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審決分類 審判 判定  同一・類似 属さない(申立成立) C3
管理番号 1291589 
判定請求番号 判定2013-600018
総通号数 178 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠判定公報 
発行日 2014-10-31 
種別 判定 
判定請求日 2013-05-30 
確定日 2014-09-02 
意匠に係る物品 洗濯機用台座 
事件の表示 上記当事者間の登録第1417822号の判定請求事件について,次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及び説明書に示す「洗濯機用台座」の意匠は,登録第1417822号意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。
理由 第1 請求の趣旨及び理由の要点
1 請求の趣旨
本件判定請求人(以下「請求人」という。)は,結論同旨の判定を求めると申し立て,その理由として,要旨以下のとおりの主張をした。

2 判定請求の必要性
請求人は,本件判定請求に係る意匠(以下「イ号意匠」という。)の洗濯機用台座(甲第1号証,以下「イ号物品」という。)の販売をしている。
被請求人は,本件判定請求に係る意匠登録第1417822号「洗濯機用台座」(甲第2号証,以下「本件登録意匠」という。)の意匠権者である。
請求人は,本件登録意匠の意匠権者である被請求人から,イ号意匠が本件登録意匠の意匠権を侵害するものとして,平成24年12月7日付けの警告状が送付された。
その後,書面により交渉が行われたが,請求人及び被請求人の意見の合意までは至っておらず,被請求人は,尚も「イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属する」旨主張するため,請求人は,意匠権の効力の範囲について専門的知識を持って中立的立場から判断される特許庁による判定を求める。

3 本件登録意匠とイ号意匠(以下「両意匠」という。)との比較説明
(1)両意匠の共通点
ア 両意匠は,意匠に係る物品が「洗濯機用台座」で一致している。
イ 基本的構成態様において,全体が載置部と支持体からなり,載置部が変形筒体に形成されている。
ウ 具体的な構成態様において,環状突縁部が正面側外周部には形成され,水抜き用切り欠き部が環状突縁部の短寸法側の対角に形成されている。
(2)両意匠の差異点
ア 基本的構成態様のうち,載置部が,本件登録意匠は正面視略五角形の変形筒体であるのに対し,イ号意匠は正面視略方形の変形筒体である。
より具体的な構成態様としては,本件登録意匠が四角形の外周面における一方の対角の一端部を中央側に,隅切り状となるまで,長尺側の対角寸法の約18%程中央側に後退させた正面視略五角形の変形筒体であるのに対し,イ号意匠は四角形の外周面における一方の対角の一端部を,大きなR形状となるよう,長尺側の対角寸法の約8%程中央側に後退させた正面視略方形の変形筒体である。
イ 基本的構成態様のうち,支持体が,本件登録意匠は複数本の円柱状の支持体群が形成されているのに対し,イ号意匠は格子状の支持体が形成されている。
より具体的な構成態様としては,本件登録意匠は撓み変形可能な22本の円柱状の支持柱群が水平方向に分散し各々独立して形成されているのに対し,イ号意匠は格子状の支持体が形成されている。

4 イ号意匠が本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない理由の説明
(1)本件登録意匠に関する先行周辺意匠
公知資料1 ウェブサイトからの抜粋(甲第3号証の1)
名称 洗濯機用かさ上げ台
新生産業株式会社 平成21年5月29日発行
URL http://www.synsay.co.jp/kaihatsu/2009/05/post_8.php
公知資料2 ウェブサイトからの抜粋(甲第3号証の2)
名称 洗濯機用かさ上げ台「マルチメゾン」
新生産業株式会社 平成21年7月16日発行
URL http://www.synsay.co.jp/kaihatsu/2009/07/post_12.php
公知資料3 ウェブサイトからの抜粋(甲第4号証の1)
名称 もっとかさあげくん
山本環境整備株式会社
平成21年9月25日発行
URL http://www.yksg.co.jp/parts/media/090925/1.pdf
(発効日につき甲第4号証の2参照。)
公知資料4 意匠登録第1367118号(甲第5号証)
意匠に係る物品 防水パン用底上げ具
意匠権者 株式会社テクノテック
意匠公報発効日 平成21年8月10日
(2)本件登録意匠の要部
上記先行周辺意匠をもとに,本件登録意匠の創作の要点について述べれば,この種物品における意匠上の創作の主たる対象は,載置部及び支持体の構成態様にあることは明らかである。
(3)本件登録意匠とイ号意匠との類否の考察
そこで,本件登録意匠とイ号意匠の共通点及び差異点を比較検討するに,
ア 両意匠の共通点のイについては,本件物品が「台」であり,公知資料1,1頁,上から4行目乃至5行目に記載されているように,この種物品が箱状であることが多いことから,平面,左右側面,底面の四方において方形状,すなわち箱状に見て取れる形状とすることはありふれた手法であり,両意匠の類否の判断に影響を与えるものでない。
共通点のウについて,環状突縁部が正面側外周部に形成さている形状は,公知意匠3で表れているように公知となっている形状であるから,相対的にこの形態の共通点は両意匠の類否の判断に影響は小さいものである。
また,水抜き用切り欠き部が環状突縁部の短寸法側の対角に形成されている形状は,全体に比して小さなものであり,相対的にこの形態の共通点は両意匠の類否の判断に与える影響は小さいものである。
イ 両意匠の差異点は,基本的構成態様のうち,本件登録意匠の要部である載置部及び支持部の形状,及び載置部の形状が異なっていることから,両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
両意匠の差異点のアについては,登録意匠のように載置部を四角形の外周面における一方の対角の一端部を中央側に,隅切り状となるまで中央側に後退させた正面視略五角形とする形状は,公知資料1乃至公知資料3に示すように既に公知となっていた形態であり,注意を引く程度は相対的に弱く,また,当該物品を設置する,例えば防水パンの隅の形状等如何によっては設置の可否に影響し,需要者が関心を持って観察する部位であるため,相対的に載置部の形態の違いは両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
両意匠の相違点のイについては,登録意匠のように支持部の形状を撓み変形可能な22本の円柱状の支持柱群が水平方向に分散し各々独立して形成する形態は,他の先行意匠には見られない新規な形態であって,創作的価値が高いものである一方,イ号意匠のように支持部を格子形状とする形態は公知資料4に示すようにありふれた態様であるため,この形態の違いは両意匠の類否の判断に大きな影響を与えるものである。
この点,この支持部は使用状態において,背面を床に設置することで見えない部分であるが,意匠の類否判断は物品全体の形態との比較を原則とすること,また,「洗濯機用台座」が,防水パン又は床の上に設置された本物品の上に洗濯機を設置することで該洗濯機を嵩上げするという用途及び目的,さらに,当該物品が,公知資料1,1頁,上から12行目に記載されているように,振動を吸収又は減少させる必要があることから鑑みるに,底面の形状についても需要者が関心を持って観察する部分であるといえる。このような目的及び効果に鑑み,需要者が関心を持って観察する部位であることから,使用時に支持部が見えないことは類否の判断に影響を及ぼさないものである。
ウ 以上の認定,判断を前提として両意匠を全体的に考察すると,両意匠は,意匠に係る物品が類似するが,両意匠の載置部及び支持体の形状において,相違点が共通点を凌駕することとなって,意匠全体として両意匠に異なる美感を起こさせることになることから,イ号意匠は,本件登録意匠に類似しないものである。

