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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 M3
管理番号 1275189 
審判番号 不服2012-23214
総通号数 163 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-07-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-11-22 
確定日 2013-05-28 
意匠に係る物品 取手 
事件の表示 意願2011- 9078「取手」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとし,本意匠を意願2010-25127号とする平成23年(2011年)4月20日の関連意匠の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「取手」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,本願に係る取手の分野において,把手部から脚部にかけて湾曲からなる凹部を形成すること(意匠2),その凹部の曲率を種々のものに変更すること(意匠3),透光性を有する素材を選択すること(意匠4)は,本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法であり,本願意匠は,本願出願前に公然知られたものと認められるハンドルの意匠(意匠1)の形状に基づき,把手部から脚部にかけて湾曲からなる凹部を形成し,透光性を有する素材を用いて,取手の意匠として表したにすぎないというものであり,脚部下部から座部(取付部)にかけて側面部分の段差をなくすことも,この種物品分野において常套的に行われている手法であるというものである。

[意匠1](別紙第2参照)
スガツネ工業株式会社が2009年2月に発行したカタログ『LAMP by SUGATSUNE 2009-2012 総合カタログ 産業機器用機構部品 No.190』第35頁所載(最上段)「FT?110S」と表示されたハンドルの意匠
[意匠2](別紙第3参照)
特許庁意匠課が2001年3月21日に受け入れた株式会社栃木屋が発行したカタログ『1991年 栃木屋総合カタログ』第4-13頁所載取手の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC12030848号)

[意匠3](別紙第4参照)
特許庁総合情報館が1995年3月14日に受け入れた1995年2月28日発行の『国際事務局意匠公報』第6282頁所載家具用取手の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH07042099号)

[意匠4](別紙第5参照)
特許庁特許情報課が2005年8月4日に受け入れた2005年3月7日発行の大韓民国意匠商標公報(CD-ROM番号2005-10)に記載された意匠登録第30-0375051号の家具用ハンドルの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH17521382号)

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。
本願意匠は,把手部と脚部の断面形状が,意匠2や意匠3とは異なる。
すなわち,本願意匠は,把手部と脚部の表面が円弧状に凹んでおり,裏面が円弧状に膨らんでおり,全体としての断面形状が弓形状であるのに対して,意匠2や意匠3は,表面に湾曲からなる凹部を形成しているが,裏面が円弧状に膨らんでいることは認められない。
把手部や脚部は,看者が注目する部位であり,取手の主要部である。これらの部位に形状の差があるのであるから,意匠1に意匠2や意匠3を適用することによって,本願意匠を容易に創作できたとは言えない。

第4 当審の判断
1.本願意匠
本願意匠の形態は,第1に述べたように,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりのものである。
すなわち,
(A)全体は,細幅板を凹状に湾曲させ,その正面視を,扁平な略等脚台形を想起させる倒略「コ」字状とし,中央の大部分を水平な把手部とし,その左右端を円弧状に下方に屈曲させたのち,やや斜め外方に拡がる短い直線状脚部とし,脚部下端を,外側に向かって水平に延伸させ,ごく短い座部とした態様であり,
(B)把手部は全長にわたり等幅のものとし,脚部は,その側方視を,下方に向かって僅かに拡幅させ,座部は脚部下方の幅と等幅で連続しており,
(C)把手部から脚部にかけては,表面が緩やかな湾曲凹面,裏面が緩やかな湾曲凸面の,断面形状を厚みのある略円弧形状として長手方向に連続しており,具体的には,表面は,断面が緩やかな円弧曲線をなす湾曲凹面の両縁部をなだらかな丸面状に面取りし,裏面は,断面が表面の円弧曲線と略同心円状の円弧曲線をなす湾曲凸面で,その両縁部は面取りせず,表面と裏面を繋ぐ面を,表面から裏面方向にごく僅かに拡幅する傾斜面とした形状であり,
(D)座部の平面部中央に取り付け用のネジ孔を円形及び楕円形として設けた,
(E)透光性材質によるものである。

