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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 F4
管理番号 1297194 
審判番号 不服2014-9895
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-28 
確定日 2015-01-09 
意匠に係る物品 包装用容器 
事件の表示 意願2013- 5743「包装用容器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)3月15日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真によれば,意匠に係る物品を「包装用容器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものであり,「部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,緑色に塗りつぶされた部分を除く透明の部分である。」(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)としたものである。(別紙第1参照)


第2 原査定における拒絶の理由

原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,この意匠登録出願に係る包装用容器の分野に於いて,容器に種々の形状等の係合片を形成することは本願出願前より極く普通に行われている(例えば,意匠1,意匠2)のでありふれた手法であるところ,この意匠登録出願の意匠は,おにぎり容器のヒンジ部と対峙する本体と蓋体の部位それぞれ(例えば,前掲意匠1)に,略疑問符状の円弧係合片(例えば,意匠3,意匠4)を,閉蓋時には前掲意匠4にみられるような略リング状を呈するように対で形成し,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分としたに過ぎないので,容易に創作できたものと認められる,というものである。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載,特開2000-327064 [図1]に表されている,おにぎり用容器の意匠

意匠2(別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載,特開2010-023903

意匠3(別紙第4参照)
欧州共同体商標意匠庁が発行した,欧州共同体意匠公報 2010年7月20日 包装用容器(登録番号000864962-0001)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH22205967号)

意匠4(別紙第5参照)
特許庁総合情報館が1996年 9月 3日に受け入れた,アメリカ合衆国特許庁発行のアメリカ意匠公報:オフィシャルガゼット 1996年7月2日1号1188巻,第790頁所載の 安全二重フックの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH09055451号)


第3 請求人の主張の要旨

本願部分の特徴は,以下のとおり。
a)容器を閉蓋と同時に接合する正逆反転形状の係止部よりなり,閉蓋とともに接合した係止部は,その内周縁部分で形成された中心の円形口と,その外側を同心円状に囲って形成された湾曲膨出状の幅広面と,さらにその外側を同心円状に囲った外周縁とにより,異形円の同心三重円形態の外観が強く看取される。
b)係止部は,同心三重円の中心の円形口が,包装用容器の湾曲一頂部に対して,その外接円に相当するような位置に近接して設けてある態様が相まって,全体に円形が密接した外観が顕著である。
c)係止部の付け根部が容器フランジの外側縁に外接円の如く湾曲裾広がり状に連続しているので,係止部全体の円形構成と包装用容器との連続感が強く看取される。
一方,引用意匠1?4は本願部分の特徴となる上記a)?c)で述べた態様とは全く異なっており,この本願部分の特徴を創作容易とする理由を見出すことはできない。
引用意匠ごとに,以下対比する。
引用意匠1は,本体と蓋体のフランジ面の一部を突出させ,その一方の突出面に突起,他方の突出面に受け穴を一体成形し,これを凹凸係止することにより蓋体を本体に仮止めする構成であるから,その形態は本願部分の形態とは明らかに相違し,本願部分の特徴は何ら引用意匠1から看取することはできない。拒絶査定の理由において,「仮令,係合部が,フランジ部と連なりながら本体部の一頂部の底面寄り斜め外方に延びる先端部分のものであったとしても,本願が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は,ヒンジ部と対峙する一頂部側に設けている係合部分である」として,「係合部をヒンジ部と対峙する一頂部側に設けることが,この意匠の属する分野に於いて極く普通に行われていることは,例示の意匠1からも明らかなことである。」との説示は,引用意匠1のヒンジ部の構成と存在の把握において錯誤があり,係合部をヒンジ部と対峙する一頂部側に設けているとの把握において錯誤があり,この錯誤の引用意匠1をもって,本願部分の態様を意匠の属する分野に於いて極く普通に行われている,とした判断は理由がない。仮に,引用意匠1乃至2をもって,係合部をヒンジ部と対峙する一頂部側に設けることが,この意匠の属する分野に於いて極く普通に行われていることであるとしても,本願部分は,そのこと自体を意匠の要旨とするものではなく,上記a)?c)に示した係合部の形態を要旨とするものであるから,形態の全く異なる引用意匠をもって,本願部分を創作容易とすることはできない。
引用意匠2は,一枚の舌片5(6)に吊り下げ展示用通孔12(22)を貫通形成させただけの形態が示されているにすぎず,本願部分の上記a)?c)に示した形態とは明らかに相違しており,本願部分の特徴を想到する手掛かりの開示もない。この形態の相違にも係わらず,創作容易であるとする理由が何ら示されていない。
引用意匠3は,長手方向を直交方向に切断した断面形がコの字形をしたC形フックを本体と蓋体に設け,両フックはコの字の凹みが蓋体の開閉方向と同じ方向を向いた形態として形成してあって,両フックが接近し合ってコの字同士が嵌り合う構成となっており,開閉いずれにおいてもC形はC形のままであり,円形口を形成するものではないので,本願部分とは形態が全く異なっている。拒絶査定の理由において,「本願意匠の係合部は,幅中央付近を長さ方向に沿い湾曲状に膨出させて丸味を帯びているが,膨出したものが例示の意匠3に見られるとおり公知である」と説示されているが,引用意匠3にはそのような構成は無いので錯誤である。さらに,「仮令湾曲状に膨出したものの例示がないとしても,その変形自体常套的範囲内のものと言え,変更にあたり特段の工夫をしたとも,格別な創作力を要したとも言える程のものではない。」と説示されているが,これは対比すべき公知形態を示すまでもなく常套的範囲内であると一方的に決め付けているものであり,妥当な判断ではない。
引用意匠4は,摺動可能に軸止した構成の金属板から突出したC形フックが,金属板の摺動とともに回動して開閉するロック機構であり,包装用容器に適用できる分野のものではない。仮に,包装用容器に適用できない該ロック機構を無視して,C形フック部分のみを見たとしても,本願部分の特徴が引用意匠4から看取することができないことは明らかである。しかしながら,適用できない構成のものの一部を引用して,「そのように形成したに過ぎず,創作容易である。」とする論法は,架空を前提とするもので適切と言うことはできない。
結局のところ,本願部分の特徴となる上記a)?c)に述べた態様は,引用意匠1?4を組み合わせても容易に創作することができないものである。

