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審決分類 審判    B7
審判    B7
管理番号 1293651 
審判番号 無効2013-880005
総通号数 180 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2014-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-02-06 
確定日 2014-10-30 
意匠に係る物品 ブラシ付きヘアアイロン 
事件の表示 上記当事者間の登録第1424844号「ブラシ付きヘアアイロン」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由
請求人は,「登録第1424844号意匠についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,要旨以下のとおり主張し,証拠方法として甲第1ないし12号証の書証を本件審判請求時に提出した。

1.意匠登録無効の理由の要点
(1)無効理由1
登録第1424844号意匠(以下,「本件登録意匠」という。)は,本件登録意匠出願前に日本国内において頒布された甲第2号証に記載の意匠(以下,「引用意匠1」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(2)無効理由2
本件登録意匠は,本件登録意匠出願前に日本国内において頒布された甲第3号証に記載の意匠(以下,「引用意匠2」という。)と類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
(3)無効理由3
本件登録意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(甲第2号証,甲第4号証?甲第12号証)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。したがって,本件登録意匠は,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。
(4)無効理由4
本件登録意匠は,その出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(甲第3号証?甲第12号証)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであり,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものである。したがって,本件登録意匠は,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由
(1)本件登録意匠の要旨
本件登録意匠は,意匠に係る物品を,「ブラシ付きヘアアイロン」とする意匠であり,その構成態様は次の通りである。
1)基本的構成態様
本件登録意匠の基本的構成態様は,ブラシ部,持ち手部及び電源コード部からなる。持ち手部はブラシ部の下部に位置している。電源コード部は持ち手部の下部に位置している。
2)具体的構成態様
ブラシ部には,一定間隔で長手方向に17本の白色のブラシが配列している。配列したブラシは合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。また,ブラシ部の先端には,ブラシ側に円形状のフランジを備えた先端部が設けられている。ブラシ部は8列のブラシを除き黒色となっている。
持ち手部は,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状を有している。また,持ち手部のブラシ部側には円形状のフランジが設けられている。さらに,持ち手部の中央部分には電源スイッチが設けられている。持ち手部は全体として黒色となっている。
(2)先行意匠が存在する事実及び証拠の説明
(ア)甲第2号証
甲第2号証の意匠(以下,「引用意匠1」という。)は,意匠に係る物品を「ヘアアイロン」とする意匠であり,その構成態様は次の通りである。
1)基本的構成態様
引用意匠1の基本的構成態様は,ブラシ部,持ち手部及び電源コード部からなる。持ち手部はブラシ部の下部に位置している。電源コード部は持ち手部の下部に位置している。
2)具体的構成態様
ブラシ部には,一定間隔で長手方向に23本のブラシが配列している。配列したブラシは合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。また,ブラシ部の先端には,フランジのない先端部が設けられている。
持ち手部は,ブラシ部側に向かうに従い直径が大きくなる形状を有している。また,持ち手部のブラシ部側には円形状のフランジが設けられている。さらに,円形状のフランジの下部には,ヘアアイロンを載値する際の横転を防止する為の支持台が設けられている。また,持ち手部の中央部分には電源スイッチが設けられている。
(イ)甲第3号証
甲第3号証の意匠(以下,「引用意匠2」という。)は,意匠に係る物品を「ヘアアイロン」とする意匠であり,その構成態様は次の通りである。
1)基本的構成態様
引用意匠2の基本的構成態様は,ブラシ部,持ち手部及び電源コード部からなる。持ち手部はブラシ部の下部に位置している。電源コード部は持ち手部の下部に位置している。
2)具体的構成態様
ブラシ部には,一定間隔で長手方向に23本のブラシが配列している。配列したブラシは合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。
持ち手部は,ブラシ部側の直径が最も大きく,当該ブラシ部側から電源コード部に向かうに従い直径が小さくなり,約2/3に位置する部分の直径が最も小さくなっている。さらに,当該位置から電源コード部に向かうに従い再び直径が大きくなるような形状を有している。また,持ち手部のブラシ部側には八角形状のフランジが設けられている。
(3)先行周辺意匠の適示
(ア)ブラシ部について,本件登録意匠と同様に一定間隔で長手方向に配列した8本のブラシが,相互に等間隔となる様に設けられたもの,及びブラシ部の先端部について,本件登録意匠と同様に円形状のフランジを有しているものとしては以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
1)意匠登録第1142430号 意匠に係る物品「ヘアーアイロン」(甲第4号証)
2)米国意匠登録第269,298号 意匠に係る物品「ヘアーカーリングアイロン」(甲第5号証)
3)米国意匠登録第285,366号 意匠に係る物品「ヘアーカーリングアイロン」(甲第6号証)
4)米国意匠登録第294,743号 意匠に係る物品「ヘアーカーリングアイロン」(甲第7号証)
(イ)持ち手部について,本件登録意匠と同様に中央部分が両端寄りも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状を有しているものとしては以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
1)米国特許第4,866,248号 図1に記載の意匠(甲第8号証)
2)米国特許第5,887,600号 図6,8,12に記載の意匠(甲第9号証)
3)米国意匠登録第627,568S号 意匠に係る物品「ヘアブラシ」(甲第10号証)
(ウ)持ち手部について,本件登録意匠と同様に円形状のフランジを備えるものとしては以下の例が存在し,本件登録意匠の出願前から公然知られている。
1)米国特許第4,196,489号 図1に記載の意匠(甲第11号証)
2)米国特許第4,486,915号 図3に記載の意匠(甲第12号証)
(4)本件登録意匠と引用意匠1の対比
(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠は「ブラシ付きヘアアイロン」に関するものである。一方,引用意匠1は「ヘアアイロン」に関するものであり,ブラシを備えている。したがって,両者は同一の物品といえる。
(イ)共通点
1)ブラシ部,持ち手部及び電源コード部からなり,持ち手部がブラシ部の下部に位置し,電源コード部が持ち手部の下部に位置する基本的構成態様とした点で共通する。
また,その具体的構成態様においては,
2)ブラシ部において,一定間隔で長手方向に複数のブラシが配列しており,配列したブラシは合計8列であり,相互に等間隔となる様に設けられている点,
3)ブラシ部の先端に円筒状の先端部が設けられている点,
4)持ち手部のブラシ部側にフランジが設けられている点,
5)持ち手部の最下部に電源コード部が設けられている点,で共通する。
(ウ)差異点
a)ブラシ部における長手方向にそれぞれ配列したブラシの本数について,本件登録意匠は17本であるのに対し,引用意匠1は23本である点。
b)ブラシ部の先端部において,本件登録意匠は円形状のフランジを有しているのに対し,引用意匠1はそのようなフランジを有していない点。
c)持ち手部について,本件登録意匠は中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状を有しているのに対し,引用意匠1はブラシ部側に向かうに従い直径が大きくなった形状を有している点。
d)持ち手部のフランジについて,本件登録意匠は円形状のフランジであるのに対し,引用意匠1は下部にヘアアイロンの横転を防止するための支持台を備えた円形状のフランジである点。
(エ)本件登録意匠と引用意匠1との類否
(あ)差異点a)(ブラシ部におけるブラシの本数)
差異点a)にかかる構成,すなわち,ブラシ部におけるブラシの本数の異同については,本件登録意匠の方が僅かにブラシの本数が少ないといった程度にしか看者に認識されないものである。例えば,甲第4号証では,16本のブラシが長手方向に配列されており,甲第6号証では17本のブラシが長手方向に配列されている。そうすると,ブラシの本数の異同は両意匠の共通性を否定する程の相違であるとはいえず,極めて局所的な差異でしかない。従って,ブラシの本数の異同が両意匠の類否判断に影響を及ぼすものでないことは明らかである。
(い)差異点b)(ブラシ部の先端部の形状)
甲第4号証ないし甲第7号証によれば,円形状のフランジが設けられた先端部を有するヘアアイロンが開示されている。従って,当該先端部に円形状のフランジを設けることは,本件意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,ブラシ部の先端に円形状のフランジを備えた先端部を設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点b)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(う)差異点c)(持ち手部の形状)
