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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B4
管理番号 1290586 
審判番号 不服2013-25329
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2013-12-24 
確定日 2014-07-29 
意匠に係る物品 小物入れ 
事件の表示 意願2012- 25384「小物入れ」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,2012年4月18日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成24年(2012年)10月18日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「小物入れ」とし,その形態を願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,特許庁意匠課が平成24年(2012年)2月17日に受け入れた,電気通信回線の種類:インターネット,掲載確認日(公知日):平成24年(2012年)2月13日,掲載者:クリスチャン ディオール クチュール,表題:Fiche produit,掲載ページのアドレス:http://www.dior.com/couture/fr_fr/product/view/homme/maroquinerie/portefeuilles/cuir-satine-noir-1-11.html/catId/2576/ に掲載された「財布」の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HJ23070634号)であって,その形態は,同インターネットに掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)


第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の対比

(1)意匠に係る物品について
本願意匠の意匠に係る物品は「小物入れ」であり,一方の引用意匠に係る物品は「財布」の意匠であって,表記は異なるものの,本願意匠は意匠に係る物品の説明によれば,カードや硬貨,紙幣等の小物を収容するものであり,財布として使用されるものといえるため,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両意匠の形態について
両意匠の形態を対比すると,その形態には,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。なお,引用意匠の形態については,拒絶理由通知に添付した公知資料とともに,申請人より平成25年12月24日付けで手続補足書として提出された,参考資料の【引用意匠2の平面図】及び【引用意匠2の開いた状態を示す図】(別紙第3参照)も参酌しつつ,共通点及び相違点を認定する。

(2-1)両意匠の共通点
両意匠は,正面視略横長長方形状からなる本体部と,上辺及び左右辺に一繋がりのファスナー部を設けた薄型略直方体で構成され,本体部には等間隔に横方向いっぱいに形成された,複数の平行線模様を設け,本体部とファスナー部とは本体部周縁に微細なステッチで縫い付けられ,また,ファスナー部を全開することで,蛇腹状に形成された内側ポケット部が表れ,内側ポケット部内に開口方向とは直交して,内側ポケット部の幅方向いっぱいの長さとなるファスナー付き収納部を備えた,基本的構成態様において共通している。

(2-2)両意匠の相違点
それに対して,次の具体的構成態様において,両意匠は相違している。

(a)本体部の模様について,本願意匠は,正面視において等間隔に8本の本体部に対して略半円状に隆起した平行線模様が設けられ,その太さは本体部縦方向との比率で,約1:23であるのに対して,引用意匠は,正面視において等間隔に9本の平行線模様が設けられ,その1本1本が極細二重線となっており,その太さは本体部縦方向との比率で,約1:70であり,本体部に対して隆起せず直接描くように表現されている点。

(b)本体部の表面処理について,本願意匠は平面図にみられるように,革製品独特の細かなしわ模様が,平行線模様を除く本体部全面に表れているのに対して,引用意匠はしわ模様等はなく,本体部全面が滑らかに仕上げられている点。

(c)ファスナー部の引き手の態様について,本願意匠は右側面図に表れるように,略細長長方形の引き手がスライダーに直接取り付けられているのに対して,引用意匠は,参考資料にみられるように,スライダーに取り付けられた略細長長方形の引き手の先端に略楕円形の穴を設け,その穴に更に略細長長方形の帯状の引き手を取り付けた,二つの部品からなる引き手を備えている点。

2.類否判断

以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
まず,共通点については,全体形状が略横長矩形状の本体部と,その周辺の三辺に設けられた一繋がりのファスナー部からなる薄型略直方体であること,次に,本体部とファスナー部とが微細なステッチで縫い付けられていること,そして,蛇腹状の内部ポケットにファスナー付き収納部を備えることは,この種の物品分野においては他にも見られるもので,両意匠のみに認められる格別の特徴とはいえず,この点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。また,本体部表面に複数の平行線模様を設けることも,両意匠にのみ共通する態様とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度に留まるものである。そして,共通点全体として両部分の意匠の類否判断に与える影響を考慮しても,両部分の意匠の類否判断を決定付けるに至るということはできない。
これに対して,相違点によって生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるものである。すなわち,相違点(a)の本体部の模様,相違点(b)の本体部の表面処理については,使用時に需要者が実際に触れ,注意を払う部分であり,この種物品において,このような相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
さらに,相違点(c)のファスナー部の引き手の態様についても,需要者に別異な印象を与えるものであり,その結果は両部分の類否判断に影響を与えるものといえる。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通し,両意匠の形態において,相違点が共通点を凌駕し,それが両意匠の意匠全体として需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しないと認められる。


第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,原査定の引用意匠をもって,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当すると言うことはできず,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-07-14 
出願番号 意願2012-25384(D2012-25384) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 前畑 さおり 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
綿貫 浩一
登録日 2014-08-08 
登録番号 意匠登録第1506734号(D1506734) 
代理人 河野 英仁 

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