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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C2
管理番号 1286510 
審判番号 不服2013-16768
総通号数 173 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-30 
確定日 2014-03-31 
意匠に係る物品 置物 
事件の表示 意願2012- 13937「置物」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成24年(2012年)6月12日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,本願の願書の記載によれば,意匠に係る物品を「置物」とし,形態を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前,日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠,すなわち,特許庁意匠課が2005年12月28日に受け入れた,外国カタログ『Katalog 2005 WELTEN DER SINNE』の第141頁において,左側に示される置物の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HD17029453号)(以下「引用意匠」という。)であり,引用意匠の形態は,同カタログ同頁のカラー写真版に現されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 本願意匠と引用意匠の対比
1.意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「置物」である。一方,引用意匠の意匠に係る物品も「置物」であり,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は一致する。

2.形態
両意匠の形態には,主として,以下の共通点と差異点が認められる。(以下,対比のため,本願意匠の図面の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。)
(1)共通点
基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。
(A)基本的構成態様について
全体が,頭を上げて襟部を広げたコブラの形態を模したものであって,上から順に,頭部,胴体の上側を略直立させた部分(以下「上側胴体部」という。)とその左右の襟部,胴体の下側から成るとぐろ部,尾部から成るものである。
また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。
(B)頭部の態様について
頭部は,前方に突き出しており,両眼部及び口部が凹みとして形成されている。
(C)上側胴体部とその左右の襟部の態様について
上側胴体部とその左右の襟部は,頭部からとぐろ部まで後方に大きく湾曲しており,襟部は,略弧状に左右に広がるように形成されていて,その襟部の広がりは,頭部寄りで大きく,とぐろ部寄りになるにつれて小さくなっている。
(D)とぐろ部の態様について
とぐろ部は,下側の胴体が上下に複数回渦巻き状に巻かれて上下に重なっている。
(E)尾部の態様について
尾部は,正面から見て,とぐろ部の左側に略垂直に設けられており,先端が先細り状である。

(2)差異点
一方,具体的態様として,以下の差異点が認められる。
(ア)頭部の形状について
本願意匠では,頭部の左右が襟部に連続して一体状になっており,両眼部の凹みはなだらかであって,口部の凹みは横長筋状であるのに対して,引用意匠では,頭部が襟部とは区別されてやや隆起し,両眼部の凹みが略横長紡錘形状であって内側に小円形の瞳が配され,口部は大きく開いて内側には小さい牙が複数配されている。
(イ)上側胴体部とその左右の襟部の形状について
本願意匠の襟部の外形形状は,正面から見て,緩やかな略S字状であるのに対して,引用意匠は,上部が膨らんだ略弧状である。また,本願意匠では,襟部の内側に施された凹凸形状によって,正面から見て,左右両方の襟部端部に沿って略ハート状輪郭の筋が形成され,その内側には,複数の略横長凸状筋が形成されて全体として略肋骨状を呈しており,その筋の内側終端が上側胴体部と襟部の境界部分を形成している。これに対して,引用意匠では,上側胴体部が襟部から隆起して両者の境界が縦筋状にあらわれており,そして,上側胴体部と襟部には凹状溝が,それぞれ複数配されている。引用意匠の凹状溝の間隔は,本願意匠の略肋骨状の凸状筋に比べて狭く,緩やかな下向きの弧状であって,中央寄りの間隔が端部寄りに比べて狭い。
(ウ)とぐろ部の形状について
本願意匠では,とぐろの上側の直径を小さく,とぐろの下側の直径を大きくし,とぐろ部全体が略円錐台形状に形成されており,その頂部の上に上側胴体部が繋がっているのに対して,引用意匠では,とぐろの直径は上から下までほぼ同じであり,とぐろの上側の前方寄りの上に上側胴体部が載っている。また,本願意匠では,とぐろの下側の胴体の縦幅がとぐろの上側の胴体の縦幅よりも大きく,とぐろの上下の境界が段差状であるのに対して,引用意匠では,とぐろの上側の胴体の縦幅がとぐろの下側の胴体の縦幅よりも大きく,とぐろの上下の境界付近が内側に丸面状に凹んでいる。
(エ)尾部の形状について
本願意匠の尾部は,とぐろ部と一体状になっており,先端部が丸く外側に曲がっているのに対して,引用意匠の尾部はとぐろ部と区別されており,先端部は尖っており外側に曲がっていない。また,引用意匠の尾部には凹状溝が複数配されているが,本願意匠にはない。
(オ)襟部の背面形状について
本願意匠の襟部の背面には,凹凸形状が施されて,2重の縦長円形状筋が左右に形成されているのに対して,引用意匠の上端寄りを除く背面にそれが形成されているかは不明である。
(カ)表面の態様について
引用意匠では,頭部表面,とぐろ部表面,及び背面上端寄りに,鱗状の細かい凹凸形状が形成されているが,本願意匠には,そのような凹凸形状はない。また,本願意匠の表面は金色であって底部を除いて鏡面仕上げであるが,引用意匠の表面は濃淡のある茶色である。

