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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201416465 審決 意匠
無効2013880010 審決 意匠

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審決分類 審判    J1
管理番号 1297219 
審判番号 無効2013-880017
総通号数 183 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-03-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2013-10-03 
確定日 2015-01-26 
意匠に係る物品 体重測定機付体組成測定器 
事件の表示 上記当事者間の登録第1425652号「体重測定機付体組成測定器」の意匠登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 請求人の申立及び理由

請求人は,「登録第1425652号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,証拠方法として甲第1号証から甲第30号証までを提出し,要旨以下のとおり主張した。(平成25年10月3日付け審判請求書)
以下,この意匠登録第1425652号の意匠を「本件登録意匠」という。

1.意匠登録無効の理由の要点
(1)無効理由1
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲第1号証の意匠に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

(2)無効理由2
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲第2号証の意匠に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

2.本件登録意匠を無効とすべき理由(無効理由1)
(1)本件登録意匠の説明
本件登録意匠は,以下の構成を有している。
(基本的構成態様)
全体は,4つの電極部分と液晶表示窓と操作ボタンが表面に配置された載置板と,載置板の裏面に配置された4つの脚部と電気回路・電池等を収容する収容部とから構成される。
(具体的構成態様)
1)載置板は,透明ガラス板からなる隅丸略正方形状を有している。
2)4つの電極部分は,それぞれが隅丸縦長四角形状をしており,載置板表面の上下左右四隅近傍に配置されている。
3)液晶表示窓は,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域内に配置されており,形状は隅丸横長四角形であって,その縦方向の長さが電極部の縦方向の長さより短い。
4)操作ボタンは,各々が隅丸四角形からなり,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に,2行2列の態様で配置されている。
5)上側の左右に配置された2つの電極部のそれぞれの底辺と液晶表示窓の底辺とは一直線上になるように配置されていない。
6)4つの脚部は,載置板の裏面側の上下左右の四隅に配置されており,収容部は載置板の裏面側の上辺から中央部にかけて配置されている。

(2)甲第1号証の意匠の説明
甲第1号証の意匠(以下,「甲1意匠」という。)は,以下の構成を有している。
(基本的構成態様)
全体は,4つの電極部分と液晶表示窓と操作ボタンが表面に配置された載置板と,載置板の裏面に配置された4つの脚部と電気回路・電池等を収容する収容部とから構成される。
(具体的構成態様)
1)載置板は樹脂板からなる隅丸略正方形状を有している。
2)4つの電極部分は,それぞれが隅丸縦長四角形状をしており,載置板表面の上下左右四隅近傍に配置されている。
3)液晶表示窓は,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域内に配置されており,形状は隅丸縦長四角形であって,その縦方向の長さが電極部の縦方向の長さより短い。
4)操作ボタンは,各々が隅丸四角形からなり,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に,3つの操作ボタンが一行に配置され,右端の操作ボタンのすぐ下の行に1つの操作ボタンが配置されている。
5)上側の左右に配置された2つの電極部のそれぞれの底辺と液晶表示窓の底辺とは一直線上になるように配置されていない。
6)4つの脚部は,載置板の裏面側の上下左右の四隅に配置されており,収容部は載置板の裏面側の上辺から中央部にかけて配置されている。
甲1意匠にかかる製品は,本件登録意匠の出願日前に既に販売されていた。(甲第1号証)

(3)本件登録意匠は,容易に創作することができたものであること
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる甲1意匠に基づき,本件登録意匠の出願前に公然知られた態様を選択的に採用し,4つの操作ボタンの形状を周知の形状とした程度のものに過ぎず,容易に創作することができたものである。以下,説明する。

(ア)本件登録意匠と甲1意匠との対比
本件登録意匠も,甲1意匠も,ともに体重測定機付体組成測定器に係る意匠であり,両者は一致する。
本件登録意匠と甲1意匠の形態の相違点は,(A)本件登録意匠の載置板は透明ガラス板が用いられているところ,甲1意匠には樹脂板が用いられている点(相違点1),(B)本件登録意匠の液晶表示窓は隅丸横長四角形であるところ,甲1意匠の液晶表示窓は隅丸縦長四角形である点(相違点2),(C)本件登録意匠の4つの操作ボタンの配置が2行2列であるところ,甲1意匠の操作ボタンの配置は3つの操作ボタンが一行に配置され,右端の操作ボタンのすぐ下の行に1つの操作ボタンが配置されている点(相違点3)において異なり,その他において全て一致する。

(イ)各相違点は公知の態様に置き換えることにより容易に創作できたものであること
創作容易性については「意匠の形態は,立体的なまとまりを形成しているものであり,一般的に従来から見られる構成要素と新規な構成要素が相俟って形態を形成している場合が多いが,しかし,形態を構成する個々の要素の評価のみに基づいて或いは意匠的効果の差異によって意匠の創作容易性を判断するものではない。広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものは,問題なく容易に創作することができたものと認められるが,広く知られた形状等を基準として,それらの結合或いは改変によって意匠の創作がなされている場合は,その結合や改変が当業者の立場からみて一般的でありふれた手法であるか否か,容易に着想できたものであるか否かを検討しなければならない。」(無効2001-35002号審決)との判断基準がある。
本件登録意匠は,広く知られた意匠である甲1意匠と一部相違点があるところ,かかる相違点は広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものか,又は他の広く知られた形状等に基づいて一般的でありふれた手法で改変又は結合したものか否かが問題となる。
相違点1についてみると,体重測定機付体組成測定器の分野において,載置板を,樹脂板にかえてガラス板に置き換えることは,甲第2?7号証に示すとおり,本件登録意匠の出願前に載置板が樹脂板ではなくガラス板で構成されている体重測定機付体組成測定器が多数存在している事実に鑑みれば,ごく普通に行われているありふれた手法である。
特に,プレスリリースで「美しいガラストップ」(甲第7号証)と表現されるように,載置板を樹脂板にかえてガラス板にすることは,本件登録意匠の出願の約1年前から各メーカーが次々と体重測定機付体組成測定器のデザインとして採用してきた手法であり,体重測定機付体組成測定器の分野における通常の知識を有する者であれば,本件登録意匠の出願の遅くとも約1年前から積極的に取り入れてきた創作手法の1つであるといえる。
なお,本件登録意匠の出願の約1年半前である平成21年(2009年)8月4日に出願された意匠登録第1404060号にかかる意匠(甲第8号証)の実製品は,「プティプラスBS-221」の名称で平成21年(2009年)9月25日に販売されている(甲第5号証)。甲第8号証の意匠登録公報の意匠の説明には載置板がガラス板でできていることについて記載はない。しかしながら,「プティプラスBS-221」の載置板は,ガラス板である。
意匠登録第1404060号にかかる意匠(甲第8号証)の出願日とその実製品である「プティプラスBS-221」の販売日とを比べると,出願日は販売日よりもわずか1ヶ月半先にすぎず,量産品であることにも鑑みると,出願時には実製品である「プティプラスBS-221」の載置板をガラス板とすることは決定されていたはずである。実際,甲第8号証の参考図は,載置板がガラス板で構成されているようにみえる。
このように,実製品である「プティプラスBS-221」の載置板はガラス板とするにもかかわらず,意匠権の権利範囲を確定する意匠の説明の記載及び六面図には,何ら載置板をガラス板とすることが記載されていない。
つまり,本件登録意匠の出願の約1年半前には,既に体重測定機付体組成測定器のデザインとして載置板をガラス板とするか樹脂板とするかはありふれた一般的に行われている手法であり,甲第8号証の存在は,体重測定機付体組成測定器の意匠を実質的に変えるものではないという当業者の認識があったことを示している。
さらに,体重測定機付体組成測定器の意匠にかかる出願(甲第9号証)に対する拒絶理由通知(甲第10号証の1?4)では,載置板がガラス板である体重測定機付体組成測定器のデザインに載置板が樹脂板である体重測定機付体組成測定器のデザインを組み合わせることは容易であるとの判断が示されている。この点も体重測定機付体組成測定器のデザインとして載置板をガラス板とするか樹脂板とするかは一般的にありふれて行われている手法であり,互いに組み合わせて体重測定機付体組成測定器の意匠を創作することに何ら困難性がないことを示している。
また,本件登録意匠の電極や液晶表示窓の配置が樹脂板ではなくガラス板と組み合わされることによって他のガラス板で構成されている体重測定機付体組成測定器にはない新たな美観が創出されるものではないことは明らかである。
したがって,甲1意匠の載置板を樹脂板にかえてガラス板に置き換えることは,当業者の立場からみて一般的でありふれた手法であるといえる。
次に,相違点2についてであるが,ガラス板からなる体重測定機付体組成測定器(甲第2?7号証)に限定してみても,縦横比さまざまな液晶表示窓の形状が存在する以上,単に液晶表示窓を縦長にするか横長にするかはありふれた一般的に行われている手法である。したがって,この点に,特段の創作を要するとはいえない。
なお,液晶表示窓が縦長か横長かの違いがある体重測定機付体組成測定器が関連意匠として登録されている(甲第11?13号証)。したがって,液晶表示窓が縦長か横長かの違いは類否判断には影響を及ぼさないのみならず,一のデザイン・コンセプトから創作された一連のバリエーションの意匠にすぎないことは明らかである。
むしろ,液晶表示窓が,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域内に配置されており,その縦方向の長さが電極部の縦方向の長さより短い長さで構成されてさえいれば,電極部と液晶表示窓の配置関係が同様となり,美観を共通にすることから,この点からも単に液晶表示窓を縦長にするか横長にするかはありふれた一般的に行われている手法にすぎない。
仮に液晶表示窓を縦長にするか又は横長にするかは,ありふれた一般的に行われている手法とまでいえないとしても,本件登録意匠の出願前には,横長四角形の液晶表示窓は甲第17?21号証,甲第28?30号証に示すとおり,例示に事欠かないほど多数存在した。
したがって,甲1意匠に周知の横長四角形の液晶表示窓を組み合わせることは,広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度に過ぎず,当業者にとって創作容易である。
次に,相違点3についてであるが,相違点3は操作ボタン間の細かい配置関係が異なるというものである。
ここにおいて,4つの操作ボタンが2行2列に配置された本件登録意匠と3つの操作ボタンが横1列に配置された意匠登録第1425945号(甲第14号証)とが関連意匠の関係にあることから,操作ボタンの細かい配置関係は類否判断には影響を及ぼさないのみならず,一のデザイン・コンセプトから創作された一連のバリエーションの意匠にすぎないことは明らかである。
むしろ,本件登録意匠及び意匠登録第1425945号にかかる意匠の操作ボタンは,それぞれ,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に配置されており,4つの電極部分と組み合わせて,全体として,操作ボタンを中心にアルファベットの「H」の字を想起させるように配置されており,載置板表面において,上下左右にバランスのとれた均衡ある印象を与えるものとなっている。
この点にデザイン・コンセプトの共通性が認められ,操作ボタンの細かい配置関係の違いに関係なく,一のデザイン・コンセプトから創作された一連のバリエーションの意匠として保護されているものと思われる。
甲1意匠も同様に,操作ボタンは,それぞれ,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に配置されており,4つの電極部分と組み合わせて,全体として,操作ボタンを中心にアルファベットの「H」の字を想起させるように配置されている点で共通し,本件登録意匠及び意匠登録第1425945号にかかる意匠と美観を共通にするものである。
したがって,甲1意匠において,操作ボタンの細かい配置関係を改変することは,ありふれた一般的に行われている手法であり,特段の創作を要するものとはいえない。
以上のとおり,本件登録意匠と甲1意匠とは,(1)液晶表示窓が上側の左右に配置された2つの隅丸縦長四角形状の電極部に囲まれた領域内に配置されており,(2)操作ボタンが液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの隅丸縦長四角形状の電極部で囲まれた領域の中心部領域に配置されており,4つの電極部分と組み合わせて,全体として,操作ボタンを中心にアルファベットの「H」の字を想起させるように配置されており,載置板表面において,全体として,上下左右にバランスのとれた均衡ある印象を与えるものとなっている点で共通する。
そして,引用例として示した広く知られた意匠又は形状を基準として,本件登録意匠を全体として総合的に見ると,本件登録意匠の出願前から体重測定機付体組成測定器の分野において周知の甲1意匠を基準として,適宜,載置板を樹脂板にかえてガラス板とし,液晶表示窓を横長にし,操作ボタンの細かい配置関係を改変することは,一般的な造形手法によって改変を加えたものにすぎないため当業者において容易に着想できる通常の改変の範囲と認められる程度の創作であるか,又は広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度にすぎない。
したがって,甲1意匠と比べて本件登録意匠に形態上の差異が多少あるとしても,創作性が認められないことは明らかである。

