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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2013880001 審決 意匠
無効2012880013 審決 意匠
判定2013600013 審決 意匠
判定2013600012 審決 意匠
判定2012600053 審決 意匠

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審決分類 審判    L3
審判    L3
管理番号 1282290 
審判番号 無効2012-880014
総通号数 169 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-12-19 
確定日 2013-11-06 
意匠に係る物品 柵用継手 
事件の表示 上記当事者間の登録第1442863号「柵用継手」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件登録意匠
本件意匠登録第1442863号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)についての出願は,平成23年(2011年)12月20日に,意匠登録出願され,平成24年(2012年)4月27日に,その意匠について,意願2011-021819号(意匠登録第1440450号)の意匠を本意匠とする関連意匠として設定の登録がなされ,本件登録意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「柵用継手」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は,「登録第1442863号意匠の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,概略以下の主張をし,証拠方法として,甲第1ないし第8号証を提出し,別紙として,「『本件登録意匠』と『甲第1号証の意匠』との対比」を提出した。(平成24年12月18日付け審判請求書,平成25年7月12日付け口頭審理陳述要領書,平成25年8月9日付け第1回口頭審理調書)

(1)意匠登録無効の理由の要点
本件登録意匠は,その出願前に公知の甲第1号証の意匠(当審注:以下,「甲1意匠」という。(別紙第2参照))と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができない(当審注:以下,「無効理由1」という。)ものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
また,本件登録意匠は,その出願前に公知の甲1意匠と甲第2号証の意匠(当審注:以下,「甲2意匠」という。(別紙第3参照)),または,甲1意匠に基づいて容易に創作できたものであるから,同法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができない(当審注:以下,「無効理由2」という。)ものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

(2)証拠方法
甲第1号証:意匠登録第1415290号の意匠公報の写し
甲第2号証:意匠登録第1415325号の意匠公報の写し
甲第3号証:意匠登録第1415576号の意匠公報の写し
甲第4号証:意匠登録第1057528号の意匠公報の写し
甲第5号証:意匠登録第1091605号の意匠公報の写し
甲第6号証:実用新案登録第2515477号の実用新案登録公報の写し
甲第7号証:実用新案登録第3083239号の実用新案登録公報の写し
甲第8号証:判例「平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件(平成19年1月30日判決言渡)」の写し

(3)無効理由1について
ア 本件登録意匠について
A 本件登録意匠の意匠に係る物品
「柵用継手」である。

B 本件登録意匠の形態
基本的構成態様として,
全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として
(イ)リブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられている。
(ロ)リブ状凸部は,平底面視で,背面側に寄せて設けられている。
(ハ)リブ状凸部は,上下面に3個ずつ設けられ,中央のリブ状凸部は,両側のリブ状凸部よりも短い。
(ニ)各リブ状凸部は,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられている。
(ホ)各リブ状凸部は,平底面視で,長方形状である。
(ヘ)上面と下面の背面側両隅部は,背面に向かって窄まるように角を落とし切り欠かれている。
(ト)上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,直線状である。
(チ)背面は,上下面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされた態様である。
(リ)背面は,上面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,下面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ヌ)背面と下面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が設けられている。
(ル)上面の略中央に楕円状の貫通孔が設けられている。

C 本件登録意匠の要部
上記本件登録意匠の基本的構成態様に,具体的構成態様(イ)(ロ)(ニ)を組み合わせた態様,即ち,全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様であり,そのリブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられ,また,背面側に寄せて設けられ,さらに,各リブ状凸部が,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているという態様は,本件登録意匠の出願前には,請求人の所有する登録意匠である甲第1号証(登録第1415290号意匠公報)以外に見られないものであるので,かかる態様は,本件登録意匠の要部であり特徴といえる。

イ 甲1意匠について
A 甲1意匠の意匠に係る物品
「ガードパイプ用継手ブラケット」である。

B 甲1意匠の形態
基本的構成態様として
全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として,
(イ)リブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられている。
(ロ)リブ状凸部は,平底面視で,背面側に寄せて設けられている。
(ハ)リブ状凸部は,上下面に2個ずつ設けられている。
(ニ)各リブ状凸部は,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられている。
(ホ)各リブ状凸部は,平底面視で,長円形状である。
(ヘ)上面と下面の背面側両隅部は,背面に向かって窄まるように角を落とし切り欠かれている。
(ト)上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,丸みを帯びている。
(チ)背面は,上下面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされた態様である。
(リ)背面は,上面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,下面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ヌ)背面と下面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が設けられている。
(ル)上面に貫通孔は設けられていない。

C 甲1意匠の要部
上記甲1意匠の基本的構成態様に,具体的構成態様(イ)(ロ)(ニ)を組み合わせた態様,即ち,全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様であり,そのリブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられ,また,背面側に寄せて設けられ,さらに,各リブ状凸部が,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているという態様(本件登録意匠と同じ態様)は,甲1意匠の出願前には,見られないものであるので,かかる態様は,甲1意匠の要部であり特徴といえる。

ウ 本件登録意匠と甲1意匠との対比
A 両意匠の「意匠に係る物品」
両意匠は,意匠に係る物品が共通する。

B 両意匠の形態
[共通点]
基本的構成態様において共通する。
また,具体的構成態様についても,上記(イ)(ロ)(ニ)(ヘ)(チ)(リ)(ヌ)が共通している。

[差異点]
(a) 両意匠は,前記の具体的構成態様の(ハ)について,本件登録意匠のリブ状凸部は,上下面に3個ずつ設けられているのに対して,甲1意匠のリブ状凸部は,上下面に2個ずつ設けられている。
(b) 両意匠は,前記の具体的構成態様の(ホ)について,本件登録意匠の各リブ状凸部は,平底面視で,長方形状であるのに対して,甲1意匠の各リブ状凸部は,平底面視で,長円形状である。
(c) 両意匠は,前記の具体的構成態様の(ト)について,本件登録意匠の上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,直線状であるのに対し,甲1意匠の上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,丸みを帯びている。
(d) 両意匠は,前記の具体的構成態様の(ル)について,本件登録意匠の上面の略中央には楕円形状の貫通孔が設けられているのに対し,甲1意匠の上面に貫通孔は設けられていない。