第4 類否判断
1.意匠に係る物品
両意匠は,共に「置物」であるから,意匠に係る物品は一致する。

2.形態の共通点の評価
両意匠の形態の共通点は,コブラの形態を模して,頭部,上側胴体部,襟部,とぐろ部,及び尾部を設けた形状に関するものであり,この種物品分野においては,前方に突き出て両眼部及び口部が形成された頭部や,上側胴体部とその左右に広がる襟部を有する意匠は他にも見られ,また,とぐろ部について下側の胴体を複数回巻くことも,尾部を略垂直に設けることも見受けられるので,その余の共通点を考慮したとしても,両意匠の形態の共通点は,看者の注意を強く惹くものではない。したがって,両意匠の形態の共通点が両意匠全体の類否判断に決定的な影響を及ぼすということはできない。

3.形態の差異点の評価
一方,両意匠の差異点については,以下のとおり,両意匠全体の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。
先ず,差異点(イ)の上側胴体部とその左右の襟部の形状についての差異は,両意匠において最も目立つ部位に関する差異であって,襟部の外形形状や,襟部に施された凹凸形状,及び上側胴体部と襟部の境界に関する差異は,形態として大きく異なるものであり,例えば,本願意匠の略S字状の外形形状,略ハート状の輪郭,及び略肋骨状凸状筋は,本願意匠の引用意匠に対する差異として,看者の視覚的注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点(ウ)のとぐろ部の形状についての差異は,上側胴体部の直下という目につきやすい部位に関する差異であり,とぐろ部全体の形状,とぐろ部と上側胴体部との繋がり,及びとぐろの上下の胴体の縦幅と境界部分の形状の点で,両意匠の視覚的印象は大きく異なるものであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
さらに,差異点(ア)の頭部の形状についての差異は,意匠の上部という目立つ部位に関する差異であって,両意匠の視覚的印象に大きな変化を与える差異であり,また,差異点(エ)の尾部の形状についての差異及び差異点(オ)の襟部の背面形状についての差異も,看者に異なる印象を与える差異であるから,いずれの差異も両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そして,金色であって底部を除いて鏡面仕上げである本願意匠の表面の態様と,濃淡のある茶色であって,各部に鱗状の細かい凹凸形状が施されている引用意匠の表面の態様とを対比した場合に,両者の差異は,単に色彩の違いのみに止まらず,形状の違いとしても視覚的に顕著であるというべきであるから,仮に置物の分野において金色で鏡面仕上げの表面を有するものが一般的に見られるものであったとしても,差異点(カ)の表面の態様についての差異は,形態上の差異として看者の視覚的印象を異にするものであり,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
そうすると,(ア)ないし(カ)の差異点は,いずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,両意匠の差異点は共通点を凌ぐものであるということができる。

4.小括
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は一致するが,形態においては,共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,差異点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は共通点のそれを凌駕しており,意匠全体として見た場合,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。

第5 むすび
以上のとおり,本願意匠は,原査定の引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから,同法同条同項柱書の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-03-17 
出願番号 意願2012-13937(D2012-13937) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 橘 崇生
中田 博康
登録日 2014-04-25 
登録番号 意匠登録第1498664号(D1498664) 
代理人 中前 富士男 

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