3.本件登録意匠を無効とすべき理由(無効理由2)
(1)本件登録意匠の説明
上記2.の「(1)本件登録意匠の説明」と同じため,省略する。

(2)甲第2号証の意匠の説明
甲第2号証の意匠(以下,「甲2意匠」という。)は,以下の構成を有している。
(基本的構成態様)
全体は,4つの電極部分と液晶表示窓と操作ボタンが表面に配置された載置板と,載置板の裏面に配置された4つの脚部と電気回路・電池等を収容する収容部とから構成される。
(具体的構成態様)
1)載置板はガラス板からなる隅丸横長四角形状を有している。
2)4つの電極部分は,それぞれが略細長楕円形状をしており,載置板表面の上下左右四隅近傍に配置されている。
3)液晶表示窓は,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域内に配置されており,形状は横長四角形であって,その縦方向の長さが電極部の縦方向の長さより短い。
4)操作ボタンは,各々が円形からなり,液晶表示窓の下側であって,かつ,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域に,3つの操作ボタンが一行に配置されている。
5)上側の左右に配置された2つの電極部のそれぞれの底辺と液晶表示窓の底辺とは一直線上になるように配置されていない。
6)4つの脚部は,載置板の裏面側の上下左右の四隅に配置されており,収容部は載置板の裏面側の上辺から中央部にかけて配置されている。
甲2意匠にかかる製品は,本件登録意匠の出願日前に既に販売されていた。(甲第2号証)

(3)本件登録意匠は,容易に創作することができたものであること
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる甲2意匠に基づき,本件登録意匠の出願前に公然知られた態様を選択的に採用し,容易に創作することができたものである。以下,説明する。

(ア)本件登録意匠と甲2意匠との対比
本件登録意匠も,甲2意匠も,ともに体重測定機付体組成測定器に係る意匠であり,両者は一致する。
本件登録意匠と甲2意匠の形態の相違点は,(A)本件登録意匠の載置板は隅丸略正方形状が用いられているところ甲2意匠の載置板は隅丸横長四角形状が用いられている点(相違点1),(B)本件登録意匠の4つの電極部分は隅丸縦長四角形状であるところ甲2意匠の4つの電極部分は略細長楕円形状であること(相違点2),(C)本件登録意匠の4つの操作ボタンは,各々が隅丸四角形であり,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に2行2列で配置されているところ,甲2意匠の操作ボタンは,各々が円形からなり,液晶表示窓の下側であって,かつ,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域に,3つの操作ボタンが一行に配置されている点(相違点3)において異なり,その他において全て一致する。

(イ)各相違点は公知の態様に置き換えることにより容易に創作できたものであることの説明
本件登録意匠は,広く知られた意匠である甲2意匠と一部相違点があるが,かかる相違点は広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものか,又は他の広く知られた形状等に基づいてありふれた一般的に行われている手法で改変又は結合したものであることを以下に説明する。
相違点1についてみると,体重測定機付体組成測定器の分野において,載置板を,隅丸横長四角形状にかえて隅丸略正方形状に置き換えることは,ガラス板からなる体重測定機付体組成測定器(甲第2?7号証)に限定しても載置板が隅丸横長四角形状のものと隅丸略正方形状のものがそれぞれ存在している事実に鑑みれば,ごく普通に行われているありふれた手法である。
したがって,甲2意匠の載置板の形状を隅丸横長四角形状にかえて隅丸略正方形状に置き換えることは,当業者の立場からみてありふれた一般的に行われている手法であることは明らかである。
次に,相違点2についてであるが,載置板表面の四隅近傍に種々の形状の電極部(電極部分)を設けることは,体重測定機付体組成測定器の意匠にかかる出願(甲第9号証)に対する拒絶理由通知(甲第10号証の1?4)において示されたように,本件登録意匠の出願前からごく普通に行われているありふれた手法である。
ここにおいて,隅丸縦長四角形状の電極部分は,甲第1号証,甲第3号証,甲第4号証,甲第26号証及び甲第27号証に示すように,体重測定機付体組成測定器の分野では一般的に広く知られた形状であるから,甲2意匠の4つの電極部分を略細長楕円形状から隅丸縦長四角形状に置き換えることは公知の態様をそのまま採用したに過ぎず,この点に,特段の創作を要するとはいえない。
なお,拒絶理由通知(甲第10号証の1?4)では,載置板表面の四隅近傍の電極部(電極部分)の形状を隅丸縦長四角形状から略楕円形状に置換するだけでなく,電極部(電極部分)の配置を載置板表面の四隅近傍に載置板の縦辺に平行に配置されているものをX字状に向き合う配置とすることについても,X字状に向き合う配置の一例をもって容易であると判断している。
相違点3についてであるが,甲第1号証,甲第15号証,甲第16号証,甲第22?25号証に示すように,操作ボタンを4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に配置する構成は,本件登録意匠の出願前から体重測定機付体組成測定器の分野で見受けられるデザインの1つである。
したがって,甲2の意匠の操作ボタンの配置を甲第1号証,甲第15号証,甲第16号証,甲第22?25号証に見受けられるデザインに倣って4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域とすることに,特段の創作を要するとはいえない。
また,操作ボタンの形状として隅丸四角形は甲第1号証,甲第21号証及び甲第25号証に示すとおり一般的によく見受けられる形状である。したがって,甲2意匠の操作ボタンの形状を円形とするか隅丸四角形とするかは,広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものといえ,ありふれた一般的に行われている手法であり,特段の創作を要するものとはいえない。
以上のとおり,本件登録意匠と甲2意匠とは,載置板がガラス板からなるという点で共通し,載置板表面の四隅近傍にありふれた形状の電極部分が配置され,上側の左右に配置された2つの電極部分の間に配置された液晶表示窓と,液晶表示窓の下方に操作ボタンが配置されている点で共通する。
そして,引用例として示した広く知られた意匠又は形状を基準として,本件登録意匠を全体として総合的に見ると,本件登録意匠の出願前から体重測定機付体組成測定器の分野において周知の甲2意匠を基準として,適宜,載置板の形状を隅丸横長四角形状にかえて隅丸略正方形状に置き換え,4つの電極部分を略細長楕円形状から縦長隅丸四角形状に置き換え,操作ボタンの形状及び配置を本件登録意匠の出願前に公知となっている体重測定機付体組成測定器のデザインに倣って改変することは,広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものであるか,又は一般的な造形手法によって改変を加えたものにすぎない。当業者において容易に着想できる通常の改変の範囲と認められる程度の創作である。
したがって,甲2意匠と比べて本件登録意匠に形態上の差異が多少あるとしても,創作性が認められないことは明らかである。