5 結び
従って,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しないので,請求の趣旨どおりの判定を求める。

6 証拠方法
(1)甲第1号証 イ号図面及び説明書
(2)甲第2号証 意匠登録第1417822号 意匠登録原簿(写)
(3)甲第3号証の1 ウェブサイト(新生産業株式会社)からの抜粋
平成21年5月29日発行
(4)甲第3号証の2 ウェブサイト(新生産業株式会社)からの抜粋
平成21年7月16日発行
(5)甲第3号証の3 特開2010-242363の写し
発明の名称 洗濯機設置用防水パンにおける
洗濯機嵩上げ台
出願人 新生産業株式会社
公開日 平成22年10月28日
出願番号 特願2009-91776
出願日 平成21年4月6日
(6)甲第4号証の1 ウェブサイト(山本環境整備株式会社)
からの抜粋
平成21年9月25日発行
(7)甲第4号証の2 ウェブサイト(山本環境整備株式会社)
からの抜粋
URL http://www.yksg.co.jp/media.html
(8)甲第5号証 意匠登録第1367118号公報の写し
公開日 平成21年8月10日


第2 被請求人の答弁の趣旨及び理由の要点
1 答弁の趣旨
被請求人は,「イ号意匠図面に示す「洗濯機用台座」の意匠は,意匠登録第1417822号及びこれに類似する意匠の範囲に属する,との判定を求める。」と申し立て,その理由として要旨以下のとおりの主張をした。

2 本件登録意匠とイ号意匠との対比
(1)両意匠の共通点
本件登録意匠では,変形四角筒体の高さ(H)と一辺の長さ(L)との比率が1.0:1.67に構成されているのに対して,イ号意匠では,変形四角筒体の高さ(H)と一辺の長さ(L)との比率が1.0:1.71に構成されており,両意匠の全体的な構成バランスは実質的に同一であり,しかも,両意匠は,変形四角筒体の外周面の輪郭形状が上端から下端まで同一に構成されている。
そのため,本件登録意匠の基本的及び具体的構成態様は,イ号意匠の基本的及び具体的構成態様と実質的に同一である。
すなわち,両意匠は,
ア 略等しい長さの四辺の側面で形成される四つの角部(a?d)のうち,一つの角部(a)を他の三つの角部(b?d)よりも筒軸芯側に後退形成し,且つ,上端から下端に亘って同一の輪郭形状に構成してある変形四角筒体と,この変形四角筒体の上端部において当該変形四角筒体の内周面に一体形成される載置板部とから構成されている。
イ 変形四角筒体の高さ(H)と一辺の長さ(L)との比率が1.0:1.67(≒1.71)に構成されている。
ウ 前記載置板部が,変形四角筒体の上端面よりも少し下方に偏位した高さ位置に形成されている。
エ 変形四角筒体の上端部で,後退角部(a)が存在する対角線方向で相対向する部位の各々に,載置板部の上面に連続する高さ位置が底面となる長方形状の切欠き部が形成されている。
オ 変形四角筒体の外周面における他の三つの角部(b?d),及び,この三つの角部(b?d)に接する載置板部の上面における三つの角部は,一辺の長さ(L)の約2割に相当する寸法を半径とする比較的大きな円弧面に統一形成されている。
カ 変形四角筒体の後退角部(a)が,それを交差箇所にする平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の一辺の長さ(L)の約半分の位置(P)を後退湾曲始点として,平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の後退角部側約半分の領域において平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の平面状の他の角部側領域から滑らかに連続形成されている。
上記ア?カに記載の構成態様で共通している。
(2)両意匠の差異点
一方,両意匠は,
ア 変形四角筒体の後退角部(a)の中間部分の形状について,本件登録意匠では後退寸法を長尺側の対角寸法の約2割とする直線状(平面状)に形成されているのに対して,イ号意匠では後退寸法を長尺側の対角寸法の約1割とする円弧状に形成されている。
イ 変形四角筒体の内部に臨む載置板部下面の補強体の形状について,本件登録意匠では22本の円筒状であるのに対して,イ号意匠では格子状に構成されている。
上記ア,イの構成態様に差異が見られる。