甲第8号証ないし甲第10号証によれば,持ち手部の形状に関し,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状の持ち手部を備えたヘアアイロンが開示されている。したがって,持ち手部において,前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状の持ち手部を設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点c)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(え)差異点d)(持ち手部のフランジの形状) 甲第11号証及び甲第12号証によれば,持ち手部のフランジに関し,ヘアアイロンの横転防止のための支持台を有しない円形状のものが開示されている。従って,持ち手部のフランジにおいて前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,持ち手部のブラシ部側に円形状のフランジを設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点d)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(お)また,上記差異点a)?差異点d)を総合しても,両意匠の共通感を凌駕するものではないので,本件登録意匠は,引用意匠1に類似するものである。
(オ)本件登録意匠の創作容易
(あ)差異点a)(ブラシ部におけるブラシの本数)
本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2号証?甲第5号証及び甲第7号証)が存在することに照らせば,引用意匠1の構成から本件登録意匠の差異点a)に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない。また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されている。従って,本件登録意匠の差異点a)に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである。
(い)差異点b)(ブラシ部の先端部におけるフランジの有無)
本件登録意匠出願前において,ブラシ部の先端部にフランジを設けることは,甲第4号証ないし甲第7号証に開示されているように周知である。従って,引用意匠1の構成において本件登録意匠の差異点b)に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできず,当業者が容易に創作できたものである。
(う)差異点c)(持ち手部の形状)
本件登録意匠出願前において,ヘアアイロンの持ち手部の骨格的な形状として,中央部分が両端寄りも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状とすることは,甲第8号証ないし甲第10号証に示されているように,普通にみられる程度のものであり周知形状である。従って,c)に係る本件登録意匠の構成は,引用意匠1に甲第8号証ないし甲第10号証に示されているような周知の持ち手部の形状を適用することにより,当業者が容易に創作できたものである。
なお,甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンはブラシを備えないものではあるが,髪をカールさせる加熱チューブの下部に持ち手部としてのハンドル12が設けられ,さらにハンドル12の下部に電源コード部としての回転コネクタ17が設けられたものである。すなわち,本件登録意匠と甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンは基本形状の異なる意匠とはいえないものである。
(え)差異点d)(持ち手部のフランジの形状)
本件登録意匠出願前に,持ち手部に円形状のフランジを設けたヘアアイロン(甲第11号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,引用意匠1の円形状のフランジにおいてヘアアイロンの横転防止のための支持台を有しない,差異点d)に係る本件登録意匠の構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない。従って,本件登録意匠の差異点d)に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである。
(お)以上によれば,本件登録意匠は,引用意匠1及び周知の形状に基づいて,当業者が容易に創作できたものに該当することは明らかである。
(5)本件登録意匠と引用意匠2の対比
(ア)意匠に係る物品
本件登録意匠は「ブラシ付きヘアアイロン」に関するものである。一方,引用意匠2は「ヘアアイロン」に関するものであり,ブラシを備えている。従って,両者は同一の物品といえる。
(イ)共通点
1)ブラシ部,持ち手部及び電源コード部からなり,持ち手部がブラシ部の下部に位置し,電源コード部が持ち手部の下部に位置する基本的構成態様とした点で共通する。
また,その具体的な態様においては,
2)ブラシ部において,一定間隔で長手方向に複数のブラシが配列しており,配列したブラシは合計8列であり,相互に等間隔となる様に設けられている点,
3)ブラシ部の先端に円筒状の先端部が設けられている点,
4)持ち手部のブラシ部側にフランジが設けられている点,
5)持ち手部の最下部に電源コード部が設けられている点,で共通する。
(ウ)差異点
a)ブラシ部における長手方向にそれぞれ配列したブラシの本数について,本件登録意匠は17本であるのに対し,引用意匠2は23本である点。
b)ブラシ部の先端部において,本件登録意匠は円形状のフランジを有しているのに対し,引用意匠2はそのようなフランジを有していない点。
c)持ち手部について,本件登録意匠は中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状を有しているのに対し,引用意匠2はブラシ部側の直径が最も大きく,かつ,当該ブラシ部側から約2/3の位置の直径が最も小さくなっており,さらに電源コード部に向かうに従い直径が大きくなるような形状を有している点。
d)持ち手部のフランジの形状について,本件登録意匠は円形状であるのに対し,引用意匠2は八角形状である点。
(エ)本件登録意匠と引用意匠2との類否
(あ)差異点a)(ブラシ部におけるブラシの本数)
差異点a)にかかる構成,すなわち,ブラシ部におけるブラシの本数の異同については,本件登録意匠の方が僅かにブラシの本数が少ないといった程度にしか看者に認識されないものである。例えば,甲第4号証では,16本のブラシが長手方向に配列されており,甲第6号証では17本のブラシが長手方向に配列されている。そうすると,ブラシの本数の異同は両意匠の共通性を否定する程の相違であるとはいえず,極めて局所的な差異でしかない。従って,ブラシの本数の異同が両意匠の類否判断に影響を及ぼすものでないことは明らかである。
(い)差異点b)(ブラシ部の先端部におけるフランジの有無)
甲第4号証ないし甲第7号証によれば,円形状のフランジが設けられた先端部を有するヘアアイロンが開示されている。従って,当該先端部に円形状のフランジを設けることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,ブラシ部の先端に円形状のフランジを備えた先端部を設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点b)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(う)差異点c)(持ち手部の形状)
甲第8号証ないし甲第10号証によれば,持ち手部の形状に関し,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状の持ち手部を備えたヘアアイロンが開示されている。従って,持ち手部において,前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状の持ち手部を設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点c)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(え)差異点d)(持ち手部のフランジの形状)
甲第11号証及び甲第12号証によれば,持ち手部のフランジに関し,ヘアアイロンの横転防止のための支持台を有しない円形状のものが開示されている。従って,持ち手部のフランジにおいて前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことである。そのため,本件登録意匠において,持ち手部のブラシ部側に円形状のフランジを設ける態様は,格別に特徴的なものとはいえず,差異点d)に係る本件登録意匠の構成は,両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。
(お)また,上記差異点a)?差異点d)を総合しても,両意匠の共通感を凌駕するものではないので,本件登録意匠は,引用意匠2に類似するものである。
(オ)本件登録意匠の創作容易
(あ)差異点a)(ブラシ部におけるブラシの本数)
本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2号証?甲第5号証及び甲第7号証)が存在することに照らせば,引用意匠2の構成から本件登録意匠の差異点a)に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない。また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されている。従って,本件登録意匠の差異点a)に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである。
(い)差異点b)(ブラシ部の先端部におけるフランジの有無)
本件登録意匠出願前において,ブラシ部の先端部にフランジを設けることは,甲第4号証ないし甲第7号証に開示されているように周知である。従って,引用意匠2の構成において本件登録意匠の差異点b)に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできず,当業者が容易に創作できたものである。
(う)差異点c)(持ち手部の形状)
本件登録意匠出願前において,ヘアアイロンの持ち手部の骨格的な形状として,中央部分が両端寄りも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状とすることは,甲第8号証ないし甲第10号証に示されているように,普通にみられる程度のものであり周知の形状である。従って,c)に係る本件登録意匠の構成は,引用意匠2に甲第8号証ないし甲第10号証に示されているような周知の持ち手部の形状を適用することにより,当業者が容易に創作できたものである。
なお,甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンはブラシを備えないものではあるが,髪をカールさせる加熱チューブの下部に持ち手部としてのハンドル12が設けられ,さらにハンドル12の下部に電源コード部としての回転コネクタ17が設けられたものである。すなわち,本件登録意匠と甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンは基本形状の異なる意匠とはいえないものである。
(え)差異点d)(持ち手部のフランジの形状)
本件登録意匠出願前に,持ち手部に円形状のフランジを設けたヘアアイロン(甲第11号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,引用意匠2の構成から本件登録意匠の差異点d)に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである。
(お)以上によれば,本件登録意匠は,引用意匠2及び周知の形状に基づいて,当業者が容易に創作できたものに該当することは明らかである。