C 両意匠の共通点及び差異点の評価
[共通点の評価]
基本的構成態様において共通する。
また,具体的構成態様についても,上記(イ)(ロ)(ニ)(ヘ)(チ)(リ)(ヌ)が共通している。
しかも,上記の構成態様のうち,基本的構成態様に,具体的構成態様(イ)(ロ)(ニ)を組み合わせた態様,即ち,全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様であり,そのリブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられ,また,背面側に寄せて設けられ,さらに,各リブ状凸部が,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているという態様は,甲1意匠の出願前には見ら受けられない構成態様であり,甲1意匠の要部かつ特徴であるから,この構成態様の類似範囲は広く解釈されるものであり,両意匠の創作の原点は,軌を一にしているものということができる。

[差異点の評価]
i 具体的構成態様の(ハ)に関する[差異点](a)は,リブ状凸部の個数が,3個か2個の差異であるが,この1個の差異は,この種の継手の補強上,継手に取り付けられるガードパイプ等の管材の太さ等により,調整されて設けられる程度の差異であり,部分的改変の範囲あるいは選択の範囲のものであるから,この差異が,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
例えば,請求人の所有する登録意匠である甲第2号証(登録第1415325号意匠公報)と甲第3号証(登録第1415576号意匠公報)とは,リブ状凸部の個数について,3個か4個の差異が見られるが,両者は,本意匠と関連意匠の関係にあり類似している。そして,この両登録例も,リブ状凸部の数の差は1個であり,しかも,両者は,リブ状凸部とその周辺部分を部分意匠として限定しているにもかかわらず,類似関係にあることから,本件登録意匠と甲第1号証の意匠との上記差異が,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではないことを裏付けるものである。
なお,本件登録意匠の3個のリブ状凸部は,中央のリブ状凸部が,両側のリブ状凸部よりも短いことから,独特の態様を有しているように見える。しかし,その態様は,この種の継手において,その略中央に,ガードパイプ等の管材をボルトで取り付けるための貫通孔があり,その貫通孔を避けるため,中央のリブ状凸部が両側のリブ状凸部よりも短くせざるを得ないことから生ずるものである。つまり,その態様は,継手の機能を確保するために不可欠かつ必然的な構成態様であるから,本件登録意匠の特徴とはいえないものである。
ii 具体的構成態様の(ホ)に関する上記[差異点](b)は,各リブ状凸部の平底面視における形状が,長方形状であるか長円形状であるかの差異,言い換えれば,四隅の形状が角張っているか丸みを帯びているかの差異であり,また,両意匠において,各リブ状凸部の長さ・太さが異なるが,これらの差異も,継手の補強上,継手に取り付けられるガードパイプ等の管材の太さ等により,調整されて設けられる程度の差異であるが,これらの差異は部分的改変の範囲のものであって,意匠全体から見ても細部の差異にすぎない。したがって,これらの差異も両意匠の類否判断に影響を及ぼすものとはいえない。
また,背面図に表れている本件登録意匠の各リブ状凸部が略台形状であっても,平・底面視で観察した場合,上底はその台形の脚より短寸であり,略半円形状に類似してゆく傾向が強くなる。さらに,各リブ状凸部の高さは,側面視略D字状の継手本体部の高さの約20分の1程度に過ぎず,需要者は,一見しただけでは略半円形状のリブと判別できず,略半円形状である甲第1号証のリブと類似する。
補足するならば,両意匠のリブは共に,継手本体の平面並びに底面の折れ曲がりやネジレ等を防止するための補強を目的として施される形態である。
そして,一般技術からすると,そのリブの形状は,引っかかり部や角部のできない形状として台形状か半円形状かのいずれかの形状が採用されてきた経緯を有する技術分野に係る形状である。
iii 具体的構成態様の(ト)に関する上記[差異点](c)は,上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様が,直線状であるか丸みを帯びているかの差異であるが,どちらも,前記具体的構成態様の(ヘ)で述べたとおり,上面と下面の背面側両隅部は,背面に向かって窄まるように角を落とし切り欠かれている態様であることは共通するものであるから,やはり部分的改変の範囲のものであって,意匠全体から見ても細部の差異に過ぎない。したがって,この差異点も両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
iv 具体的構成態様の(ル)に関する上記[差異点](d)は,上面の略中央に楕円状の貫通孔が設けられているか否かの差異であるが,本件登録意匠の場合,ガードパイプ等の管材を上面と下面の貫通孔にボルトを挿入して固定する方法を採用するものであるのに対して,甲1意匠の場合は,管材を下面に貫通孔だけにボルトを挿入して固定する方法を採用するものであり,管材の固定方法に伴う技術的な選択の範囲のものであって,やはり意匠全体から見ても細部の差異に過ぎない。したがって,この差異点も両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではないといえる。

