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審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2012600053 審決 意匠

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審決分類 審判 判定   属さない(申立成立) C0
管理番号 1290591 
判定請求番号 判定2013-600032
総通号数 177 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2014-09-26 
種別 判定 
判定請求日 2013-10-01 
確定日 2014-07-25 
意匠に係る物品 小物収納ケース 
事件の表示 上記当事者間の登録第1101866号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号物件に示す「小物収納ケース」の意匠は、登録第1101866号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 判定請求人の請求の理由

1.判定請求の必要性
本件判定請求人(山田化学株式会社,以下「請求人」という。)は,本件判定請求に係るイ号意匠の小物収納ケース(商品名「TOUGH CASE」(品番W210F),甲2号証,イ号物件,別紙第2参照)を製造,販売している。
本件判定被請求人(明邦化学工業株式会社,以下「被請求人」という。)は,本件判定請求に係る登録意匠「小物収納ケース」(甲第1号証,以下「本件登録意匠」という。別紙第1参照)の意匠権者であり,平成25年6月21日付けの通知書において,請求人に対し,イ号意匠は本件登録意匠に類似するため,今後の請求人の対応によっては,然るべき法的措置を講じる所存である旨警告した。
これに対し,請求人は,平成25年7月19日,イ号意匠が本件登録意匠に類似しないと反論する旨の回答書を返送した。しかしながら,被請求人は,その請求人の意見に承服できないとの考えを示している。そこで,請求人は特許庁に対し判定を求める。

2.本件登録意匠の手続の経緯
出願 平成12年4月10日 (意願2000-9217号)
登録 平成12年12月22日(意匠登録第1101866号)

3.本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,意匠に係る物品を「小物収納ケース」とし,その形態の要旨を次のとおりとする。

(1)基本的構成態様
上部が開口する扁平直方体状の箱型からなる収納部と,収納部と平面視形状を略同じくする蓋と,蓋部材を収納部に係止する収納部の長手方向の長さより少し短い止め具と,止め具の反対側で,蓋を収納部に対し開閉自在に連結する一対のヒンジ部とを備えている。蓋及び収納部の手前側側面が,両端2個所から緩やかに隆起して止め具両端を挟み込む一対の隆起部を有している。全体として,直線と尖った角を多用し,シャープで冷たい印象を与える。
なお,以下の説明において,蓋側を上側,収納部側を下側,止め具側を手前側,ヒンジ部側を奥側とし,手前側から見た場合の左右を右側,左側とし,左右方向を横方向,手前側から奥側へ向かう方向を縦方向,上側から見た場合を平面視とする。

(2)具体的構成態様
上記隆起部は,平面視において略直角三角形をなしている。蓋の隆起部の手前側の面は,手前側ほど(止め具に近い側ほど)奥側に倒れるように傾斜しており,蓋の奥側の側面には側面視三角形状の庇が設けられているため,蓋は側面視で,概ね台形状を有している。また,蓋は,上面の手前側に複数の溝状ラインのある凸字模様を有する。
止め具は,正面視形状が角の鋭い長方形で,下半分に水平方向に延びる3本の溝状ラインを有し,垂直断面がくの字に折れ曲がった形状をなし,上側半分が蓋の手前側の面に合わせた傾斜を有する。また,止め具の水平断面は,直線状である。止め具は,蓋部の隆起部とは面一に,収納部の隆起部よりは手前側に出ており,側面視で止め具の下半分が見える。
左右一対の隆起部とその間の凹部は,蓋及び収納部正面の上端から下端まで達しているため,蓋上面及び収納部底面が隆起部まで面一となって,全体として概ね凹字形状をなしている。また,収納部の手前側下縁は,左右両側が三角形状に手前側へ突出し,中央が矩形状に奥側へ凹む折れ線形状を有している。
収納部及び蓋内部の空間は,止め具両端の隆起部の内側にまで連続しており,全体として平面視で略凹字形状をなし,収納部内部には,縦4本横2本の仕切りが設けられている。
収納部の手前側と奥側の内面には,仕切りを立てるための上下に延びる凸条が,複数設けられている。
収納部の隆起部の間の凹部には,止め具を係合する平面視略矩形の係合部が設けられており,収納部の外周面には,蓋を受け止めるための鍔部が,この係合部の両端に連続してヒンジ部を除いた全周に設けられている。収納部の上縁には,隆起部のところに正面視でV字に見える切欠きが有る。また,収納部の底部は,側面視で3つ山状に見える凹凸形状を有し,底面の4隅には,三角形の突起が設けられている。
各ヒンジ部は,収納部奥側の側壁外面の4枚の板状のリブ間に形成された水平方向に延びる丸棒状の軸に,蓋に設けられた2つの断面が略「し」の字形状の係止片を係止するよう構成されている。ヒンジ部と庇を合わせて平面視で略台形状に見える。
蓋及び収納部は無色透明で,止め具は有色かつ不透明である。

4.イ号意匠の説明

(1)基本的構成態様
上部が開口する扁平直方体状の箱型からなる収納部と,収納部と平面視形状を略同じくする蓋と,蓋部材を収納部に係止する収納部の長手方向の長さより少し短い止め具と,止め具の反対側で,蓋を収納部に対し開閉自在に連結する一対のヒンジ部とを備えている。蓋及び収納部の一側面が,両端2個所から緩やかに隆起して止め具両端を挟み込む一対の隆起部を有している。全体として,曲線が多用され丸みを帯びた形状を有しているため柔らかな暖かい印象を与える。