3.むすび
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び同条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

4.証拠方法
甲第1号証:意匠登録第1424844号公報の写し
甲第2号証:意匠登録第557941号公報の写し
甲第3号証:意匠登録第557952号公報の写し
甲第4号証:意匠登録第1142430号公報の写し
甲第5号証:米国意匠登録第269,298号公報の写し
甲第6号証:米国意匠登録第285,366号公報の写し
甲第7号証:米国意匠登録第294,743号公報の写し
甲第8号証:米国特許第4,866,248号公報の写し
甲第9号証:米国特許第5,887,600号公報の写し
甲第10号証:米国意匠登録第627,568号公報の写し
甲第11号証:米国特許第4,196,489号公報の写し
甲第12号証:米国特許第4,486,915号公報の写し


第2 被請求人の答弁及び理由
被請求人は,請求人の申立及び理由に対して,「本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求める。」と答弁をした。

1.答弁の理由の概要
(1)無効理由1に対して
(ア)本件登録意匠と引用意匠1との対比
[共通点]
1)意匠に係る物品は,いずれも「ブラシ付きヘアアイロン」であり,共通する。
2)両意匠は,先方をブラシ部とし,その後方を持ち手部とした丸棒状であり,持ち手部の背部に操作スイッチを設けた点が共通する。
[差異点]
a)本件登録意匠は,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置しているのに対し,引用意匠1は,先方略2/5をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを配置している点,
b)本件登録意匠は,持ち手部が,中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形であるのに対し,引用意匠1の持ち手部は,ブラシ部側から後方に向かって径が小さくなる略ローソク形である点に差異が認められる。
(イ)本件登録意匠と引用意匠1との類否判断
両意匠の共通点であるヘアアイロンの全体態様については,両意匠の形態全体の基調を奏する態様ではあるが,具体的な形態から離れた概念的な構成態様であり,この共通性を以て両意匠の類否判断を決することはできない。
これに対し,両意匠のブラシ部における差異点a)について,本件登録意匠のように,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置した点は,ヘアアイロンのように需要者が手に持って使用する物品にあっては,その全体形状が看者の注意を惹く部分であるから,先方2/5をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを密に配置している引用意匠1とは異なる印象を与え,この差異は類否判断に影響を与えるものである。また,差異点b)の持ち手部の形状の違いは,一見して目立つ差異であり,特に,持ち手部は,需要者が手に持つ部分であることから視認性が高く,両者は別異の印象を与えるものである。
そうすると,両意匠の共通点よりも差異点の方が両意匠の類否に与える影響が支配的であり,両意匠のブラシ部及び持ち手部の差異点が相俟って奏する意匠的効果は,類否判断を左右するといわざるを得ない。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,両意匠の形態においては差異点が共通点を凌駕し,意匠全体としては美感が異なるものであるから,類似するものではない。
(2)無効理由2に対して
(ア)本件登録意匠と引用意匠2との対比
[共通点]
1)意匠に係る物品は,いずれも「ブラシ付きヘアアイロン」であり,共通する。
2)両意匠は,先方をブラシ部とし,その後方を持ち手部とした丸棒状であり,持ち手部の後方に電源コード部を設け,持ち手部の背部に操作スイッチを設けた点が共通する。[差異点]
a)本件登録意匠は,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置しているのに対し,引用意匠2は,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを配置している点,
b)本件登録意匠は,持ち手部が,中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形であるのに対し,引用意匠2の持ち手部は,ブラシ部側の径が最も大きく,かつ,該ブラシ部側から略2/3の位置の径が最も小さくなっており,さらに電源コード側に向かうに従い径が大きくなるような略鼓形である点に差異が認められる。
(イ)本件登録意匠と引用意匠2との類否判断
両意匠の共通点であるヘアアイロンの全体態様については,両意匠の形態全体の基調を奏する態様ではあるが,具体的な形態から離れた概念的な構成態様であり,この共通性を以て両意匠の類否判断を決することはできない。
これに対し,両意匠のブラシ部における差異点a)について本件登録意匠のように,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置した点は,ヘアアイロンのように需要者が手に持って使用する物品にあっては,その全体形状が看者の注意を惹く部分であるから,先方2/5をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを密に配置している引用意匠2とは異なる印象を与え,この差異は類否判断に影響を与えるものである。また,差異点b)の持ち手部の形状の違いは,一見して目立つ差異であり,特に,持ち手部は,需要者が手に持つ部分であることから視認性が高く,両者は別異の印象を与えるものである。
そうすると,両意匠の共通点よりも差異点の方が両意匠の類否に与える影響が支配的であり,両意匠のブラシ部及び持ち手部の差異点が相俟って奏する意匠的効果は,類否判断を左右するといわざるを得ない。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致するが,両意匠の形態においては差異点が共通点を凌駕し,意匠全体としては美感が異なるものであるから,類似するものではない。
(3)無効理由3に対して
(本件登録意匠の創作容易性について)
本件登録意匠がブラシ部と持ち手部と電源コード部とからなるヘアアイロンである態様は,引用意匠1,2に示すように,本件登録意匠の出願前に見受けられるものである。しかしながら,ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置している構成と,持ち手部を中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形態は,本件登録意匠の出願前には公然知られていない。
そうすると,ブラシ部と持ち手部と電源コード部とからなるヘアアイロンは,公知のものであっても,ブラシ部の形態や持ち手部の形態をどのようにするかについては創意工夫を要するものである。
したがって,本件登録意匠は,引用意匠1と甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたものではない。
(4)無効理由4に対して
(本件登録意匠の創作容易性について)
本件登録意匠がブラシ部と持ち手部と電源コード部とからなるヘアアイロンである態様は,引用意匠1,2に示すように,本件登録意匠の出願前に見受けられるものである。しかしながら,ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置している構成と,持ち手部を中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形態は,本件登録意匠の出願前には公然知られていない。
そうすると,ブラシ部と持ち手部と電源コード部とからなるヘアアイロンは,公知のものであっても,ブラシ部の形態や持ち手部の形態をどのようにするかについては創意工夫を要するものである。
したがって,本件登録意匠は,引用意匠2と甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたものではない。

2.むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,引用意匠1,2とは類似しないし,またその出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(甲第2号証?第12号証)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものでもない。
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号および意匠法第3条2項の規定には該当しない。
よって,本件審判の請求は成り立たない,との審決を求めるものである。


第3 請求人の弁駁及び理由
請求人は,被請求人の答弁及び理由に対して,弁駁をした。その理由は以下の通りである。

1.弁駁の理由の概要
(1)無効理由1
[本件登録意匠と引用意匠1との対比]
被請求人は,本件登録意匠と引用意匠1との対比において差異点a)として,ブラシ部について引用意匠1と異なる旨主張しているが,ブラシ部の全体に占める割合やブラシ部におけるブラシの位置及び本数が本件登録意匠を格別に特徴的なものにしているとはいえない。例えばブラシ部の全体に占める割合,及びブラシ部におけるブラシの位置については,甲第12号証のFIG.1,甲第13号証及び甲第14号証において,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4にブラシが配置された態様のブラシ付きヘアアイロンが開示されている。そうすると,本件登録意匠におけるブラシ部の全体に占める割合,及びブラシの位置が格別に特徴的なものといえないことは明らかである。
また,被請求人は,本件登録意匠と引用意匠1との対比において差異点b)として,
持ち手部の形状が本件登録意匠の要部の一つであるかのような主張をしているが,甲第8号証ないし甲第10号証によれば,持ち手部として,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状のものを備えたヘアアイロンが開示されている。したがって,持ち手部において前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことであり,格別に特徴的なものとはいえない。その結果,差異点b)に係る持ち手部の形状は,本件登録意匠と引用意匠1との類否判断に影響を及ぼすものではない。
差異点b)に係る被請求人の上記主張は,以下に述べる理由により信義誠実の原則に反するものであり,許されない。
すなわち,被請求人は,平成24年10月23日,請求人に対し,請求人が販売する商品(以下,「請求人商品」という。)が本件登録意匠と類似するとして,本件登録意匠に基づく意匠権侵害の主張等を内容とする通知書(甲第15号証)を送付した。当該通知書に対し,請求人は,平成24年11月12日,被請求人に対し,請求人商品が本件登録意匠と類似すると主張する根拠を求めると共に,本件登録意匠が無効理由を有していることを内容とする回答書(甲第16号証)を送付した。
これに対し,被請求人は,平成24年12月26日,請求人に対し回答書(甲第17号証。以下,「被請求人回答書」という。)を送付し,当該被請求人回答書において,被請求人は,本件登録意匠の要部がパイプ部分(ロールブラシ部分を含む。)にあり,当該パイプ部分の形態が請求人商品のパイプ部分の形態と類似するから,本件登録意匠と請求人商品は類似すると主張した。
請求人商品は,その持ち手部の形状や色彩などは本件登録意匠の持ち手部と全く異なるものである。すなわち,本件登録意匠と請求人商品は,例えば,持ち手部の形態などにおいて顕著な差異点が見出されるにも関わらず,パイプ部分が本件登録意匠の要部であるなどとして,意匠権の侵害を主張し,請求人商品の販売中止等を求めたという経緯がある。
このような経緯があるにも関わらず,被請求人は,答弁書において,持ち手部の形状の違いを差異点b)として挙げ,持ち手部が需要者にとって視認性が高く,その形状の差異によって需要者に別異の印象を与えるなどとして,引用意匠1との類似性を否定する主張をしている。
したがって,答弁書における被請求人の主張は,被請求人回答書における主張と矛盾するものであり,信義誠実の原則に反することが明らかであるので,許されない。なお,仮に差異点b)が本件登録意匠と引用意匠1との共通点を凌駕し,両者が類似しないというのであれば,同様の理由により請求人商品は本件登録意匠と類似しないことになる。
(2)無効理由2
[本件登録意匠と引用意匠2との対比]
被請求人は,本件登録意匠と引用意匠2との対比において差異点a)として,ブラシ部について引用意匠2と異なる旨主張しているが,ブラシ部の全体に占める割合やブラシ部におけるブラシの位置及び本数が本件登録意匠を格別に特徴的なものにしているとはいえないことは,上記(1)で述べた通りである。したがって,本件登録意匠におけるブラシ部の全体に占める割合,及びブラシの位置が格別に特徴的なものといえないことは明らかである。そうすると,被請求人が述べる差異点a)が本件登録意匠と引用意匠2との類否判断に影響を与えるものでないことは明らかである。
また,被請求人は,本件登録意匠と引用意匠2との対比において差異点b)として,
持ち手部の形状が本件登録意匠の要部の一つであるかのような主張をしているが,甲第8号証ないし甲第10号証によれば,持ち手部として,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状のものを備えたヘアアイロンが開示されている。したがって,持ち手部において前記のような形態を用いることは,本件登録意匠出願当時,広く認められていたことであり,格別に特徴的なものとはいえない。その結果,差異点b)に係る持ち手部の形状は,本件登録意匠と引用意匠2との類否判断に影響を及ぼすものではない。
また,差異点b)に関する係る被請求人の上記主張は,上記(1)において述べたのと同様の理由により,信義誠実の原則に反するものであり許されない。
(3)無効理由3
[本件登録意匠の創作容易性]
ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置している構成については,例えば,甲第12号証のFIG.1,甲第13号証及び甲第14号証に開示されている。また,持ち手部を中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形状については,甲第8号証ないし甲第10号証に示されているように,普通に見られる程度のものであり周知の形状である。したがって,被請求人の主張は失当である。
そして,ブラシ部のブラシの本数については,本件意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2号証?甲第5号証,甲第7号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,ブラシの本数を変更することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない。
以上によれば,本件登録意匠は,引用意匠1及び周知の形状に基づいて,当業者が容易に創作できたものに該当することは明らかである。
(4)無効理由4
[本件登録意匠の創作容易性]
ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に複数のブラシを配置している構成については,例えば,甲第12号証のFIG.1,甲第13号証及び甲第14号証に開示されている。また,持ち手部を中央が太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形状については,甲第8号証ないし甲第10号証に示されているように,普通に見られる程度のものであり周知の形状である。したがって,被請求人の主張は失当である。
そして,ブラシ部のブラシの本数については,本件意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2号証?甲第5号証,甲第7号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,ブラシの本数を変更することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない。
以上によれば,本件登録意匠は,引用意匠2及び周知の形状に基づいて,当業者が容易に創作できたものに該当することは明らかである。

