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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1271043 
審判番号 不服2009-16261
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-02 
確定日 2010-03-09 
意匠に係る物品 火災警報器 
事件の表示 意願2008-13535「火災警報器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成20年5月29日の意匠登録出願に係り,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「火災警報器」とし,形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであって,灰色で着色された部分以外が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下,「本願意匠の当該部分」という。)である(別紙第1参照)。

2.引用意匠
これに対して,原審において,意匠法第3条第2項の拒絶の理由として引用した意匠は,特許庁発行の意匠公報記載意匠登録第792228号(意匠に係る物品,防災用受信盤)の意匠であって,その形態は,同公報に記載された図面のとおりである(別紙第2参照)。

3.当審の判断
(1)本願意匠
本願意匠の当該部分は,本体部よりも周囲幅の大きい正面パネル部の背面周囲に設けられた鍔部(つばぶ)であって,本体部の外周端から直角に張り出した,背面視で略長方形状で,側面視で,本願意匠の厚みにおいて,正面側から略3分の1の位置に表れる態様である。
(2)引用意匠
引用意匠における本願意匠の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分(以下,「引用意匠の相当部分」という。)は,ベース部よりも周囲幅の大きい本体部の背面周囲に設けられた鍔部であって,ベース部の外周端から直角に張り出した,背面視で略長方形状で,側面視で,本願意匠の厚みにおいて,正面側から略11分の9の位置に表れる態様である。
(3)検討
本願意匠は,火災を検出するセンサを内蔵し,火災を検出した場合に警報音により需要者に火災を知らせるものであるが,引用意匠は,火災を検出するセンサを内蔵しておらず,火災を検出するセンサからの検出信号を受けて,その信号を例えば外部のビル管理会社に送信したり,警報音により需要者に火災を知らせるものであるから,両意匠は,厳密には機能や用途が異なり,同一の物品とは言えない。言えないが,本願意匠に係る物品は,「火災警報器」であって,用途及び機能は,主として火災により発生する煙や熱によって火災を検知し,検出結果を需要者に知らせるもの(なお,審判請求書では,「火災の有無の検出結果を需要者に知らせることはあくまで付加的なものであります」と述べられているが,本願意匠に係る物品が,「(火災)警報器」である限り,警報することを目的としていることは明らかで,請求書でのこの部分の主張は認められない。)であり,これに対して,引用意匠に係る物品は,「防災用受信盤」であって,火災を検出するセンサの検出信号を受けて,その信号を例えば外部のビル管理会社に送信したり,警報音により需要者に火災を知らせるものであるから,本願意匠と引用意匠は,同じ分野に属すると認められ,当業者ならば,当然知られていたと認めるのが相当である。
そこで,本願意匠の当該部分と引用意匠の相当部分(以下,「両意匠の部分」という。)について検討すると,両意匠の部分は,本体の上下左右の四周面に段差を設けるために形成された鍔部であって,その形態は,背面視で細幅帯状で略長方形状に構成しているもので,この様な手法は,引用意匠を始め,この種物品分野において,ごく普通に行われている造形処理の一つと言える。
ただし,本願意匠の当該部分は,正面パネル部の背面周囲に設けた鍔部であって,本体部よりも一回り大きい正面パネルを構成する部分であり,正面パネルと本体をつなぐ部位で,正面寄りに位置するものであるのに対し,引用意匠の相当部分である,本体部の背面周囲に設けた鍔部は,本体部よりも一回り小さいベース部と本体をつなぐ部位で,本体を構成する部分であり,背面寄りに位置するものであって,両意匠の部分は,それぞれ構成する部分が異なる上,全体に対する位置もおのずと変わってき,公然知られていたと認められる引用意匠から直ちに本願意匠の当該部分を創作することができるとは,言いづらい。
また,特に,審判請求書において主張するとおり,この種物品分野においては,確実に火災を検知するため,この上昇した煙を効率よく煙流入部に流入させる必要があり,この煙流入部に流入する煙の量を感度よく確実に検出するため,天井に取り付けた場合において煙流入部の下側は煙の流れを妨げない構成態様,すなわち水平方向に張り出した鍔部を備えない構成とするのが通常の手法であるところ,灰色で着色された部分を含めた本願意匠全体の構成態様は,天井に取り付けた場合において,鍔部を煙流入部の下に外周端から水平に張り出して設置した点が,引用意匠を含め,これまでのこの種物品に見られない態様であって,本願意匠の当該部分は正にこの新規な態様を形態として具体的に表した部分であるから,引用意匠を基に容易に想到することはできないというほかない。
以上のとおりであって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものということはできない。

4.むすび
したがって,本願の意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原査定の拒絶理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見することができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2010-02-23 
出願番号 意願2008-13535(D2008-13535) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 裕和 
特許庁審判長 関口 剛
特許庁審判官 樋田 敏恵
橘 崇生
登録日 2010-03-19 
登録番号 意匠登録第1385438号(D1385438) 

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