(2)具体的構成態様
上記隆起部の手前側の面は,平面視において円弧状をなしている。蓋の隆起部の手前側の面は隆起部の上面に垂直に設けられ,隆起部の上面は蓋全体の上面より一段低く,また,蓋の奥側の側面に設けられた庇は,蓋の下半分から突出する板状であるため,蓋部は側面視で略凸字形状を有する。また,蓋は上面の4隅にL字型の盛り上がり部を有する。
止め具は,正面視形状が,上側2つの角部より下側2つの角部の曲率半径の大きい角丸の長方形で,その上辺及び下辺は中央が膨らむ曲線からなり,中央下寄りに3つの円形模様を有する。止め具の垂直断面は,直線状であり,止め具の水平断面は,隆起部の手前側の曲面に合わせて僅かに中央が手前側に膨らむ曲線に形成されている。止め具は,蓋部及び収納部の隆起部の両方と面一に形成され,側面視では,隆起部に隠れて見えない。
左右一対の隆起部の上面が蓋本体の上面より低いため,蓋の上面においては,角丸長方形が目立って見える。また隆起部は,止め具の下端と略同じ高さまでしか設けられていないため,収納部の手前側下縁は,直線状である
収納部及び蓋内部の空間は,平面視で略角丸長方形状をなし,収納部内部には,横3本の仕切りを有する他,8枚の予備の仕切りが収納されている。収納部の四方の側壁の内面には,上下に延びる2本1組のレール状の凸条が,複数組設けられている。
収納部の隆起部の間の凹部には,止め具を係合する平面視略矩形の係合部が設けられており,収納部の外周面には,蓋を受け止めるための鍔部が,隆起部の外側の端部から連続して,ヒンジ部を除いた左右の両側壁及び奥側の側壁に設けられている。収納部の上縁は全周にわたり同じ高さである。また,収納部の底面は,平らで,角丸長方形であり,左右に細長いトラック形状の突起を有している。収納部の右側には,円形孔を有するフックが設けられている。
各ヒンジ部は,収納部奥側の側面の4枚の板状のリブ間に形成され水平方向に延びる丸棒状の軸に,蓋に設けられた2つの断面略「し」の字形状の係止片を係止するよう構成されている。4枚のリブのうち左右の外側の一枚が,収納部の底まで達するほど長く形成されており,蓋部後側の中央の庇の両端に設けられたリブとともに,ケースを奥側の面を下にして立てることができるよう構成されている。ヒンジ部と庇を合わせた外形が平面視で角丸の略台形状に見える。
蓋は半透明,収納部は赤色不透明,止め具は白色不透明である。

5.本件登録意匠とイ号意匠との比較説明

(1)両意匠の共通点
(A)両意匠の意匠に係る物品は,主に釣り用の小物を収納する「小物収納ケース」であり,一致している。
基本的構成態様において,
(B)上部が開口する扁平直方体状の箱型からなる収納部と,収納部と平面視形状を略同じくする蓋と,蓋部材を収納部に係止する収納部の長手方向の長さより少し短い止め具と,止め具の反対側で,蓋を収納部に対し開閉自在に連結する一対のヒンジ部とを備えている。
(C)蓋及び収納部の手前側側面が,両端2個所から緩やかに隆起して止め具両端を挟み込む一対の隆起部を有している。
具体的構成態様において,
(D)各ヒンジ部は,収納部奥側の側面から突出する4枚の板状のリブの間に設けられた水平方向に延びる丸棒状の軸に,蓋に設けられた2つの断面略「し」の字形状の係止片を係止するよう構成されている。
(E)ヒンジ部と庇を合わせて平面視で略台形状に見える。

