈している単色の色相について,本件登録意匠は,黄色であるのに対して,甲26記載意匠は,赤色または青色である点。

(類否判断)
本件登録意匠と甲26記載意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態についても,基本的構成態様について,詳細な寸法比率を含む全体構成及び全体形状は,ほぼ一致し,また,具体的構成態様についても,ほぼ一致するものであり,この共通性が見る者に,両意匠が酷似するという印象を与えるという他ない。

相違点(あの1)の単色の色相が相違する点については,いずれも濃い調子の単色が押しボタン部以外の部分という面積の大きい部分に施されている点は一致するものであり,かつ,これらの色相は電動歯ブラシ等の家庭用衛生用品の物品分野の創作の実態を考慮すると,格別の特徴もなく,意匠を実施するに際して,需要者の嗜好に合わせて用意するバリエーションの範囲内にあるものと言い得るから,この相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は無視しうる程度であるという他ない。

したがって,総合すれば,本件登録意匠と甲26記載意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態もほぼ一致するものであるから,両意匠は,同一性の範囲内にあるという他ない。

(小括)
以上のとおりであって,本件意匠登録は,意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠に対してされたものであって,意匠法第3条第1項第2号又は第3号の規定に該当し,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1号の規定により,無効とされるべきである。


4.むすび
以上のとおりであって,本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない者の意匠登録出願に対してされたものであるから,意匠法第17条第4号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,意匠法第48条第1項第3号の規定により,無効とすべきものとする。
また,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,外国において頒布された刊行物に記載された意匠又はこれに類似する意匠であるから,意匠法第3条第1項第2号又は第3号に掲げる意匠に該当し,その意匠登録は,同法同条同項柱書の規定に違反してされたものであり,請求人が主張する無効理由2(出願前外国展示による公知意匠と同一又は類似)及び同4(出願前インターネット掲載意匠と同一又は類似)については判断するまでもなく,意匠法第17条第1号の規定により意匠登録を受けることができないものであって,同法第48条第1号の規定により,その登録を無効とすべきものとする。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。

別掲
審理終結日 2012-07-05 
結審通知日 2012-07-09 
審決日 2012-08-08 
出願番号 意願2010-27585(D2010-27585) 
審決分類 D 1 113・ 15- Z (C4)
D 1 113・ 113- Z (C4)
最終処分 成立 
前審関与審査官 宗 裕一郎 
特許庁審判長 瓜本 忠夫
特許庁審判官 遠藤 行久
斉藤 孝恵
登録日 2011-07-01 
登録番号 意匠登録第1419789号(D1419789) 
代理人 飯塚 信市 
代理人 太田 秀哉 
代理人 井部 聡 
代理人 太田 秀哉 
代理人 飯塚 信市 
代理人 井部 聡 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