2.むすび
したがって,本件登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び同条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,その意匠登録は同法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。

3.証拠方法
甲第13号証:米国意匠登録第650,942号公報の写し
甲第14号証:米国意匠登録第314,064号公報の写し
甲第15号証:通知書の写し
甲第16号証:回答書の写し
甲第17号証:回答書の一部写し


第4 被請求人の再答弁
被請求人は,請求人の弁駁及び理由に対して,再答弁をした。その理由は以下の通りである。

1.無効理由1に対して
(1)差異点Aについて
1)被請求人の差異点Aの主張に対して,請求人は,甲第12号証のFIG.1,甲第13号証及び甲第14号証を引用して,本件登録意匠におけるブラシ部の全体に占める割合やブラシの位置及び本数は格別特徴的なものとはいえないと主張している。なお,甲第13号証は,本件登録意匠の出願後に公開されたものであるから,公知意匠ではない。
2)しかし,被請求人は,ヘアアイロン全体におけるブラシ部の占める割合及びブラシの位置や本数などを本件登録意匠から切り離して,その部分が特徴的部分であると主張しているものではない。本件登録意匠のように,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置した点は,ヘアアイロンのように需要者が手に持って使用する物品にあっては,その全体形状が看者の注意を惹く部分であるから,先方略2/5をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを密に配置している引用意匠1とは異なる印象を与え,この差異は類否判断に影響を与えるものであると主張しているものである。
(2)差異点Bについて
1)被請求人の差異点Bの主張に対して,請求人は,甲第8号証ないし甲第10号証を引用して,本件登録意匠の持ち手部の形状は特徴的なものではないと主張している。
しかし,被請求人は,持ち手部の形状(ブラシ側の伏皿状フランジを含む)が引用意匠1の持ち手部と相違していろとだけ主張しているのではなく,持ち手部の形状と前記のような構成のブラシ部が結合されたヘアアイロンの形態が本件登録意匠の特徴であり,引用意匠1と対比すると,両者はまったく別異の印象をあたえるので,両者は類似しないと主張しているのである。
(3)結論
以上のとおり,本件登録意匠と引用意匠1とを全体的に観察すると,両意匠のブラシ部と持ち手部との差異点とが相侯って,意匠全体としては美観が相違するので,両者は類似しない。

2.無効理由2に対して
(1)差異点Aについて
1)被請求人の差異点Aの主張に対して,請求人は,甲第12号証のFIG.1,甲第13号証及び甲第14号証を引用して,本件登録意匠におけるブラシ部の全体に占める割合やブラシの位置及び本数は格別特徴的なものとはいえないと主張している。尚,甲第13号証は,本件登録意匠の出願後に公開されたものであるから,公知意匠ではない。
2)しかし,被請求人は,ヘアアイロン全体におけるブラシ部の占める割合及びブラシの位置や本数などを本件登録意匠から切り離して,その部分が特徴的部分であると主張しているものではない。本件登録意匠のように,先方略1/2をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置した点は,ヘアアイロンのように需要者が手に持って使用する物品にあっては,その全体形状が看者の注意を惹く部分であるから,先方略2/5をブラシ部とし,そのブラシ部の略3/5に23本のブラシを密に配置している引用意匠2とは異なる印象を与え,この差異は類否判断に影響を与えるものであると主張しているものである。
(2)差異点Bについて
1)被請求人の差異点Bの主張に対して,請求人は,甲第8号証ないし甲第10号証を引用して,本件登録意匠の持ち手部の形状は特徴的なものではないと主張している。
しかし,被請求人は,持ち手部の形状(ブラシ側の伏皿状フランジを含む)が引用意匠2の持ち手部と相違しているとだけ主張しているのではなく,持ち手部の形状と前記のような構成のブラシ部が結合されたヘアアイロンの形態が本件登録意匠の特徴であり,引用意匠2と対比すると,両者はまったく別異の印象をあたえるので,両者は類似しないと主張しているのである。
(3)結論
以上のとおり,本件登録意匠と引用意匠2とを全体的に観察すると,両意匠のブラシ部と持ち手部との差異点とが相侯って,意匠全体としては美観が相違するので両者は類似しない。

3.無効理由3に対して
(1)本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠がブラシ部と持ち手部と電源コード部とからなるヘアアイロンである態様は,引用意匠1,2に示すように,本件登録意匠の出願前に見受けられるものである。しかしながら,ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置している構成と,持ち手部を中央部太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形態は,本件登録意匠の出願前には公然知られていない。
そうすると,ブラシ部と手持ち部と電源コード部とからなるヘアアイロンは公知のものであっても,ブラシ部の形態や持ち手部の形態をどのようにするかについては創意工夫を要するものである。
したがって,本件登録意匠は,引用意匠1と甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたものではない。

4.無効理由4に対して
(1)本件登録意匠の創作容易性について
本件登録意匠がブラシ部と手持ち部と電源コード部とからなるヘアアイロンである態様は,引用意匠1,2に示すように,本件登録意匠の出願前に見受けられるものである。しかしながら,ブラシ部を先方略1/2に形成し,そのブラシ部の略3/4に17本のブラシを配置している構成と,持ち手部を中央部太く両端が次第に細くなっている略紡錘形に形成した形態は,本件登録意匠の出願前には公然知られていない。
そうすると,ブラシ部と手持ち部と電源コード部とからなるヘアアイロンは公知のものであっても,ブラシ部の形態や持ち手部の形態をどのようにするかについては創意工夫を要するものである。
したがって,本件登録意匠は,引用意匠2と甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたものではない。

5.むすび
以上のとおり,本件登録意匠は,引用意匠1,2とは類似しないし,また,その出願前に,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者が,日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(甲第2号証?第12号証)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものでもない。
したがって,本登録意匠は,意匠法第3条第1項第3号及び意匠法第3条第2項の規定には該当しない。
よって,答弁の趣旨のとおり,本件審判の請求は成り立たない,との審決を求めるものである。


第5 当審の判断
当審は,本件登録意匠が本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第2号証(無効理由1)に記載された意匠(以下「引用意匠1」という。)と類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号には該当しないと判断する。
また,本件登録意匠が本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である甲第3号証(無効理由2)に記載された意匠(以下「引用意匠2」という。)と類似しないものであり,意匠法第3条第1項第3号には該当しないと判断する。
そして,本件登録意匠が引用意匠1及び先行意匠甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたもの(無効理由3)ともいえないので,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項に違反して意匠登録を受けたものということはできないと判断する。
さらに,本件登録意匠が引用意匠2及び先行意匠甲第4号証?甲第12号証から容易に創作することができたもの(無効理由4)ともいえないので,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項に違反して意匠登録を受けたものということはできないと判断する。その理由は,以下のとおりである。

