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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L4
管理番号 1275182 
審判番号 不服2012-14949
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-08-03 
確定日 2013-05-27 
意匠に係る物品 建物用戸 
事件の表示 意願2011- 2846「建物用戸」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠
本願は,平成23年(2011年)年2月10日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「建物用戸」とし,その形態を願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

2.原査定における拒絶の理由
本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

この意匠登録出願に係る建物用戸の分野において,扉体の背面図視右寄りの位置に縦長矩形状の鏡を設けること(意匠1)は,本願出願前より極普通に行われているありふれた手法であるところ,この意匠登録出願は,本願出願前に公然知られたものと認められる,扉体の正面図視右寄りに垂直方向に2本の凸状部を設けた建物用枠付き戸(意匠2)の形状に基づき,その背面右寄りの位置に縦長矩形状の鏡を設け,建物用戸の意匠として表したにすぎないため容易に創作できたものと認められる。

(意匠1)(別紙第2参照)
特許庁が平成22年(2010年)12月20日に発行した意匠公報記載
意匠登録第1403986号の意匠
(意匠に係る物品,建物用戸)の意匠

(意匠2)(別紙第3参照)
特許庁意匠課が2006年6月9日に受け入れた
文化シヤッター株式会社が発行したカタログ「製品ガイド」 第21頁所載建物用枠付き戸の意匠(把手部及びシリンダー錠部分を除く)
(特許庁意匠課公知資料番号第HC18022966号)
(平成18年度内国カタログNO,115)

3.請求人の主張の要旨
(1)本願意匠と引用意匠との対比
(a)本願意匠の正面側と「引用意匠2」とを対比すると,本願意匠は,「扉体の正面図視右寄りに垂直方向に2本の凸状部を設けた」ものであるのに対し,引用意匠2は,「扉体の正面図視左寄りに垂直方向に2本の凸状部を設けた」ものである。また,本願意匠は,「正面図視右寄りの戸端ぎりぎりに設けられており,ハンドルを取り付けるスペースはない」のに対し,引用意匠2は,「左側にハンドルを取り付けるための広いスペースを設け」ている。この種戸の使用状態を考慮すると,左右の位置関係,およびハンドル取り付けスペースの構成態様は,意匠の重要な要素であることは明らかであり,両意匠の相違は顕著なものである。
(b)本願意匠の背面側と引用意匠1とを対比すると,本願意匠は,「縦長長方形状の鏡を,扉体の左側に上下左を略同じ幅を空けて設け」ているのに対し,引用意匠1は,「鏡を,扉体の左端に近接させて,上下のスペースを広く空けて設け」ている。
(2)本願意匠の創作非容易性
以上のように,本願意匠と「引用意匠2」とは凸状部の位置が左右逆であり,かつ,ハンドルスペースの有無もあり,本願意匠と「引用意匠1」とは鏡の大きさ及び位置が相違し,「引用意匠2」に「引用意匠1」を組み合わせたとしても本願意匠と実質的に同一の意匠を構成することはできない。
『意匠審査基準』の創作容易の事例を参照すると,引用形態については,事例(1)ないし(4)は「同一」の形態である(例外として,事例(5)「転用」に「ほとんどそのまま」という事例があるだけである。)。裁判例においても,「同一又はほぼ同一の形状の意匠を容易に創作できる場合には,意匠の創作容易性が肯定される」(知財高判平成22.7.20「取鍋」平成19(ネ)10032)といわれており,本願意匠と引用意匠の態様が同一で,引用意匠の態様から実質的に同一の意匠が形成されない場合は,本願意匠は創作非容易であると判断されなければならない。
(3)この種意匠において各部の態様は公知の態様であることがほとんどであり,この種戸の意匠の創作は,公知の各構成要素を組み合わせて,全体として新規な意匠を形成することにある。したがって,全体として新規な美感を起こさせる本願意匠は創作非容易である。そして,本願意匠と「引用意匠2」とは凸状部の位置が左右逆であり,かつ,ハンドルスペースの有無もあり,また,本願意匠と「引用意匠1」とは鏡の大きさ及び位置が相違し,「引用意匠2」に「引用意匠1」を組み合わせたとしても本願意匠と実質的に同一の意匠を構成することはできない。
したがって,本願意匠は引用意匠2の形状に基づき容易に創作できたものではない。

4.当審の判断
本願意匠が,当業者であれば,容易に創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。
(1)本願意匠
本願意匠は,意匠に係る物品を「建物用戸」とし,その形態は,全体が高さを2000mmとする縦長長方形状の板状の戸であり,その正面視の縦横比を約1:2.6とし,正面において,戸の右寄りの位置に2本の垂直な細幅帯状の装飾部(以下,「装飾部」という。)を配し,戸の背面視左寄りに縦長長方形状の鏡を設けたものである。
装飾部は,戸を断面視すると扁平な横長の2つの凸状体(以下,「凸状体」という。)からなり,正面視すると,正面の上端から下端までその高さ一杯に,戸の右端から横幅の約1/10の位置及び約1/5の位置に設けられたもので,鏡は,戸の上下及び左側に余地部を設けて,戸の略左右中央位置から左寄りに設けられ,戸の高さと横幅に対する比が,高さが約4/5,横幅が約2/5の割合を占めるもので,断面視略台形状の枠部で周囲を囲んだものである。
(2)本願意匠と意匠1及び意匠2に表された構成態様の関連性
(a)意匠1には,戸の背面視左寄りに縦長長方形状の鏡を設けた建物用戸が表されているが,戸の横方向の中央位置よりも左端寄りの位置に設けられ,戸の高さと横幅に対する比が,高さが約7/10,横幅が約2/5の割合を占めるもので,本願意匠とは位置や大きさが異なるものである。(b)意匠2には,戸の正面の上端から下端まで垂直方向に装飾部が設けられているが,戸の左端から横幅の約1/6の位置及び約1/4の位置,すなわち,正面の取手取付け側に2本の細い凸状体が間隔を狭めて設けられており,本願意匠のように右寄りには装飾部が表されてはいない。
(3)創作容易性の判断
まず,この種の建物用戸の分野においては,戸の背面視左寄りに縦長長方形状の鏡を設けることは,意匠1に見られるように,本願出願前より既に公然行われていることである。また,戸の正面の片側寄りに2本の凸状体を垂直方向に並べて装飾部を設けることは,意匠2に見られるように本願出願前より既に行われていることである。しかしながら,具体的構成態様についてみると,本願意匠は,戸の背面の中央にかかるように大きめの鏡を左寄りに設けた態様であるのに対して,意匠1は,鏡の正面視の形状については共通するが,戸の背面の左右中央位置よりさらに左寄りに,本願意匠よりやや小さい鏡を設けた態様であって,両意匠の鏡の位置や大きさが異なり,また,本願意匠と意匠2は,戸の正面の片側寄りに2本の凸状体を垂直方向に設けて装飾部とした点については共通するが,意匠2は,装飾部の位置が,この種物品によく見受けられる取手取付け側に設けられたものであるのに対して,本願意匠は,装飾部が戸の正面の右寄り,すなわち蝶番取付け側に設けられており,このような装飾部の具体的な態様は,先行する意匠には見当たらない。
そうすると,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた意匠1及び意匠2に基づいて容易に創作をすることができたものということはできない。

5.むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,同法同条同項により拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2013-05-15 
出願番号 意願2011-2846(D2011-2846) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡邊 久美谿 季江 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 原田 雅美
川崎 芳孝
登録日 2013-06-07 
登録番号 意匠登録第1474033号(D1474033) 
代理人 山本 哲也 
代理人 梅澤 修 

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