エ 両意匠の共通点及び差異点の評価に基づく類否
以上のとおり,両意匠は,両意匠の要部であり特徴であるところの,基本的構成態様と具体的構成態様(イ)(ロ)(ニ)の組み合わせ態様が,共通するだけでなく,具体的構成態様(ヘ)(チ)(リ)(ヌ)についても共通するものである。
一方,具体的構成態様の内,(ハ)(ホ)(ト)(ル)は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすほどの差異ではない。
言い換えれば,両意匠は,リブ状凸部や貫通孔の態様に部分的な差異が見られるが,継手の全体形状はほぼ同一形状であるということができる。
したがって,上記共通点は,差異点をはるかに凌駕するものであるから,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するといわざるを得ない。

(4)無効理由2について
無効理由2は,本件登録意匠が,その出願日前に公知の甲2意匠を基礎として,甲1意匠の一部を組み合わせる(置き換える)ことによって容易に創作できた,または,甲1意匠に基づいて容易に創作できたというものである。
ア 本件登録意匠及び甲1意匠について
両意匠の説明は,前記(3)無効理由1で述べたとおりである。

イ 甲2意匠
A 甲2意匠の意匠に係る物品
「ガードパイプ用継手ブラケット」である。

B 甲2意匠の形態
基本的構成態様として
全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として
(イ)リブ状凸部は,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられている。
(ロ)リブ状凸部は,平底面視で,背面側に寄せて設けられている。
(ハ)リブ状凸部は,上下面に同じ長さのものが3個ずつ設けられている。
(ニ)平底面視で,3個ずつ設けられた直線状のリブ状凸部の内,中央のリブ状凸部は前後方向に延び,両側のリブ状凸部は背面側に向かい扇状に開いた態様である。
(ホ)各リブ状凸部は,平底面視で,長円形状である。
(ヘ)上面と下面の背面側両隅部は,背面に向かって窄まるように角を落とし切り欠かれている。
(ト)上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,丸みを帯びている。
(チ)背面は,上下面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされた態様である。
(リ)背面は,上面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,下面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ヌ)背面と下面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が設けられている。

ウ 本件登録意匠と甲2意匠との差異点について
A 本件登録意匠の上下面における3個ずつのリブ状凸部は,中央のリブ状凸部が,両側のリブ状凸部よりも短くなっているのに対し,甲2意匠の上下面における3個ずつのリブ状凸部は,ほぼ同じ長さである。
B 本件登録意匠の上下面における3個ずつのリブ状凸部は,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているのに対し,甲2意匠の上下面における3個ずつのリブ状凸部は,平底面視で,中央のリブ状凸部は前後方向に延び,両側のリブ状凸部は背面側に向かい扇状に開いた態様で設けられている。
C 本件登録意匠の各リブ状凸部は,平底面視で,長方形状であるのに対し,甲2意匠の各リブ状凸部は,平底面視で,長円形状である。
D 本件登録意匠の上面を下面の背面側両隅部の角を落とした態様は,直線状であるのに対し,甲2意匠の上面と下面背面側両隅部の角を落とした態様は,丸みを帯びている。
E 本件登録意匠の凹面の略中央に楕円状の貫通孔が設けられているのに対し,甲2意匠の上面に貫通孔は設けられていない。

エ 本件登録意匠の創作容易
a 上記差異点Aは,上下面における3個ずつのリブ状凸部において,中央のリブ状凸部が,両側のリブ状凸部よりも短くなっているか,あるいはリブ状凸部は,3個ともほぼ同じ長さであるかの差異であるが,本件登録意匠の中央のリブ状凸部が,両側のリブ状凸部よりも短いという態様は,この種の継手の上下面において,その略中央に,ガードパイプ等の管材をボルトで取り付けるための貫通孔があり,その孔を避けるため,中央のリブ状凸部が両側のリブ状凸部よりも短くせざるを得ないということから生ずるものである。
つまり,中央のリブ状凸部が両側のリブ状凸部よりも短いという態様は,継手の機能を確保するために不可欠かつ必然的な構成態様であるから,この種の意匠の分野における当業者であれば,格別の創意を要するものではない。

b 上記差異点Bは,上下面において,それぞれ両側のリブ状凸部が,平行に設けられているか扇状に開いた態様であるかの差異であるが,両側のリブ状凸部が平行に設けられてものは,甲1意匠にみられるので,甲2意匠における両側のリブ状凸部を,甲1意匠における両側のリブ状凸部に置き換えることで,上下面における3個ずつのリブ状凸部を平行にすることは,この種の意匠の分野における当業者であれば,格別の創意を要するものではない。
言い換えれば,本件登録意匠は,上下面のリブ状凸部において,甲2意匠の傾斜した両側のリブ状凸部を,中央のリブ状凸部と平行にしたものに過ぎないといえる。

c 上記差異点Cは,各リブ状凸部の平底面視における形状が,長方形状であるか長円形状であるかの差異,言い換えれば,四隅の形状が角張っているか丸みを帯びているかの差異であり,また,各リブ状凸部の長さ・太さについても異なるが,これらの差異も,継手の補強上,継手に取り付けられるガードパイプ等の管材の太さ等により,調整されて設けられる程度の差異であるが,これらの差異は部分的改変の範囲のものであるから,本件登録意匠の各リブ状凸部の平底面視における形状を長円形状から長方形状にし,また各リブ状凸部の長さ・太さを変えることは,当業者であれば,容易になし得る範囲のものである。
なお,本件登録意匠の各リブ状凸部の中央には,長手方向に平行な2本の線が見られるが,それらの線は,ただ単に凸部の稜線を表したに過ぎないから,創作されたというレベルのものではない。
また,本件登録意匠に係る台形状リブや甲1意匠,甲2意匠の略半円形状リブは,この種物品分野においては,補強に係る形態として,慣用的に実施され,周知又は公知のありふれた形態であるから,本件登録意匠の略台形状リブは,周知又は公知形態の中から選択されたに過ぎず,当業者であれば,容易になし得る範囲のものであり,創作として評価できるものではない。
そして,リブに略台形状若しくは略半円形状が用いられることは頻繁であるから,甲1意匠のリブを略台形状に改変することは当業者であれば極めて容易に行えるため,甲1意匠から本件登録意匠は極めて容易に創作することができたものである。

d 上記差異点D及びEも部分的改変の範囲のものであり,本件登録意匠の上面と下面の背面側両隅部の角を落とした態様を直線状にしたり,上面の略中央に楕円状の貫通孔を設けることは,創作として評価できるものではなく,当業者であれば,容易になし得る範囲のものである。
したがって,本件登録意匠は,その出願前から公然知られた甲1意匠及び甲2意匠,または,甲1意匠に基づいて容易に創作することができたものといわざるを得ない。