1.本件登録意匠
本件登録意匠(意匠登録第1424844号の意匠)は,平成23年4月4日に意匠登録出願され,平成23年9月9日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「ブラシ付きヘアアイロン」とし,その形態は,願書の記載及び願書に添付された図面に記載されたとおりのものである。(甲第1号証:別紙第1参照)
すなわち,本件登録意匠は,髪をカールするために使用するブラシの付いたヘアアイロンである。
その形態は,ブラシ部と持ち手部,電源コード部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とし,左からブラシ部,持ち手部,電源コード部を配したものである。
ブラシ部は,左端に略倒円錐台形で鍔のあるキャップ部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に17本のブラシが軸部から櫛状に突設して配列されている。配列されたブラシは縦断面視8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。ブラシの先端部は,半球状に丸みを帯びている。ブラシは白色で,キャップ部とブラシ部の芯材は黒色である。
持ち手部は,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びた略倒円柱形状である。持ち手部のブラシ部側には略倒円盤形状のフランジが設けられている。持ち手部の上面側中央部には,略横長長円形状のスライド式のスイッチが設けられている。持ち手部は全体が黒色である。
電源コード部は,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって外周に凹凸部が形成されている。

2.無効理由1について
(1)引用意匠1(甲第2号証の意匠)
引用意匠1(意匠登録第557941号の意匠)は,1978年(昭和53年)3月23日に意匠登録出願され,1981年(昭和56年)4月30日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「ヘアアイロン」とし,その形態は,1981年(昭和56年)8月22日に発行された意匠公報に掲載された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第2参照)
すなわち,引用意匠1は,髪をカールするために使用するブラシの付いたヘアアイロンである。
その形態は,ブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とし,左からブラシ部,持ち手部,電源コード接続部を配したものである。
ブラシ部は,左端に略倒円錐台形のキャップ部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に23本のブラシが各々軸部から突設して配列されている。配列されたブラシはA-A断面図において8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。ブラシの先端部は,半球状に丸みを帯びている。キャップ部寄りと持ち手部寄りの両端部寄りのブラシがやや太くなっている。
ブラシ部と持ち手部のフランジとの中間部に倒短円柱状部分が設けられ,その下面に小型円形状の突起部が設けられている。
持ち手部は,ブラシ部側が太く電源コード接続部側が細く,全体として略倒円柱形状である。持ち手部のブラシ部側には薄い略倒円錐台形状のフランジが設けられている。フランジの底面側に左右側面視略横長長方形状に突出した支持部を設け,持ち手部の上面には,ブラシ部側にねじ留め部と縦長長円形状の押しボタンスイッチが,中央部からやや右寄りにかけて横長長方形状のスライド式のスイッチが設けられている。持ち手部の正面及び背面の上下中央に水平状に切り替え線が設けられている。
電源コード接続部は,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって外周に凹凸部が形成されている。
(2)本件登録意匠(甲第1号意匠)と引用意匠1(甲第2号意匠)との対比
1)意匠に係る物品
まず,意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「ブラシ付きヘアアイロン」であって,引用意匠1は,「ヘアアイロン」であるが,いずれも髪をカールするために使用するブラシの付いたヘアアイロンであるから,意匠に係る物品が共通する。
2)形態における共通点
両意匠には,(a)ブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とし,左からブラシ部,持ち手部,電源コード接続部を配したものである点,(b)ブラシ部は,左端に略倒円錐台形のキャップ部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に複数本のブラシが軸部から突設して配列され,配列されたブラシは断面視8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている点,(c)持ち手部は,全体として略倒円柱形状で,持ち手部のブラシ部側にはフランジが設けられ,上面には,スライド式のスイッチが設けられている点,(d)電源コード接続部は,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって凹凸部が形成されている点,において主に共通する。
3)形態における差異点
両意匠には,(ア)持ち手部の全体形状について,本件登録意匠は,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びている態様で,正面及び背面の上下中央に分割線がないのに対して,引用意匠1は,ブラシ部側が太く電源コード接続部側が細い態様で,正面及び背面の上下中央に水平状に分割線が設けられている点,(イ)ブラシ部と持ち手部の間について,本件登録意匠は,ブラシ部からすぐに持ち手部のフランジが設けられているのに対して,引用意匠1は,ブラシ部と持ち手部のフランジとの中間部に倒短円柱状部分が設けられている点,(ウ)持ち手部のフランジについて,本件登録意匠は,略倒円盤形状であるのに対して,引用意匠1は,フランジが薄い略倒円錐台形状で,底面側に左右側面視略横長長方形状に突出した支持台部が設けられている点,(エ)キャップ部について,本件登録意匠は,鍔部を有しているのに対して,引用意匠1は,鍔部を有していない点,(オ)持ち手部のスイッチについて,本件登録意匠は,持ち手部の上面側中央部に,略横長長円形状のスライド式のスイッチが設けられているのに対して,引用意匠1は,ブラシ部側に縦長長円形状の押しボタンスイッチが,中央部からやや右寄りにかけて横長長方形状のスライド式のスイッチが設けられている点,(カ)ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率について,本件登録意匠は,約3.3:4.9:1.4でブラシ部より持ち手部の方がやや長めであるのに対して,引用意匠1は,約3.3:7:1で持ち手部の方がかなり長めである点,(キ)ブラシ部について,本件登録意匠は,長手方向に17本のブラシが軸部から櫛状に配列されているのに対して,引用意匠1は,長手方向に23本のブラシが各々軸部から配列されている点,に主な差異が認められる。
(3)両意匠の類否判断
そこで検討するに,共通点の態様のうち,(a)のブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とする態様は,この種の物品の分野においては,普通に見られるありふれた態様といえるもので,(例えば,甲第4ないし6号証の意匠(別紙第4ないし6参照))その構成を有する点のみをもって両意匠の類否判断を決定付ける共通点ということはできない。また,(b)のブラシ部について,左端に略倒円錐台形のキャップ部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に複数本のブラシが軸部から突設して配列され,配列されたブラシは断面視8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられ,ブラシの先端部は,半球状に丸みを帯びている態様は両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度あるというべきではあるが,この種の物品の分野においては,同様のブラシ部の構成を有するブラシ付きヘアードライヤーが,引用意匠1と本件登録意匠の出願との間にも他にも公然と認められ(例えば,意匠登録第657859号の意匠(参考意匠1,別紙第13参照)),この共通点は,両意匠のみの特徴ではないから,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。そして,(c)持ち手部が,全体として略倒円柱形状で,持ち手部のブラシ部側にはフランジが設けられ,上面には,スライド式のスイッチが設けられている態様についても前記参考意匠1にも見られる態様であって,両意匠にのみ見られる特徴とはいえず,この共通点が,両意匠の類否判断を左右する程のものとはいえないものである。さらに,(d)の電源コード接続部が,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって凹凸部が形成されている点は,引用意匠1の他にも公然と認められ(例えば,意匠登録第565343号の意匠(参考意匠2,別紙第14参照)),両意匠のみの特徴ではないから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,微弱なものといえる。
これに対して,両意匠全体を観察すると,下記考察のとおり,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,看者の注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
すなわち,(ア)に係る態様については,分割線の有無についてのみであれば,さほど目立つ相違とはいえないものであるが,持ち手部の全体形状についての差異は大きな差異で,その差異は,使用時に手で握る部分に係り,看者の注意を強く惹くところであり,両意匠の持ち手部の形態全体の骨格的な態様に係り,両意匠の印象を大きく異ならせるものといえる。
次に,差異点(イ)に係る態様についても,倒短円柱状部分を有さない本件登録意匠の態様は,全体がよりコンパクトな印象を与えるものであるから,両意匠を別異のものと印象付ける目立つ相違であり,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(ウ)の持ち手部のフランジについて,持ち手部側が凸曲面の略倒円盤形状である本件登録意匠の態様は,他に見られない特徴的な態様であり,前記差異点(ア)の持ち手部の全体形状と相俟って,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
そして,差異点(エ)のキャップ部に係る態様については,本件登録意匠のようにキャップ部に鍔があるものも,引用意匠1のように鍔のないものも,いずれもありふれた態様といえるものではあるが,使用時にも常に視認できる部位に係るもので,その差異は,需要者の注意を惹くものといえ,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(オ)の持ち手部のスイッチに係る態様については,いずれも本件登録意匠の出願前より,様々な態様のものが認められ,両意匠とも特別な印象を起こさせるものとはいえないが,使用時に操作する部位に係る差異で,両意匠の形態は大きく異なるといえるもので,その差異は,看者の注意を惹くところであり,両意匠の印象を異ならせるものといえる。
さらに,差異点(カ)のブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率について,様々な態様がある中での選択の範囲内のものではあるが,その差異は,両意匠の骨格に係るものといえ,全体の印象を異にするものといえるため,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(キ)のブラシの本数の差異についても,小さな点ではあるが,使用時の機能性にも影響を与えるところであって,両意匠の印象に影響を与える差異であるから,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
そうして,これらの差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるに十分なものである。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似するということはできない。
(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に掲載された甲第1号証(無効理由1)に記載された引用意匠1とは類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号には該当せず,無効理由を有さないものであって,本件登録意匠は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

