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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1288634 
審判番号 不服2013-21127
総通号数 175 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-10-30 
確定日 2014-05-27 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2012- 18637「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品に表示される,物品の操作の用に供される画像の部分について意匠登録を受けようとする,2012年3月29日の大韓民国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成24年(2012年)8月3日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を,「携帯情報端末」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとするもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである。(以下,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願意匠部分」という。)(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由および引用意匠
原査定において,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとして,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年7月2日に受け入れた,「モノ マガジン」第29巻13号第27頁所載 携帯情報端末機(HTC Desire X06HT)の意匠(表示部に表示された画像中,上から4段目左から2番目の「カレンダー」と表示されたアイコン部分(以下引用意匠の本願意匠部分に相当する部分を「引用意匠部分」という。))である。(特許庁意匠課公知資料番号第HA22006342号)(別紙第2参照)
(引用意匠掲載雑誌は,正しくは「モノ マガジン」第29巻第13号と記載すべきであり,原審のモノ マガジン2010年7月2日13号第27頁所載との記載は,第29巻の代わりに同刊行物受入日を記載した誤記と認め,当審において,これを「モノ マガジン」第29巻第13号と訂正する。)

第3 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比
両意匠を対比すると,まず,意匠に係る物品については,両意匠は,ともに「携帯情報端末」に係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

両意匠の用途及び機能については,本願意匠が,「スケジュール管理用アプリケーションの起動機能を果たすために必要な表示を行う画像」で「使用者が,表示部に示される画像をタッチすると,スケジュール管理用アプリケーションが起動される」ものであり,引用意匠は,当該画像の下に「カレンダー」という文字が記載されていることから,この種物品の表示画面に表示される画像の,通常の使用方法・使用状態を勘案すると,この画像は,スケジュール管理等に関するアプリケーションを示す画像であり,タッチすることにより起動するものと推認できるから,両意匠の用途及び機能は,共通する。

本願意匠部分と引用意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)の位置,大きさ及び範囲については,本願意匠部分が,縦長長方形画面の左上隅に位置し,その横幅が画面横幅の4分の1強の正方形領域であり,引用意匠部分は,縦長長方形画面の左下方に位置し,その横幅が画面横幅の4分の1弱の正方形領域であり,両意匠部分の大きさ及び範囲は,ほぼ共通するものの,位置は相違する。

両意匠部分の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。
(1)共通点
まず,共通点として,
(A)操作画像の全体形状を,略隅丸正方形とし,その上方をやや暗調子の細幅帯状部(以下「上方細帯状部」という。),隅丸正方形の面積の半分以上を占める下方部位を明調子の太幅帯状部(以下「下方太帯状部」という。)とし,(B)隅丸正方形の上辺を跨ぐように,同形同大の略小縦長長方形状の模様(以下「略小縦長長方形模様」という。)を等間隔に数個配置した態様である点がある。
(なお,両意匠部分とも,下方太帯状部には数字が記載されているが,この数字は,専ら情報伝達のためにだけ用いられる文字であるから,意匠を構成するものではない。)

(2)相違点
一方相違点として,
(あ)隅丸正方形の具体的態様について,本願意匠部分は,全体を縦に三分割した態様で,上方細帯状部と下方太帯状部の下,下端部にも,極細幅の帯状部(以下「下端極細帯状部」という。)があって,その左右隅は下辺の隅丸と同様に隅丸であるのに対して,引用意匠部分は,下方太帯状部の右下隅に,二辺の長さを隅丸正方形の一辺の3分の1強とする略直角二等辺三角形の区画部(以下「右下隅略直角二等辺三角形部」という。)を設け,さらにその左上に,この略直角二等辺三角形部の斜辺を底辺とする略鈍角二等辺三角形の区画部(以下「右下隅略鈍角二等辺三角形部」という。)を,隣接して設けた態様である点,

(い)隅丸正方形内の各部の幅の比率及び明暗調子について,本願意匠部分は,全高の6割強を明調子の下方太帯状部が占め,全高の3割弱の上方細帯状部及び全高の1割弱の下端極細帯状部は中間調子であるのに対して,引用意匠部分は,全高の6割強を明調子の下方太帯状部が占め,全高の4割弱の上方細帯状部は中間調子で,右下隅略直角二等辺三角形部は右隅から斜辺に向かって次第に中間調子から暗調子となり,右下隅略鈍角二等辺三角形部は底辺部が中間調子で鈍角部に向かって次第に明調子となる点,

(う)略小縦長長方形模様の具体的態様について,本願意匠部分は,逆「T」字形状のものが6個あり,下方大部分は暗調子で上方が中間調子であるのに対して,引用意匠部分は,縦長長方形状のものが4個あり,それぞれ中間調子の中に長さの異なる暗調子の縦の細線が数本ずつ入っている点,

