• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201127936 審決 意匠
不服20137764 審決 意匠
不服200922780 審決 意匠
不服20137763 審決 意匠
不服20137765 審決 意匠

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1280011 
審判番号 不服2013-989
総通号数 167 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2013-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-01-18 
確定日 2013-09-19 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2011- 28160「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,2011年6月4日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,物品の部分について意匠登録を受けようとする平成23年(2011年)12月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「携帯情報端末」とし,物品の操作の用に供される画像であって,当該物品に表示されるものであり,その形態を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし,「正面図の表示部拡大図に表された画像は,画像中に入力された文章を,例えば,ソーシャルネットワークシステムに送信する機能を発揮できる状態にするために行われる操作に用いられる画像であって,送信する機能は,画像右上のボタンをクリックすることによって操作する。実線で表された部分が部分意匠として登録を受けようとする部分(以下,「本願部分」という。)である。一点鎖線は部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,この種情報機器の分野の画面デザインにおいて,四角形状の枠の一部にクリップ模様を表し,紙をクリップで止めたように見せる表現とすることは,例えば意匠1,意匠2,意匠3に表された各画像に見られるように,本願出願前より極普通に行われているのでありふれた手法であり,また,台紙に紙をクリップで止めた表現とすることも,意匠2に表された画像に見られるように,本願出願前に公然知られた態様であり,本願意匠は,台紙に紙をクリップで止めたような表現とするために,2つの略四角形状の枠の一部に単に周知のクリップ模様を表して,枠とクリップ模様部を,意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎず,容易に創作できたものと認められる,というものである。

【意匠1】 (別紙第2参照)
特許庁特許情報課が2006年2月9日に受け入れた,2005年12月2日発行の大韓民国意匠商標公報(CD-ROM番号:2005-61)に記載された意匠登録第30-0400358号のコンピュータモニターの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH17552923号)

【意匠2】 (別紙第3参照)
特許庁普及支援課が2008年5月29日に受け入れた大韓民国意匠商標公報 2008年4月4日08-07号現金自動預入支払機(登録番号30-0486178)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH20419813号)

【意匠3】 (別紙第4参照)
特許庁普及支援課が2008年5月29日に受け入れた大韓民国意匠商標公報 2008年4月4日08-07号現金自動預入支払機(登録番号30-0486180)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH20419815号)

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

本願意匠は,隅丸の横長四角形のメッセージカードに対して,その側部に,隅丸の小さな四角形部分を添付し,横方向にクリップ止めした表現としている。
一方,引用の意匠1は,四隅が直角状の横長四角形の紙を,横長四角形に表れる背景部に,紙の上縁右側部のところで上から下方に向けて,紙自体を背景部にクリップ止めして貼り付けた表現とされており,本願意匠のように,メッセージカードに四角形部分をクリップで添付した表現とはされてない。また,意匠2及び意匠3のいずれも,上側にタブを有するフォルダ(台紙)に対して,四隅が直角状の四角形の紙をやや斜めに配置して,紙の上縁左側部のところで上から下方に向けて,紙自体を台紙にクリップ止めした表現とされている。
本願意匠と意匠1ないし意匠3とで,大きな紙の上に小さな紙がクリップ止めされている点で表現が共通しているにしても,本願意匠の隅丸の横長四角形,隅丸の小さな正方形,及び,手前のカードが背景のカードと比較して相対的にサイズがかなり小さい表現は,意匠1ないし意匠3のいずれとも異なり,いずれにも表れておらず,本願意匠のように,隅丸の横長四角形のメッセージカードに対して,その側部に,隅丸の小さな四角形部分を添付し,横方向にクリップ止めした表現は,意匠1ないし意匠3のいずれにもみられないものである。
また,クリップ止めの方向を変更することが,極めて容易に行うことができるありふれた改変にすぎないとする根拠も示されていない。
本願意匠を,意匠1ないし意匠3に基づいて,容易に創作することはできない。
本願意匠は,当業者が意匠1ないし意匠3に基づいて容易に創作をすることができたものではなく,意匠法第3条第2項の規定に該当するものではない。
よって,原査定を取り消す,この出願の意匠はこれを登録すべきものとする,との審決を求める。

第4 当審の判断
1.表示部に表示される画像について
表示部に表示される画像は,画像中に入力された文章を,例えば,ソーシャルネットワークシステムに送信する機能を発揮できる状態にするために行われる操作に用いられる画像である。