4.むすび
したがって,本件登録意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲1意匠に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
また,本件登録意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲2意匠に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

5.証拠方法
甲第1号証 オムロン HBF207(写真撮影報告書)
甲第2号証 precomo PRBF-40(写真撮影報告書)
甲第3号証 TANITA Body Fat Monitor/S cale UM-040(写真撮影報告書)
甲第4号証 体組成ヘルスメーターMA-381(写真撮影報告書)
甲第5号証 コンパクト体組成計「プティプラス」BS-221(写 真撮影報告書)
甲第6号証 ヴィトロ BS-230(写真撮影報告書)
甲第7号証 インフィー BS-229(写真撮影報告書)
甲第8号証 意匠登録第1404060号の意匠登録公報の写し
甲第9号証 意願2013-009119にかかる意匠登録出願願書 の写し
甲第10号証の1 意願2013-009119に対する拒絶理由通知書 の写し
甲第10号証の2 意匠2を示す資料
甲第10号証の3 意匠3を示す資料
甲第10号証の4 意匠4を示す資料
甲第11号証 意匠登録第1241804号の意匠登録公報の写し
甲第12号証 意匠登録第1242544号の意匠登録公報の写し
甲第13号証 意匠登録第1242543号の意匠登録公報の写し
甲第14号証 意匠登録第1425945号の意匠登録公報の写し
甲第15号証 USD536631号の意匠登録公報の写し
甲第16号証 中国の公告3518637号公報の写し
甲第17号証 意匠登録第1396670号の意匠登録公報の写し
甲第18号証 意匠登録第1058702号の意匠登録公報の写し
甲第19号証 意匠登録第1299515号の意匠登録公報の写し
甲第20号証 意匠登録第1070913号の意匠登録公報の写し
甲第21号証 ドクタースキャンBS-214(写真撮影報告書)
甲第22号証 オムロン HBF-2081T(写真撮影報告書)
甲第23号証 タニタ インナースキャンBC-750(写真撮影報 告書)
甲第24号証 タニタ インナースキャンBC-560(写真撮影報 告書)
甲第25号証 オムロン カラダスキャンHBF-203-T(写真 撮影報告書)
甲第26号証 タニタ インナースキャンBC-567(写真撮影報 告書)
甲第27号証 タニタ インナースキャンBC-569(写真撮影報 告書)
甲第28号証 タニタ メタボスキャンTF-206(写真撮影報告 書)
甲第29号証 タニタ BF-047(写真撮影報告書)
甲第30号証 タニタ BF-049(写真撮影報告書)

第2 被請求人の答弁及び理由

被請求人は,結論同旨の審決を求める旨答弁し,証拠方法として乙第1号証から乙第6号証までを提出し,その理由として要旨以下のとおり主張した。(平成26年1月8日付け審判事件答弁書)
また,検証申出書とともに検乙第1号証から検乙第3号証までを提出した。(平成26年1月28日付け検証申出書)

1.無効理由1について
以下,無効理由1が失当である理由を,本件登録意匠と甲第1号証との対比により説明する。

1-1.本件登録意匠(乙第1号証)
本件登録意匠は,下記の基本的構成態様を備えている。
1-1-1.本件登録意匠の基本的構成態様
・全体形状
本件登録意匠は,意匠全体が,四角形状の透明のガラス板と,このガラス板の背面側に形成された本体部と,これら透明のガラス板と本体部との間に挟まれたシート,を積層した構造を備えている(積層構造体)。
・電極部
透明のガラス板の正面には,上下左右に電極部が配置されている。
・液晶表示窓,スイッチ模様
透明のガラス板を通して,正面中央上側に隅丸横長四角形の液晶表示窓が表れ,また,該液晶表示窓の下側に4つのスイッチ模様が表れている。
・本体部及び液晶表示部
本体部はシートの背面側に配置されており,本体部に設けた液晶表示部がシートに形成した液晶表示窓を通じて透明のガラス板の正面に表れている。
1-1-2.本件登録意匠の具体的構成態様
・透明のガラス板
透明のガラス板は,隅丸四角形状を有している。透明なガラス板の背面にはシートが貼付してある。
・電極部
電極部は,それぞれが縦長隅丸四角形状に設けてあり,透明のガラス板の上下左右に対称に配置されている。
・液晶表示窓
液晶表示窓は,隅丸横長四角形状に設けてあり,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,横長の隅丸四角形であってその高さは電極部よりわずかに小さい液晶表示窓を大きく存在感をもって配置されている。
・スイッチ模様
スイッチ模様(静電容量スイッチ)は,液晶表示窓の下側であって,4つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,隅丸四角形からなる模様を2行2列に配置して構成されている。スイッチ模様は,透明なガラス板の裏面に印刷されており,透明なガラス板を透過して正面において視認されるものである。なお,透明なガラス板の背面にはシートが貼付されている。
・本体部
本体部は,背面側に上下左右の四隅に配置された4つの円柱脚部(円柱形状)と,各円柱脚部を囲む隅部厚肉形状と,左右の隅部厚肉形状と上下の隅部厚肉形状を互いに連結する細幅薄肉形状と,正面視に表れる液晶表示部と電気回路・電池等を収容する中央部厚肉形状を備えている。
・支持部
4つの隅部厚肉形状には,透明のガラス板の隅丸部分に対応してそれぞれ4つの突出した支持部が設けられている。
・電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様の配置
隅丸四角形の板状体からなる透明のガラス板の正面において,上下左右四隅近傍に縦長の隅丸四角形の電極部を配置し,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,横長の隅丸四角形であってその高さは電極部よりわずかに小さい液晶表示窓を大きく存在感をもって配置するとともに,該液晶表示窓の下側であって,電極部で囲まれた領域の中心部領域に,隅丸四角形からなるスイッチ模様(静電容量スイッチ)を複数配置して構成されている(本件登録意匠独自のレイアウト)。
上記構成からなる本件登録意匠は,隅丸四角形からなる透明のガラス板の正面に,互いに関連のある隅丸四角形に設けられた電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様を,四隅近傍や中心部といった基準となる位置にバランスよく配置して構成された意匠である。

