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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 K3
管理番号 1293649 
審判番号 不服2014-9065
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-15 
確定日 2014-11-11 
意匠に係る物品 建設機械用アーム 
事件の表示 意願2011- 23980「建設機械用アーム」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとして,平成23年(2011年)10月19日付けで出願された意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,本願の願書の記載によれば,意匠に係る物品を「建設機械用アーム」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたもので,「実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたもの(以下,本願において,意匠登録を受けようとする部分を「本願実線部分」という。)である。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠は,本願出願前に,日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠,すなわち,特許庁意匠課が2003年10月10日に受け入れた,内国カタログ『小型マルチ解体機』の第3頁において,右下側に示される「小型多目的解体機のアーム」の意匠の,ブーム,アームシリンダー及びバケットシリンダー取付け部分であって,その形態は,同カタログに掲載されたとおりのものである。
なお,原審拒絶理由通知書によると,ブーム取付け部分を含んだ記載としているところ,正確には,この部分は本願実線部分に相当する部分(以下,「引用相当部分」という。)ではないが,この点は,拒絶理由通知書中の「記」の欄の対比内容からすると,引用相当部分を引用していることが明らかであって,誤記と認められる。この点につき,請求人も,審判請求の理由として,本願実線部分と引用相当部分(以下,「両部分」という。)との対比を前提に述べているところであるため,当審においては,正しく,建設機械用アームのアームシリンダー及びバケットシリンダー取付け部分を含む2枚のブラケット板の,上辺部及び補強板に係る部分を引用相当部分と認定して取り扱うこととする。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1 本願意匠と引用意匠の対比

(1)意匠に係る物品

本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比すると,いずれも建設機械用アームに係るものであるから,両意匠の意匠に係る物品は,共通する。

(2)両部分の用途及び機能,並びに,位置,大きさ及び範囲

両部分はいずれも建設機械用アームのアームシリンダー及びバケットシリンダー取付け部分を含む2枚のブラケット板の,上辺部及び補強板に係る部分であるから,両部分の用途及び機能,並びに,位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(3)両部分の形態

両部分の形態を対比すると,主として以下の共通点及び相違点が認められる。
以下,対比のため,本願意匠の図面における正面,平面等の向きを,引用意匠にもあてはめることとする。

まず,共通点として,両部分は,間隔を空けて並列した2枚のブラケット板の上辺部及び当該上辺部に接合する補強板から構成され,当該補強板部の左右両端部を平面視略凹弧状に切截し,これにより,左右対称に開口部を形成している点が認められる。

他方,相違点として,

(ア)ブラケット板上辺部の態様について,本願実線部分は,正面視直線状としているのに対して,引用相当部分は,正面視緩やかな略凸弧状としている点,

(イ)平面視における補強板部左右方向の長さについて,本願実線部分における補強板部は,ブラケット板上辺のほぼ全長に渡る,左右方向に長いものであるのに対し,引用相当部分における補強板部は,ブラケット板上辺の左右中央部約1/3の長さの,左右方向に短いものである点,

(ウ)補強板部左右端の切截形状について,本願実線部分は,ブラケット板間の間隔より狭い倒「U」字状として,ブラケット板内側に細帯状の「つば部」が残った態様としているのに対し,引用相当部分は,ブラケット板間の間隔と同幅の,やや間口の広い放物線状の凹弧状としている点,

(エ)ブラケット板と補強板部との接合部の態様について,本願実線部分は,補強板部を,ブラケット板上端から下がった位置,寸法比において両ブラケット板の間隔の約1/3に相当する比較的深い位置に設け,ブラケット板との接合部を,なめらかな凹弧面状につなぎ,全体として,側面視扁平略「U」字状の溝状を成しているのに対して,引用相当部分は,補強板部を,ブラケット板上辺から極僅かに下がった比較的浅い位置に設け,ブラケット板との接合部を,溶接ビード様の小さな傾斜面状につなぎ,全体として,側面視扁平倒「コ」字状としている点,

が認められる。

2 両部分の形態の評価

両部分の形態における共通点は,両部分である2枚のブラケット板の上辺部及び当該上辺部に接合する補強板に係る態様を概括的に捉えたにすぎないものであるから,この共通性のみをもって両部分の類否判断を決定することはできない。

これに対し,相違点(ア)のブラケット板上辺部の態様の相違は,通常の使用状態においては目に付きやすい部分であって,本願実線部分の直線状である態様と,引用相当部分の緩やかな略凸弧状である態様とは,別異な印象を与えるものであり,この相違点は,両部分の類否判断に一定程度の影響を及ぼす。

次に,相違点(イ)平面視における補強板部左右方向の長さ及び相違点(ウ)補強板部左右端の切截形状の相違は,例えば強度が使用目的に適うものであるか否かといった技術的側面からも,需要者が注目する部分に係るものであって,両部分全体に占める割合としても大きく,その形状が顕著に相違していることから,この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。

次に,相違点(エ)ブラケット板と補強板部との接合部の態様の相違は,斜視図の方向から見て特に目立つものであり,本願実線部分の扁平略「U」字状の溝状を成す態様と,引用相当部分の比較的平坦な態様とは,別異な印象を与えるものであり,この相違点が両部分の類否判断に与える影響は大きい。

さらに,これらの各相違点に係る態様が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,両部分の類否判断に及ぼす影響は大きいものであるといえる。

3 両意匠の類否判断

上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品については,共通し,両部分の用途及び機能,並びに,位置,大きさ及び範囲についても,共通しているが,両部分の形態については,上記のとおり,相違点が類否判断に及ぼす影響が,共通点のそれを上回っており,全体として別異の印象を与えるものであるから,両部分は類似するものではない。

したがって,両意匠は類似しないものと認められる。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものであるから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-10-24 
出願番号 意願2011-23980(D2011-23980) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (K3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 原田 雅美木村 恭子 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 橘 崇生
清野 貴雄
登録日 2014-11-28 
登録番号 意匠登録第1514673号(D1514673) 
代理人 吉田 親司 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 小出 俊實 

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