(5)むすび
したがって,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
また,本件登録意匠は,甲1意匠及び甲2意匠,または,甲1意匠に基づいて容易に創作することができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

2.被請求人の主張
被請求人は,「審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」と答弁し,その理由として,概略以下の主張をし,証拠方法として,乙第1ないし第13号証を提出した。(平成25年3月5日付け審判事件答弁書,平成25年7月26日付け口頭審理陳述要領書,平成25年8月9日付け第1回口頭審理調書)

(1)証拠方法
乙第 1号証:特開2007-2613号公開特許公報の写し
乙第 2号証:継手の周知形態マップ
乙第 3号証:本件登録意匠と甲1,2,3号意匠との対比図
乙第 4号証:登録第470358号の類似第2号意匠公報の写し
乙第 5号証:登録第789604号意匠公報の写し
乙第 6号証:登録第959628号意匠公報の写し
乙第 7号証:登録第1114916号意匠公報の写し
乙第 8号証:登録第1253333号意匠公報の写し
乙第 9号証:特開2002-139174号公開特許公報の写し
乙第10号証:登録第841451号意匠公報の写し
乙第11号証:登録第841451号の類似第1号意匠公報の写し
乙第12号証:登録第699232号意匠公報の写し
乙第13号証:登録第633830号意匠公報の写し

(2)無効理由1について
ア 本件登録意匠に係る物品の外観形態の背景
この種ブラケットあるいは継手と称する道路用の保護柵用の物品は,使用時に支柱に固着するもので,且つガードパイプを挿通させる目的から必然的に,その物品の側面視の外観形態は横長な略D字状を呈してなることは,この種物品分野においては古くから周知形態であって広く知られた形態である。例えば,乙第2号証に示す周知または公知形態マップからも明らかである。同様に上下面や支柱側の固着面(背面側)にボルト挿通孔が開設されていることも広く知られた形状である。

イ 本件登録意匠の特徴
本件登録意匠の創作のポイントは,柵用継手の最も面積が大で目立つ位置である,平底面の両面に特殊形状の凸状リブを設けたことにあり,該リブの形成によって平底面の板面の強度保持と外観美並びに独自性を達成したことにある。
しかるに,本件登録意匠の該凸状リブの具体的構成態様である,平・底面視一端側から他端側(正面側)の手前迄(継手本体の正面側の裾野まで)延設した縦長な2本の凸状リブと該リブ間に同幅で前記リブの略半分の長さの短い1本の凸状リブが等間隔に配置されて構成され,しかも該凸状リブは,正面視・両側片を有する略台形状で,平・底面視3条のラインからなる幅広の形状に構成されるものであって,特に平・底面視幅広で正面視略台形状を基調としてなる,そのデザイン形態並びに該凸状リブが長いリブが2本と短いリブが中央に1本配置され,全体のリブの外観形態は従来全く存在しない本件登録意匠にのみ特有な形態で特色ある外観形態となっている。

ウ 本件登録意匠と甲1意匠との対比
A 両意匠の「意匠に係る物品」
物品において共通する。

B 両意匠の形態
[共通点]
基本的構成態様において共通する。
[相違点]
(a)リブの位置,本数,長さ,形状の相違
本件登録意匠と甲1意匠とは,リブを平面と底面に対称的な位置に形成した点においては共通するが,本件登録意匠においては2本のリブは,平・底面視一端側(背面側)から他端側(正面側)の手前迄,すなわち継手本体の正面側の裾野近辺まで長く設けているのに対し,甲1意匠は,背面側にのみ接近した位置に短く設けてなる点明確な相違点がある。
しかも,本件登録意匠のリブは,3本(3列)等間隔に平面と底面の全面にバランスよく配置してなるが,甲1意匠のリブは2本で両端側に大きく分離して全面の片側に小さく設けてなる点において明らかに異なる。
さらにリブ形状において,本件登録意匠のリブは,正面視両側片を有する略台形状で平面視3条のラインからなる幅広な形状である略角型状をデザイン基調とするのに対し,甲1意匠は単純で幅狭な長円形状で,しかも両端は曲面で全体がアールをデザイン基調とするものであり,明らかに両意匠のリブ形状は異なるもので,且つ甲1意匠のリブ形状は乙第10号意匠や同11号意匠にも見られる公知のリブ形状である。
(b)切欠き形状相違
本件登録意匠の平・底面視の一端側の切欠き形状は,直線状の傾斜片によって内向きに切り欠きされてなるのに対し,甲1意匠の切り欠き形状は弧状に切り欠き形成されてなる点で相違する。
(c)継手本体の平・底面の孔
本件登録意匠の継手本体の平・底面には貫通孔が穿設されてなるが,甲1意匠の孔は底面のみで平面には孔が開口されていない点も相違する。
(d)継手本体の背面の孔形状相違
本件登録意匠の背面の孔は横長楕円形状であるが,甲1意匠の孔は単なる楕円形状であって孔の大きさが相違する。