1-2.甲第1号証
請求人が審判請求書において提示した甲第1号証の写真には,名称,写真の方向に誤りがある。当該写真を引用して誤りを正したうえで甲第1号証について説明を行う。(乙第2号証)
1-2-1.甲第1号証の基本的構成態様
・全体形状
甲第1号証は,意匠全体が正面側樹脂筐体と背面側樹脂筐体とを一体化して箱形筐体として構成されたもので,背面側樹脂筐体に形成された開口部には,金属筐体と脚部とが露出するように設けてある。
・電極部
箱形筐体の正面左右側には,縦長隅丸矩形形状の電極部がそれぞれ2つずつ配置されている。
・表示・操作領域部
箱形筐体の正面中央部には,液晶表示窓と正面押しボタンスイッチとを囲む表示・操作領域部が設けてある。
・液晶表示窓
液晶表示窓は,表示・操作領域部の上部にはめ込まれている。
・小区画部
表示・操作領域部の内側には,液晶表示窓の下側に小区画部が形成されている。
・正面押しボタンスイッチ
正面押しボタンスイッチは,小区画部の内側と外側とに合計4つ配置されおり,透明パネルに形成された4つの開口部を通して,透明パネルの表面に露出している。
・液晶表示部
液晶表示部は,箱形筐体の内部に設けてあり,透明パネル,及び液晶表示窓を通して,表示・操作領域部の上部に表れている。
・底面押しボタンスイッチ
箱形筐体の底面には,横長の隅丸矩形形状からなる5つの底面押しボタンスイッチが横一列に等間隔に配置されている。
1-2-2.甲第1号証の具体的構成態様
・箱形筐体
箱形筐体は,正面視において略正方形に設けてあり,上側と下側の縁は曲面で形成してある。これにより,左右側面視において縦長隅丸矩形形状として表れている。当該形状は箱形筐体でのみ実現可能な形状である。
・電極部
電極部は,それぞれが縦長隅丸矩形形状に設けてあり,箱形筐体正面の左右に2つずつ上下に配置してある。左右側部にそれぞれ設けられた電極部の隙間は,電極の長さに比較すると短く,また,電極部自体が縦長であることから,本体正面において,表示・操作領域部と合わせて正面を三等分する3つの列を構成している。
・表示・操作領域部
表示・操作領域部は,箱形筐体の正面中央部の表面を,縦長幅広隅丸矩形形状に僅かに窪ませて形成した部分に,透明パネルをはめ込んで構成された部分である。
表示・操作領域部は,上部左右電極部の上端を結ぶ線から下部左右電極部の下端を結ぶ線まで伸びており,上記のとおり,電極部と合わせて正面を三等分した3つの列を構成している。
・液晶表示窓
液晶表示窓は,隅丸縦長四角形状に設けてあり,表示・操作領域部の上部に配置されている。
・正面押しボタンスイッチ
正面押しボタンスイッチは,表示・操作領域部内に設けられた液晶表示窓の下側に4つ設けられている。これら4つの正面押しボタンスイッチはそれぞれが横長の隅丸矩形形状に設けてあり,小区画部内上部と小区画部外左外部で,かつ表示・操作領域部の内側とに1つずつ,小区画部外右側部でかつ,表示・操作領域部の内側に2つ配置されており,透明パネルの開口を通して透明パネルの表面と面一に設けてある。また,小区画部内に設けられた正面押しボタンスイッチは,小区画部の外側部に配置された他の3つの正面押しボタンスイッチに比較して,縦と横とが約1.5倍の長さに設けてあり,目立つ大きさに設けてある。
・脚部
箱形筐体の背面には,上下左右の四隅に配置された4つの円柱脚部(円柱形状)が配置されており,該脚部は箱形筐体の背面に形成された開口を介して箱形筐体の下面から突出している。
・底面押しボタンスイッチ
5つの底面押しボタンスイッチは,左側電極部の略中央部から右側電極部の略中央部に亘って幅広く分散している。また,箱形筐体の上部と下部との縁がそれぞれ曲面に形成されていることから,正面視においても底面押しボタンスイッチが僅かながら飛び出しており,その存在を視認することができる。
また,箱形筐体の正面下部には,底面押しボタンスイッチの位置や機能を表すための文字(体重/OFF),数字(1?4)が描かれている。
・電極部,液晶表示窓,及び正面押しボタンスイッチの配置
電極部は,縦長隅丸矩形形状を備えており,箱形筐体の正面左右側に2つずつ配置してあり,液晶表示窓は,表示・操作領域部の上部に配置され,正面押しボタンスイッチは,小区画部内上部と小区画部外左外部で,かつ表示・操作領域部の内側とに1つずつ,小区画部外右側部でかつ,表示・操作領域部の内側に2つ配置してある。
甲第1号証の意匠は,正面中央に設けられた表示・操作領域部と,本体正面左右側部に,互いの隙間を狭く設けた縦長の電極部を2つずつ配置することにより,本体正面を三等分する3つの列を構成している。

1-3.本件登録意匠と甲第1号証の相違点
本件登録意匠と,甲第1号証に含まれる本件登録意匠に対応する部分とを対比すると,以下の相違点1?7を顕著な相違点として認定することができる。
・相違点1:全体形状
本件登録意匠は,意匠全体が四角形の透明のガラス板と,このガラス板の背面側に形成された本体部と,これら透明のガラス板と本体部との間に挟まれたシートを積層した構造であるのに対して,甲第1号証は,意匠全体が正面側樹脂筐体と背面側樹脂筐体とを一体化して箱形筐体として構成されたもので,背面側樹脂筐体に形成された開口部には,金属筐体と脚部とが露出するように設けてある点。
また,箱型筐体は左右側面視において縦長隅丸形状に表れており,ここに積層構造では得られない独自の形状が認められる点。
・相違点2:正面の構成
本件登録意匠は透明のガラス板が正面全体を覆っているのに対して,甲第1号証は樹脂筐体において透明パネルが正面中央の縦長の表示・操作領域部にはめ込まれている点。
・相違点3:電極部
本件登録意匠と甲第1号証とについて,左右の電極部間の隙間を見ると,本件登録意匠の電極部の隙間は電極部の長さよりも長いことから電極部が上下左右に配置されているとの印象を強めているのに対して,甲第1号証においては,電極部間の隙間が電極部の長さに比べて短いことから,電極の配置は左右に配置されているとの印象を創出している点。
・相違点4:液晶表示窓
本件登録意匠の液晶表示窓は横長隅丸四角形状であるのに対して,甲第1号証の液晶表示窓は縦長隅丸四角形状である点。
・相違点5:スイッチ模様
本件登録意匠では,本物品の設定,操作を行うことを目的としてスイッチ模様(静電容量スイッチ)が採用されており,当該スイッチ模様は,液晶表示窓の下側であって,4つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,隅丸四角形からなる模様を2行2列に配置して構成されているのに対して,甲第1号証は,正面押しボタンスイッチが採用され,当該正面押しボタンスイッチは,箱形筐体の正面中央に設けられた表示・操作領域部に設けられたものであって,表示・操作領域部の小区画部の内側上部と小区画部の左外側で且つ表示・操作領域部の内側とに1つずつ,小区画部の右外側で表示・操作領域部の内側に2つ配置されている点。
・相違点6:底面スイッチ
甲第1号証は,箱形筐体の底面において,横一列に等間隔に配置された横長の隅丸矩形形状からなる5つの底面押しボタンスイッチを備えているのに対して,本件登録意匠には,これら操作ボタンスイッチが備わっていない点。
・相違点7:電極部,液晶表示窓,スイッチ模様の配置
本件登録意匠は,隅丸四角形の板状体からなる透明のガラス板の正面において,上下左右四隅近傍に縦長の隅丸四角形の電極部を配置し,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,横長の隅丸四角形であってその高さは電極部よりわずかに小さい液晶表示窓を大きく存在感をもって配置するとともに,該液晶表示窓の下側であって,電極部で囲まれた領域の中心部領域に,隅丸四角形からなるスイッチ模様(静電容量スイッチ)を複数配置して構成している(本件登録意匠独自のレイアウト)。これに対して,甲第1号証は,本体正面中央部に設けられた表示・操作領域部と,本体正面左右側部に,互いの隙間を狭く設けた縦長の電極部を2つずつ配置することにより,本体正面を三等分して3つの列を構成している点。

1-4.創作容易性の判断
・甲第1号証をガラス板に置換することが容易であるか否か
本件登録意匠の出願時において,体重測定機付体組成測定器の意匠は,意匠全体の構成が,ガラス板の背面に本体部を設けた積層構造体の形態と,樹脂製の筐体で全体が囲まれた箱形筐体の形態とに分類されている。
そして,甲第1号証の箱形筐体の形態を甲第2?7号証のガラス板を備えた積層構造体の形態に置き換えることは,基本的構成態様,すなわち,意匠全体の美感を一変させることになる。
例えば,甲第1号証は,本体の上端と下端とに,ガラス板を備えた積層構造体では実現不可能な形状である曲面を備えており,当該特徴的な形状,及びこれに密接に関わる内部構造の相違を無視して,甲第1号証をガラス板に置換することなど考えることができない。
また,甲第1号証は,表示・操作領域部に透明パネルをはめ込むことによって,当該部分が表示・操作領域部であることが強調された意匠であり,透明パネルを正面全体に広げることは,当該創作の範囲を逸脱することになる。そのうえ,正面(載置板)は使用者が立脚することを前提として,十分な強度を確保する必要があり,この点からも透明パネルを正面全体に広げる創作の手法は実現できるものではない。
以上の説明から明らかなとおり,樹脂製の箱形筐体からなる甲第1号証を,ガラス板を備えた積層構造体に置換することが容易であるとの請求人の主張は失当である。