3 判定請求人が提示した公知意匠について
(1)甲第3号証の1の公知資料1及び甲第3号証の2の公知資料2は,防水パンの四隅に配置される4個の台座を十字条の連結部材で一体に連結してなる組み立て式の洗濯機用嵩上げ台である。
判定請求人は,この組み立て式の洗濯機用嵩上げ台の部品である後方側の台座を取り上げて,判定請求書の第7頁第4行から第7行において,
「この種物品が箱状であることが多いことから,平面,左右側面,底面の四方において方形状,すなわち箱状に見て取れる形状とすることはありふれた手法であり,両意匠の類否の判断に影響を与えるものではない。」と主張し,さらに,判定請求書の第7頁第20行から27行において,
「登録意匠のように載置部を四角形の外周面における一方の対角の一端部を中央側に,隅切り状となるまで中央側に後退させた正面視略五角形とする形状は,公知資料1乃至公知資料3に示すように既に公知となっていた形態であり,・・・」と主張している。
しかし,公知資料1,2に開示されている組み立て式の洗濯機用嵩上げ台の部品である後方側の台座は,載置面が上方に隆起形成され,しかも,一つの角部が直線状に切り欠き形成されているものの,全体的な構成バランスは大きく異なる。
そもそも,この切り欠き部は,十字条の連結部材5の左右の側板部5bと干渉しないための切り欠きであり,切り欠き部の幅は,連結部材5の連結腕5aの幅に対応した小さな幅寸法に構成されている。
しかも,載置面の切り欠き部側には,連結部材5の連結腕5aと連結するための連結凹部2aが形成されており,側面には,甲第3号証の3として挙げられた特開2010-242363の図2,図6,図8に明示されているように,幕板4と係合連結するための大きな連結凸部が外方に突出形成され,さらに,側面の下端部側には,図3,図7に明示されているように,防水パンの側壁に乗り上げるための切り欠き段差が形成されている。
したがって,公知資料1,2に開示されている組み立て式の洗濯機用嵩上げ台の部品である後方側の台座の形態は,本件登録意匠の形態とは大きく相違する。
尚,甲第3号証の3として挙げられた特開2010-242363は,本件登録意匠の出願後に公開されたものであり,しかも,図2,図6,図8,図11に開示されている後方側の台座の形態は一致せず,いずれが正しいのかは不明である。
(2)甲第4号証の1の公知資料3として,ウェブサイトに掲載された山本環境整備株式会社の「もっとかさあげくん」を挙げ,発効日につき甲第4号証の2をご参照と記載されている。
確かに,甲第4号証の2のウェブサイトの「2009年09月25日 マンション管理新聞」をクリックすると,甲第4号証の1のウェブサイトが現れ,そこにリニューアルされた「もっとかさあげくん」が掲載されている。
しかし,このリニューアルされた「もっとかさあげくん」が掲載されたウェブサイトの何処にも日付が記載されておらず,日付を確定する証拠が存在しない。
そして,乙第12号証に示すように,株式会社マンション管理新聞社発行の2009年09月25日付けのマンション管理新聞では,リニューアルされた「もっとかさあげくん」ではなく,四つの角部が直角に張り出すリニューアル前の「もっとかさあげくん」が掲載されている。
さらに,乙第13号証に示すように,リニューアルされた「もっとかさあげくん」は本件登録意匠の出願後である2011年の春に発表されたものであるとの正式な回答を山本環境整備株式会社より得ている。