2.引用意匠
原審において,本願意匠の基本的構成態様及び具体的構成態様について,本願出願前に公然知られるとした基礎として引用した意匠の構成態様及び具体的態様は,次のとおりである。
(1)全体の形状について引用された意匠1の形状
意匠1の形状は,全体が,細幅板を凹状に湾曲させて,正面視を,扁平な略等脚台形を想起させる倒略「コ」字状とし,中央の大部分を水平な把手部とし,その左右端を円弧状に下方に屈曲させて,やや斜め外方に拡がる短い脚部とし,脚部下端を,外側に向かって水平に延伸させ短い座部とした態様であり,把手部は全長にわたり等幅のものとし,脚部は,その側方視を,下方に向かって僅かに拡幅させ,座部を,脚部下方の幅より僅かに拡がった幅のものとして連続させている。
(2)把手部から脚部にかけて湾曲からなる凹部を形成することについて引用された意匠2の該部の形状
意匠2の把手部から脚部にかけての形状は,意匠2が掲載されたカタログ同頁の平面図,正面図,底面図及び正面図中央縦断面図も参酌すると,表面に湾曲凹面を設け,裏面をごく緩やかな湾曲凸面として,断面形状を厚みのある略上方湾曲凹欠逆等脚台形状として長手方向に連続しており,具体的には,表面は,幅中央の全幅の約2分の1の部位を,断面が小円弧曲線をなす湾曲凹面として,その両側に細幅の平坦面部を設けて,両縁を丸面状に面取りし,裏面は,断面がごく緩やかな円弧曲線をなす湾曲凸面で,その両縁部を表面よりも大きな丸面状に面取りし,表面と裏面を繋ぐ面を,表面から裏面方向にごく僅かに縮幅する傾斜面とした形状である。
(3)把手部から脚部にかけて湾曲からなる凹部の曲率を種々のものに変更した例として引用された意匠3の該部の形状
意匠3の把手部から脚部にかけての形状は,意匠3が掲載された公報の平面図(1.1)及び正面図(1.2)によれば,把手部は,表面中央を緩やかな湾曲凹部とし両縁をなだらかに丸面状に面取りしている。また,平面図の左右両側部の平面長さの約6分の1の位置に切り替え線を設け,この切り替え線の内側部位には,丸面状をなす両縁部を除いた中央大部分の湾曲凹部に,長手方向に平行な細溝が設けられている。表面と裏面の間をつなぐ面は膨らんだ面をなしているが,脚部の表面側の下方部位及び裏面側全面の態様は不明である。
(4)透光性を有する素材を選択した例として引用された意匠4の材質
意匠4の材質は,取り付けのためのネジ孔の金属材質部を除き,全体が透光性を有する材質である。

