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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D6
管理番号 1288626 
審判番号 不服2013-15364
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-08-08 
確定日 2014-05-07 
意匠に係る物品 浴室用収納棚 
事件の表示 意願2012- 9034「浴室用収納棚」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成24年(2012年)4月17日付けの意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「浴室用収納棚」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は,浴室用収納棚にかかるものであって,受け皿部とその周面を囲む枠部,そして壁取り付け金具から構成されたものです。
本願意匠が属する壁掛け棚の分野において,正面視,受け皿部の両端を立ち上げたもの,すなわち,水平に配された各線材の両端を屈曲して立ち上げたものは,例えば,下記公知意匠1,乃至,公知意匠2に見受けられるように,本願の出願前よりありふれた態様です。
本願意匠は,本願出願前に公然知られたものと認められる壁掛け棚の意匠(下記公知意匠3)の形状をほとんどそのまま用い,上述したありふれた態様に基づき,単に,その受け皿部の両端を立ち上げたに過ぎないので,当業者であれば,容易に創作できたものと認められます。

【公知意匠1】(別紙第2参照。)
特許庁総合情報館が1998年 7月17日に受け入れた
Inspirationen
第36頁所載
石けん入れの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD10019596号)

【公知意匠2】(別紙第3参照。)
特許庁特許情報課が2002年 4月18日に受け入れた
ドイツ意匠公報 2002年 2月25日
第753頁所載
石けん入れの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH14011759号)

【公知意匠3】(別紙第4参照。)
特許庁総合情報館が1993年 7月 5日に受け入れた
SEGNO
第8頁所載
壁掛け棚の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD05024223号)」

第3 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。
1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「浴室用収納棚」であり,本願意匠の形態は,次のとおりである。
基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(A)基本的構成態様について
平面視略角丸横長長方形状の枠(以下「枠部」という。)を有し,枠部の左側下端から右側下端にかけて,正面視略扁平倒コ字状の線材(以下「略扁平倒コ字状線材」という。)が複数配された皿部と,皿部背面側の左右寄りに壁取付金具(以下,単に「金具」という。)が設けられたものである。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
(B)枠部の態様について
枠部は,丸棒の線材から成り,背面から見て,左右端から枠部横幅の約1/5の位置で,それぞれ下方に直角に折れ曲がっており,略倒コ字状の下方の凹みが形成されている(以下,その凹みを「略倒コ字状凹み」という。)。
(C)金具について
左右の金具の形状は,同形同大であって,直径が大小二種類の短円柱を,中心を一致させて前後に合わせた形状であり,大きい短円柱が前側に,小さい短円柱が後側になるように設置されている(以下,それぞれ金具の「大円柱部」,「小円柱部」という。)。
(D)枠部と金具の接合の態様について
左右の金具は,背面から見て,枠部の直角に折れ曲がっている箇所の内側に小円柱部の周面が接するように配置されている。また,正面から見ると,金具は背面側枠部の前方に,枠部の直角に折れ曲がっている箇所を覆うように配されており,金具の上端の位置は,枠部の上端の位置とほぼ一致し,左側金具の右端及び右側金具の左端の位置は,略倒コ字状凹みの左右の垂直部分の内側の位置とほぼ一致している。
(E)略扁平倒コ字状線材の態様について
略扁平倒コ字状線材は,枠部の線材より径の小さい丸棒の線材から成り,同形同大の六本の略扁平倒コ字状線材が,前方から後方に平行に等間隔に並ぶように配されている。
(F)略倒コ字状凹みと略扁平倒コ字状線材の構成について
背面から見て,略倒コ字状凹みの水平部分の位置は,皿部底(略扁平倒コ字状線材の水平部分のこと)の位置よりも下方にあり,皿部の深さと,略倒コ字状凹みの縦の長さの比は,約3:5となっている。

2 創作非容易性の判断
この種物品において,(A)の基本的構成態様を有するものは,公知意匠1及び公知意匠2に見られるように,ごくありふれた態様であり,容易に創作することができたといえる。また,(E)のように,略扁平倒コ字状線材が平行視等間隔に並ぶように配される態様を持つものも,公知意匠2に見られるようにありふれた態様であり,容易に創作することができたといえる。
しかしながら,(B)の略倒コ字状凹みを有する枠部と,(C)の直角に折れ曲がる左右の位置に配された金具を持つ態様は,公知意匠1,公知意匠2,及び公知意匠3には見られない本願意匠独自の態様であること,及び(F)の略倒コ字状凹みと略扁平倒コ字状線材の構成についても本願意匠固有の創作が認められることから,本願意匠は,公然知られた形態に基づいて当業者が容易に創作することができたとはいえない。
なお,公知意匠3においては,金具と枠部の位置関係の一部につき,本願意匠の(D)の枠部と金具の位置関係と同様のものが認められる。具体的には,公知意匠3では,金具の上端の位置が枠部の上端の位置とほぼ一致し,左側金具の右端及び右側金具の左端の位置が枠部の内側の位置とほぼ一致しているという関係があり,この点に限り,本願意匠の(D)の枠部と金具の位置関係と同様である。しかし,公知意匠3の背面側枠部には,本願意匠に見られる略倒コ字状凹みは形成されておらず,金具周囲の枠部が逆U字状に上方に伸びる形状であることから,この形状に基づいて,(B)及び(C)の具体的態様を持つ本願意匠を当業者が容易に創作することができたとはいえない。

第4 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-04-23 
出願番号 意願2012-9034(D2012-9034) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 香苗 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
橘 崇生
登録日 2014-06-13 
登録番号 意匠登録第1502515号(D1502515) 
代理人 高橋 詔男 
代理人 志賀 正武 
代理人 高柴 忠夫 

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