4 本件登録意匠とイ号意匠との類否判断
(1)両意匠の共通点の評価
ア 本件登録意匠では,略等しい長さの四辺の側面で形成される四つの角部(a?d)のうち,一つの角部(a)を他の三つの角部(b?d)よりも筒軸芯側に後退形成し,且つ,上端から下端に亘って同一の輪郭形状に構成してある変形四角筒体と,この変形四角筒体の上端部において当該変形四角筒体の内周面に一体形成される載置板部とから構成されているが,これは,上述したとおり,判定請求人提示の公知意匠には全く存在せず,その他の公知意匠にも全く存在しない特異でありながらもすっきりとした変形四角筒体の独特な特徴的構成態様であり,この点はイ号意匠においても共通する。
しかも,この変形四角筒体の高さ(H)と一辺の長さ(L)との比率が,本件登録意匠では1.0:1.67に構成され,イ号意匠では1.0:1.71に構成されているため,両意匠の全体的な構成バランスも実質的に同一になっている。
公知意匠である乙第3号証の意匠登録第1366823号公報の防水パン用底上げ具,及び,乙第4号証の意匠登録第1367118号公報の防水パン用底上げ具では,四角筒体の高さ(H)と一辺の長さ(L)との比率が1.0:1.96に構成されており,これと比較すると,本件登録意匠及びイ号意匠は嵩低く安定感のある印象を需要者に与えるため,類似判断を左右する基本的構成態様ではないものの,変形四角筒体の独特な特徴的構成態様と相侯って両意匠の全体的な構成バランスでの一つの美的特徴を構成している。
イ 本件登録意匠及びイ号意匠においては,変形四角筒体の外周面における他の三つの角部(b?d),及び,この三つの角部(b?d)に接する載置板部の上面における三つの角部は,一辺の長さ(L)の約2割に相当する寸法を半径とする比較的大きな円弧面に統一形成されている。
また,変形四角筒体の後退角部(a)が,それを交差箇所にする平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の一辺の長さ(L)の約半分の位置(P)を後退湾曲始点として,平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の後退角部側約半分の領域において平面側外周面部(A)及び右側面側外周面(B)の平面状の他の角部側領域から滑らかに連続形成されている。
本件登録意匠の三つの角部(b?d)の曲率とイ号意匠の三つの角部(b?d)の曲率とは,判定請求書の第5頁の「登録意匠とイ号意匠の合成図」から明らかなように略同一に構成されている。
そして,乙第3号証及び乙4号証の公知意匠の角部の曲面処理と比較すると,本件登録意匠及びイ号意匠の三つの角部(b?d)の曲面処理は大きく,後退角部(a)の周方向両側の弧状の外周面部分との結合によって,変形四角筒体全体が丸みのある曲線基調の輪郭形状を呈することになり,公知意匠には存在しない特有の視覚的印象を需要者に与えている。
ウ 本件登録意匠及びイ号意匠においては,前記載置板部が,変形四角筒体の上端面よりも少し下方に偏位した高さ位置に形成されているとともに,変形四角筒体の上端部で後退角部(a)が存在する対角線方向で相対向する部位の各々に,載置板部の上面に連続する高さ位置が底面となる長方形状の切欠き部が形成されている。
この両意匠の共通の構成態様は,上述の公知意匠には存在しないユニークな構成態様であり,しかも,上端から下端に亘って同一の輪郭形状に構成してある変形四角筒体において短寸法側の対角を示すアクセントにもなっており,更に,最も良く注目される部位での構成であるため,類似判断を左右する基本的構成態様ではないものの,両意匠の一つの共通する美的特徴を構成している。
(2)両意匠の差異点の評価
ア 本願意匠とイ号意匠とは,後退角部(a)の中間部分について,本願意匠では,後退寸法を長尺側の対角寸法の約2割とする直線状に形成されているが,イ号意匠では,後退寸法を長寸法側の対角寸法の約1割とする円弧状に形成されている点で相違する。
しかし,略等しい長さの四辺の側面で形成される四つの角部(a?d)のうち,一つの角部(a)を他の三つの角部(b?d)よりも筒軸芯側に後退形成する手法として,その後退部位を直線状に造形処理するか,或いは,それよりも後退寸法の小さな大きな半径の円弧状に造形処理するかは,従前から各種の分野で慣用されている選択的な造形処理であり,また,後退寸法の大小も造形処理に付随するものであり,この造形処理の相違による類否判断への影響は微弱と判断される。
例えば,配管用ダクトの分野において,乙第5号証では,上部カバーの左右両側の角部及び下部カバーの左右両側の角部が夫々大きな円弧状に構成され,乙第6号証では,上部カバーの左右両側の角部及び下部カバーの左右両側の角部が夫々傾斜面に構成され,さらに,乙第7号証では,上部カバーの左右両側の角部及び下部カバーの左右両側の角部が夫々大きな幅の傾斜面に構成されている。
しかし,このような配管カバーの角部の造形処理の相違に拘わらず,乙第6,7号証は,乙第5号証を本意匠とする類似で登録されている。
また,配管用ダクト継手の分野において,乙第8号証では,上部カバーの左右両側の角部及び下部カバーの左右両側の角部が夫々大きな円弧状に構成され,乙第9号証では,上部カバーの左右両側の角部及び下部カバーの左右両側の角部が夫々傾斜面に構成されているが,乙第9号証は乙第8号証を本意匠とする類似で登録されている。
さらに,角部の後退処理ではないが,戸棚の分野において,乙第10号証では,前面が左右方向に沿う一直線状に構成され,乙第11号証では,前面が前方に張り出す大きな半径の円弧状に構成されているが,乙第11号証が乙第10号証を本意匠とする類似で登録されている。
よって,この後退角部(a)の具体的形状の差異は,需要者にとっては細部の差異に止まる。
イ また,本願意匠とイ号意匠とは,変形四角筒体の内部に一体形成される補強体について,本件登録意匠では22本の円筒状であるのに対して,イ号意匠では略格子状に構成されている点でも相違する。
しかしながら,この補強体は,底面形状にのみ現れるものであり,しかも,洗濯機の嵩上げという本物品の主たる用途・機能への影響も間接的であり,さらには,使用状態では全く見えず,且つ,一般に目にする機会も極少ないものである。それ故に,この補強体の形状は,需要者の注意を格別に惹くものではない。
この点,判定請求人は,判定請求書第8頁第7行?第18行において,「支持部(補強体)は使用状態において,背面を床に設置することで見えない部分であるが,意匠の類否判断は物品全体の形態との比較を原則とすること,また,「洗濯用台座」が,防水パン又は床の上に設置された本物品の上に洗濯機を設置することで該洗濯機を嵩上げするという用途及び目的,更に,当該物品が公知資料1,1頁,上から12行目に記載されているように,振動を吸収又は減少させる必要があることから鑑みるに,底面の形状についても需要者が関心を持って観察する部分であるといえる。このような目的及び効果に鑑み,需要者が関心を持って観察する部位であることから,使用時に支持部が見えないことは類否の判断に影響を及ぼさないものである。」と主張している。
しかしながら,判定請求人が主張するように振動を吸収又は減少させる必要性が公知資料1に記載されているとしても,本物品の主たる用途・機能はあくまで排水接続のための洗濯機の嵩上げであり,使用状態では全く見えず,且つ,一般に目にする機会も少ない底面の形状について,単に必要性があるだけで需要者の注意を惹くものではない。
また,例えば,乙第3号証(補強体が平坦面状),乙第4号証(補強体が略格子状)に見られるように,この種物品分野において,需要者の目にする機会の多い筒体の外周面形状と載置面の形状は維持しながら,需要者の目にする機会の少ない底面の形状だけを変化させたマイナーチェンジ例もあり,需要者の視点を意識した生産者側でも,形状を維持した筒体外周面と載置面の形状を重視している実情が垣間見える。なお,乙第3号証(補強体が平坦面状)と乙第4号証は本意匠-類似意匠の関係が成立している。
それ故に,如何に付加的な機能があるにせよ,主たる用途・機能に影響を与えることがなく,且つ,使用状態でも見えない補強体の形状(底面形状)を本件登録意匠の要部とする判定請求人の主張は失当であり,この差異点も,需要者にとっては細部の差異に止まる。
(3)本件登録意匠とイ号意匠の類否
ア 本件登録意匠とイ号意匠とを総合的に比較検討すると,イ号意匠は本件登録意匠の特徴構成を備えており,しかも,この特徴構成が結合した形態は公知意匠にも見られない独創性のある形態であり,類似判断を左右する重要な要素になっている。
イ 一方,前記2(2)で述べた差異点は,従前から各種の分野で慣用されている選択的な造形処理や需要者の目に付き難い部位での相違であって,需要者に与える美感への影響が極めて小さい部分での差異であり,上述の共通する特徴的な構成態様に比べると類似判断を左右する要素としては極めて微弱なものである。