(2)両意匠の差異点
(a)本件登録意匠は,上記隆起部が,平面視において略直角三角形をなし,蓋の隆起部の手前側の面が,手前側ほど(止め具に近い側ほど)奥側に倒れるように傾斜しているのに対し,イ号意匠では,隆起部の手前側の縁が平面視略円弧状をなし,隆起部の手前側の面は,全面にわたり隆起部の上面に垂直である。
(b)本件登録意匠では,蓋の上面は凹字形状であるのに対し,イ号意匠では,蓋上面は角丸長方形に見える。
(c)本件登録意匠では,蓋の奥側の側面に,蓋の上面から下方へ傾斜するよう後方へ突出する断面三角形状の庇が設けられているのに対し,イ号意匠では,庇が,蓋の厚みの下半分から突出する板状で,上面の断面が円弧状をなしている。
(d)本件登録意匠では,蓋の隆起部の手前側の傾斜面と,蓋の奥側の庇上面の傾斜とにより,蓋が側面視で台形状に見えるのに対し,イ号意匠では,隆起部及び庇が蓋上面と段差を有するため,蓋が側面視で凸字状に見える。
(e)本件登録意匠では,蓋の上面の手前側に6本の溝状ラインを有する凸字模様と,外周全体に枠状の盛り上がり部を備えるのに対し,イ号意匠は,このような模様は有さず,代わりに,蓋の4隅にL字型の盛り上がり模様を有する。
(f)本件登録意匠は,止め具が,正面視形状が角の鋭い長方形で,下半分に水平方向に延びる3本の溝状ラインを有するのに対し,イ号意匠では,止め具は上側2つの角部より下側2つの角部の曲率半径の大きい角丸四角形で,上下辺が中央の膨らんだ曲線で,3つの円形模様を備えている。
(g)本件登録意匠では,止め具の垂直断面がくの字に折れ曲がった形状をなし,上側半分が蓋の手前側の面に合わせた傾斜を有し,水平断面が,直線状であるのに対し,イ号意匠では,止め具の垂直断面は直線状で,水平断面は,僅かに中央が手前側に膨らむ曲面に形成されている。
(h)本件登録意匠では,止め具は,側面視で,下半分が見えるよう構成されているのに対し,イ号意匠では,側面視では止め具は見えない。
(i)本件登録意匠では,収納部の手前側下縁は,左右両側が三角形状に手前側へ突出し,中央が矩形状に奥側へ凹む折れ線形状を有するのに対し,イ号意匠では,収納部の手前側下縁は,直線状である。
(j)本件登録意匠では,収納部底面が凹字形状を有するのに対し,イ号意匠では角丸四角形である。
(k)本件登録意匠では,収納部底面4隅に,三角形状の突起を有するのに対し,イ号意匠では,細長いトラック形状の突起を有する。
(l)本件登録意匠では,底面が側面視で3つ山状に見える凹凸形状を有するのに対し,イ号意匠では,平らである。
(m)イ号意匠では,収納部の右側壁に円形孔を有するフックを有するのに対し,本件登録意匠では,かかるフックは有さない。
(n)本件登録意匠では,収納部及び蓋内部の空間が平面視で略凹字形状をなすのに対し,イ号意匠では角丸長方形状である。
(o)本件登録意匠では,収納部内部に縦4本,横2本の仕切りが設けられているのに対し,イ号意匠では,横3本の仕切りの間に縦全長用の仕切り5本と,縦の4分の3の長さの仕切り3本が横3本の仕切りの間に並べられている。
(p)本件登録意匠では,収納部側壁内面の仕切りを立てるための凸条は,側壁に対し平面視で垂直であり,各凸条が等間隔で並んでいるのに対し,イ号意匠では,凸条は2本が互いに先端側を近づけるよう平面視でハの字に形成され,各凸条は等間隔ではなく,ハの字を構成する2本の間隔が狭くなるよう並べられている。そして,本件登録意匠では左右の内壁には,凸条が設けられていないのに対し,イ号意匠では,四方の内壁に凸条が設けられている。
(q)本件登録意匠では,収納部の上縁が,隆起部先端側に向かうに連れ低くなり,正面視でV字の切欠きを形成しているのに対し,イ号意匠では,収納部上縁は全周同じ高さである。
(r)本件登録意匠では,ヒンジ部の4枚の板状のリブが同形状であるのに対し,イ号意匠では,4枚のリブのうち左右の外側の一枚が収納部底部にまで達する長さを有している。
(s)イ号意匠では,中央の庇の両端に板上のリブが設けられ,ヒンジ部の長いリブと相侯って,背面視形状が非常に煩雑な印象を与えるのに対し,本件登録意匠では,庇にこのようなリブは有さず,ヒンジ部のリブも全て短いため,背面視形状がすっきりした印象を与える。
(t)本件登録意匠は,止め具が不透明で,止め具以外はすべて透明であるのに対し,イ号意匠では,蓋が透明,収納部及び止め具は有色不透明である。

6.イ号意匠が本件登録意匠,及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明

(1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
参考資料1 意匠登録第1049305号公報
参考資料2 意匠登録第0952324号公報
参考資料3 意匠登録第1022002号公報
参考資料4 意匠登録第0941338号公報
参考資料5 米国特許Des.360015号公報
参考資料6 意匠登録第1030198号の類似1公報

(2)本件登録意匠の要部
本件登録意匠の基本的態様のうち,扁平直方体状の箱型からなる収納部と,収納部と平面視形状を略同じくする蓋を有する形態は,参考資料1に示すように,本件登録意匠の出願前から公知である。また,収納部の長手方向の長さより少し短い止め具を備える形態は,参考資料2乃至参考資料4に記載されており,止め具の反対側で蓋を収納部に対し開閉自在に連結する一対のヒンジ部を備える形態は,参考資料1及び参考資料5に記載されており,蓋の手前側側面が,両端2個所から緩やかに隆起して止め具両端を挟み込む一対の隆起部を有する形態は,参考資料2乃至参考資料4に記載されており,すべて本件登録意匠の出願間から公知の形態である。従って,本件登録意匠の基本的態様は,いずれも看者の注意を引くものではないため,本件登録意匠の要部は,具体的な構成態様に存在する。
なかでも,本件登録意匠では,止め具のみが有色で他の部分はすべて無色透明であることから,止め具が非常に目に付きやすく,また,止め具及びその周辺は,蓋を開閉する際に目に必ず目に付くことを考えると,止め具及びその周辺の具体的構成に要部が有るのは明らかである。
そして,止め具及びその周辺の具体的構成において,蓋の手前側の凸字模様や,止め具の折れ曲がり形状及び横線模様,蓋の隆起部の手前側の面の形態は,公知意匠には見られない独特な形状を有するため,これらが,本件登録意匠の要部である。
ここで,参考資料3及び参考資料4は弁当箱であるが,本件登録意匠に係る物品と同様の止め具を有する矩形の樹脂製容器であり,本件登録意匠の看者である一般需要者にとってもよく目にするものであることから,参考資料3及び参考資料4は,ありふれた意匠である。