・甲第1号証における相違点3?7の改変が容易であるか否か
本件登録意匠が,甲第1号証に基づいて容易に創作できた意匠であると認定されるためには,箱形筐体からなる甲第1号証を,ガラス板を備えた積層構造体に置換することが容易であることを認定する必要があるが,当該置換が実現不可能であることは上記のとおりであって,これにより,本件登録意匠は,甲第1号証に基づいて容易に創作することができた意匠ではないことは明らかである。
したがって,甲第1号証における相違点3?7について,甲第2号証及び甲第3号証を参酌して容易に改変できるか否か,もはや検討する必要はない。

1-5.小括
以上の説明から明らかなとおり,請求人の無効理由1は理由がなく,本件審判の請求は成り立たない。

2.無効理由2について
次に,無効理由2が失当である理由を,本件登録意匠と甲第2号証との対比により説明する。

2-1.本件登録意匠
本件登録意匠の基本的構成態様,及び具体的構成態様は上記1-1.に記載のとおりである。

2-2.甲第2号証
甲第2号証は以下の構成態様を備えている。
2-2-1.甲第2号証の基本的構成態様
・全体形状
意匠全体が,横長四角形状の透明のガラス板と,このガラス板の背面側に形成された本体部と,これら透明のガラス板と本体部との間に挟まれたシートを積層した構造である。
・電極部
透明のガラス板の正面には,左右に電極部が2つずつ配置されている。
・液晶表示窓,スイッチ模様
透明のガラス板を通して,正面中央上側に横長四角形の液晶表示窓が表れ,また,該液晶表示窓の下側に3つのスイッチ模様が表れている。
・本体部及び液晶表示部
本体部はシートの背面側に配置されており,本体部に設けた液晶表示部がシートに形成した液晶表示窓を通じて透明のガラス板の正面に表れている。
2-2-2.甲第2号証の具体的構成態様
・透明のガラス板
透明のガラス板は隅丸横長四角形状を有する。透明なガラス板の背面にはシートが貼付してある。
・電極部
電極部は,それぞれの上下端部が半円弧からなる細長棒形状に設けてあり,左右側において,僅かな隙間を隔てて縦方向に並べて配置してある。
これにより,電極部は正面視において,4つの電極部が2本の筋のように表れており,また,液晶表示部と相俟って,甲第2号証は,左右の電極部を含めて正面視において門形である印象を看者に与えている。
・液晶表示窓
液晶表示窓は,左右の上側に配置された2つの電極部で囲まれた領域の中間部上方に,四隅が角張った横長四角形の形状として設けられている。液晶表示窓の縦の長さは,その左右に配置された2つの電極部の縦の長さの2分の1程度で,液晶表示窓は,左右の2つの電極部で囲まれた領域の中間部上辺寄りに配置されている。
・スイッチ模様
3つのスイッチ模様はそれぞれ円形状に設けてあり,液晶表示窓の真下に横一列に配置されている。スイッチ模様は,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域には設けられておらず,液晶表示窓の直下にまとまって配置されている。
このように,スイッチ模様が上側の左右の2つの電極部の中間部上方に設けられた液晶表示窓に密接して配置されることで,スイッチ模様の下方が広く空いた構成となっているうえに,4つの電極部が2本の筋のように表れていることから,甲第2号証は,正面視において門形である印象が創出されている。
・本体部
本体部は,上下左右の四隅に配置された4つの円柱脚部(円柱形状)と,各円柱脚部を囲む隅部厚肉形状と,左右の隅部厚肉形状と上下の隅部厚肉形状を互いに連結する細幅薄肉形状と,正面視に表れる液晶表示部と電気回路・電池等を収容する中央部厚肉形状を備えている。

2-3.本件登録意匠と甲第2号証の相違点
本件登録意匠と,甲第2号証に含まれる本件登録意匠に対応する部分とを対比すると,特に,以下の相違点を顕著な相違点として認定することができる。
・相違点1:電極部の形状
本件登録意匠の各電極部は,隅丸縦長四角形状であるのに対して,甲第2号証の各電極部は上下端部が半円弧に形成された上下方向に細長い棒形状である点。
なお,寸法を記載しておくと,本件登録意匠の電極部における幅と長さの比は,約1:2.5であるのに対して,甲第2号証の電極部における幅と長さの比は,約1:4である。
・相違点2:電極部の隙間
本件登録意匠と甲第2号証では,電極部の縦方向長さと電極部間の隙間との比が全く相違している点。具体的にいえば,本件登録意匠が約1:1に設けてあるのに対して,甲第2号証の各電極部の縦方向長さと隙間との比は,約4.8:1であって,隙間が本件登録意匠に比較すると遙かに小さい。
・相違点3:液晶表示窓
本件登録意匠の液晶表示窓が隅丸横長四角形状であるのに対して,甲第2号証の液晶表示窓は,四隅が角張った横長四角形状として設けられている点。
また,甲第2号証の液晶表示窓は,左右の2つの電極部で囲まれた領域の中間部上辺寄りに配置されている点,及び本件登録意匠の液晶表示窓における縦横比は,約1:1.4であるのに対して,甲第2号証の液晶表示窓における縦横比は,約1:2.4である点。さらに,本件登録意匠の液晶表示窓と左右電極部の縦方向の長さの比が,約1:1.3であるのに対して,甲第2号証における対応部分の比が,約1:2.4であって液晶表示窓が電極部に比較すると極端に小さい点。
・相違点4:スイッチ模様
本件登録意匠のスイッチ模様は,4つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,隅丸四角形からなる模様を2行2列に配置して構成されているのに対して,甲第2号証のスイッチ模様は,3つの円形状のスイッチ模様を横一列の態様で,上側の左右電極部に囲まれた領域の内側で液晶表示窓の直下に配置されている点。
・相違点5:電極部,液晶表示窓,スイッチ模様の配置
本件登録意匠は,隅丸四角形の板状体からなる透明のガラス板の正面において,上下左右四隅近傍に縦長の隅丸四角形の電極部を配置し,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,横長の隅丸四角形であってその高さは電極部よりわずかに小さい液晶表示窓を大きく存在感をもって配置するとともに,該液晶表示窓の下側であって,電極部で囲まれた領域の中心部領域に,隅丸四角形からなるスイッチ模様(静電容量スイッチ)を複数配置して構成している(本件登録意匠独自のレイアウト)。
これに対して,甲第2号証は,4つの電極部が2本の筋のように表れており,また,液晶表示部,スイッチ模様の配置によって門形である印象を看者に与えている点。

2-4.創作容易性の判断
本件登録意匠と甲第2号証とには,「2-3.本件登録意匠と甲第2号証の相違点」において説明したとおり,相違点1?5が存在する。
以下,本件登録意匠と甲第2号証との相違点1?5に対応する部分について,甲第3?7号証の意匠を検討する。
・相違点1:電極部の形状
本件登録意匠の電極部と,甲第3?7号証の電極部は,形状等に差異がある。
・相違点2:電極部の隙間
本件登録意匠と,甲第5号証を除き甲第3?7号証とにおける電極部の縦方向長さと電極部間の隙間との比には差異がある。
・相違点3:液晶表示窓
本件登録意匠と,甲第3?7号証とにおける液晶表示窓の形状や配置等は相違している。なお,配置について見ると,甲第5号証のみが「上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央部分」であって共通しているが,当該液晶表示窓は縦長のプロポーションである点で相違している。
・相違点4:スイッチ模様
本件登録意匠と甲第3?6号証とにおけるスイッチ模様は,形状や配置が相違している。甲第7号証における上段のスイッチ模様は形状が矩形形状である点で共通するが,位置が相違している。また,甲第7号証における下段のスイッチ模様は,位置が略中央であって共通しているが,形状が円形であって相違している。さらに,甲第7号証におけるスイッチ模様はその数が9つであって,また,イラストレーションが描かれていることから,本件登録意匠のスイッチ模様とは印象が大きく相違している。
・相違点5:電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様の配置
本件登録意匠は,隅丸四角形の板状体からなる透明のガラス板の正面において,上下左右四隅近傍に縦長の隅丸四角形の電極部を配置し,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域のほぼ中央に,横長の隅丸四角形であってその高さは電極部よりわずかに小さい液晶表示窓を大きく存在感をもって配置するとともに,該液晶表示窓の下側であって,電極部で囲まれた領域の中心部領域に,隅丸四角形からなるスイッチ模様(静電容量スイッチ)を複数配置して構成している(本件登録意匠独自のレイアウト)。
これに対して,甲第3号証,甲第4号証,甲第6号証では,電極部が2本の筋のように表れており,また,液晶表示部,スイッチ模様の配置によって門形である印象を看者に与えている。また,甲第5号証では,縦長の液晶表示窓と縦に配置されたスイッチ模様,及び2本の筋状に表れた電極によって,正面視において3本のラインとして表れており,本件登録意匠のレイアウトとは全く相違している。甲第7号証では,電極部がそれぞれ8の字,あるいは無限大記号∞を90度回転して表した模様によって2本の筋として表れており,本件登録意匠のレイアウトとは全く相違している。
なお,本件登録意匠を含む体組成計の意匠の創作は,積層構造体又は箱形筐体を選択したうえで,全体の形状,電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様の形状等が決定され,それらの形状等が一体不可分に融合して独自の美感を創出するものである。
特に,本件登録意匠に係る物品は構成要素が少なく,また,各構成要素は機能や量産性に基づいてその形状等がおおよそ決定されることから,創作の自由度が高い物品であるとは言い難いが,本件登録意匠は,このような制約の中で各構成要素の配置やプロポーションが一つのデザイン・コンセプトに基づいて創作された意匠であり,事実,本件登録意匠に類似する意匠が関連意匠の他に存在しないことからも,当該レイアウトが独自のものであることは明らかである。

