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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201511339 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 E1
管理番号 1287482 
審判番号 不服2013-13124
総通号数 174 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-07-09 
確定日 2014-03-18 
意匠に係る物品 自動車おもちゃ 
事件の表示 意願2012- 20391「自動車おもちゃ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 1.本願意匠

本願は,平成24年(2012年)3月5日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成24年(2012年)8月27日付けの意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「自動車おもちゃ」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
なお,本願についてのパリ条約による優先権の主張は,第一国出願における意匠に係る物品が,「車両(英:Vehicles)」であって,本願の意匠に係る物品の「自動車おもちゃ」とは異なるため,認めることできない。

2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠

本願に対する原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって,具体的には,以下のとおりである。

本願意匠に係る「自動車おもちゃ」の属する物品分野において「乗用自動車」の形状及び模様を「自動車おもちゃ」に転用することは商習慣上ごく普通に行われているところ,本願の意匠は,本願出願前に公然知られた例示意匠(当審注,以下,「引用意匠」という。)の「乗用自動車」の形状及び模様を,ほとんどそのまま「自動車おもちゃ」に転用して表したにすぎないから,容易に創作することができたものと認められる。

引用意匠(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2008年 6月20日に受け入れたカースタイリング 2008年 7月31日4号 第20頁所載
「乗用自動車」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HA20005479号)

3.請求人の主張の要旨
(1)本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠と引用意匠とは,少なくとも,前後バンパー,フロントグリル(ラジエータグリル)エッジ,排気ノズル,ホイール及びヘッドランプにおける構成において差異が認められる。
[フロントフェイス]
自動車おもちゃ及び乗用自動車のフロントフェイスの形状を構成する重要な要素の一つである「ラジエータエッジ」に関して,引用意匠においては実質的に単なる四角形(逆台形状)を成しているに過ぎないが,これに対して,本願意匠では左右の上部隅が斜めにカットされており,その結果,ラジエータグリル全体の輪郭が六角形であることが容易に観察される。
更に,引用意匠のフロントフェイスにおいては,ラジエータグリルの下方に位置する横幅広の4つのスロットを有する特徴的な形状のスリットグリルが装着されているが,本願意匠の該当箇所は単に凹部を有する単純な形状のスリットグリルから構成されているにすぎない。
以上の構成態様及びヘッドランプの差異に基づき,本願意匠のフロントフェイスからは全体として丸みを感じる優雅で落ち着いた控えめな美感が生起されるのに対して,引用意匠のフロントフェイスからは全体として直線的でキレのある躍動的な美感が生起される。
[リアフェイス]
引用意匠のリアフェイスにおいて,リアバンパーの下部面には一定の幅で隆起した略台形状の輪郭が容易に認識される。更に,その略台形状に隆起した輪郭の底辺上に2つの排気ノズルが左右対称に位置している。このような極めて特徴的な形状を有する構成態様は引用意匠のリアフェイスにおいてその観察者の注意を強く引くものである。
これに対して本願意匠のリアフェイスのリアバンパーの下部面にはこのような特徴的な形状の隆起した輪郭はなく,更に,排気ノズルは一つであり,その構成態様は極めて一般的なものである。
以上の構成態様等の差異に基づき,本願意匠と引用意匠の夫々のリアフェイス全体から生起する美感は互いに異なるものである。

(2)美感の相違
従って,そもそも,本願意匠及び引用意匠に係る物品のフロントフェイス及びリアフェイスにおける上記の各構成態様における個々の差異は,単に,各部位を簡略化したり比率を変えたり構成変更したりする程度の微細な差異ではない。
又,仮にこのような差異が微細な差異であったとしても,フロントフェイス及びリアフェイス全体のまとまった印象としては,夫々,異なる美感を生起させる。更に,フロントフェイス及びリアフェイスは観察する者の注意を強く引く要部であるので,これらのおける美感の相違は,ホイール等の他の構成における差異とも相俟って,引いては,意匠全体の構成から看者の視覚を通じて生じる美感に,本願意匠及び引用意匠との間で大きな相違をもたらすものである。
このような引用意匠とは異なる美感を有する本願意匠は,以下の理由から引用意匠に基づき容易に創作できたものではない。

(3)本願意匠の創作非容易性
そもそも,意匠法第3条第2項の規定は,社会的に知られたモチーフを基準として,当業者の立場からみた意匠の着想の新しさないし独創性を判断すべきものであって,意匠法第3条第1項題3号の規定にように,本願意匠と引用意匠の美感の類否を事後的に判断するものではないと思量する。
意匠法第3条第2項の規定に関する審査基準等には,創作容易性が認められる一例として,今回の拒絶理由における場合のように,非類似の物品間で当業者にとって転用の商慣行というありふれた手法がある場合の事例である「おもちゃの形状を乗物の形状に模すること」,が挙げられている。
更に審査基準によれば,「転用」とは,意匠を創作する過程において,技術的又は経済的要因からやむなく行われる形状等の変更であって,当業者であれば誰でも加えるであろう程度にすぎない変形や,そうした変形がその意匠の属する分野において常態化している変形を加えたものである,旨,等に記載されている。
ここで,本願意匠の属する分野における通常に知識を有する者,即ち,本願意匠の創作者が引用意匠に基づいて自動車おもちゃの意匠を創作しようとした場合に,例えば,そのフロントバンパー,フロントグリルエッジ,リアバンパー,排気ノズル,車輪及びヘッドランプ等の各構成の具体的態様及びそれらの組み合わせに関しては多様な選択肢があったことは明らかである。
従って,このような各構成態様において様々な意匠を選択する余地があったのであるから,本願意匠と引用意匠の間に見られる上記の各構成態様における差異は,本願意匠を創作する過程において,技術的又は経済的要因からやむなく行われる形状等の変更であったり,当業者であれば誰でも加えるであろう程度にすぎない変形や,そうした変形がその意匠の属する分野において常態化している変形であろうはずがない。従って,本願意匠は引用意匠である「乗用自動車」の形状及び模様をほとんどそのまま「自動車おもちゃ」に転用して表したものではない。