(3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
以下,本件登録意匠とイ号意匠との共通点及び差異点を比較検討する。
(ア)共通点(A)について
両意匠の意匠に係る物品は,共に「小物収容ケース」であり,両意匠は物品が同一である。
(イ)共通点(B)及び共通点(C)について
共通点(B)及び共通点(C)は,上述したように,本件登録意匠の出願前からありふれた形態であるため,意匠の類否に与える影響は希薄である。
(ウ)共通点(D)について
共通点(D)は,参考資料5に示すように,本件登録意匠の出願前からありふれているため,意匠の類否に与える影響は希薄である。
(エ)差異点(a)について
隆起部の形状についてイ号意匠のような手前側の縁が平面視円弧状をなす形態は,参考資料2や参考資料3に示すように,本件登録意匠の出願前から公知の形態であるのに対し本件登録意匠の隆起部は,他にあまり例のない独特な形状を有しており,さらに,内側に透けて見える収納部上端のV字の切欠きと相侯って,極めて独創的な印象を醸し出しており,当該部分が意匠の要部であることを考えると,差異点(a)が,両意匠の類否に極めて大きな影響を与えることは明らかである。
(オ)差異点(b)について
イ号意匠の蓋上面が参考資料4に示すように,ありふれた角丸四角形であるのに対し,本件登録意匠の蓋上面は,両端の尖った独特な凹字形状であるため,本件登録意匠の特徴的な態様をなすものであり,蓋上面が目に付きやすい部分であることを考えると,両意匠の類否に大きな影響を与えるものである。
(カ)差異点(c)及び差異点(d)について
本件登録意匠では,蓋の奥側の側面に,蓋の上面から後方へ傾斜するように突出する断面三角形状の庇が設けられているのに対し,イ号意匠では,庇が,蓋の下半分の厚みに形成され,上面の断面が円弧状をなしている。ケースの奥側は,蓋を開閉する際には目に付きにくいものの,ケースを持ち運ぶ場合等には,頻繁に目に付く部分であると考えられる。そして,両意匠の庇の形状は,手前側の隆起部の形状と相侯って,側面視形状を,それぞれ台形状,凸字形状に形成するが,この側面視形状は,斜視形状にも表れるものであるため,差異点(c)及び差異点(d)は,両意匠の類否に一定の影響を与えるものである。
(キ)差異点(e)について
本件登録意匠の蓋上面手前側の凸字模様は他に例のない独特の形状を有しており,イ号意匠の蓋の4隅にL字型の盛り上がり模様を有する形態はありふれたものであるため,両意匠の違いは明確で,当該部分が本件登録意匠の要部であることを考えると,両意匠の類否判断に大きな影響を与えることは明らかである。
(ク)差異点(f)及び差異点(g)について
両意匠の止め具は,差異点(f)及び差異点(g)に示すように,具体的な構成において,全く異なる形態を有し,また,両意匠ともに他にあまり見られない独特の形態を有する。当該部分が本件登録意匠の要部であることを考えると,差異点(f)及び差異点(g)が両意匠の類否判断に大きな影響を与えることは明らかである。
(ケ)差異点(h)について
差異点(h)は,止め具と収納部との位置関係の差を示しており,斜め上方から見た場合に,本件登録意匠では止め具の下半分か収納部より手前へ出ているように見えるのに対し,イ号意匠では止め具が,隆起部の間に凹部に完全に収まっている印象を与える。止め具周辺はよく目に付く部分であるため,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(コ)差異点(i)について
右利きの人が止め具を外して蓋を開けようとする際,左手の親指を収納部手前側の下縁にかけ,右手の親指を止め具の下縁にかけると考えられるため,収納具の下縁部分け非常に目に付きやすい部分である。従って,収納部手前側の下縁が折れ線状であるか直線状であるかは,両意匠の類否に大きな影響を与えることが明らかである。
(サ)差異点(j)について
収納部底面の凹字形状は,蓋上面の凹字形状と同様,先の尖った独特の形状を有するのに対し,イ号意匠の収納部の底面は,ありふれた角丸四角形である。また,三山状の凸部間の谷間のラインと相侯って,両意匠の底面は両意匠の美感に大きく影響を与えるものである。
(シ)差異点(k)
本件登録意匠の収納部底面の三角形状の突起は,本件登録意匠全体のシャープでクールな印象を形成するのに一定の貢献をしており,イ号意匠の,両端の丸い細長のトラック形状の突起は,イ号意匠の柔らかくて暖かい印象の形成に一定の貢献をしていると考えられる。収納部の底部も,持ち運ぶ場合等には,蓋の上面と同じ頻度で目に付く部分であることから,差異点(k)は,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(ス)差異点(1)