2.本願部分の「用途及び機能」について
本願部分は,右上のボタンをクリックすることによって,画像中に入力された文章を,例えば,ソーシャルネットワークシステムに送信するものである。

3.本願部分の「位置,大きさ及び範囲」について
本願部分は,略縦長長方形状の表示部において,表示部の左右幅一杯で,その上端よりやや下方の位置から略上下中央位置までを占める,横長長方形状の大きさ及び範囲のものである。

4.本願意匠の形態について
(A)横長長方形の背景画面の内周にごく僅かに余地部を残して設けた,大きな隅丸横長長方形部(以下,「隅丸大長方形部」という。)の右辺中央に小さな隅丸正方形部(以下,「隅丸小正方形部」という。)を配し,隅丸小正方形部右上に,隅丸大長方形部と隅丸小正方形部に跨って,事務用クリップ状の二重細線による細長小判形状渦巻き模様の一部(以下,「クリップ模様部」という。)を配したものであり,
(B)隅丸小正方形部は,一辺の長さを隅丸大長方形部の短辺の3分の1強の長さとして,隅丸大長方形部の右短辺からやや間隔をおいて,短辺と平行に,また,隅丸大長方形部の横中央より僅かに上方位置に配したもので,隅丸小正方形部の内域は,意匠登録を受けようとしない部分であり,
(C)クリップ模様部は,その最長部の長さを隅丸小正方形部の一辺の長さと略同長として,隅丸小正方形部の右上方位置に,やや右下がりに配置されており,クリップ模様部外側略上半部,すなわち右端部から左斜め上に伸びる直線を経て左端の湾曲部までは,隅丸大長方形部にかかり,クリップ模様部外側略下半部,すなわち前記湾曲部を経て右斜め下に伸びる直線は,隅丸小正方形部右上を斜めに横切って,隅丸大長方形部右短辺からやや突出した状態に,クリップ模様部の右端の湾曲部が配置されたものであり,隅丸大長方形部,隅丸小正方形部及びクリップ模様部は,全体として,あたかも隅丸大長方形と隅丸小正方形の2枚の紙が,右側からクリップで挟んで止められたように見えるものである。

1.引例意匠
原審において,本願意匠の態様について,本願出願前に公知・周知であるとして例示した各意匠の形態は,次のとおりである。

(1)意匠1
意匠1の本願部分に相当する部分は,
(あ)横長長方形画面において,中央に区画された横長帯状長方形状部の内周に,ごく僅かに余地部を残して設けた,全体が,横長帯状長方形部の上辺右隅に,1個の小さなクリップ模様部を右上から左下に向かって急傾斜で配したもので,
(い)横長帯状長方形部の左下隅が,鋭角三角形状に切り欠かれ,この切り欠き部分と同形状の三角形状が線対称に付加されたものであって,全体が,あたかも,左下隅が少しめくれた1枚の紙の右上端部に事務用クリップを,略縦方向に挟み込んだように見えるものである。

(2)意匠2
意匠2の本願部分に相当する部分は,
(う)横長長方形画面において,左右及び下方は画面一杯とし,上方は,画面上方をやや右上がりに区画するものとした,全体が略倒台形状部で,この略倒台形状部の中央に大きな縦長長方形部を,その左右にこれより小さい矩形状部を配し,中央の縦長長方形部の上辺左隅に,1個の小さなクリップ模様部を左上から右下に向かって急傾斜で配したものであり,
(え)略倒台形状部は,その上辺部が相互に間隔をおいた上下2本の線で構成されており,下方線はやや右上がりの斜めの直線で,上方線はその中央大部分が上方に向かって略扁平等脚台形状に延出しており,
(お)クリップ模様部が付加されている中央の縦長長方形部は,横長画面と平行に配置されているが,前記略倒台形状部の上辺部を構成するやや右上がりの下線部との間隔は,左から右に向かって漸次拡幅しており,また,前記クリップ模様部は,縦長長方形部と略倒台形状部の上辺部の下線に跨って配置されていて,全体が,あたかも,画面からはみ出るような大きなタブ付きファイルの表紙の略中央部に,1枚の長方形状の紙の左上端部を,小さな事務用クリップで略縦方向に止めたように見えるものである。