5 まとめ
以上要するに,両意匠を全体的に考察すると,両意匠の共通点は顕著なものであり,しかも,全体的な「美感」が近似するから,両意匠はその支配態様が同一と言うべきであり,イ号意匠は本件登録意匠の類似範囲に属するものである。
それ故に,被請求人は答弁の趣旨に記載の通りの判定を求める。

6 証拠方法
(1)乙第1号証 本件登録意匠とイ号意匠との対比
(2)乙第2号証 本件登録意匠とイ号意匠との対比説明図
(3)乙第3号証 意匠登録第1366823号公報の写し
(4)乙第4号証 意匠登録第1367118号公報の写し
(5)乙第5号証 意匠登録第647640号公報の写し
(6)乙第6号証 意匠登録第647640の類似12号公報の写し
(7)乙第7号証 意匠登録第647640の類似13号公報の写し
(8)乙第8号証 意匠登録第926934号公報の写し
(9)乙第9号証 意匠登録第926934の類似1号公報の写し
(10)乙第10号証 意匠登録第366065号公報の写し
(11)乙第11号証 意匠登録第366065の類似1号公報の写し
(12)乙第12号証 2009年9月25日付けマンション管理新聞
の写し 第18頁
(13)乙第13号証 2013年8月1日付け証明書の写し


第3 当審の判断
1 本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1417822号)は,平成22年(2010年)9月16日に意匠登録出願され,平成23年(2011年)6月3日に意匠権の設定の登録がなされ,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「洗濯機用台座」とし,形態を,願書及び願書に添付された図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)
そして,願書の「意匠に係る物品の説明」の記載は次のとおりである。「本願意匠に係る物品は,洗濯機を底上げするのに用いられる台座であって,洗濯機が載置される載置面部の裏側には,該載置面部に加わる洗濯機の荷重を支持する撓み変形可能な支持柱体群が形成されていて,外周壁部の底面と防水パンの上面等との間に隙間Lを形成して支持柱体群のみに荷重が作用するように,支持柱体群の底面と被設置面との間に滑り止めシート等のシート状体を介在させた状態(例えば,滑り止めシートを支持柱体群の底面に装着した状態)で防水パン等の四隅に設置して使用される。」
本件登録意匠の形態には,基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(1)基本的構成態様について
全体が,前面が塞がれた,略変形角筒であって,その前後の径は同じであり,正面から見て右上が傾斜直線状に切り欠かれ,左上,左下及び右下の角が円弧状になった略変形五角形状であり,背面から見ると,角筒の枠の内部に,前面後方に設けられた支持体が表されている。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
(2)具体的態様について
ア 全体の比率は,正面視の縦幅:横幅:奥行きの比が約5:5:3である。
イ 正面部の外形状について
右上角部の傾斜直線状の切り欠き部分(以下「傾斜直線部」という。)は,上辺の中央やや右寄りから,右辺の中央やや上寄りにかけての位置に形成されており,傾斜直線部の長さと,左上角から右下角に亘る対角線の長さの比は,約2:5である。そして,傾斜直線部の両側には略弧状の屈曲部が形成され,傾斜直線部が,左上屈曲部を介して水平状の上辺左側部に連続し,右下屈曲部を介して垂直状の右辺下半部に接続している。また,左上,左下及び右下の角の円弧状の半径は,正面視全体の縦幅(又は横幅)の約2割に相当する。
ウ 正面部周縁の形状について
正面部の周縁に沿って,幅が狭く前方(「斜視図」において上方)に突出した部分が,周縁の左下及び右上の箇所を除いて略環状に設けられており(以下「略環状突出部」という。),除かれた左下の部分の長さは,正面左下角の円弧の長さの約1/3である。除かれた右上の部分の長さは,除かれた左下の部分の長さと同じである。
エ 支持体の構成態様について
支持体は,22本の細長円筒状体が縦横等間隔に並んだものであり,各細長円筒状体は,撓み変形されるものであって,径が後端にいくにつれて漸次小さくなっていき,後端面の位置が,略変形角筒の枠の後端面の位置と一致している。