底面に本件登録意匠のような凹凸を有する形状もイ号意匠のような凹凸を有さない形状も,本件登録意匠の出願前から公知の意匠であるが,底面の形状の違いは,底面視,両側面視の他,斜視状態でも目に入るため,目に付きやすい部分といえ,差異点(l)が両意匠の類否判断に一定の影響を与えることは明らかである。
(セ)差異点(m)
円形孔を有するフックは,川釣りで川へ入るときに当該ケースをジャケットにぶら下げるとき等に使用するもので,目に付きやすい部分であるため,フックの有無は,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(ソ)差異点(n)
本件登録意匠の収納部及び蓋内部の空間の凹字形状は,蓋の上面や収納部底面と同様独特な形状をなすのに対し,イ号意匠ではありふれた角丸長方形状である。ケースの内部は小物を出し入れする際に必ず目にする部分であるから,両意匠の類否判断に大きな影響を与えることは明白である。
(タ)差異点(o)
本件登録意匠のように,収納部に縦横の仕切りを配する形態は,本件登録意匠の出願前から公知ではあるけれども,イ号意匠のように雑多に仕切りを配する形態は独特のものであり,また,両意匠とも,仕切りの様子は透明な蓋を通して視認でき,どのような小物を収納したかを蓋を通して確認したり,実際に蓋を開けて取り出したりする際や,仕切りの位置を変える際等に必ず目にすることを考え合わせると,差異点(o)の両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(チ)差異点(p)
本件登録意匠のような収納部内壁に垂直な凸条は,参考資料6に示すように,本件登録意匠の出願前から公知であるのに対し,イ号意匠の凸条は,一対で平面視ハの字をなす独特の形状を有するものである。そして,当該凸条は,蓋を閉じても開けても視認でき,仕切りを取付ける際には必ず目にする部分であり,本件登録意匠の凸条が,無機的な固い印象を与えるのに対し,イ号意匠の凸条は,有機的な柔らかい印象を与えるから,差異点(p)は,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(ツ)差異点(q)
本件登録意匠の収納部上縁のV字の切欠きは,独特の形状を有するものであり,収納部の隆起部の平面視形状や,蓋を閉じた際に隆起部の形状と協働して形成される形態は,極めて独創的であるのに対し,イ号意匠の収納部上縁は,極めて平凡なものである。そして,当該部分は非常に目に付きやすい本件登録意匠の要部であるため,差異点(q)は,両意匠の類否判断に非常に大きな影響を与えるものである。
(テ)差異点(r)について
本件登録意匠のヒンジ部は,参考資料5に示すように,本件登録意匠の出願前から公知であるのに対し,イ号意匠では,外側の一枚が収納部底部にまで達するほど長く,独特の形状を有するとともに,側面視,背面視,底面視のいずれにおいても視認でき,背面側を下にしてケースを立てる場合には当該リブに目をやる可能性が高いため,両意匠の類否に一定の影響を与えるものである。
(ト)差異点(s)について
イ号意匠の中央の庇両端のリブは,平面視,側面視,背面視の何れにおいても視認できるため,差異点(s)は,両意匠の類否判断に一定の影響を与えるものである。
(ナ)差異点(t)について
本件登録意匠では,止め具以外がすべて透明なため,蓋以外はすべて有色不透明なイ号意匠とは異なり,底面視で収納部内部の仕切りが視認でき,また,正面視や背面視で側壁内部の凸条を視認できる。従って,差異点(t)は両意匠の類否判断に一定の影響を与える。
(ニ)小括
以上,これらの共通点と差異点を総合すれば,共通点に係る態様が両意匠にのみ共通する特徴とは言えないのに対し,差異点(a),(q)は,両意匠の美感を非常に大きく異ならせるものであり,差異点(b),(e),(f),(g),(i),(j),(n)も,類否判断に大きな影響を及ぼすと考えられ,さらに他の11か所の差異点もそれぞれ両意匠の類否判断に一定の影響を及ぼすと考えられる。以上の差異点から,本件登録意匠は,シャープで冷たくて独創的な印象を与えるのに対し,イ号意匠は,柔らかくて暖かくて凡庸な印象を与えるものであり,両意匠は,美感が大きく異なるため非類似であることは明らかである。