エ 請求人主張の本件登録意匠及び甲1意匠の要部認定の誤り
請求人は,本件登録意匠と甲1意匠の要部につき,「全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様であり,その凸状リブは,平面視と底面視で,対称的な位置に設けられ,また,背面側に寄せて設けられ,さらに,各凸状リブ部が,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているという態様にある」と認定したが,上記態様中,「全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなる基本的構成態様」,さらに「凸状リブを上面と下面に設けた態様や平面視と底面視で対称的な位置に凸状リブを設けた基本的構成態様」も,被請求人が詳述したようにこの種物品としてはありふれた周知形態又は公知形態であって何ら特徴ある形態ではない。
また,「凸状リブが背面側に寄せて設けられた態様」も,一般的にありふれた形態であって,両意匠の要部を構成するものではない。
すなわち,この種継手には,ガードパイプを支柱に固定する役割だけでなく,設置状態において,車両等が前方から衝突してもガードパイプが極力損傷せず交換不要とする役割を求められるため,ガードパイプ等が貫入される継手前方側(正面側)は強度を有する。しかし,ガードパイプが貫入されていない背面側の平底面のフラット面は中空状態となるため,継手前方側に比べると強度が低くなることから,リブ状凸部は,平底面視で背面側に寄せて設けられているのである。
そして,「各凸状リブ部が,平底面視で,前後方向に直線状でかつ平行に設けられているという態様」も,両意匠の要部を構成するものではない。
すなわち,上記したように,この種継手には,設置状態において,車両等が衝突してもガードパイプが極力損傷せずに交換不要とする役割も求められるが,車両等の衝突には継手に対して前方から発生するため,フラットな平面及び底面の強度を高めるためには,継手の正背面方向に沿って,かつ,平行にリブ状凸部を設けるのが定石であって,乙第10号証や乙第11号証の意匠等の公知意匠にも見られるありふれた形態である。
したがって,両意匠の要部は,両意匠の継手本体の平・底面に設けられたリブの具体的構成態様である。

オ 本件登録意匠と甲1意匠との類否判断
しかるに,該リブも具体的構成態様としての本数,リブの配置状態,リブの長さ,幅並びにその形状において両意匠は全く異なるので,意匠の要部であるリブの形態において相違する以上,両意匠は類似するものではない。

カ 小括
以上のとおり,請求人主張の無効理由1は,全く理由がないため明らかに失当である。よって,本件登録意匠は,請求人主張の無効理由1によって無効とされるべく理由はない。

(3)無効理由2について
請求人は,甲2意匠を基礎とし,甲1意匠の一部を組み合わせる(置き換える)こと,または,甲1意匠に基づいて,本件登録意匠は容易に創作できたものであると主張する。
しかるに,本件登録意匠の特徴である前記リブの形態は,甲第2号意匠のみならず甲1意匠のリブの形態とは全く異なるものであって,しかも本件登録意匠の特徴あるリブの形態は,前記公知意匠には全く開示されていない以上,本件登録意匠が甲2意匠と同1意匠を組み合わせても,または,甲1意匠に基づいても当業者が決して容易に創作できたものではないため,請求人主張の無効理由2も全く根拠なき失当な主張であり,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当することはあり得ない。

(4)むすび
本件に対する請求人の無効理由1及び同2の主張は,意匠を十分に理解していない者の的はずれな主張であり,これらの主張によって本件登録意匠を無効とする理由は全く成立しない。
よって,本件無効審判請求については,答弁趣旨どおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1.本件登録意匠
本件登録意匠は,第1で述べたとおり,意匠に係る物品を「柵用継手」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。
すなわち,
基本的構成態様として,
全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の平面,略矩形状の底面及び矩形状の背面からなり,平面と底面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として
(イ)リブ状凸部は,平底面視で,対称的な位置に,前後方向に直線状でかつ平行に背面側に寄せ,更に,本体の左右端部からやや内側に設けられている。
(ロ)各リブ状凸部は,平底面に3個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長方形状を呈し,正背面視すると,略等脚台形状を呈し,中央のリブ状凸部は,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さであり,また,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の2の長さである。
(ハ)平面と底面の背面側両隅部の角は,背面に向かって窄まるように,直線状を呈している。
(ニ)背面は,平底面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされ,平面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,底面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ホ)背面と底面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が1つずつ設けられている。
(へ)平面の略中央に,楕円形状の貫通孔が1つ設けられている。

2.甲1意匠
成立に争いのない甲第1号証によれば,甲1意匠は,意匠に係る物品を「ガードパイプ用継手ブラケット」とし,その形態は,
全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の平面,略矩形状の底面及び矩形状の背面からなり,平面と底面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として,
(イ)リブ状凸部は,平底面視で,対称的な位置に,前後方向に直線状でかつ平行に背面側に寄せ,更に,本体の左右端部からやや内側に設けられている。
(ロ)各リブ状凸部は,平底面に2個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長円形状を呈し,正背面視すると,凸円弧状を呈し,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さである。
(ハ)平面と底面の背面側両隅部の角は,背面に向かって窄まるように,凸弧状を呈している。
(ニ)背面は,平底面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされ,平面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,底面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ホ)背面と底面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が1つずつ設けられている。
(へ)平面に貫通孔は設けられていない。