2 イ号意匠
請求人は,イ号意匠の形態を特定するにあたり,判定請求書において「イ号図面及び説明書」(甲第1号証)を提出した。(別紙第2参照)
その記載によれば,イ号意匠の意匠に係る物品は「洗濯機用台座」であり,イ号意匠の形態には,基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(1)基本的構成態様について
全体が,前面が塞がれた,略変形角筒であって,その前後の径は同じであり,正面から見て右上が大きな円弧状に形成され,左上,左下及び右下の角が円弧状になった略変形四角形状であり,背面から見ると,角筒の枠の内部に,前面後方に設けられた支持体が表されている。
また,具体的態様として,以下の点が認められる。
(2)具体的態様について
ア 全体の比率は,正面視の縦幅:横幅:奥行きの比が約7:7:4である。
イ 正面部の外形状について
右上角部の大きな円弧状の部分(以下「大円弧状部」という。)は,上辺の中央やや右寄りから,右辺の中央やや上寄りにかけての位置に形成されており,大円弧状部の半径は,正面視全体の縦幅(又は横幅)の約4/9に相当する。また,左上,左下及び右下の角の円弧状の半径は,正面視全体の縦幅(又は横幅)の約2/9に相当し,大円弧状部の半径の約1/2となっている。
ウ 正面部周縁の形状について
正面部の周縁に沿って,幅が狭く前方(「斜視図1」において上方)に突出した部分が,周縁の左下及び右上の箇所を除いて略環状に設けられており(以下「略環状突出部」という。),除かれた左下の部分の長さは,正面左下角の円弧の長さの約1/3である。除かれた右上の部分の長さは,除かれた左下の部分の長さと同じである。
エ 支持体の構成態様について
支持体は,略変形角筒の枠よりも一回り小さい枠体と,その内部の格子状の仕切りが一体となって,25マスの開口部が形成された略箱状体である。支持体の後端面の位置は,略変形角筒の枠の後端面の位置と略一致している。

3 本件登録意匠とイ号意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本件登録意匠は「洗濯機用台座」であり,イ号意匠も「洗濯機用台座」であるので,両意匠の意匠に係る物品は同一である。
(2)形態の共通点
両意匠の形態には,以下の基本的構成態様の共通点が認められる。
ア 基本的構成態様の共通点
全体が,前面が塞がれた,略変形角筒であって,その前後の径は同じであり,正面から見て左上,左下及び右下の角が円弧状であり,背面から見ると,角筒の枠の内部に,前面後方に設けられた支持体が表されている。
また,以下の具体的態様の共通点が認められる。
イ 傾斜直線部又は大円弧状部の位置についての共通点
右上にある傾斜直線部(本件登録意匠)又は大円弧状部(イ号意匠)は,正面部の上辺の中央やや右寄りから,右辺の中央やや上寄りにかけての位置に形成されている。
ウ 正面部周縁の形状について
正面部の周縁に沿って,幅が狭く前方に突出した部分が,周縁の左下及び右上の箇所を除いて略環状に設けられており(以下「略環状突出部」という。),除かれた左下の部分の長さは,正面左下角の円弧の長さの約1/3である。除かれた右上の部分の長さは,除かれた左下の部分の長さと同じである。
エ 支持体の構成態様についての共通点
支持体の後端面の位置は,略変形角筒の枠の後端面の位置と略一致している。
(3)形態の差異点
一方,両意匠の形態には,以下の基本的構成態様の差異点が認められる。
ア 基本的構成態様の差異点
正面から見て,本件登録意匠は右上が傾斜直線状に切り欠かれた略変形五角形状であるのに対して,イ号意匠は右上が大きな円弧状に形成された略変形四角形状である。
また,以下の具体的態様の差異点が認められる。
イ 全体の比率についての差異点
全体の比率は,本件登録意匠では正面視の縦幅:横幅:奥行きの比が約5:5:3であるのに対して,イ号意匠では約7:7:4である。
ウ 正面部の外形状についての差異点
本件登録意匠では,右上にある傾斜直線部の長さと,左上角から右下角に亘る対角線の長さの比が約2:5であり,傾斜直線部の両側には略弧状の屈曲部が形成され,傾斜直線部が左上屈曲部を介して水平状の上辺左側部に,右下屈曲部を介して垂直状の右辺下半部に接続している。これに対して,イ号意匠では,右上にそのような傾斜直線部及び屈曲部は表されておらず,半径が正面視全体の縦幅(又は横幅)の約4/9に相当する大円弧状部が表されている。また,左上,左下及び右下の角の円弧状の半径が,本件登録意匠では正面視全体の縦幅(又は横幅)の約2割に相当するのに対して,イ号意匠では約2/9に相当し,大円弧状部の半径の約1/2となっている。
エ 支持体の構成態様についての差異点
本件登録意匠の支持体が22本の細長円筒状体が縦横等間隔に並んだものであり,各細長円筒状体が撓み変形されるもので,径が後端にいくにつれて漸次小さくなっているのに対して,イ号意匠の支持体は,略変形角筒の枠よりも一回り小さい枠体と,その内部の格子状の仕切りが一体となって,25マスの開口部が形成された略箱状体である。