・甲第2号証における相違点1?5の改変が,甲第3?7号証を参酌して容易であったか否か
上記のとおり,本件登録意匠を含むこの種の物品の意匠は,一つのデザイン・コンセプトに基づいて,電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様等の個々の構成要素及びその全体の意匠が創作され,その結果,意匠全体として独自の美感が創出されるのであるから,そのようにして創作された甲第2号証に対し,特段の理由もなく,甲第3?7号証に示された個々の部分を適当に寄せ集めたうえでこれらを改変することはありえないし,そのような観点から本件登録意匠の創作性を論じることは全く意味をなさない。
なお,甲第2号証は,本件登録意匠の意匠公報(乙第1号証)に記載のとおり,本件登録意匠の審査で参照された特許庁意匠課公知資料番号第HJ2206969600号と同一意匠である(乙第6号証)。甲第2号証が参照されたうえで,本件登録意匠が登録されている事実を勘案しても,本件登録意匠が甲第2号証に基づいて容易に創作された意匠ではないことは明白である。

2-5.請求人の主張が誤っている理由
以下,請求人の主張に対して,該当箇所を引用して誤りを指摘する。
請求人は,「本件登録意匠と甲2意匠の形態の相違点は,(A)本件登録意匠の載置板は隅丸略正方形状が用いられているところ甲2意匠の載置板は隅丸横長四角形状が用いられている点(相違点1),(B)本件登録意匠の4つの電極部分は隅丸縦長四角形状であるところ甲2意匠の4つの電極部分は略細長楕円形状であること(相違点2),(C)本件登録意匠の4つの操作ボタンは,各々が隅丸四角形であり,液晶表示窓の下側であって,かつ,4つの電極部で囲まれた領域の中心部領域に2行2列で配置されているところ,甲2意匠の操作ボタンは,各々が円形からなり,液晶表示窓の下側であって,かつ,上側の左右に配置された2つの電極部で囲まれた領域に,3つの操作ボタンが一行に配置されている点(相違点3)において異なり,その他において全て一致する。」(審判請求書第9頁第16行?第10頁第5行)としたうえで,各相違点について本件登録意匠に見られる構成要素の形態は公知のものであり,しかもそのような公知の形態に置き換えることはありふれた手法であると主張する。
しかしながら,上記のとおり,本件登録意匠が備える電極部,液晶表示窓,スイッチ模様の形状,及びこれらを独自のレイアウトで配置した各構成要素の配置は,甲第2号証及び甲第3?7号証には発見することができず,
しかも,請求人は,本件登録意匠の美感を創出する重要な要素であるレイアウトについて,本件登録意匠,甲第2号証及び甲第3?7号証において言及することなく,個々の構成要素にのみに着目して,これらを公知の形態に置き換えることはありふれた手法であると結論づけている。
仮に請求人の主張のとおり,本件登録意匠の電極部,液晶表示窓,及びスイッチ模様といった個々の構成要素が,一般的な造形手法によって得られるものであると仮定しても,無限とも言える形状の中からこれらを選択,若しくは創作することになるから,本件登録意匠は容易に創作できた意匠であるとは言えないうえ,本件登録意匠が備える独自のレイアウトは,甲第2号証及び甲第3?7号証が備えていないことから,構成要素を改変しただけでは得られることはない。
請求人の創作容易性に関する主張は,各構成要素にのみ着目して,意匠全体としての創作性,すなわち独自のレイアウトを無視してなされるものであって,本件登録意匠が甲第2号証の一部を単に公知意匠に置き換えて容易に創作できたとする主張は当然,成立しない。請求人の主張のようにレイアウトを無視して得られる意匠が,本件登録意匠と全く異なる意匠になることは明らかである。
したがって,甲第2号証の一部を単に公知意匠に置き換えて創作された意匠であるとは到底言うことができない。

2-6.小括
以上のとおりであって,請求人の無効理由2は理由がなく,本件審判の請求は成り立たない。

3.むすび
以上,本件登録意匠は,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有するものが日本国内において公然知られた甲第1号証又は甲第2号証の意匠に基づいて容易に意匠の創作をすることができた意匠ではない。
したがって,本件無効審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担
とする,との審決を求める。

4.証拠方法
乙第1号証 本件登録意匠(意匠登録第1425652号)の意匠公 報の写し
乙第2号証 写真撮影報告書 オムロン 体重体組成計 HBF 2 07-W(ホワイト)(甲第1号証)
乙第3号証 甲第9号証の意匠登録出願の審査過程で作成された面接 記録の写し(本件登録意匠に関する平成24年(ワ)第 33752号意匠権侵害差止等請求事件において,請求 人が提出した乙第60号証である)
乙第4号証 写真撮影報告書 タニタ UM-040(甲第3号証)
乙第5号証 写真撮影報告書 アイテック MA-381(甲第4号 証)
乙第6号証 本件登録意匠の審査で参照された「特許庁意匠課公知資 料番号第HJ2206969600号」の写し

第3 請求人の上申書及び内容

請求人は,答弁書に対して上申書及びその証拠方法として甲第31号証から甲第37号証の2までを提出し,弁駁した。(平成26年4月3日提出の上申書)
また,検証物申出書とともに検甲第1号証を提出した。(平成26年4月15日付け検証物申出書)

1.上申書
被請求人の答弁書における「1-3.本件登録意匠と甲第1号証の相違点」,「1-4.創作容易性の判断」に対し,反論した。

2.証拠方法
甲第31号証 報告書(18)(甲第10の1号証において「意匠1 」として挙げられた体組成計の写真)
甲第32号証 平成24年(ワ)第33752号意匠権侵害差止等請 求事件の準備書面(原告その1)の写し
甲第33号証 意匠登録第1161000号公報の写し
甲第34号証 意匠登録第1423059号公報の写し
甲第35号証 意匠登録第1395471号公報の写し
甲第36号証の1 BODY BLANCE COMFORT FS5の 写真の写し
甲第36号証の2 BODY BLANCE COMFORT FS5の カタログの写し
甲第37号証の1 ガラスヘルスメーターの写真の写し
甲第37号証の2 ガラスヘルスメーターの販売日を示すamazon. co.jpの抜枠の写し

第4 口頭審理

本件審判について,当審は,平成26年11月28日に口頭審理を行った。
この口頭審理において,審判長は,請求人及び被請求人に対して本件無効審判事件の審理終結を告知した。(平成26年11月28日付け第1回口頭審理調書)

1.請求人
請求人は,口頭審理開廷日の平成25年11月28日付け口頭審理陳述要領書(請求人代表者)を提出し,審判請求書,平成26年4月3日付け及び平成26年10月8日付け上申書,並びに,平成26年11月19日付け口頭審理陳述要領書及び平成26年11月28日付け口頭審理陳述要領書(請求人代表者)に記載のとおり陳述した。
また,請求人は,被請求人提出の検証物,検乙第1号証ないし3号証の証拠の成立を認めている。
そして,請求人会社代表者より,「体組成計における電極・ディスプレイ・操作部の配置は,平均的な足の大きさやスタンス,見やすさ,あるいは操作性といった,もっぱら機能的な要素によって決まるものである。加えて,本件登録意匠の電極,液晶表示窓および操作スイッチの形状自体もありふれたものである以上,電極,液晶表示窓,及びそれらの配置について,創作性を見出すことはできない。
仮に,本件登録意匠の特徴部分を側面視により把握し,「支持体」に特徴点を見出すのであれば,創作容易性が否定されるのはやむを得ないと思われる。しかし,そうであれば本件登録意匠の特徴点がどこにあるかを審決に明記していただきたい。そうしないと,本件登録意匠の権利範囲の外延があまりに不明瞭となるため,体組成計のデザインをするにあたって,強い萎縮効果が働き,産業の発達という意匠法の目的に反することになる。」旨の主張が行われた。