(3)意匠3
意匠3の本願部分に相当する部分は,
(か)横長長方形画面において,左右及び下方は画面一杯とし,上方は,画面上方をやや右上がりに区画するものとした,全体が略倒台形状部で,この略倒台形状部の中央に,その面積の大部分を占める1個の横長長方形部を配し,この横長長方形部の上辺左隅に,1個の小さなクリップ模様部を左上から右下に向かって急傾斜で配したものであり,
(き)略倒台形状部は,その上辺部が相互に間隔を設けた上下2本の線で構成されており,下方線はやや右上がりの斜めの直線で,上方線は中央大部分が上方に向かって略扁平等脚台形状に延出しており,
(く)クリップ模様部が付加されている横長長方形部は,横長画面と平行に配置されているが,前記略倒台形状部の上辺部を構成するやや右上がりの下線部との間隔は,左から右に向かって漸次拡幅しており,また,前記クリップ模様部は,横長長方形部と略倒台形状部の上辺二重線のうちの下線に跨るように配置されていて,全体が,あたかも,画面からはみ出るような大きなタブ付きファイルの表紙の略中央部に,1枚の長方形状の紙の左上端部を,小さな事務用クリップで略縦方向に止めたように見えるものである。

3.本願意匠の創作容易性について
請求人の主張を踏まえ,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,すなわち,本願意匠の創作容易性について,検討する。

まず,本願意匠の(A)の,横長長方形の背景画面の内周にごく僅かに余地部を残して設けた隅丸大長方形部の右辺中央に隅丸小正方形部を配し,隅丸小正方形部右上に,隅丸大長方形部と隅丸小正方形部に跨って,クリップ模様部を配した点は,意匠1ないし3には見受けられない。特に,本願意匠の隅丸大長方形部に相当する意匠2及び3の部分は,画面からはみ出るような大きなタブ付きファイルの表紙であって,その全体形状は不明である。
また,その具体的態様としての(B)の,本願意匠の隅丸大長方形部と隅丸小正方形部の全体形状は,どちらも周知の形状ではあるものの,隅丸小正方形部は,一辺の長さを隅丸大長方形部の短辺の3分の1強の長さとして,隅丸大長方形部の右短辺からやや間隔をおいて,短辺と平行に,また,隅丸大長方形部の横中央より僅かに上方位置に配したという具体的構成態様は,意匠1ないし3には見受けられない。そして,当該隅丸小正方形状部は,送信する機能に関わる情報が表示される部分であって,その位置及び大きさは,画面全体の視認性の観点から決定されたものと認められ,それを当業者が意匠1ないし3に基づいて容易に想到し得たと言うことはできない。
さらに,(C)の,クリップ模様部は,その最長部の長さを隅丸小正方形部の一辺の長さと略同長として,隅丸小正方形部の右上方位置に,やや右下がりに配置された態様も,意匠1ないし意匠3のいずれにも表れていない。そして,本願意匠の当該クリップ模様部の位置は,隅丸小正方形部に表示される情報の視認性を阻害しないように配慮し,かつ,あたかも隅丸大長方形と隅丸小正方形の2枚の紙片が,右側からクリップで挟んで止められたように見える視覚効果を両立させたものであって,本願意匠のそのような視覚効果を生じる意匠の創作につき,意匠2及び同3に基づいて,当業者であれば容易に想到し得たとは言い難い。
そうすると,本願意匠は,意匠1ないし3に見られるような,あたかも,1枚の矩形状の紙に情報が記載され,それを事務用クリップで留めたような視覚効果を有するというデザインコンセプトおいて,共通する部分が認められるものの,その具体的構成態様は,意匠1ないし3に見られる各部の構成要素をほとんどそのまま用いた,あるいはこの種物品分野においてよく見られる多少の改変を加えたとは言えないものであり,本願意匠の各部の大きさ,比率,配置態様等は,本願意匠の独自の創作によるものと言うべきであり,本願意匠は,意匠1ないし3に基づいて当業者であれば,容易に創作することができたと言うことはできない。

第5.むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状の結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠に該当しないので,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-09-04 
出願番号 意願2011-28160(D2011-28160) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 樫本 光司
原田 雅美
登録日 2013-10-11 
登録番号 意匠登録第1483929号(D1483929) 
代理人 辻居 幸一 
代理人 弟子丸 健 
代理人 井野 砂里 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 松下 満 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 工藤 由里子 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