4.当審の判断

請求人の主張を踏まえ,本願意匠が,当業者であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。

まず,乗用自動車の形態を非類似の物品である自動車おもちゃの形態に転用することについては,例を挙げるまでもなく商慣習上通常行われていることであるから,乗用自動車の形態がほとんどそのまま転用された自動車用おもちゃの意匠は,当業者であれば容易に創作することができたものと認められる。
なお,公然知られた形態に基づいて非類似物品の意匠を創作する転用に際しては,そのままの形態で意匠を創作した場合は当然として,技術的又は経済的要因から,当業者であれば加えるであろう程度にすぎない変形や,そうした変形がその意匠の属する分野において常態化している変形を加えて創作することも含むものである。

次に,本願意匠の自動車用おもちゃの形態が,引用意匠の公然知られた乗用自動車の形態に基づくものか否かを検討する。
ここで,両意匠の形態を比較すると,以下の相違点が認められる。
(ア)フロントグリル枠体部の態様について,本願意匠は,上辺左右端部を斜めに形成した,下方に向かって窄まる左右対称の略六角形状の枠体としているのに対して,引用意匠は,上辺が僅かに円弧状となった略倒立等脚台形状の枠体としている点,
(イ)左右フロントコンビネーションランプとその下方にある左右開口部と,フロントグリルとの間の態様について,本願意匠は,フロントバンパーの上側部分と下側部分において形態が異なり,その上側部分は,略三角形状の平面部とし,下側部分は,左右開口部に向かって傾斜した略縦長長方形状の平面部を形成しているのに対して,引用意匠は,フロントグリル上端から下端まで一体とした形態で,フロントコンビネーションランプ及び左右開口部に向かって傾斜した,上方に向かってやや広がる略縦長長方形状の平面部を形成している点,
(ウ)フロントグリル枠体下に配した中央扁平開口部の態様について,本願意匠は,略横長台形状で,下辺の位置を左右バンパー開口部下辺部に合わせて設け,その中央扁平開口部内に垂直縦板片を4つ配設しているのに対して,引用意匠は,フロントフェイス下端中央部分に,略台形状の切り欠きを設け,横長長方形状の開口部を4つ設けた横長長方形状のフレームを嵌め,その上方の略横長台形状の開口部に垂直縦板片を3つ配設している点,
(エ)左右開口部内部の態様について,本願意匠は,各開口部の下方部分に,開口部の左右にわたる横桟を1条設け,その上部外側部分にフォグランプ取付け板を配し,同取付け板に前面視円形状のフォグランプを1つ配設し,その取付け板内側部分を,2本の横桟で分割してスリットを3つ形成しているのに対して,引用意匠は,各開口部の中央部分に,左右にわたる二重線で現れる横桟を1条設け,その横桟の外側部分に前面視円形状のフォグランプを1つずつ配設している点,
(オ)リアバンパー下部の態様について,本願意匠は,リアバンパー下部全体を暗調子とし,リアバンパー下部中央部分を略蒲鉾状に切り欠き,後面視左端部分にマフラーのエンドパイプを1つ配したアンダーカバーを配設しているのに対して,引用意匠は,リアバンパー下部中央部分を略蒲鉾状に大きく切り欠き,後面視左右端部分にマフラーのエンドパイプを1つずつ配設した,上半分をメッシュとし,下半分を曲面の板体としたアンダーカバーを配設している点,が認められる。

これらの相違点が,当業者であれば加えるであろう程度にすぎない変形や,その意匠の属する分野において常態化している変形によるものか否かを判断すると,いずれの相違点についても,本願意匠の形態を創作するにあたり,引用意匠の形態に依拠するものではなく,新たな創作が加わっているものであると認められる。とりわけ相違点(イ)左右フロントコンビネーションランプとその下方にある左右開口部と,フロントグリルとの間の態様については,本願意匠の態様は,引用意匠の略縦長長方形状の1つの平面部とは全く異なる複雑な形態であるから,当業者における慣行の変形であるとは到底いえないものである。

したがって,本願意匠の態様は,引用意匠を前提として,転用されたものとはいえないから,本願意匠は,当業者であれば,容易に創作することができたということはできない。

5. むすび

以上のとおりであるから,本願については,原査定の拒絶の理由を検討しても,その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-02-17 
出願番号 意願2012-20391(D2012-20391) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (E1)
最終処分 成立 
前審関与審査官 富永 亘 
特許庁審判長 原田 雅美
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2014-05-09 
登録番号 意匠登録第1499258号(D1499258) 
代理人 阿部 正博 
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