2.被請求人
被請求人は,平成26年1月8日付け審判事件答弁書及び平成26年11月14日付け口頭審理陳述要領書に記載のとおり陳述した。
また,被請求人は,請求人提出の検証物,検甲第1号証の証拠の成立を認めている。
被請求人代理人より,「本件登録意匠の電極部,液晶表示部,スイッチ模様によって構成されたレイアウトは,請求人が引用した証拠,及びいかなる公知意匠にも見られない形態である。特許庁における過去の意匠法第3条第2項の判断基準からみて,本件登録意匠が創作容易であるとの請求人の主張を認めることはできない。
意匠登録第1425652号の意匠(本件登録意匠)と意匠登録第1425945号の意匠を出願したところ,正面視の縦横比が多少異なるとしても,正面から見た電極部等の各部位の配置態様が共通しているため両意匠は類似しているとして,意匠登録第1425652号の意匠を本意匠,意匠登録第1425945号の意匠を関連意匠として登録されている。
この種物品は,正面から見た形状が重視されるものである。創作容易性についての反論は,正面形状についてのみ行えば十分である。背面側の形態についてまで反論する必要はないと考えている。」旨の主張が行われた。

第5 当審の判断

1.本件登録意匠
本件登録意匠は,平成23年(2011年)3月18日に出願され(意願2011-6180号),同年9月22日に意匠権の設定の登録がなされた,意匠登録第1425652号の意匠であって,意匠に係る物品を「体重測定機付体組成測定器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(乙第1号証,別紙第1参照)
すなわち,その形態は,
(A)全体は,正面視略隅丸正方形板状のガラス板(以下,「ガラス部」という。)の背面側に,正面視同形状の薄いシート材(以下,「シート部」という。)を積層してなる測定板(以下,「測定板部」という。)と,その背面側中央部上端部近傍に寄せて配設した機器及び電池を収納した本体収納部(以下,「本体収納部」という。),及び,測定板部背面側四隅部分に配設した測定板部を支持する4つの基台部(以下,「基台部」という。),並びに,測定板背面側縁部分に形成された,上端側の左右基台部及び左右それぞれの基台部上下間を連結する配線用カバー部材(以下,「配線カバー部」という。)を配設してなる構成とし,
(B)測定板部は,側面部から見た厚みを全体の高さの約1/6とし,
(B?1)ガラス部には,その正面側表面四隅近傍にやや余地部を残して,縦横比を約2.5:1とする略隅丸縦長長方形板状の薄い電極板を貼着し,ガラス部の背面側表面のほぼ中央部分に,静電容量スイッチの位置を示す略隅丸正方形状の線模様を縦横2列となるよう計4つ施し,
(B-2)シート部には,中央部上端部寄りの位置に液晶表示部のためにあけられた縦横比を約1:1.4とする略隅丸横長長方形状の開口窓部(以下,「液晶用窓部」という。)を設け,
(B-3)液晶用窓部には,液晶用窓部より一回り小さい,縦横比を約1:1.4とする液晶表示部を配し,この液晶表示部の周囲を液晶用窓部から液晶表示部に向かって窄まる傾斜面となるよう形成し,
(C)本体収納部は,測定板部背面側において,背面側に向かって僅かに窄まる背面視略隅丸縦長長方形状の扁平な略四角錐台状とし,測定板の上辺部に配設された配線カバー部の下側約3/4を覆うように配設し,
(D)基台部は,背面視略披針形状とし,その背面側中央部分から略円柱形状の力センサー用の脚部(以下,「脚部」という。)を僅かに突出させて配設し,基台部の側面角部背面側寄りに背面視略L字状の僅かな突起部をそれぞれ1つずつ配設し,
(E)配線カバー部は,側面部から見た厚みを全体の高さの約1/3とした,やや扁平な略角柱状とし,基台部及び本体収納部と一体的に形成したものである。

2.請求人が主張する無効の理由
請求人が,意匠法第48条第1項第1号の規定に基づき本件登録意匠について主張する意匠登録無効事由は,以下のとおりである。

2-1.無効理由1
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲第1号証の意匠(以下,「引用意匠1」という。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。
なお,請求人提出の甲第1号証における六面図については,図面代用写真の向き及び図の表示に誤りがあるため,六面図の図面代用写真の向き及び図の表示については,この誤りを修正した被請求人提出の乙第2号証のものを採用する。

2-2.無効理由2
本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた甲第2号証の意匠(以下,「引用意匠2」という。)に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものであるから,意匠法第3条第2項の規定により意匠登録を受けることができないものであり,同法第48条第1項第1号により,無効とすべきである。

3.無効理由1について
請求人の主張及び被請求人の反論を踏まえ,本件登録意匠が,その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)であれば,容易にその意匠の創作をすることができたものか否かについて,以下検討する。

3-1.引用意匠1(甲第1号証(なお,六面図の図面代用写真の向き及び図の表示は乙第2号証のものを採用),別紙第2参照)
引用意匠1は,2010年(平成22年)10月21日付けで,オムロンヘルスケア株式会社(被請求人)が,同社ホームページに掲載した「オムロン体重体組成 カラダスキャン HBF-207」として表されているものであって,同年11月1日より販売開始である旨プレスリリースされたものである。
引用意匠1の形態は,
(ア)全体は,縦幅より横幅が僅かに長い正面視略正方形板状の筐体(以下,「筐体部」という。)とし,筐体部背面部には,その四隅部分に略円筒形状の脚部(以下,「脚部」という。)を配し,背面部中央部分には,脚部を避けるためその角部を略円弧状に切り欠き,入隅状にした略横長長方形状の本体収納部(以下,「本体収納部」という。)をそれらの形状に合わせて切り欠いた部分に埋設してなる構成とし,
(イ)筐体部は,正面視における上端部及び下端部を側面視略円弧状に形成し,側面視全体を略縦長長円形状とし,
(イ-1)筐体部正面側表面四隅近傍には,やや余地部を残して,縦横比を約2.4:1とする略隅丸縦長長方形状の切り欠き部を形成し,この切り欠き部と正面視同形状の電極板を筐体部表面からやや突出するように配設し,
(イ-2)筐体部正面側中央部分には,上下に余地部を残して正面視略縦長隅丸長方形状の切り欠き部を形成し,その切り欠き部にそれと同形同大の薄板状の透明化粧板(以下,「化粧板部」という。)を嵌着し,化粧板部中央上端部寄りの筐体部表面部分に縦横比を約5:4とする略縦長隅丸長方形状の液晶用窓部を設け,その窓部下方中央部分に略隅丸縦長長方形状の枠模様を1つ施し,小型操作ボタン部の約1.5倍の大きさの大型操作ボタン部をその枠模様内上方寄りの部分に1つ突設させ,小型操作ボタン部をその枠模様左側に1つ,右側に上下に並べて2つ突設させ,ボタンを操作するために,突出した各ボタン部の外形状に合わせて略隅丸長方形状の貫通孔を4つ化粧板部に形成し,
(イ-3)筐体部底面中央部分には,略横長長円形状の部材を配設し,その部材に略横長長円形状の切り欠き部を5つ横一列に等間隔に形成し,この切り欠き部の形状に合わせた略横長長円形状の操作ボタン部を筐体部表面と面一になるよう配設し,
(イ-4)筐体部左右側面部中央部分には,略縦長長円形状の板体を埋設し,
(ウ)脚部は,本体収納部とほぼ同じ高さの略円筒形状の内側に,先端部中心部分の略小円形部分及び先端部略円形外枠部のみを接地面とする略円柱形状の脚部を配し,
(エ)本体収納部は,背面視において,右側端部に電池収納部を配し,略長円形状の凹状リブ部を中央部から左側部分にかけて縦方向に3条,上下端部近傍部分に,横方向にそれぞれ1条形成したものである。

3-2.本件登録意匠の創作容易性の判断
請求人は,本件登録意匠は,本件登録意匠の出願前に公然知られたものと認められる甲1意匠に基づき,本件登録意匠の出願前に公然知られた態様を選択的に採用し,4つの操作ボタンの形状を周知の形状とした程度のものに過ぎず,容易に創作することができたものであると主張するところであるが,そもそも請求人が提出した引用意匠1(甲1意匠)は,筐体正面側に電極板用の切り欠き部及び筐体底面側に操作ボタン部用の切り欠き部を形成し,筐体部背面側の脚部及び本体収納部を覆う箱状の態様であって,測定板部背面側に本体収納部,その四隅に脚部を有する基台部を配し,それらを配線カバー部で連結したシンプルな態様の本件登録意匠とは全く別の構成態様であるから,請求人の主張するように単に樹脂板をガラス板に一般的な造形手法によって置き換えたものであると言うことは到底できない。
そうすると,本件登録意匠は,その基本的な態様自体を引用意匠1に基づいて容易に創作をすることができたとは言えないものであるから,他の部位についての創作容易性を判断するまでもなく,請求人の無効理由1についての主張を認めることはできない。