7.むすび
従って,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので,請求の趣旨通りの判定を求める。

8.証拠方法

(1)甲第1号証 本件登録意匠(意匠登録第1101866号)公報
(2)甲第2号証 イ号物件

第2 被請求人の答弁
特許庁より,被請求人に判定請求書を送付し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,被請求人からの応答はなかった。

第3 当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成12年(2000年)4月10日に意匠登録出願(意願2000-9217号)され,平成12年(2000年)12月22日に登録の設定(意匠登録第1101866号)がされたものであって,願書及び願書に添付された写真の記載によれば,意匠に係る物品を「小物収納ケース」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書及び願書に添付した写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

具体的には,任意の区画に変更可能な可動式の仕切り板を内部に設けた収納部に,平面視の形状が収納部と相似するやや大きな蓋部を冠着し,背面側左右端部付近に2つのヒンジ部を設けて収納部と蓋部を開閉可能に連結し,蓋部正面側中央部分に止め具部を設けてロックを可能とした小物収納ケースであって,止め具部以外の収納部及び蓋部は透明である。
そして,収納部の態様は,その背面側の左右角部を丸面状に形成し,その正面側の左右端部に,平面視が上底の長い直角台形状の突出部を内側が直角となるような配置で形成し,収納部全体を上部が開口した平面視略十角形状の筐体とし,この左右突出部の間に左右に隙間を設けて,断面視倒立L字状の係止部を水平方向に一つ形成し,この係止部とヒンジ部を除いた側面部外周の上方約1/4の位置に,蓋部底面部を受け止めるための鍔部を形成し,底面部には,側面視略逆V字状の切り欠き筋模様を長手方向に2条形成し,底面部の四隅部付近には,底面視略直角三角形状の突起部を形成した態様としたものであって,蓋部の態様は,蓋部全体を下部が開口した平面視略十角形状の蓋体とし,その正面側の左右端部に,上面が正面に向かって下に傾斜した平面視が収納部と同様の形状の突出部を同様の配置で形成し,この左右突出部の間に止め具部を配設し,側面部外周部分の中間部分に僅かな段差を設け,その下半分をやや肉厚に形成し,左右ヒンジ部の外側部分に平面視略直角三角形状のリブを設け,左右ヒンジ部の間に平面視略横長長方形状のリブを水平方向に一つ形成し,上面に正面側中央部分の形状を略台形状とした平面視略倒立凹状の凹部を形成し,当該略台形状の表面部分に6条の凸状筋模様を形成した態様としたものであって,ヒンジ部の態様は,収納部背面側の左右端部付近に1つずつ配設し,垂直な4枚の板状リブの間に横設した軸部に,蓋部背面側に設けられた2つの係止片を回転可能に嵌着した態様としたものであって,止め具部の態様は,蓋部の縦幅より大きな正面視横長矩形状の板体とし,正面側の下半分部分に水平方向に3本の横溝を形成し,正面側の上半分部分が蓋の突出部の正面側の傾斜と一致するよう断面視略「く」の字に折曲して形成した態様としたものであって,蓋部の左右突出部の間に揺動可能に軸着し,背面側下方部に形成された2つの板状爪部が,収納部の係止部の下辺部に当接することにより,蓋部の開閉をロックすることができるようにしたものである。
また,収納部及び蓋部の内部の態様は,左右突出部までもが収納可能な空間となっており,収納部の内部に,横方向に長い板状の仕切り板を2枚設け,その両側面部に上下に延びる凸条部を27条形成し,収納部の内壁にも同様の凸条部を,正面側の側面部内側に23条,背面側の側面部内側に27条形成し,それらの間に12枚の短い仕切り板を嵌入した態様としたものである。

2.イ号意匠
本件判定請求の対象であるイ号意匠は,判定請求書と同時に提出された甲第2号証のイ号物件により示されたものであって,意匠に係る物品は「小物収納ケース」であると認められ,その形態を,イ号物件により現されたとおりとしたものである。(別紙第2参照。写真版は当審にて作成。)

具体的には,任意の区画に変更可能な可動式の仕切り板を内部に設けた収納部に,平面視の形状が収納部と相似するやや大きな蓋部を冠着し,背面側左右端部付近に2つのヒンジ部を設けて収納部と蓋部を開閉可能に連結し,蓋部正面側中央部分に止め具部を設けてロックを可能とした小物収納ケースであって,蓋部のみが透明であり,収納部は不透明な赤色であり,止め具部は不透明な白色のものである。
そして,収納部の態様は,その四隅部を丸面状に形成した上部が開口した略直方体の筐体とし,その正面側の左右端部に,右端部において平面視略レの字状(左端部において平面視略逆レの字状)で,収納部の約1/2.5の高さの突出部を形成し,この左右突出部の間に左右に隙間を設け,断面視倒立L字状の係止部を水平方向に一つ形成し,この左右突出部,係止部及びヒンジ部を除いた側面部外周の上方約1/5の位置に蓋部底面部を受け止めるための鍔部を形成し,底面部の左右縁部付近に,凸条部分の形状が底面視略長円形状の突起部を1つずつ形成した態様としたものであって,蓋部の態様は,下部が開口した略直方体の蓋体とし,その正面側の下半分部分の左右端部に,平面視が収納部と同様の形状の突出部を形成し,この左右突出部の間に止め具部を配設し,左右ヒンジ部の外側部分に右端部において平面視略倒立レの字状(左端部において平面視略倒立逆レの字状)のリブを設け,左右ヒンジ部の間に,両端部に垂直な板体を配した平面視略横長長方形状で断面視略円弧状のリブを水平方向に一つ形成し,上面四隅には表面が梨地状の平面視略「『(鉤括弧)」状の突起部を蓋の角部に合わせて配設した態様としたものであって,ヒンジ部の態様は,収納部背面側の左右端部付近に1つずつ配設し,外側のみ他のリブより約3倍の大きさとした垂直な4枚の板状リブの間に横設した軸部に,蓋部背面側に設けられた断面視略J字状の係止片を2つ回転可能に巻着した態様としたものであって,止め具部の態様は,蓋部の縦幅より大きく,正面視が略横長矩形状とした板体の下角部を隅丸とし,下辺を略弓形状に形成し,正面側中央部下方部分に円状の窪み部を等間隔に3つ形成した態様としたものであって,蓋部の左右突出部の間に揺動可能に軸着し,止め具部の背面側下方部に形成された2つの板状爪部が係止部の下辺部に当接することにより,蓋部の開閉をロックすることができるようにしたものである。
また,収納部及び蓋部の内部の態様は,平面視略隅丸長方形状の直方体であって,収納部内部には,隙間部を等間隔に5つ形成した横長板状の仕切り板を3枚配設し,隙間部を3つ形成した仕切り板を5枚,隙間部を狭い間隔で3つ形成した仕切り板を3枚内部に収納しており,収納部の四方の側壁の内面には,上下に延びる2本1組の平面視ハの字状の凸条部が,長手方向に9組,短手方向に5組形成されている。

