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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 B1 |
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管理番号 | 1285457 |
審判番号 | 不服2013-11475 |
総通号数 | 172 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2014-04-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2013-06-18 |
確定日 | 2014-02-04 |
意匠に係る物品 | 上衣 |
事件の表示 | 意願2012- 6826「上衣」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
1.本願意匠 本願は,部分意匠として意匠登録を受けようとする,平成24年(2012年)3月26日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「上衣」とし,その形態は,願書の記載及び願書添付の図面に記載されたとおりのもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)としたものである。(別紙第1参照) 2.原査定における拒絶の理由 本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。 本願意匠は,下記の公知意匠がそのまま,フード内側の衿の先端部分として表された程度のものであり,本願意匠は出願前の公然知られた形状に基づき,当業者が容易に創作をすることができた意匠に該当する。 なお,フードの内側に衿(立衿)を設けることも,例示するまでもなく極く一般的である。 公知意匠(別紙第2参照) 特許庁発行の登録実用新案公報記載 実用新案登録第3066572号 【図1】【図2】に10として示されたネックウォーマーの,本願意匠に対応する部分の意匠 3.請求人の主張の要旨 A 本願意匠の創作容易性について (1)本願意匠と引用意匠について ア.本願意匠は,引用意匠とは着想が全く異なり,当業者が引用意匠から容易に着想し得るものとはいえない。 本願意匠の登録を受けようとする部分は,上衣の衿の前側部分であり,衿に着目し,衿の形状を工夫することで,従来のフード付きジャケットにおいて生じるフード前中心内側と首との間の隙間をなくし,衿先を重ね合わせたり,開いたり,折り曲げることで調整することで快適な着用感を備え,かつファッション性を重視して見た目にも美しい外観を実現するとの着想の新しさがあるものであるのに対して,引用意匠の本願意匠に対応する部分は,「アウターウェア」と称する上衣の立衿の内側に取り付けられたネックウォーマーの前側部分であり,衿とは別個に収脱可能な帯体を設けたもので,両者は着想が全く異なる。したがって,本願意匠は当業者が引用意匠から容易に着想し得るものであるとはいえない。 イ.本願意匠は,引用意匠と以下の構成態様に顕著な差異がある。 (a)全体の基本的構成の差異 全体の基本的構成について,本願意匠は,着衣者の左右両側から首元へ回りこみ首元前方で重なり合わせられる遊離短片を有し,その後方は上衣に縫い込まれ,衿先となる遊離短片は,前後に自由に重ね合わせたり,開いたりできるようにしたもので,衿裏側の布体が,衿表側の外縁を縁取るように見える厚みのある帯体としている。 これに対して,引用意匠は,着衣者の左右両側から首元に回りこみ首元前方で重なり合う左右両端片は,それぞれ,ウェア(上衣)の襟とは縫い付けることなく離れて設けられた短帯状で,その左右先端に係止部材(13)が左右で一対となるように配され,着用状態(図1)では右側端片が外側になるように固定されて止められるもので,左右両端片の表側と裏側はほぼ同様の態様で,両側の外縁付近に,コ字状外形に沿ってステッチが明瞭に表れるとの構成とした点において顕著な差異がある。 (b)表側の態様の差異 表側の態様について,本願意匠は,遊離短片の後方がフード内側に直接縫い込まれたもので,左右後方は帯体全幅(高さ)の略半分の細幅で,重合部中央は最大幅とするもので,縫い込まれた下縁が左右両側後方から前方へ左右対称に「へ字状」に表れるのもので,衿先に係止部はなく,左右の遊離片のどちらを外側に重ね合わせてもよく,すっきりした視覚的印象を与える外観としている。 これに対して,引用意匠は,フードに縫い込まれたものではなく,衿とは別個に左右後方から先端まで同幅の帯状体が表れるもので,その左側には係止部(13)の一方が配され,図1に表れるように,タートルネック状に帯体が首に巻かれて係止部でとめられたとの視覚的印象を与えるものですので,着用した際の視覚的印象において明らかな差異がある。 (c)裏側の態様の差異 裏側の態様について,本願意匠は,上衣衿ぐりに沿った縫込み部分から縫込みのない部分に移る部位は,後方から前方へ行くに従い徐々に緩やかに幅広となり,下縁は前側下方へ緩やか傾斜ラインを描く態様とし,衿先を開いた状態でも,衿先が下方へ垂れ下がることなく,外観が美しく見えるようにしている。 これに対して,引用意匠は,図2から推察すると,単に左右後方から前方まで同幅の帯体がそのまま表れるもので,引用意匠は不必要時には後身頃の内面に設けたポケット部に常時コンパクトに収納して携行することを想定しているため,右側に配された係止部(13)の一方がそのまま見えるもので,本願意匠のようにフード前側及び衿を開いた状態で見える外観がまったく考慮されていないものである点において顕著な差異がある。したがって,引用意匠のネックウォーマーの前側部分の形状をそのまま本願意匠の衿の前側部分の形状に表しても,本願意匠のような構成態様を創出することはできない。 ウ.