4 本件登録意匠とイ号意匠の類否判断
両意匠の類否を検討するに当たって,まず,請求人が提示した甲第4号証の1の意匠(別紙第3参照)について当審の考えを述べる。
(1)請求人が提示した甲第4号証の1の意匠について
請求人が提示した甲第4号証の1の意匠(公知資料3の意匠)は,同書証,判定請求書第6頁及び甲第4号証の2の記載によれば,山本環境整備株式会社の製品「もっとかさあげくん」の意匠(意匠に係る物品,洗濯機用台座)であって,平成21年(2009年)9月25日にマンション管理新聞に掲載されたものとされている。
この点について,被請求人は,答弁書第7頁?第8頁において,甲第4号証の1に日付の記載がなく,「もっとかさあげくん」が掲載されたウェブサイトの日付を確定する証拠が存在しないこと,及び乙第13号証によりリニューアルされた「もっとかさあげくん」(同書証の記載によれば,「一隅部を内側に引退させる形状変更を施したリニューアル品」。)は本件登録意匠の出願後である2011年の春に発表されたと主張している。
他方,当審の調べにより,山本環境整備株式会社のウェブサイト(http://yksg.co.jp/kasaagekun.html)上に掲載されている製品「もっとかさあげくん」の意匠(意匠に係る物品,洗濯機用台座)が,平成22年(2010年)4月17日に掲載されていることが,米国非営利法人インターネット・アーカイブにより記録され,公表されている(https://web.archive.org/web/20100417110545/http://yksg.co.jp/kasaagekun.html。別紙第4参照。)ことが確認された。
そして,甲第4号証の1の右下寄りに掲載された意匠は,そのアーカイブに記録され,公表されたウェブサイト上の【もっとかさあげくん寸法】の欄に掲載された意匠と同一であると認められることから,甲第4号証の1に掲載された山本環境整備株式会社の製品「もっとかさあげくん」の意匠(公知資料3の意匠)は,平成22年(2010年)4月17日には,山本環境整備株式会社のウェブサイトに掲載されていたということができる。
したがって,被請求人の主張にかかわらず,請求人が提示した甲第4号証の1の意匠は,少なくとも本件登録意匠の出願日である平成22年(2010年)9月16日より前に公知となったものと認められることから,判定請求書に記載のとおり,本件登録意匠に関する先行周辺意匠であるというべきである。