3-3.小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において公然知られた引用意匠1に基づいて容易に創作することができたものではなく,意匠法第3条第2項の規定には該当せず,無効理由を有さないものであるから,本件登録意匠は,無効理由1によっては,同法第48条第1項第1号の規定に該当しないものと認められる。

4.無効理由2について

4-1.引用意匠2(甲第2号証,別紙第3参照)
引用意匠2は,アマゾンジャパン株式会社が運営する通販サイトであるAmazon.co.jpに掲載された,アピデ株式会社を販売者とする「precomo体組成ヘルスメーター PRBF-40」として表されているものであって,2010年(平成22年)11月28日よりAmazon.co.jpで取り扱いが開始されたものである。
この引用意匠2の形態は,
(あ)全体は,正面視略隅丸横長長方形板状のガラス板(以下,「ガラス部」という。)の背面側に正面視同形状の薄いシート材(以下,「シート部」という。)を積層してなる測定板(以下,「測定板部」という。)と,その背面側中央部上端部近傍に配設した機器及び電池を収納した本体収納部(以下,「本体収納部」という。),及び,測定板部背面側四隅部分に配設した測定板部を支持する4つの基台部(以下,「基台部」という。),並びに,測定板背面側に形成された,本体収納部と上方側の左右基台部及び左右それぞれの基台部上下間を連結する配線用カバー部材(以下,「配線カバー部」という。)を配設してなる構成とし,
(い)測定板部は,側面部から見た厚みを全体の高さの約1/4とし,
(い?1)ガラス部には,その正面側表面四隅近傍にやや余地部を残して,縦横比を約4:1とする略縦長長円形状の薄い電極板を貼着し,
(い-2)シート部には,中央部上端部寄りの位置に縦横比を約1:2.3とする略横長長方形状の液晶表示部用の開口窓部(以下,「液晶用窓部」という。)を設け,その窓部下側に文字を記載し,その下方部にスイッチの位置を示す略小円形状の線模様を横1列となるよう等間隔に3つ設け,
(い-3)液晶用窓部の背面側には,それと同形同大の液晶表示部を配設し,
(う)本体収納部は,測定板部背面側において,僅かに縦長の背面視略隅丸長方形状の板体とし,その左右側面部上方寄りの位置から左右上方側基台部の側面部内側中央部分に配線カバー部を配設し,
(え)基台部は,背面視略正方形板状とし,その背面側中央部分から接地面に略円形状の弾性体を貼着した略円柱形状の力センサー用の脚部(以下,「脚部」という。)を突出させて配設し,その周囲に略円形枠状の板体を設け,左右それぞれの基台部上下間の側面部内側中央部分間に配線カバー部を配設し,
(お)配線カバー部は,断面視略半円柱形状の細幅の枠体とし,基台部上下間を連結する配線カバー部の中間部やや下方部に背面視略円形状の板体部を形成したものである。

4-2.本件登録意匠の創作容易性の判断
請求人は,本件登録意匠と引用意匠2(以下,「両意匠」という。)の形態の相違点は,(相違点1)測定板部の正面視形状において,本件登録意匠のものは略隅丸正方形状であるのに対して,引用意匠2は略隅丸横長長方形状である点,(相違点2)4つの電極板において,本件登録意匠のものは略隅丸縦長長方形状であるのに対して,引用意匠2は略縦長長円形状である点,(相違点3)操作ボタンにおいて,本件登録意匠のものは,各々が略隅丸正方形状の4つの操作ボタンを,液晶用窓部の下側であって,かつ,4つの電極板で囲まれた領域内の中心部分に2行2列で配置しているのに対して,引用意匠2は,各々が円形形状の3つの操作ボタンを,液晶用窓部の下側であって,かつ,上側の左右に配置された2つの電極板で囲まれた領域内に,横一列に配置している点において異なるが,その他において全て一致するものであるとし,本件登録意匠の各部位の態様を,引用意匠2を基準とし,測定板部の形状を略隅丸横長長方形状にかえて略隅丸正方形状に置き換え,4つの電極板を略縦長長円形状から略隅丸縦長長方形状に置き換え,操作ボタンの形状及びその配置態様を本件登録意匠の出願前に公知となっている体重測定機付体組成測定器のデザインに倣って改変することは,広く知られた形状等をほとんどそのまま物品に表した程度のものであるか,又は一般的な造形手法によって改変を加えたものにすぎないものであると主張している。
よって,これらの点につき,以下検討する。
まず,本件登録意匠における全体の態様(1.(A))については,引用意匠2における全体の態様(4-1.(あ))のみならず,測定板背面部の四隅に配した4つの力センサーの信号を演算し,体重を測定する体重測定機付体組成測定器においては既に見られる基本的な構成態様にすぎないものである。また,上記(相違点1)の測定板部の縦横比の相違も,当業者にとって創作としての困難性は全く見あたらないものであるから,本件登録意匠における全体の構成態様については,特段の創作力は必要なく,当業者が容易に創作することができたといえる。
次に,本件登録意匠における測定板部の態様(1.(B))については,略隅丸縦長長方形板状の電極板の形態(相違点2)は,請求人が提出した甲第1号証の引用意匠1において既に見られるものであり,電極板及び液晶表示部の配置態様も,スペース効率や使用時の見やすさ等の機能的な要件から決定されるものにすぎず,また,これら各部位の縦横比を相違させたことも,当業者にとって創作としての困難性は見当たらないものであるから,これらの態様については当業者が容易に創作することができたものと言える。一方,静電容量スイッチの位置を示す略隅丸正方形状の線模様の態様(相違点3)は,それらを4つの電極板で囲まれた領域内の中心部分に配置した点に特段の創作力はないものの,上下の線模様の間隔より左右の線模様の間隔をあけて4つの線模様を縦横2列に形成した点には,独自の美的処理が施されているものであるから,この態様については当業者が容易に創作することができたとは言えないものである。
また,本件登録意匠における本体収納部の態様(1.(C))については,引用意匠2の本体収納部の態様から導き出せる程度のものであるから,当業者が容易に創作することができたものといえる。
そして,本件登録意匠における基台部の態様(1.(D))及び配線カバー部の態様(1.(E))については,被請求人が提出した本件登録意匠の実施品である検乙1号証のパッケージ裏面の記載(別紙第4 参考資料参照)にもあるように,本件登録意匠は,立て掛けて収納する場合を想定して創作がなされているものであるから,使用時には通常見ることができないものの収納時には目に付く背面側の基台部の態様を特徴的な略披針形状とし,立て掛けた際にガラス製の測定板部を保護する等の目的で,基台部側面角部に背面視略L字状の僅かな突起部を配設し,使用時に収納場所から取り出しやすいように,幅広の配線カバー部を測定板背面側縁部分に沿って配設し,把手の機能を持たせるという創意工夫がなされており,これらの態様は当業者であれば加えるであろう程度にすぎない変形によるものとは到底言えず,また,その意匠の属する分野において常套的な変更によるものとも言えず,新たな創作が加わっているものであると認められることから,これらの態様については,当業者が容易に創作することができたとは言うことはできない。
そうすると,本件登録意匠は,静電容量スイッチの位置を示す4つの略隅丸正方形状の線模様の配置態様,基台部の態様及び配線カバー部の態様において,請求人の主張及び提出した証拠方法によっては,引用意匠2に基づいて容易に創作をすることができたとは言えないものであるから,請求人の無効理由2についての主張も認めることができない。

4-3.小括
したがって,本件登録意匠は,本件意匠登録出願前に日本国内において公然知られた引用意匠2に基づいて容易に創作することができたものではなく,意匠法第3条第2項の規定には該当せず,無効理由を有さないものであるから,本件登録意匠は,無効理由2によっては,同法第48条第1項第1号の規定に該当しないものと認められる。

第6 むすび

以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,無効理由1及び無効理由2のいずれにも理由はなく,本件登録意匠が,意匠法第3条第2項の規定に違反して登録されたものとは言うことはできないから,同法第48条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすることはできない。

審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。

よって,結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2014-12-24 
出願番号 意願2011-6180(D2011-6180) 
審決分類 D 1 113・ 121- Y (J1)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 平田 哲也下村 圭子 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2011-09-22 
登録番号 意匠登録第1425652号(D1425652) 
代理人 加治 梓子 
代理人 牧野 知彦 
代理人 古城 春実 
代理人 高橋 雄一郎 
代理人 山田 卓二 
代理人 望月 尚子 
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