(え)略隅丸正方形画像の周囲について,本願意匠部分は,隅丸正方形画像のすぐ外側は,外形を正方形とする暗調子部であり,その外側を明調子部としており,内側の暗調子部には,その中間に,中間調子の正方形枠線を設けているのに対して,引用意匠部分は,隅丸正方形画像の外側は,単に暗調子のみである点,等がある。

2.両意匠部分の類否判断
これらの共通点と相違点が,両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を,両意匠部分全体として比較し,判断する。

共通点(A)は,全体の基本形状,基本構成に関する共通点であり,隅丸正方形の上方に,その下方部位より暗調子である帯状部を細く設けた態様は,看者に単純ですっきりした共通の印象を与えるものとなっている。また,共通点(B)は,上辺に跨がる位置に等間隔で数個の模様を配置したことで,両意匠部分共にリング状綴じ具を想起させ,共通点(A)と相俟って,共通点全体として,リングで綴じて一枚ずつ紙を捲る日捲りカレンダー様の態様として,看者に共通する印象を与えるところとなっている。
しかしながら,この種物品分野においては,引用意匠が公然知られる前より,共通点(A)及び同(B)の態様の操作画像が公然知られていて,上記基本的態様に基づき,種々様々な具体的態様を持つ画像も,本願出願前に既に見られるものであるから,共通点(A)及び同(B)が類否判断に及ぼす影響を,大きいと言うことはできず,共通点全体として,類否判断を支配していると言うこともできない。

一方,具体的態様に関する相違点である隅丸正方形の具体的態様についての相違点(あ)については,もともと目に付きやすい,看者の注意を惹く部位の相違であり,両意匠部分がともに,紙の重なりを想起させる態様ではあるものの,本願意匠部分は,紙の重なりを表現した下端極細帯状部が左右対称であるのに対して,引用意匠部分は,同様に紙の重なりを表現した右下隅略直角二等辺三角形部及び右下隅略鈍角二等辺三角形部は,隅丸正方形の紙の右下の片隅だけが捲れ上がった左右非対称の形態をなしており,そこに,隅丸正方形内の各部の幅の比率及び明暗調子についての相違点(い)が加わって,本願意匠部分は,静的な印象を与えるのに対し,引用意匠部分は,動的な印象を与えており,両意匠が看者に与える印象は,全く異なり,この相違点(あ)及び同(い)は,両意匠部分の類否判断に,非常に大きな影響を及ぼしている。
略小縦長長方形模様の具体的態様についての相違点(う)は,全体に占める面積が小さく,また,両意匠部分ともごく普通のリング状綴じ具及びそれを通す孔を摸した模様にすぎないものではあるが,視覚的には,本願意匠部分の逆「T」字状をなす,下方の横方向の凸片の幅が一定程度あり,しかも個数の差もあるため,相違点(う)は類否判断において一定程度の影響を及ぼしている。また,相違点(え)は,隅丸正方形画像の背景画面における相違であって,これ自体が類否判断に及ぼす影響を大きいと言うことはできないものの,本願意匠部分は,隅丸正方形画像に額縁が付いており,引用意匠部分には額縁が付いてないという程度の相違があり,相違点(う)及び同(え)は,相違点(あ)及び同(い)と相俟って,両意匠部分の相違をさらに強調するところとなっている。
そして,相違点(あ)ないし(え)が相俟って,相違点全体が生み出す視覚的効果は,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕しており,相違点全体が生む視覚的効果により,看者は,本願意匠部分からは静的な印象を,引用意匠部分からは動的な印象を受け,看者が受ける印象は異なっているから,相違点全体として,類否判断を支配していると言える。

以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両意匠の用途及び機能も共通している。また,両意匠部分の位置,大きさ及び範囲については,大きさ及び範囲はほぼ共通し,位置が異なっているが,両意匠部分の位置は,どちらもこの種物品においてごくありふれた位置であるから,位置の相違が類否判断に及ぼす影響はほとんどない。
しかしながら,両意匠部分の形態については,相違点が相まって生じる視覚的効果が,共通点全体が生む視覚的効果を凌駕するもので,類否判断を支配しており,全体として別異の印象を与えるものであるから,本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび
したがって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当せず,原査定の拒絶の理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-05-12 
出願番号 意願2012-18637(D2012-18637) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木村 智加 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
綿貫 浩一
登録日 2014-06-20 
登録番号 意匠登録第1502782号(D1502782) 
代理人 アイ・ピー・ディー国際特許業務法人 

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