次に,両意匠の形態の共通点及び差異点が,両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価して,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討する。
(2)形態の共通点の評価
本件登録意匠とイ号意匠の基本的構成態様の共通点のうち,「全体が,前面が塞がれた,略変形角筒」である態様については,本件登録意匠の先行周辺意匠である甲第5号証の意匠(別紙第5参照)により,本件登録意匠の出願前に公知であり,また,「正面から見て左上,左下及び右下の角が円弧状」である態様についても,甲第4号証の1の意匠(本件登録意匠の向きに合わせて形態を認定する。)及び甲第5号証の意匠により,本件登録意匠の出願前に公知であるから,どちらの態様も両意匠にのみ見られる特徴とはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
そして,基本的構成態様の共通点のうち,前後の径が同じである態様,すなわち被請求人のいう「上端から下端に亘って同一の輪郭形状に構成して」いる態様について,被請求人は,「判定請求人提示の公知意匠には全く存在せず,その他の公知意匠にも全く存在しない特異でありながらもすっきりとした」独特な特徴的構成態様であると主張するが,角筒が前後方向に亘って径を等しくすることはむしろ自然であって,甲第4号証の1の意匠及び甲第5号証の意匠のように径を縮小させたり,変化させることの方が看者の目を惹くというべきであるから,径が変化しない両意匠の略変形角筒に対して,看者が特に目を惹くとはいい難いので,被請求人の主張を採用することはできない。
また,正面部周縁の形状についての共通点のうち,略環状突出部が設けられた態様については,甲第4号証の1の意匠及び甲第5号証の意匠により公知となっていることから,同様に両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。また,略環状突出部から左下及び右上の箇所が除かれている共通点についても,除かれた部分の長さが角の円弧の長さの約1/3であって,限られた部位に関する共通点といえることから,この共通点は殊更評価できず,両意匠を全体として比較した際には,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすということはできない。
被請求人は,この除かれた部分について,「短寸法側の対角を示すアクセントにもなっており,更に,最も良く注目される部位での構成であるため,類似判断を左右する基本的構成態様ではないものの,両意匠の一つの共通する美的特徴を構成」すると主張するが,仮に除かれた部分を略環状突出部の対角線方向に設けることが本件登録意匠の出願前に公知ではなかったとしても,以下に述べる両意匠の差異点がもたらす別異の印象を凌駕して,両意匠を全体として見たときに看者に対して両意匠の視覚的印象を同一とする程の要素であるとまではいい難いので,被請求人の主張を採用することはできない。
さらに,支持体の後端面の位置が略変形角筒の枠の後端面の位置と略一致している共通点については,両意匠を特定方向から観察した際にのみ気がつくものであるから,看者が常にその共通点を把握するものではあり得ず,両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。
(3)形態の差異点の評価
これに対し,差異点アの基本的構成態様の差異は,一見して把握できる両意匠の差異であって,傾斜直線状に切り欠かれた略変形五角形状の本件登録意匠と,大きな円弧状に形成された略変形四角形状のイ号意匠の差異は看者の目に付くものであり,看者に異なる印象を与えるものであるというべきであるから,差異点アが,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に,差異点エの支持体の構成態様の差異についても,看者が実際に洗濯機用台座の物品を手に持って観察する際には,背面側も観察することは当然であるから,複数の細長円筒状体と略箱状体の差異は,看者に全く異なる印象を与えるといわざるを得ず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
この支持体について,被請求人は,「底面形状にのみ現れるものであり,しかも,洗濯機の嵩上げという本物品の主たる用途・機能への影響も間接的であり,さらには,使用状態では全く見えず,且つ,一般に目にする機会も極少ないものであります。それ故に,この補強体の形状は,需要者の注意を格別に惹くものではありません。」と主張している。
しかし,意匠法第24条第2項に規定されている「需要者」には取引者も含まれると解されているところ,洗濯機用台座の取引者(洗濯機用部品及び付属品の流通業者など)は,本件登録意匠に見られる支持体が洗濯機の荷重を支持できるものであるか,どの程度撓み変形されるものであるか,などについて適宜確認することが必要になるのであって,その確認のために洗濯機用台座の形状を観察することとなる。したがって,支持体の形状が需要者の注意を惹かないとの被請求人の主張は採用することができない。
一方,請求人はこの点に関して,「底面の形状についても需要者が関心を持って観察する部分であるといえる。このような目的及び効果に鑑み,需要者が関心を持って観察する部位であることから,使用時に支持部が見えないことは類否の判断に影響を及ぼさないものである。」と主張しており,この主張は首肯し得るものである。
また,傾斜直線状切り欠きと,大きな円弧状の差異について,被請求人は,「本願意匠とイ号意匠とは,後退角部(a)の中間部分について,本願意匠では,後退寸法を長尺側の対角寸法の約2割とする直線状に形成されているが,イ号意匠では,後退寸法を長寸法側の対角寸法の約1割とする円弧状に形成されている点で相違」と主張している(別紙第6参照)。
確かに,差異点ウで認定したとおり,本件登録意匠の傾斜直線部の両側には略弧状の屈曲部が形成され,傾斜直線部が左上屈曲部を介して水平状の上辺左側部に,右下屈曲部を介して垂直状の右辺下半部に接続しているので,被請求人のいう通り,本件登録意匠には「後退角部(a)の中間部分」が存在し,「左上屈曲部-中間部分(直線状)-右下屈曲部」という構成を呈している。
しかし,イ号意匠では,右上にそのような傾斜直線部及び屈曲部は表されておらず,半径が正面視全体の縦幅(又は横幅)の約4/9に相当する大円弧状部が表されているのみであって,そもそも被請求人のいう「後退角部(a)の中間部分」は存在していないので,被請求人の該主張を採用することはできない。
そして,差異点ウで指摘したとおり,本件登録意匠では,右上にある傾斜直線部の長さが,左上角から右下角に亘る対角線の長さの約2/5を占めているので,その傾斜直線部について看者の注意を惹くところとなり,大円弧状部が表されているイ号意匠との視覚的印象は異なるというべきであるから,傾斜直線部(本件登録意匠)又は大円弧状部(イ号意匠)が正面部の上辺の中央やや右寄りから右辺の中央やや上寄りにかけての位置に形成されているという共通点を考慮したとしても,傾斜直線状切り欠きと大きな円弧状の差異が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
一方,差異点イの全体の比率についての差異は,正面視の縦幅:横幅:奥行きの比が約5:5:3である本件登録意匠と,約7:7:4であるイ号意匠との間にはそれ程の差はなく,看者が仔細に観察した際に気付く程度の差異であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。同じ理由により,差異点ウで認定した,左上,左下及び右下の角の円弧状の半径が本件登録意匠では正面視全体の縦幅の約2割であり,イ号意匠では約2/9である差異も,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
(4)小括
したがって,これらの共通点と差異点を総合して判断すれば,本件登録意匠とイ号意匠とは,意匠に係る物品は同一であるが,形態については,共通点が類否判断に与える影響が限定的であるのに対して,差異点は両意匠を別異なものと印象付けるような大きな影響を及ぼすものであるから,両意匠は類似するとはいえない。


第4 むすび
以上のとおりであって,イ号意匠は,本件登録意匠及びこれに類似する意匠の範囲に属しない。

よって,結論のとおり判定する。
別掲
判定日 2014-08-21 
出願番号 意願2010-22359(D2010-22359) 
審決分類 D 1 2・ 1- ZA (C3)
最終処分 成立 
前審関与審査官 住 康平温品 博康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
小林 裕和
登録日 2011-06-03 
登録番号 意匠登録第1417822号(D1417822) 
代理人 保田 元希 
代理人 北村 修一郎 
代理人 佐野 弘 
代理人 宮地 正浩 
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