3.甲2意匠
成立に争いのない甲第2号証によれば,甲2意匠は,意匠に係る物品を「ガードパイプ用継手ブラケット」とし,その形態は,
基本的構成態様として
全体形状を長円が2分された長半円筒状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様である。
具体的構成態様として
(イ)リブ状凸部は,平底面視で,ほぼ対称的な位置(詳細には,底面のリブ状凸部は,平面のリブ状凸部より,いずれも短い。)に3個ずつ設けられ,中央のリブ状凸部は上下方向に延び,両側のリブ状凸部は背面側に向かい扇状に開いた態様で背面側に寄せ,更に,本体の左右端部からやや内側に設けられている。
(ロ)各リブ状凸部は,平底面視すると,それぞれ長円形状を呈し,正背面視すると,凸円弧状を呈し(なお,両側のリブ状凸部については,当該リブ状凸部の側面部が表れて略等脚台形状を呈しているが,角度を変えて観察すれば,中央のリブ状凸部と同形の凸円弧状を呈している。),いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約2分の1の長さである。
(ハ)平面と底面の背面側両隅部の角は,背面に向かって窄まるように,凸弧状を呈している。
(ニ)背面は,平底面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされ,平面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,底面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である。
(ホ)背面と底面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が1つずつ設けられている。
(へ)平面に貫通孔は設けられていない。

4.無効理由1(本件登録意匠が,甲1意匠に類似するか否か)
4-1.本件登録意匠と甲1意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠の意匠に係る物品は,「柵用継手」であり,甲1意匠の意匠に係る物品は,「ガードパイプ用継手ブラケット」であって,表記は異なるが,いずれもガードパイプを支柱に固定する部材であることから,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。

(2)形態
ア 共通点
A 基本的構成態様
全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の上面,略矩形状の下面及び矩形状の背面からなり,上面と下面にリブ状凸部を設けた態様である。
B 具体的構成態様として
(A)両側のリブ状凸部は,平底面視で,対称的な位置に,前後方向に直線状でかつ平行に背面側に寄せ,更に,本体の左右端部からやや内側に設けられている点,
(B)背面は,平底面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされ,平面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,底面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である点,
(C)背面と底面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が1つずつ設けられている点,
がある。

イ 相違点
具体的構成態様として,
(a)各リブ状凸部につき,本件登録意匠は,平底面に3個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長方形状を呈し,正背面視すると,略等脚台形状を呈し,中央のリブ状凸部は,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さであり,また,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の2の長さであるのに対して,甲1意匠は,平底面に2個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長円形状を呈し,正背面視すると,凸円弧状を呈し,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さである点,
(b)平面の略中央に,本件登録意匠は,楕円形状の貫通孔が1つ設けられているのに対して,甲1意匠は,貫通孔が設けられていない点,
(c)平面と底面の背面側両隅部の角につき,本件登録意匠は,直線状を呈しているのに対して,甲1意匠は,凸弧状を呈している点,
がある。

4-2.本件登録意匠と甲1意匠の類否判断
以上の本件登録意匠と甲1意匠の共通点及び相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価して,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討する。

(1)形態の共通点の評価
基本的構成態様のうち,全体形状を長円が2分された長半円筒形状体とし,半円筒状の正面,略矩形状の平面,略矩形状の底面及び矩形状の背面からなる点については,この種物品において,水平方向に取り付ける円筒状のガードパイプを支柱に取り付けるためには,必然的にこのような形態とならざるを得ず,同様の形態の意匠は,甲1意匠の出願前より,例えば,平成19年(2007年)1月11日に特許庁が公開した公開特許公報掲載の特開2007-2613号の図2及び図5に表された連結部材の意匠(乙第1号証(別紙第4参照))に見られるところであって,格別両意匠のみに見られる特徴ある形態とは言えず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
また,平面と底面にリブ状凸部を設けた点についても,この種物品の強度を高めるために,ガードパイプ等の管材の挿入方向に対して直角にリブ状凸部を設けることは,甲1意匠の出願前より,例えば,平成4年(1992年)7月3日に特許庁が発行した意匠公報掲載の意匠登録第841451号の意匠(意匠に係る物品「建築物配管用支持金具」,乙第10号証(別紙第5参照))に見られるところであって,平面と底面にリブ状凸部を設けたという概括的に捉えた共通点としては,格別両意匠のみに見られる特徴ある形態とは言えず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
そして,具体的構成態様の
(A)の,リブ状凸部を,平底面視で,対称的な位置に,前後方向に直線状でかつ平行に背面側に寄せ,更に,本体の左右端部からやや内側に設けた点についても,この種物品の強度を高めるためのものであって,そのような態様のものは,甲1意匠の出願前より,例えば,前記の意匠登録第841451号の意匠(意匠に係る物品「建築物配管用支持金具」,乙第10号証(別紙第5参照))に見られるところであり,
(B)の,背面は,平底面の背面側両隅部の窄まった幅で,その両端辺が上下方向に切り落とされ,平面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片と,底面から延び垂直に折れ曲がった矩形状片とが重なり合った態様である点については,背面部という,設置時には見えにくい部分に係る共通点であって,需要者の注意を格別強く惹く部分とは言えず,また,両端辺が上下方向に切り落とされた部分の大きさも僅かであって,格別顕著な視覚効果を生じているとは言い難く,
(C)の,背面と底面のそれぞれ略中央に楕円状の貫通孔が1つずつ設けられている点についても,背面及び底面という,設置時には見えにくい部分に係る共通点であって,需要者の注意を格別強く惹く部分とは言えず,これらの具体的構成態様に係る共通点(A)ないし(C)は,いずれも,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。