本願意匠は,引用意匠とは全く異なる意匠的効果を有する 本願意匠の,(i)着衣者の左右両側から首元へ回りこみ首元前方で重なり合わせられる遊離短片を有し,その後方は上衣に縫い込まれ,衿先となる遊離短片が裏側の布体が,前後に自由に重ね合わせたり,開いたりできるようにし,(ii)衿裏側の布体が,衿表側の外縁を縁取るように見える厚みのある帯体とした構成,及び各部について,(iii)衿前側部分の表側は,遊離短片の後方をフード内側に直接縫い込み,後方は帯体全幅(高さ)の略半分の細幅で,前側中央は最大幅とするもので,縫い込まれた下縁が左右両側後方から前方へ左右対称に「へ字状」とし,(iv)衿前側部分の裏側は上衣衿ぐりに沿った縫込み部分から縫込みのない部分に移る部位は,後方から前方へ行くに従い徐々に緩やかに幅広となり,下縁は前側下方へ緩やかな傾斜ラインを描く態様とし,衿先を開いた状態でも,衿先が下方へ垂れ下がることなく,外観が美しく見えるようにしているとの構成態様は,本願意匠独特の構成態様であり,引用意匠とは全く異なる意匠的効果を有するものである。 したがって,本願意匠は,引用意匠と上記(1)ア.及びイ.で述べたように明白な差異点があるにもかかわらず,これらの差異点について,ありふれた手法であるといえる事実,証拠が提示されることなく,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作することができた意匠であるということは到底できない。 (2)本願意匠の創意工夫した点について 本願意匠は,衿の形状を工夫することで,冷たい外気,雪等が侵入するのを防ぐことができ,また,暑いときは,衿先を折り曲げることで調整することができるという機能性,快適な着用感を備え,かつファッション性を重視して見た目にもすっきりとした外観となるよう,前側首元で重ね合わせたとき,そのまま衿先を開いても衿として見た目に違和感のないような長さ,形状を多様な選択肢の中から選択,工夫したものである。 具体的には,前記(1)ウ.(i)から(iv)で述べた本願意匠独特の構成態様を具現化することで,機能性を考慮しつつ見た目に美しいデザインとなるよう創意工夫したものである。 4.当審の判断 本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。 (1)本願意匠 本願意匠は,意匠に係る物品を,主としてスキー,スノーボードのウェアとして使用される,フードを有する「上衣」とし,本願実線部分は,正面及び背面は,フードの内側に設けられた立ち襟状で帯状のネックウォーマーの左右の襟先部分であり,襟先部分を首の前中心で重ね合わせることができるものである。本願実線部分の形態は,左右両方の襟先部分が先端に行くにしたがって僅かに幅広となる隅丸の略横長長方形状であって,外側を薄い平坦な生地とし,内側のやや厚みのある材質が縁状に設けられ,その材質部分を外側から視認できるものである。 (2)原査定の拒絶の理由の引用意匠 原査定の拒絶の理由に引用した公知意匠の本願実線部分に対応する部分(以下,「引用対応部分」という。)は,上衣の後身頃にポケットを設け,略T字状のネックウォーマーを収納可能としたもので,引用対応部分の形態は,左右両方の襟先部分が先端まで同幅の隅丸の略横長長方形状であって,外側も内側も同様に周縁部にステッチが設けられ,先端に係止部材が取り付けられたものである。 (3)創作容易性の判断 まず,この種の防寒用の上衣の分野においては,フードの内側に立ち襟を設けることや,横長帯状のネックウォーマーを上衣の襟より内側に設けることは,本願出願前より既に行われていることである。また,襟先の先端を隅丸の略横長長方形状とすることも,引用対応部分に見られるように,本願出願前より既に公然知られた態様である。 しかしながら,本願実線部分の形態に着目すると,その襟先部分の形状が,先端まで同幅の引用対応部分と,先端に行くにしたがって僅かに幅広となっている本願実線部分とは異なり,また,周縁部の態様についてみると,本願実線部分は内側のやや厚みのある材質が縁状に設けられ,外側から視認できる態様であるのに対して,引用対応部分は,外側も内側も同様に周縁部にステッチが設けられている点で異なり,本願実線部分に係る具体的な態様が引用対応部分の態様から容易に創出し得るものということはできない。 そうすると,本願実線部分の態様は,襟先部分の先端の形状と周縁部の態様により,独特の態様といえるもので,このような襟先部分を有する本願意匠は,当業者であれば容易に創作することができたものとはいうことはできない。 よって,本願意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができた意匠ということはできない。 5.むすび したがって,本願意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当しないものであり,原査定の拒絶の理由によっては,本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2014-01-20 |
出願番号 | 意願2012-6826(D2012-6826) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(B1)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 市村 節子 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
中田 博康 江塚 尚弘 |
登録日 | 2014-03-14 |
登録番号 | 意匠登録第1494736号(D1494736) |
代理人 | 川崎 典子 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 川崎 典子 |
代理人 | 水野 みな子 |
代理人 | 水野 みな子 |
代理人 | 鶴田 準一 |