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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L2
管理番号 1278872 
審判番号 不服2013-2986
総通号数 166 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-10-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-02-15 
確定日 2013-09-04 
意匠に係る物品 基礎杭 
事件の表示 意願2012- 7047「基礎杭」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)3月28日付けの出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「基礎杭」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「正面図等の図において,破線で示された部分を除く実線で示された部分(螺旋羽根が設けられている部分)が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたもの(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠実線部分」という。)である。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,拒絶の理由に引用した意匠は,2010年(平成22年)10月14日に特許協力条約に基づいて公開された,国際公開番号WO2010/116884号(発明の名称,鋼管杭及び鋼管杭の施工方法)所載のFig.11に記載された鋼管杭の意匠(以下,「引用意匠」という。)の本願の意匠登録を受けようとする部分に相当する部分の意匠(以下,本願意匠実線部分に相当する引用意匠の部分を「引用意匠相当部分」という。)であって,その形態は,同公報に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照))

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比

(1)両意匠の意匠に係る物品
両意匠は,いずれも地中に埋め込む杭に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2.本願意匠実線部分と引用意匠相当部分(以下,「両意匠の部分」という。)の対比

(1)両意匠の部分の用途,機能,位置,大きさ及び範囲
両意匠の部分の用途及び機能は,いずれも全体が略中空円筒形状をなす杭の,両端部分を除いた,螺旋羽根が施された円筒形本体部分であるから,両意匠の部分の用途,機能,位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠の部分の形態
両意匠の部分の形態を対比する(以下,対比のため,引用意匠の図面について図の表示と図中の向きを本願意匠の図面に合わせることとし,引用意匠のFig.11を右方向に90°回転させ,「正面図」とする。)と,両意匠の部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

まず,共通点として,(A)部分全体は,中空円筒形状とし,その外周部分に,一定で等しいピッチとなるよう螺旋状に形成された羽根部(以下,「螺旋羽根部」という。)を,間隔を空けて3つ形成し,(B)螺旋羽根部の両端部を,円筒の外周から垂直になるように形成している点,が認められる。

他方,相違点として,(ア)各々の螺旋羽根部の態様について,本願意匠実線部分は,3つの螺旋羽根部の巻き数を,全て3回としているのに対し,引用意匠相当部分は,正面視において左側螺旋羽根部,中央螺旋羽根部,右側螺旋羽根部における各巻き数を,それぞれ1回転半,2回転半,2回転半としている点,(イ)3つの螺旋羽根部の配置態様について,本願意匠実線部分は,始点及び終点を同一母線上に配置した3つの螺旋羽根部の間隔を,左側より右側を広くして配設しているのに対し,引用意匠相当部分は,左側螺旋羽根部及び右側螺旋羽根部の始点及び終点を同一母線上に配置し,中央螺旋羽根部についてはその配置を半周ずらし,各螺旋羽根部の間隔を羽根部のピッチに合わせて配設している点,が認められる。

3.両意匠の部分の類否判断

そこで,両意匠の部分における上記の共通点と相違点を検討する。

まず,共通点(A)は,両意匠の螺旋羽根部の態様を概括したにすぎないものであるから,この共通性のみをもって両意匠の部分の類否判断を決定するものとすることはできない。
次に,共通点(B)は,螺旋羽根の両端部の態様としては極普通に見られるもの(例えば,意匠登録第709915号意匠(意匠に係る物品:コンクリートパイル),同第709919号意匠(意匠に係る物品:コンクリートパイル),同第1028964号意匠(意匠に係る物品:基礎くい)における螺旋羽根部の形状(参考意匠1ないし3,別紙第3参照))であるから,両意匠のみに共通する特徴的な態様とは言えず,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,微弱なものであると言うほかない。
そして,これら共通点は,全体としてみても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対して,相違点(ア)については,各螺旋羽根部は,目に付く部位である杭本体部の外周に施されており,その巻き数の違いは,両意匠に別異の印象を与えるものであるから,相違点(ア)は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。
次に,相違点(イ)については,3つの螺旋羽根部の始点及び終点を同一母線上に配置した本願意匠の態様は,引用意匠の中央螺旋羽根部を半周ずらした態様とは異なる印象を与えるものであるから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。また,各螺旋羽根部の間隔の相違は,細部における部分的なものではあるが,上記の始点及び終点の相違点と相まって,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えているものといえる。
したがって,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似しないものと言うことができる。

4.小括

両意匠の意匠に係る物品,両意匠の部分の用途,機能,位置,大きさ及び範囲については共通しているが,両意匠の部分の形態については上記のとおり類似しないものであるから,本願意匠と引用意匠とは類似しないものと認められる。

第4 結び

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,原査定における拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-08-21 
出願番号 意願2012-7047(D2012-7047) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 安藤 美奈子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2013-09-20 
登録番号 意匠登録第1482239号(D1482239) 
代理人 安藤 武 

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