3.無効理由2について
(1)引用意匠2(甲第3号証の意匠)
引用意匠2(意匠登録第557952号の意匠)は,1978年(昭和53年)9月27日に意匠登録出願され,1981年(昭和56年)4月30日に意匠権の設定の登録がなされたものであり,意匠に係る物品を「ヘアアイロン」とし,その形態は,1981年(昭和56年)8月22日に発行された意匠公報に掲載された図面に記載されたとおりのものである。(別紙第3参照)
すなわち,引用意匠2は,髪をカールするために使用するブラシの付いたヘアアイロンである。
その形態は,ブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とし,左からブラシ部,持ち手部,電源コード接続部を配したものである。
ブラシ部は,左端に略倒円錐台形の頭部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に23本のブラシが各々芯材から突設して配列されている。配列されたブラシは左側面視において8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている。
ブラシ部と持ち手部のフランジとの中間部に倒短円柱状部分が設けられ,その上面に小型円形状の突起部が設けられている。
持ち手部は,ブラシ部側が太く電源コード接続部側が細く,中央部から電源コード接続部寄りにかけて浅く凹円弧状に緩やかに抉られており,全体として略倒円柱形状である。持ち手部のブラシ部側には倒八角形の薄い略板状でブラシ部側が僅かに膨出したフランジが設けられている。持ち手部の上面側のフランジ部付近には,ブラシ部側に1個のねじ留め部が,底面側のフランジ部付近及び中央のやや電源コード接続部寄りの位置には,1個ずつねじ留め部が設けられている。持ち手部の正面及び背面の上下中央に水平状に切り替え線が設けられている。
電源コード接続部は,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって外周に凹凸部が形成されている。
(2)本件登録意匠(甲第1号意匠)と引用意匠2(甲第3号意匠)との対比
1)意匠に係る物品
まず,意匠に係る物品については,本件登録意匠は,「ブラシ付きヘアアイロン」であって,引用意匠2は,「ヘアアイロン」であるが,いずれも髪をカールするために使用するブラシの付いたヘアアイロンであるから,意匠に係る物品が共通する。
2)形態における共通点
両意匠には,(a)ブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とし,左からブラシ部,持ち手部,電源コード接続部を配したものである点,(b)ブラシ部は,左端に略倒円錐台形の頭部を設け,略倒円柱形状の芯材の周囲に一定間隔で長手方向に複数本のブラシが軸部から突設して配列され,配列されたブラシは断面視8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている点,(c)持ち手部は,全体として略倒円柱形状で,持ち手部のブラシ部側にはフランジが設けられている点,(d)電源コード接続部は,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって凹凸部が形成されている点,において主に共通する。
3)形態における差異点
両意匠には,(ア)持ち手部の全体形状について,本件登録意匠は,中央部分が両端よりも膨らみ,全体として丸みを帯びている態様で,正面及び背面の上下中央に分割線がないのに対して,引用意匠2は,ブラシ部側が太く電源コード接続部側が細い態様で,中央部から電源コード接続部寄りにかけて浅く凹円弧状に緩やかに抉られており,正面及び背面の上下中央に水平状に分割線が設けられている点,(イ)ブラシ部と持ち手部の間について,本件登録意匠は,ブラシ部からすぐに持ち手部のフランジが設けられているのに対して,引用意匠2は,ブラシ部と持ち手部のフランジとの中間部に倒短円柱状部分が設けられている点,(ウ)持ち手部のフランジについて,本件登録意匠は,略倒円盤形状であるのに対して,引用意匠2は,倒八角形の薄い略板状でブラシ部側が僅かに膨出した形状である点,(エ)ブラシ部の頭部について,本件登録意匠は,鍔部を有したキャップ部が設けられているのに対して,引用意匠2は,キャップ部を有していない点,(オ)スイッチについて,本件登録意匠は,持ち手部の上面側中央部に,略横長長円形状のスライド式のスイッチが設けられているのに対して,引用意匠2は,持ち手部にスイッチが設けられておらず,ブラシ部と持ち手部のフランジとの中間部の上面に小型円形状の突起部が設けられている点,(カ)ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率について,本件登録意匠は,約3.3:4.9:1.4で持ち手部が短めであるのに対して,引用意匠2は,約3.3:5.2:0.8で持ち手部がやや長めである点,(キ)ブラシ部について,本件登録意匠は,長手方向に17本のブラシが軸部から櫛状に配列されているのに対して,引用意匠2は,長手方向に23本のブラシが各々芯材の周囲に配列されている点,に主な差異が認められる。
(3)両意匠の類否判断
そこで検討するに,共通点の態様のうち,(a)のブラシ部と持ち手部,電源コード接続部とから構成され,全体を略円柱状の横長の棒状とする態様は,この種の物品の分野においては,普通に見られるありふれた態様といえるもので,(例えば,甲第4ないし6号証の意匠(別紙第4ないし6参照))その構成を有する点のみをもって両意匠の類否判断を決定付ける共通点ということはできない。また,(b)のブラシ部について,左端に略倒円錐台形の頭部を設け,略倒円柱形状の軸部の周囲に一定間隔で長手方向に複数本のブラシが軸部から突設して配列され,配列されたブラシは断面視8方向で合計8列であり,各列は相互に等間隔となる様に設けられている態様は両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度あるというべきではあるが,この種の物品の分野においては,同様のブラシ部の構成を有するブラシ付きヘアードライヤーが,引用意匠2と本件登録意匠の出願との間にも他にも公然と認められ(例えば,前記参考意匠1の意匠(別紙第13参照)),この共通点は,両意匠のみの特徴ではないから,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。そして,(c)持ち手部が,全体として略倒円柱形状で,持ち手部のブラシ部側にはフランジが設けられている態様についても前記参考意匠1にも見られる態様であって,両意匠にのみ見られる特徴とはいえず,この共通点が,両意匠の類否判断を左右する程のものとはいえないものである。さらに,(d)の電源コード接続部が,持ち手部の右側に持ち手部より径の小さい水平状部と正面視斜め下方に略「へ」の字状に折曲した折曲部とからなり,折曲部は下方寄りが窄まって凹凸部が形成されている点は,引用意匠2の他にも公然と認められ(例えば,引用意匠1及び前記参考意匠2の意匠(別紙第14参照)),両意匠のみの特徴ではないから,この共通点が両意匠の類否判断に与える影響は,微弱なものといえる。
これに対して,両意匠全体を観察すると,下記考察のとおり,差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,看者の注意を強く惹くものであるから,両意匠の類否判断を左右するものというべきである。
すなわち,差異点(ア)に係る態様については,分割線の有無についてのみであれば,さほど目立つ相違とはいえないものであるが,持ち手部の全体形状についての差異は大きな差異で,その差異は,使用時に手で握る部分に係り,看者の注意を強く惹くところであり,両意匠の持ち手部の形態全体の骨格的な態様に係り,両意匠の印象を大きく異ならせるものといえる。
次に,差異点(イ)に係る態様についても,倒短円柱状部分を有さない本件登録意匠の態様は,全体がよりコンパクトな印象を与えるもので,両意匠を別異のものと印象付ける目立つ差異点といえるものであり,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(ウ)の持ち手部のフランジについて,倒八角形の薄い略板状の引用意匠2の態様と持ち手部側が凸曲面の略倒円盤形状である本件登録意匠の態様は,いずれも特徴的な態様であって,その差異は,看者の注意を惹くものといえ,前記差異点(ア)の持ち手部の全体形状と相俟って,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものである。
そして,差異点(エ)のブラシ部の頭部に係る態様については,本件登録意匠のように鍔部を有したキャップ部があるものも,引用意匠2のようにキャップ部のないものも,いずれもありふれた態様といえるものではあるが,ブラシ部の頭部は,使用時にも常に視認できる部位に係るもので,その差異は,需要者の注意を惹くものといえ,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(オ)のスイッチに係る態様については,いずれも本件登録意匠の出願前より,様々な態様のものが認められ,両意匠とも特別な印象を起こさせるものとはいえないが,使用時に操作する部位に係る差異であり,持ち手部におけるスイッチの有無の差異は,看者の注意を惹くところであり,両意匠の印象を若干異ならせるものといえる。
さらに,差異点(カ)のブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率について,様々な態様がある中での選択の範囲内のものではあるが,その差異は,両意匠の骨格に係るものといえ,全体の印象を異にするものといえるため,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
また,差異点(キ)のブラシの本数の差異についても,小さな点ではあるが,使用時の機能性にも影響を与えるところであって,両意匠の印象に影響を与える差異であるから,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものである。
そうして,これらの差異点に係る態様が相俟って生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断を決定付けるに十分なものである。
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が共通するが,その形態において,差異点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似するということはできない。
(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に掲載された甲第3号証(無効理由2)に記載された引用意匠2とは類似しない意匠であり,意匠法第3条第1項第3号には該当せず,無効理由を有さないものであって,本件登録意匠は,無効理由2によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