第4 当審の判断

以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

(1)本願意匠の形態

本願意匠は,閉じた状態において頂部に形成される孔部を,フックなどに掛け,吊り下げできる包装用容器であり,このうち吊り下げ部分が本願部分である。
すなわち本願部分は,本願意匠の開いた状態(開蓋状態を示す斜視図)において,ヒンジ部と対峙する本体部と蓋体部との両端部に位置し,本体部及び蓋体部の周辺に有する板状フランジ縁の延長上に備わったものであり,開いた状態の本願部分は左下の箇所が開口した略円弧状であり,その表面は緩やかな下向き弧状による厚みを形成し,略円弧状の周縁に本体部及び蓋体部と同様の板状フランジ縁を備えたものである。このように開いた状態では,本願部分は左下の箇所に開口部を有するが,閉じた状態(拡大斜視図)では本体部と蓋体部との端部に位置する本願部分が重なって,互いに開口部が繋がることで吊り下げ用の孔部を形成する。その際吊り下げ部分は,外縁部に本体部及び蓋体部から続いた板状フランジ縁を備え,外側に緩やかに膨らみを有するものである。

(2)本願意匠の創作の容易性について

原審の拒絶の理由において,包装用容器に種々の形状等の係合片を形成することは,本願出願前よりごく普通に行われているとして,意匠1及び意匠2を示した上で,当業者であれば容易に創作できた意匠であるとしているが,それぞれ以下の理由により,成り立たない。
意匠1については,おにぎり用容器の例示であり,本願意匠のように本体部,蓋体部,ヒンジ部を備えているものであるが,係合片については本体部と蓋体部とが嵌合するように凹状と凸状の関係になっているのに対して,本体部端部及び蓋体部端部に設けられた本願部分は,ともに緩やかな下向き弧状(凹状)となっているため,意匠1と本願部分の態様とは大きく異なるものである。また,意匠2については,ブリスターパッケージの例示であり,ブリスターカバーと台紙との係合片を示しているが,係合片を重ね合わせるもしくは捻り撓ませて固定するものであって,意匠2と本願部分の態様についても大きく異なるものである。

次に,略円弧状の係合片を,閉蓋時には略リング状を呈するように対で形成することも,意匠3及び意匠4を示した上で,容易に創作できた意匠であるとしているが,それぞれ以下の理由により,成り立たない。
意匠3については,本願意匠のように本体部,蓋体部及びヒンジ部を備える包装用容器であり,両端部に設けられた係合部も略円弧状となっているものの,開いた状態において係合部が有する開口部の位置がそれぞれ異なるため,閉じた状態でも係合部が開口部を有する状態のまま重なり合っており,閉じた状態で吊り下げ用の孔部を有する本願部分の態様とは大きく異なるものである。また,意匠4については,閉じた状態に孔部を有する例として,安全二重フックを示しているが,本願部分とは物品が異なり,しかも横方向にスライドすることで開口部が閉じる仕組みになっており,態様についても本願部分とは大きく異なるものである。

したがって,ヒンジ部と対峙する本体部と蓋体部との両端部に位置し,開いた状態において同じ向きに開口部を有し,閉じた状態では互いに開口部が繋がることで吊り下げ用の孔部を形成する本願部分の態様は,先行意匠には見られない本願意匠独自のものであるから,本願意匠は,公知の形態に基づいて容易に創作できたものということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願については,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2014-12-19 
出願番号 意願2013-5743(D2013-5743) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (F4)
最終処分 成立  
前審関与審査官 木本 直美 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 綿貫 浩一
江塚 尚弘
登録日 2015-02-13 
登録番号 意匠登録第1519513号(D1519513) 
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所 

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