3.本件登録意匠とイ号意匠との対比

(1)意匠に係る物品
本件登録意匠とイ号意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,ともに,「小物収納ケース」と認められるものであるから,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

(2)両意匠の形態
両意匠の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
なお,対比のため,イ号意匠についても本件登録意匠の写真に合わせることとし,両意匠の蓋側上方から見た写真の表示を「平面図」,収納部側下方から見た写真の表示を「底面図」,止め具側から見た写真の表示を「正面図」,ヒンジ部側から見た写真の表示を「背面図」とし,その他の写真の表示も,これらに準じて表されているものとする。

まず,共通点として,
(A)全体は,上部が開口した略直方体の収納部に蓋部を冠着し,蓋部の正面側中央部分に止め具部を軸着し,収納部の正面側中央部分に係止部を設け,背面側左右端部付近に2つのヒンジ部を配設した構成の,正面側左右端部に突出部のある筐体状の小物収納ケースである点,
(B)収納部は,背面側の左右角部を丸面状に形成し,正面側の左右端部に止め具側の辺が直角に突出し,左右端部に向かって突出部が漸次減少する形状の突出部を形成し,左右側面部及び背面側のヒンジ部を除いた部分に,蓋部底面部を受け止めるための鍔部を形成し,収納部内部に任意の区画に変更可能な可動式の仕切り板を設けている点,
(C)蓋部は,その平面視形状を収納部よりやや大きな相似する形状とし,正面側の左右端部に,平面視形状が収納部と同じ形状の突出部を形成し,背面側の左右端部にヒンジ部側の辺が直角に突出し,左右端部に向かって突出部が漸次減少する形状の突出部を形成し,左右ヒンジ部間に水平なリブを1条形成している点,
(D)止め具部は,正面視における横幅をケース横幅の約2/3とし,縦幅をケース縦幅の約1/2とし,背面側下方部に2つの板状爪部を形成し,係止部の下辺部に当接することにより,蓋部の開閉をロックすることができるようにしている点,
(E)係止部は,断面視倒立L字状とし,収納部の左右突出部の間に,左右に隙間を設けて一つ形成している点,
(F)ヒンジ部は,収納部背面側の左右端部付近に配設された4枚の板状の垂直リブの間に軸部を横設し,その軸部に蓋部背面側に設けられた2つの係止片を回転可能に嵌着している点,
(G)止め具部以外の蓋部が,透明である点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)収納部の突出部の態様について,本件登録意匠は,正面側の左右端部に,平面視が上底の長い直角台形状で,収納部と同じ高さの突出部を,内側が直角となるような配置で形成し,収納部全体を上部が開口した平面視略十角形状の筐体とし,その底面部に側面視略逆V字状の切り欠き筋模様を長手方向に2条形成し,底面部の四隅部付近には,底面視略直角三角形状の突起部を形成しているのに対して,イ号意匠は,正面側の左右端部に,右端部において平面視略レの字状(左端部において平面視略逆レの字状)で,収納部の約1/2.5の高さの突出部を,その上面が鍔部上面と同じ高さになるよう形成し,その底面部の左右縁部付近に,凸条部分の形状が底面視略長円形状の突起部を1つずつ形成している点,
(イ)収納部の内部の態様について,本件登録意匠は,収納部は平面視略隅丸長方形状の筐体及び正面側に形成された左右突出部の部分であり,この収納部の内壁に,上下に延びる凸条部を,正面側の側面部内側に23条,背面側の側面部内側に27条形成し,両側面部に凸条部を27条形成した横長の板状の仕切り板を2枚配設し,それらの間に12枚の短い仕切り板を嵌入した態様としているのに対して,イ号意匠は,収納部は平面視略隅丸長方形状の筐体であって,この収納部の四方の内壁に,上下に延びる2本1組の平面視ハの字状の凸条部を長手方向に9組,短手方向に5組形成し,隙間部を等間隔に5つ形成した横長板状の仕切り板を3枚配設し,隙間部を3つ形成した仕切り板を5枚,隙間部を狭い間隔で3つ形成した仕切り板を3枚内部に収納している点,
(ウ)蓋部の態様について,本件登録意匠は,正面側の左右端部に,上面が正面に向かって下に傾斜した平面視が収納部と同様の形状の突出部を同様の配置で形成し,背面側の左右端部に,平面視が上底の短い直角台形状で,蓋部の約1/2の高さの突出部を形成した,蓋部全体を下部が開口した平面視略十角形状の蓋体とし,その上面に,正面側縁部の中央部分を略台形状に残して平面視略倒立凹状の浅い凹部を形成し,当該略台形状の表面部分に6条の凸状筋模様を形成し,その側面部の中間部分に僅かな段差を設け,その下半分をやや肉厚に形成しているのに対して,イ号意匠は,正面側の下半分部分の左右端部に,平面視が収納部と同様の形状の突出部を同様の配置で形成し,背面側の左右端部に,右端部において平面視略倒立レの字状(左端部において平面視略倒立逆レの字状)で,収納部の約1/2の高さの突出部を形成した,下部が開口した略直方体の蓋体とし,その上面四隅には表面が梨地状の平面視略「『(鉤括弧)」状の突起部を蓋の角部に合わせて配設している点,
(エ)止め具部の態様について,本件登録意匠は,上半分部分が蓋の突出部の正面側の傾斜と一致するように,断面視略「く」の字に折曲して形成した正面視略横長長方形状の板体とし,その正面下半分部分に水平方向に3本の横溝を形成しているのに対して,イ号意匠は,下辺を略弓形状とし,下側左右角部を隅丸とした,正面視略横長長方形状の板体とし,その正面中央部下方部分に円形状の窪み部を等間隔に3つ形成している点,
(オ)鍔部の態様について,本件登録意匠は,係止部とヒンジ部を除いた収納部側面部外周部分の上から約1/4の位置に形成し,正面側左右突出部の鍔部上部の垂直面部分を正面に向かって斜め下に切り欠いているのに対して,イ号意匠は,収納部の左右突出部,係止部及びヒンジ部を除いた収納部側面部外周部分の上から約1/5の位置に形成している点,
(カ)ヒンジ部を構成する板状の垂直リブの態様について,本件登録意匠は,全て同じ形状の垂直リブ4枚でヒンジ部を構成しているのに対して,イ号意匠は,最も外側の垂直リブを他のリブの約3倍の縦幅とし,収納部の底面まで達する長さとしている点,
が認められる。