4.無効理由3について
(1)引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証(別紙第4ないし12)に基づく創作容易について
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証から容易に創作することができたものであり,意匠法第3条第2項に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである旨主張するので,以下,検討する。
(2)本件登録意匠と引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証との関係
1)引用意匠1
本件登録意匠と引用意匠1とは,(ア)持ち手部の全体形状,(イ)ブラシ部と持ち手部の間の有無,(ウ)持ち手部のフランジの形状,(エ)キャップ部の鍔部の有無,(オ)持ち手部のスイッチの形状,(カ)ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率,(キ)ブラシの本数,に主な差異が認められる。
2)先行意匠甲第4号証ないし12号証(別紙第4ないし12)の意匠
2-1)甲第4号証(別紙第4参照)
甲第4号証の先行意匠は,意匠登録第1142430号の「ヘアアイロン」に係る意匠で,甲第4号証の先行意匠には,ブラシ部の頭部にキャップ部があり,そのキャップ部に鍔部が設けられているが,本件登録意匠の鍔部は1段であるのに対して,甲第4号証の先行意匠は,鍔部の左端寄りにもう1段径の小さいフランジ部を有し,2段状となっており,正面視形状において本件登録意匠とは,鍔部の形状が異なるものである。また,甲第4号証の先行意匠には,ブラシ部に16本のブラシが設けられている。
2-2)甲第5号証(別紙第5参照)
甲第5号証の先行意匠は,米国意匠登録第269,298号の「ヘアカーリングアイロン」に係る意匠で,甲第5号証の先行意匠には,ブラシ部の頭部にキャップ部があり,そのキャップ部に鍔部が設けられているが,本件登録意匠のキャップ部は,横長で鍔部はキャップ部と段差状に形成されているのに対し,甲第5号証の先行意匠は,キャップ部が短く,鍔部はキャップ部から滑らかに拡がって設けられている点で,正面視形状において本件登録意匠とは,鍔部の形状が異なるものである。また,甲第5号証の先行意匠には,ブラシ部に25本のブラシが設けられている。
2-3)甲第6号証(別紙第6参照)
甲第6号証の先行意匠は,米国意匠登録第285,366号の「ヘアカーリングアイロンの取付け部品あるいはその類似品」に係る意匠であるが,本件登録意匠のキャップ部には,正面視した上下端部が隅丸状の鍔部があるのに対して,甲第6号証の先行意匠には,ブラシ部の頭部にキャップ部があるが,ブラシ部の先端部とキャップ部との境界に,鍔部はなく,ブラシ部から繋がる正面視した上下端部が角張っている略短円筒状部があり,その上面側に正面視凹円弧状の切り欠き部があり,平面視及び正面視形状において,本件登録意匠とは形状が異なるものである。また,甲第6号証の先行意匠には,ブラシ部に17本のブラシが設けられている。
2-4)甲第7号証(別紙第7参照)
甲第7号証の先行意匠は,米国意匠登録第294,743号の「ヘアカーリングアイロン」に係る意匠で,甲第7号証の先行意匠には,ブラシ部の頭部にキャップ部があり,そのキャップ部に鍔部が設けられているが,本件登録意匠のキャップ部は,キャップ部が正面視倒台形状であるのに対して,甲第7号証の先行意匠は,左端の先端部が凸円弧状に膨出しており,正面視倒U字形状で,正面視形状において本件登録意匠とは,キャップ部の形状が異なるものである。また,甲第7号証の先行意匠には,ブラシ部に25本のブラシが設けられている。
2-5)甲第8号証(別紙第8参照)
甲第8号証の先行意匠は,米国特許第4,866,248号の「ヘアカーリングアイロン」に係る意匠で,甲第8号証の先行意匠には,中央部分が両端部分よりも膨んだ持ち手部が設けられているが,本件登録意匠の持ち手部は,円盤状のフランジ部を有し,電源コード接続部に向かって細くなっているのに対して,甲第8号証の先行意匠は,左側に正面視倒逆台形状部分を設け,右側に持ち手部とは逆「へ」の字状に電源コード部を設けており,正面視形状において本件登録意匠とは,持ち手部及び電源コード部の形状が異なるものである。
2-6)甲第9号証(別紙第9参照)
甲第9号証の先行意匠は,米国特許第5,887,600号の「ヘアカーリングブラシ」に係る意匠で,甲第9号証の先行意匠には,中央部分が両端部分よりも膨んだ丸みを帯びた持ち手部が設けられているが,本件登録意匠の持ち手部は,円盤状のフランジ部を有し,電源コード接続部に向かって細くなっているのに対して,甲第9号証の先行意匠は,フランジ部がなく,持ち手部の右端寄りに僅かな括れ部を有し,右端には電源コード接続部がなく,セット用の棒状突起部を設けたもので,正面視形状において本件登録意匠とは,持ち手部の形状が異なるものである。
2-7)甲第10号証(別紙第10参照)
甲第10号証の先行意匠は,米国意匠登録第627,568号の「ヘアブラシ」に係る意匠で,甲第10号証の先行意匠には,中央部分が両端部分よりも膨んだ丸みを帯びた持ち手部が設けられているが,本件登録意匠の持ち手部は,円盤状のフランジ部を有し,電源コード接続部に向かって細くなっているのに対して,甲第10号証の先行意匠は,フランジ部がなく,持ち手部の左端寄りに緩やかな括れ部を有し,持ち手部の右端には電源コード接続部がなく,持ち手部の右端に,正背面に貫通する倒細長逆台形状の孔部を有するキャップ部及び右端に略球状突起部を設けたもので,正面視形状において本件登録意匠とは,持ち手部の形状が異なるものである。
2-8)甲第11号証(別紙第11参照)
甲第11号証の先行意匠は,米国特許第4,196,489号の「ヘアブラシ」に係る意匠で,甲第11号証の先行意匠には,厚みの薄いフランジ部を有する持ち手部が設けられているが,本件登録意匠の持ち手部は,円盤状のフランジ部を有しているのに対して,甲第11号証の先行意匠は,短円柱形状のフランジ部を有し,持ち手部は正面視横長の円柱状で,正面視形状において本件登録意匠とは,フランジ部及び持ち手部の形状が異なるものである。
2-9)甲第12号証(別紙第12参照)
甲第12号証の先行意匠は,米国特許第4,486,915号の「ヘアブラシ」に係る意匠で,甲第12号証のFIG.3の先行意匠には,厚みの薄いフランジ部から凹円弧状に緩やかに連続する持ち手部が設けられているが,本件登録意匠の持ち手部は,円盤状のフランジ部を有しているのに対して,甲第12号証の先行意匠は,短円柱形状のフランジ部を有し,持ち手部は正面視横長の円柱状で,正面視形状において本件登録意匠とは,フランジ部及び持ち手部の形状が異なるものである。
(3)本件登録意匠の創作容易性の判断
請求人は,本件登録意匠は,その出願前から公然知られた引用意匠1及び周知の先行意匠甲第4ないし12号証の形状に基づいて,当業者ならば容易に創作することができたものに該当すると主張する。
請求人は,(a)ブラシ部におけるブラシの本数について,本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2ないし5号証及び甲第7号証)が存在することに照らせば,引用意匠1の構成から本件登録意匠のブラシの本数に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない,また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されているため,本件登録意匠のブラシの本数に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである,(b)ブラシ部の左端部における鍔部の有無について,本件登録意匠出願前において,ブラシ部の左端部に鍔部を設けることは,甲第4ないし7号証に開示されているように周知であり,引用意匠1の構成において本件登録意匠の鍔部の有無に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできず,当業者が容易に創作できたものである,(c)持ち手部の形状について,本件登録意匠出願前において,ヘアアイロンの持ち手部の骨格的な形状として,中央部分が両端寄りも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状とすることは,甲第8ないし10号証に示されているように,普通にみられる程度のものであり周知形状であり,持ち手部に係る本件登録意匠の構成は,引用意匠1に,甲第8ないし10号証に示されているような周知の持ち手部の形状を適用することにより,当業者が容易に創作できたものである,なお,甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンはブラシを備えないものではあるが,髪をカールさせる加熱チューブの下部に持ち手部としてのハンドルが設けられたものであり,本件登録意匠と甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンは基本形状の異なる意匠とはいえないものである,(d)持ち手部のフランジの形状について,本件登録意匠出願前に,持ち手部に円形状のフランジを設けたヘアアイロン(甲第11号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,引用意匠1の円形状のフランジにおいてヘアアイロンの横転防止のための支持台を有しない,フランジ部に係る本件登録意匠の構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない,と主張する。
確かに,本件登録意匠と引用意匠1との(キ)ブラシの本数の差異については,この種の物品分野において,本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロンが存在し,その本数については適宜改変可能なものであり,また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されているため,引用意匠1のブラシの本数を本件登録意匠のものと同様のものとする点に格別の創作を要するものとはいえないものである。
また,本件登録意匠と引用意匠1との(エ)キャップ部の鍔部の有無についても,キャップ部を設け,それに鍔部を設けることは,この種の物品分野において,常套手段ともいえる,ありふれた変更の範囲といえるものであり,本件登録意匠独自の創作といえるものではない。
しかしながら,引用意匠1のキャップ部の形状を甲第4号証のものに置き換え,鍔部の形状を甲第7号証の形状に置き換えたとしても,本件登録意匠のキャップ部の鍔部の形状とは異なるものであり,また,引用意匠1のブラシ部を単に甲第6号証の17本に置き換えたとしても依然として,本件登録意匠のブラシ部の態様とは,全体における長さ比が異なるものである。
その上,引用意匠1とは,持ち手部の全体形状,ブラシ部と持ち手部の間の有無,持ち手部のフランジの形状,についても大きく異なり,ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率も異なるものである。また,引用意匠1の持ち手部のスイッチの形状も細部ではあるが本件登録意匠とは異なるものであるから,持ち手部については,いずれの先行意匠からも本件登録意匠の態様を導き出すことはできない。
これらの差異点を総合して考慮すると,仮に,本件登録意匠の一部分であるブラシ部について,引用意匠1の様々な部位を変更することで創作が容易にできたとしても,本件登録意匠の持ち手部は,引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証のいずれの態様からも導き出すことができないものである以上,本件登録意匠が引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証から容易に創作することができたものであるとは到底言うことができず,当業者ならば容易に創作することができたものとは,いうことができないものである。
(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用意匠1及び先行意匠甲第4ないし12号証に基づいて容易に創作することができたものとは認められず,意匠法第3条第2項の規定には該当せず,無効理由を有さないものであって,本件登録意匠は,無効理由3によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。