(2)形態の相違点の評価
具体的構成態様である,相違点(a)の,各リブ状凸部につき,本件登録意匠は,平底面に3個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長方形状を呈し,正背面視すると,略等脚台形状を呈し,中央のリブ状凸部は,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さであり,また,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の2の長さであるのに対して,甲1意匠は,平底面に2個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長円形状を呈し,正背面視すると,凸円弧状を呈し,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さである点については,本件登録意匠の平面視に着目すれば,3本のリブ状凸部は,全体として,平面の上部約3分の2の範囲に描かれた略「川」の字を想起させ,長さの異なるリブ状凸部を狭い範囲内に密に配置した印象を生じ,また,それぞれのリブ状凸部は,平面視で長方形状を呈し,更に,断面形状が略等脚台形状を呈していることから,長方形状の長手方向に,更に縦長長方形状の頂面が看取され,全体がシャープな印象を生じているのに対して,甲1意匠の2本のリブ状凸部は,本件登録意匠の中央のやや短いリブ状凸部の長さとほぼ同長であって,全体として,平面の上部約2分の1の範囲の左右端部寄りに,間隔を開けて,やや短いリブ状凸部を疎に配置した印象を生じ,また,それぞれのリブ状凸部は,平面視で長円形状を呈し,更に,断面形状が凸円弧状を呈していることから,全体がソフトな印象を生じている。
そうすると,当該平面は,設置時には視認されやすい部分であることから,需要者の注意を強く惹く部分と認められ,また,本件登録意匠のように配置されたリブ状凸部は,甲1意匠を含め,本件登録意匠の出願前には見受けられない,本件登録意匠のみに見られる特徴的な態様のものと言えることから,平面に設けられたリブ状凸部の形態の相違点は,需要者が,両意匠を別異なものと印象付けるのに十分な視覚効果を生じており,底面に設けられたリブ状凸部の形態の相違点と相まって,この相違点(a)が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きなものである。
なお,この点について,請求人は,リブ状凸部の個数が3個か2個の差異は,例えば,意匠登録第1415325の意匠(甲第2号証)と意匠登録第1415576号の意匠(甲第3号証)とは,リブ状凸部の個数が3個か4個の差異が見られるが本意匠と関連意匠の関係で類似していることから,部分的改変あるいは選択の範囲内のものであって,また,本件登録意匠の平底面における3個ずつのリブ状凸部において,中央のリブ状凸部が,両側のリブ状凸部よりも短くなっているのは,その略中央に設けられた貫通孔を避けるため,両側のリブ状凸部よりも短くせざるを得ないということから生ずるものであり,継手の機能を確保するために不可欠かつ必然的な構成態様であるから,本件登録意匠の特徴とは言えないため,いずれも両意匠の類否判断に影響を及ぼさない旨,主張する。
しかしながら,平底面の単純な構成の中にあっては,リブ状凸部の数が2個か3個かの差異は,前記のとおり,全く異なる美感を呈していることから,部分的改変の範囲あるいは選択の範囲内のものとは到底言えない。更に,意匠登録第1415325号の意匠(甲第2号証)と意匠登録第1415576号の意匠(甲第3号証)のリブ状凸部の個数が3個か4個の差異があっても類似と判断された点については,両登録意匠のリブ状凸部全体の特徴ある共通する印象が,その個数の差異が生じる印象よりも勝ったためと言えることから,この事例の存在が,上記判断を左右するものではない。
また,本件登録意匠の中央のリブ状凸部は,貫通孔を避けるために必然的に両側のリブ状凸部よりも短くせざるを得なかったものと言えるが,他方,中央のリブ状凸部を設けるか否かは,強度設計上の要請があるとしても,甲1意匠は,当該リブ状凸部が存在しないことから,創作者の創意に委ねられているというべきである。
そうすると,本件登録意匠が,中央にリブ状凸部を設けて,両側のリブ状凸部と一体となって,全体を略「川」の字を想起させる配置とした点は,それぞれのリブ状凸部の具体的形態と相まって,本件登録意匠の出願前には見られない,本件登録意匠のみに見られる特徴といえることから,請求人のこの点に関する主張は,採用することができない。
さらに,請求人は,各リブ状凸部の平底面視の形状が,長方形状であるか長円形状であるかの差異は,四隅の形状が角張っているか丸みを帯びているかの差異であって,部分的改変の範囲であって,意匠全体から見ても細部の差異にすぎず,また,各リブ状凸部が略台形状か略半円形状かは,需要者が一見しただけでは判別できない旨,主張する。
しかしながら,平底面の単純な構成の中にあっては,各リブ状凸部の平底面視の形状が長方形状であるか長円形状であるか,また,各リブ状凸部が略台形状か略半円形状かの差異は,前記のとおり,全く異なる美感を呈していることから,部分的改変の範囲,あるいは需要者が一見して判別できないとは到底言えず,この点についての請求人の主張も,採用することができない。

相違点(b)の,平面の略中央に,本件登録意匠は,楕円形状の貫通孔が1つ設けられているのに対して,甲1意匠は,貫通孔が設けられていない点については,本件登録意匠の貫通孔は,設置時にガードパイプ等を固定するボルトを通す孔であって,挿入するガードパイプ等の径によって,その穿孔位置は必然的に決定されるものであり,また,その孔の形状も,ボルト挿入孔としてはありふれた形状であって,貫通孔のみに着目して観察した場合には,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
しかしながら,当該貫通孔は,平面の3本のリブ状凸部のやや短い中央のリブ状凸部の直下に位置し,また,左右のやや長いリブ状凸部の下端と水平方向にほぼ揃えて配置され,3本のリブ状凸部と貫通孔とが一体となって,独特のまとまり感を看取することができ,貫通孔が存在しない甲1意匠の平面とは明らかに異なる印象を生じていることから,この相違点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいと言わざるを得ない。
相違点(c)の,平面と底面の背面側両隅部の角につき,本件登録意匠は,直線状を呈しているのに対して,甲1意匠は,凸弧状を呈している点については,両意匠ともに,平面と底面の背面側両隅部の角の切欠きの程度もそれほど大きくなく,格別顕著な視覚効果を生じているとは言い難いことから,この相違点は,部分的な細部の相違であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に止まるものではあるが,前記相違点(a)及び同(b)と相乗して生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと言わざるを得ない。