3.本願意匠の創作容易性について
本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠が,引用された意匠に基づいて,当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,以下検討する。
(A)全体形状について,
本願意匠の全体形状(A)細幅板を凹状に湾曲させ,その正面視を,扁平な略等脚台形を想起させる倒略「コ」字状とし,中央の大部分を水平な把手部とし,その左右端を円弧状に下方に屈曲させたのち,やや斜め外方に拡がる短い直線状脚部とし,脚部下端を,外側に向かって水平に延伸させ,ごく短い座部とした態様は,本願出願前に公然知られた意匠1の全体形状と共通している。したがって,本願意匠の全体の基本的構成態様は,本願出願前に公然知られていたと認められる。
(B)把手部は全長にわたり等幅のものとし,脚部は,その側方視を,下方に向かって僅かに拡幅させ,座部は脚部下方の幅と等幅で連続させた点について,
本願意匠と意匠1を比較すると,把手部を全長にわたり等幅のものとし,脚部は下方に向かって僅かに拡幅させた点で共通しており,脚部下方から座部にかけての幅について,本願意匠は,座部を脚部下方の幅と等幅としているのに対して,意匠1は,座部を脚部下方の幅より僅かに拡がった幅としている点で相違している。
しかしながら,この種物品において,脚部下方から座部にかけて等幅で連続させた態様は,ごく普通に見受けられるありふれた態様である(参考意匠1 スガツネ工業株式会社が2009年2月に発行したカタログ『LAMP by SUGATSUNE 2009-2012 総合カタログ 産業機器用機構部品 No.190』第35頁所載のWB-901790と表示された取手の意匠 別紙第6参照)から,意匠1に基づき,本願意匠の(B)の態様を創作することに,着想の新しさは見出せない。
(C)把手部から脚部にかけての具体的態様について,
本願意匠と意匠2を比較すると,表面に湾曲凹面を設け,裏面を緩やかな湾曲凸面として,断面形状を厚みのあるものとして長手方向に連続させている点で共通しており,断面形状等について,本願意匠は,断面形状を略円弧形状とし,表面は,断面が緩やかな湾曲凹面の両縁部をなだらかな丸面状に面取りし,裏面は,断面が表面の円弧曲線と略同心円状の湾曲凸面で,その両縁部は面取りせず,表面と裏面を繋ぐ面を,表面から裏面方向にごく僅かに拡幅する傾斜面とした形状であるのに対して,意匠2は,断面形状を略上方湾曲凹欠逆等脚台形状とし,表面は,幅中央の全幅の約2分の1の部位を,断面がやや小さな曲率の湾曲凹面として,その両側に細幅の平坦面部を設けて,両縁を丸面状に面取りし,裏面は,断面がごく緩やかな湾曲凸面で,その両縁部を表面よりも大きな丸面状に面取りし,表面と裏面を繋ぐ面を,表面から裏面方向にごく僅かに縮幅する傾斜面とした形状である点で相違している。
また,本願意匠と意匠3を比較すると,把手部の表面中央を緩やかな湾曲凹部とし両縁をなだらかに丸面状に面取りしている点で共通しているが,意匠3の脚部表面の下方部位,及び,把手部から脚部にかけての裏面の態様は不明であり,さらに,意匠3は,平面図の左右両側部の平面長さの約6分の1の位置に切り替え線を設け,この切り替え線の内側部位には,丸面状をなす両縁部を除いた中央大部分の湾曲凹部に,長手方向に平行な細溝が設けられており,表面と裏面の間をつなぐ面は膨らんだ面をなしている点で,切り替え線も細溝もなく,表面と裏面をつなぐ面が傾斜面である本願意匠と相違している。
そうすると,本願意匠の把手部から脚部にかけての表面,裏面の湾曲や縁部,さらに表面と裏面をつなぐ面についての具体的態様は,本願出願前に公然知られていたとは認められず,意匠2及び意匠3の該部の具体的態様に基づいて,当業者が,本願意匠の(C)の態様を,容易に創作することができたと言うことはできない。
なお,把手部は,使用時には,需要者が手で握る部位であることから,需要者が,細部についても注意を強く惹く部分であって,本願意匠の創作の容易性を判断する上で,最も重視されるべき部分といえる。
(D)座部中央に取り付け用のネジ孔を円形及び楕円形として設けた点について,
座部の平面部中央に取り付け用のネジ孔を設けた態様は,参考意匠1にも見られるとおり,この種物品におけるごく普通の態様であり,そのネジ孔の形状として,円形も楕円形も共に周知の形状である。
(E)全体を透光性材質とした点について,
意匠4の材質は,取り付けのためのネジ孔の金属材質部を除き,全体が透光性を有する材質であり,本願意匠に係る物品分野において,取手全体を透光性材質のものとすることが,本願出願前よりごく普通に行われていたことは,意匠4から明らかである。
したがって,本願意匠は,前記「第1」及び「第4 1.」で認定したとおりであって,前記認定のうち,(A),(B)及び(D)については,基礎となる公然知られた態様が本願出願前に存在し,(E)については,本願意匠に係る物品分野でのありふれた手法であるが,(C)の態様については,基礎となる公然知られた具体的態様が本願出願前に存在せず,本願意匠の特徴的な着想によるものというべきであることから,本願意匠は,本願出願前に公然知られた意匠に多少の改変を加えた程度であるということはできず,本願意匠の態様は,意匠1ないし意匠4から,容易に導き出せるものではないから,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。

第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項に規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときに該当しないので,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-05-14 
出願番号 意願2011-9078(D2011-9078) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (M3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 谿 季江 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 原田 雅美
斉藤 孝恵
登録日 2013-06-14 
登録番号 意匠登録第1474775号(D1474775) 
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