5.無効理由4について
(1)引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証(別紙第4ないし12)に基づく創作容易について
請求人は,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証から容易に創作することができたものであり,意匠法第3条第2項に該当することにより意匠登録を受けることができないものであるので,本件登録意匠は同法第48条第1項第1号に該当し,無効とすべきである旨主張するので,以下,検討する。
(2)本件登録意匠と引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証との関係
1)引用意匠2
本件登録意匠と引用意匠1とは,(ア)持ち手部の全体形状,(イ)ブラシ部と持ち手部の間の有無,(ウ)持ち手部のフランジの形状,(エ)キャップ部の有無,(オ)スイッチの位置及び形状,(カ)ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率,(キ)ブラシの本数,に主な差異が認められる。
2)先行意匠甲第4号証ないし12号証(別紙第4ないし12)の意匠については前記4.無効理由3についての2-1)から2-9)と同様である。
(3)本件登録意匠の創作容易性の判断
請求人は,本件登録意匠は,その出願前から公然知られた引用意匠2及び周知の先行意匠甲第4ないし12号証の形状に基づいて,当業者ならば容易に創作することができたものに該当すると主張する。
請求人は,(a)ブラシ部におけるブラシの本数について,本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロン(甲第2ないし5号証及び甲第7号証)が存在することに照らせば,引用意匠2の構成から本件登録意匠のブラシの本数に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない,また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されているため,本件登録意匠のブラシの本数に係る構成は当業者が容易に創作することができたものである,(b)ブラシ部の左端部における鍔部の有無について,本件登録意匠出願前において,ブラシ部の左端部に鍔部を設けることは,甲第4ないし7号証に開示されているように周知であり,引用意匠2の構成において本件登録意匠の鍔部の有無に係る構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできず,当業者が容易に創作できたものである,(c)持ち手部の形状について,本件登録意匠出願前において,ヘアアイロンの持ち手部の骨格的な形状として,中央部分が両端寄りも膨らみ,全体として丸みを帯びた形状とすることは,甲第8号証ないし甲第10号証に示されているように,普通にみられる程度のものであり周知の形状であり,持ち手部に係る本件登録意匠の構成は,引用意匠2に,甲第8ないし10号証に示されているような周知の持ち手部の形状を適用することにより,当業者が容易に創作できたものである,なお,甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンはブラシを備えないものではあるが,髪をカールさせる加熱チューブの下部に持ち手部としてのハンドルが設けられたものであり,本件登録意匠と甲第8号証に開示のヘアーカーリングアイロンは基本形状の異なる意匠とはいえないものである,(d)持ち手部のフランジの形状について,本件登録意匠出願前に,持ち手部に円形状のフランジを設けたヘアアイロン(甲第11号証及び甲第12号証)が存在することに照らせば,引用意匠2のフランジ部に係る本件登録意匠の構成を創作することに着想の新しさないし独創性を見出すことはできない,と主張する。
確かに,本件登録意匠と引用意匠2との(キ)ブラシの本数の差異については,この種の物品分野において,本件登録意匠出願前に,様々な本数のブラシを設けたヘアアイロンが存在し,その本数については適宜改変可能なものであり,また,甲第6号証には,本件登録意匠と同数の本数のブラシが長手方向に配列されたヘアアイロンが開示されているため,引用意匠2のブラシの本数を本件登録意匠のものと同様のものとする点に格別の創作を要するものとはいえないものである。
また,本件登録意匠と引用意匠2との(エ)キャップ部の有無についても,キャップ部を設け,それに鍔部を設けることは,この種の物品分野において,常套手段ともいえる,ありふれた変更の範囲といえるものであり,本件登録意匠独自の創作といえるものではない。
しかしながら,引用意匠2にキャップ部を設け,甲第4号証のものに置き換え,鍔部の形状を甲第7号証の形状に置き換えたとしても,本件登録意匠のキャップ部及び鍔部の形状とは異なるものであり,また,引用意匠2のブラシ部を単に甲第6号証の17本に置き換えたとしても依然として,本件登録意匠のブラシ部の態様とは,全体における長さ比が異なるものである。
その上,引用意匠2とは,持ち手部の全体形状,ブラシ部と持ち手部の間の倒短円柱状部分の有無,持ち手部のフランジの形状,についても大きく異なり,ブラシ部と持ち手部と電源コード接続部の長さの比率も僅かではあるが異なるものであり,また,引用意匠2の持ち手部にはスイッチがなく,ブラシ部と持ち手部の間に突起部が設けられている点も本件登録意匠とは異なるものであるから,持ち手部については,いずれの先行意匠からも本件登録意匠の態様を導き出すことはできない。
これらの差異点を総合して考慮すると,仮に,本件登録意匠の一部分であるブラシ部について,引用意匠2を様々な部位において変更して創作が容易にできたとしても,本件登録意匠の持ち手部は,引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証のいずれの態様からも導き出すことができないものである以上,本件登録意匠が引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証から容易に創作することができたとは到底いうことができず,当業者ならば容易に創作することができたものであるとは,いうことができないものである。
(4)小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用意匠2及び先行意匠甲第4ないし12号証に基づいて容易に創作することができたものとは認められず,意匠法第3条第2項の規定には該当せず,無効理由を有さないものであって,本件登録意匠は,無効理由4によっては,同法第48条第1項第1号に該当しないものと認められる。


第6 むすび
以上のとおりであって,本件登録意匠は,無効理由1(引用意匠1)若しくは無効理由2(引用意匠2)によっては,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当するにもかかわらず意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。
また,請求人の主張する無効理由3若しくは無効理由4によっては,本件登録意匠は,意匠法第3条第2項の規定に該当するにもかかわらず,意匠登録を受けたものとはいえず,意匠法第48条第1項第1号の規定によって,その登録を無効とすることはできない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲



審理終結日 2014-09-02 
結審通知日 2014-09-04 
審決日 2014-09-19 
出願番号 意願2011-9243(D2011-9243) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (B7)
D 1 113・ 113- Y (B7)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 竹下 寛古賀 稔章 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
中田 博康
登録日 2011-09-09 
登録番号 意匠登録第1424844号(D1424844) 
代理人 小山 靖 
代理人 平田 義則 
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