4.両意匠の類否判断
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。

まず,共通点(A)の全体の態様については,小物収納ケースの意匠の骨格的な構成態様にあたるものであるが,本件登録意匠の出願前に既に見られる態様であるから,この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。
次に,共通点(B)の収納部の態様及び共通点(C)の蓋部の態様について,正面側の左右端部に,内側の辺が直角に突出し,左右端部に向かって突出部が漸次減少する形状の突出部を形成している点は,本件登録意匠の出願前には見られない特徴ではあるが,正面側の左右端部を止め具部より突出して形成した態様のものが,既に多数存在していることから,この種物品においては,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的である。
また,共通点(D)ないし(G)の各部の態様は,両意匠のほかにも多数見受けられ,小物収納ケースの各部の態様としてはありふれたものであって,本件登録意匠とイ号意匠のみがもつ共通点とは言えないものであるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は軽微なものにとどまるものである。
そして,上記の共通点を総合しても,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対し,相違点(ア)収納部の突出部の態様,相違点(イ)収納部の内部の態様,及び,相違点(ウ)蓋部の態様については,この種物品分野において,収納部内部の態様は,特に注目する部分であるから,平面視略隅丸長方形状の筐体だけではなく,正面側に形成された左右突出部の部分までもが収納部の内部とした本件登録意匠の態様は,極普通の平面視略隅丸長方形状の筐体が収納部であるイ号意匠のものとは,異なる印象を与えるものであり,この点のみによっても両意匠の類否判断を左右する程のものである。その上,収納部内壁及び仕切り板に施された嵌合のための凸条部の形状も全く異なるものであるから,この相違点が類否判断に与える影響を加えると,これら相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は非常に大きい。
次に,相違点(エ)止め具部の態様については,該部位は使用時の蓋部開閉時において手に取って動かすところであって特に目に付く部位であるから,下辺を直線状とし,断面視略「く」の字に折曲した本件登録意匠の態様は,下辺をなだらかな略弓形状とし,下側左右角部を隅丸としたフラットなイ号意匠のものとは,全く別異な印象を与えるものであるから,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
また,相違点(オ)鍔部の態様については,鍔部自体の態様は僅かな程度の差であるが,鍔部上部の垂直面の態様においては,平面視略十角形状の枠体とし,正面側左右突出部の垂直面部分のみ正面に向かって斜め下に切り欠いている本件登録意匠の態様は,平面視略隅丸長方形状の枠体としたイ号意匠のものとは,異なる印象を与えるものであるから,この相違点(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
さらに,相違点(カ)ヒンジ部を構成する板状の垂直リブの態様については,イ号意匠は,縦長の垂直リブがあることで,ヒンジ部を下にして立てることができるため,該部位は背面視において目立つものと認められ,縦長の垂直リブの有無により看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きい。
そして,これらの相違点(ア)ないし(カ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものである。

5.小括
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については一致しているが,両意匠の形態については,各相違点を総合してとらえると,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,全体として別異の印象を与えるものであるから,本件登録意匠とイ号意匠とは類似しないものと認められる。

第4 結び

以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2014-07-17 
出願番号 意願2000-9217(D2000-9217) 
審決分類 D 1 2・ 113- ZA (C0)
最終処分 成立 
前審関与審査官 斉藤 孝恵 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2000-12-22 
登録番号 意匠登録第1101866号(D1101866) 
代理人 岡田 充浩 
代理人 杉本 勝徳 
代理人 辻 忠行 
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