4-3 無効理由1の小括
そうすると,両意匠の意匠に係る物品は,一致するが,その形態において相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠は,甲1意匠に類似するものとすることはできない。
したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠とは認められず,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠(甲1意匠)との類似性,すなわち,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠の該当性を理由とする無効理由1には,理由がない。

5.無効理由2(本件登録意匠が,甲1意匠及び甲2意匠,または甲1意匠に基づいて創作容易か否か)
5-1 本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠及び甲1意匠並びに甲2意匠の形態は,前記第4 1.ないし3.で述べたとおりのものである。
そこで,本件登録意匠の特徴と認められる形態,すなわち,各リブ状凸部が,平底面に3個ずつ設けられ,平底面視すると,それぞれ長方形状を呈し,正背面視すると,略等脚台形状を呈し,中央のリブ状凸部は,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の1の長さであり,また,両側のリブ状凸部は,いずれも,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の2の長さである点について検討すれば,こうような形態は,甲1意匠及び甲2意匠には全く存在しない形態であることから,当業者が,甲1意匠及び甲2意匠,または,甲1意匠に基づいて容易に創作できたとは到底言うことができない。
なお,請求人は,本件登録意匠は,甲2意匠を基礎として,甲1意匠の一部を組み合わせる(置き換える)ことによって容易に創作できた旨主張するが,その主張の要旨は,
(1)本件登録意匠の中央のリブ状凸部が両側のリブ状凸部より短いのは,貫通孔を避けるためであって,継手の機能を確保するために必要不可欠かつ必然的な構成態様である。
(2)本件登録意匠の両側のリブ状凸部は,甲2意匠の両側の傾斜するリブ状凸部を甲1意匠のリブ状凸部に置き換えただけである。
(3)本件登録意匠の各リブ状凸部の平底面視における形状は,長方形状でるが,当該形状を長円形状から長方形状にし,また,各リブ状凸部の長さ・太さは,部分的改変の範囲内である。
これらの点は,当業者であれば容易になし得る範囲のものである,としたものである。
しかしながら,本件登録意匠の両側のリブ状凸部については,甲1意匠の両側のリブ状凸部を甲2意匠の両側のリブ状凸部を単に置き換えたとしても,本件登録意匠の両側のリブ状凸部の形状にはなり得ず,置き換えた後には,更に,両側のリブ状凸部の長さを,甲2意匠の中央のリブ状凸部の長さよりも長い,本体の上下高(奥行き幅)の約3分の2の長さにまで伸張し,更に,その平面形状を長方形状に改変し,更に,断面形状を略等脚台形状に改変しなければならないことは明らかである。
そのような幾重もの改変を加えなければならない本件登録意匠の両側のリブ状凸部の形状は,甲1意匠の両側のリブ状凸部を甲2意匠の両側のリブ状凸部と単に置き換えて,部分的に改変した範囲内のものとは到底言うことができず,また,本件登録意匠の両側のリブ状凸部の形状と甲1意匠及び甲2意匠の当該のリブ状凸部の形状の相違が,当業者であれば容易になし得る範囲のものであるとも到底言うことができない。
また,本件登録意匠の中央のリブ状凸部についても,甲2意匠の中央のリブ状凸部とは,本体の上下高(奥行き幅)に対する長さ,平面視形状及び断面形状において大きく相違しており,本件登録意匠の中央のリブ状凸部が,甲2意匠の中央のリブ状凸部に基づいて当業者であれば容易に創作することができたと言うこともできない。
そうすると,本件登録意匠の3本のリブ状凸部全体についても,平面の上部約3分の2の範囲に描かれた略「川」の字を想起させ,長さの異なるリブ状凸部を狭い範囲内に密に配置した印象を生じ,また,それぞれのリブ状凸部は,平面視で長方形状を呈し,更に,断面形状が略等脚台形状を呈していることから,長方形状の長手方向に更に縦長長方形状の頂面部が看取され,全体がシャープな印象を生じている点は,意匠の創作として評価されるべきであって,少なくとも,本件登録意匠の3本のリブ状凸部は,甲1意匠及び甲2意匠に基づいて当業者であれば容易に創作することができたものとは言えない。
したがって,本件登録意匠は,その他の部分の創作容易性について判断するまでもなく,甲2意匠を基礎として,甲1意匠の一部を組み合わせる(置き換える)ことによって容易に創作できたとは言えず,その旨の請求人の主張は,採用することができない。

5-2 無効理由2の小括
そうすると,本件登録意匠は,甲1意匠及び甲2意匠,または,甲1意匠に基づいて,当業者が容易に創作することができたものとすることはできない。
したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができた意匠とは認められず,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願前に公然知られた甲1意匠及び甲2意匠,または甲1意匠に基づく創作容易性,すなわち,意匠法第3条第2項に規定する意匠の該当性を理由とする無効理由2には,理由がない。

第5 むすび
以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件登録意匠を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,意匠法第52条の規定で準用する特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2013-09-25 
出願番号 意願2011-29458(D2011-29458) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (L3)
D 1 113・ 113- Y (L3)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 渡邊 久美 
特許庁審判長 川崎 芳孝
特許庁審判官 樫本 光司
原田 雅美
登録日 2012-04-27 
登録番号 意匠登録第1442863号(D1442863) 
代理人 富田 哲雄 
代理人 野村 慎一 
代理人 磯野 道造 
復代理人 石川 達久 
代理人 藤本 昇 
代理人 浅野 令子 
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