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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D3
管理番号 1298245 
審判番号 不服2014-14561
総通号数 184 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-04-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-07-25 
確定日 2015-02-06 
意匠に係る物品 照明器具用ヒートシンク 
事件の表示 意願2013- 8960「照明器具用ヒートシンク」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとし,意願2013-8957(意匠登録第1492314号)を本意匠とする平成25年(2013年)4月19日の関連意匠の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「照明器具用ヒートシンク」とし,形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」ともいう。)を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたもので,「実線で表した部分は,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。(別紙第1参照)

第2 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録の意匠は,照明器具用ヒートシンクに係る部分意匠の創作ですが,当該物品分野において板状のヒートシンクに任意に円形の孔を設けることは広く行われているところ(例えば,参考意匠1乃至3参照),本願の意匠は,周知形状である略角丸扇型形状に(例えば,参考意匠4乃至6参照)上記手法により単に円形状の孔を任意に設けたまでのものであって,この程度では容易に創作できたものと認められます。

参考意匠1(別紙第2参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年2月4日に受け入れた
Our technology support the future
TSS Corporation www.tssg.com
第5頁所載
ヒートシンク基板の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC22017286号)

参考意匠2(別紙第3参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2011年12月2日に受け入れ
た高輝度高演色LED液冷装置
第1頁所載
ヒートシンクの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC23016657号)

参考意匠3(別紙第4参照)
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2010年9月24日に受け入れ
たTAEDOO Heat Sinks Products Cata
logue 泰斗ヒットシンク Heat Sinks
第4頁所載
ヒートシンクの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD22004274号)

参考意匠4(別紙第5参照)
意匠登録第1121289号の意匠

参考意匠5(別紙第6参照)
意匠登録第1352525号の意匠

参考意匠6(別紙第7参照)
意匠登録第1400054号の意匠 」

第3 請求人の主張の要点
これに対し,請求人は,審判を請求し,要旨以下のとおり主張した。

本願意匠の形状が「広く知られた形状」なのであれば,証拠を提示することは容易であるにもかかわらず,一切開示されていない。本願意匠とは形状の異なる参考意匠4ないし6が単に掲示されているにすぎない。
その参考意匠4ないし6は,どれ1つ同一の形状のものはなく,すべて異なる形状の意匠であるので,原審審査官が言うところの,「広く知られた形状としての扇面の形状の例示」にはなっていない。
原審査定における「本願意匠が広く知られた形状である」との認定は,原審審査官の主観な判断に基づくものにすぎず,客観的な証拠は一切提出されていないので,妥当なものではない。
原審認定中,原審審査官は「略房形形状」「扇形状」「扇面の形状」と様々な言葉を使用して本願意匠を表現している。「広く知られた形状」であるならば,一言で表現可能であるものと思料されるが,そうできないということは,正に本願意匠が一言では表すことのできない形状,即ち「広く知られた形状」ではない,ということである。
次に,本願意匠は,「照明器具用ヒートシンク」,即ち,LED照明器具を構成する1つの部品として創作されたものであるが,参考意匠1ないし3には,単にヒートシンクが示されているにすぎず,これらは本当に,本願意匠と同一の物品分野に属する意匠であることは明確に示されていない。
さらに,本願意匠は,「正面視,中央より向かってやや左方に破線で表された貫通孔が設けられ,さらに向かって右端近傍にも破線で貫通孔が設けられた構成」を有するものであって,この構成を有する意匠は,本願意匠と,本願意匠の本意匠である登録第1492314号以外に存在しない。
本願意匠は,参考意匠1ないし6のいずれの意匠とも,外形上著しく異なるので,本願意匠が参考意匠1ないし6から容易に創作できない意匠であることは,明らかである。

第4 当審の判断
以下,本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か,すなわち,本願意匠が,この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。

1 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は「照明器具用ヒートシンク」であり,本願意匠の形態は,次のとおりである。
基本的構成態様として,以下の点が認められる。
(A)基本的構成態様について
ごく薄い,略扇面形状の平板であって,正面から見て,上辺と下辺が共に下が凸の略1/4弧状で表され,右辺と左辺が直線状に表されたものである。
また,具体的構成態様として,以下の点が認められる。
(B)各辺の構成態様について
上辺と下辺は左右対称であって,共に同心円状に位置する相似形の辺であり,右辺と左辺を上方に延長させた2つの仮想線が交わる角度(同心円の2本の半径が成す角度。中心角。)は約90°である。また,右辺の長さとその同心円の半径の比は,約1:3である。
(C)各角の態様について
上下左右の4つの角は,いずれもアール状に形成されている。
(D)破線部について
正面右端寄りのやや上方に,右辺の長さの約1/3の直径を有する円形の破線部が表されて,正面中央やや左上にも同形同大の破線部が表されている。この2つの破線部は,背面においても正面の位置の左右対称の位置に表されていること,及び願書添付図面中の「反射板の上にLED基板とヒートシンクが設置された状態の参考図」の記載から,貫通孔であると推認される。

2 創作非容易性の判断
まず,照明器具用ヒートシンクの物品分野において,(A)の基本的構成態様を有し,(B)及び(C)の構成態様を持つものは,参考意匠4には見られない本願意匠独自の態様であり,特に,上辺と下辺が共に略1/4弧状であって,右辺(及び左辺)の長さと同心円の半径の比が約1:3である点は,公然知られた参考意匠4の形態に基づいて当業者が容易に創作することができたとはいえない。そして,参考意匠5及び参考意匠6は,意匠に係る物品が発光ダイオードを載せた基板であるから,本願意匠の意匠に係る物品とは異なっており,参考意匠5及び参考意匠6の形態は,本願意匠の創作非容易性を判断する上での根拠となる公然知られた形態であるということはできない。
また,上記(A),(B)及び(C)を合わせた形状は,単純な「略角丸扇型形状」又は「扇面形状」とはいい難いので,該形状が周知形状に基づいて容易に創作されたものということもできない。本願意匠のように中心角が約90°であって右辺(及び左辺)の長さと同心円の半径の比が約1:3である形状が,扇面として一意に決まるものではない(例えば扇子の紙又は布などを貼った部分は扇面と称されるが,扇子の扇面は,中心角が120°であるもの,及び扇面の右辺の長さの比が半径の1/2以上であるものが多い。)。
次に,(D)で指摘した,破線部(貫通孔)の形状については,照明器具用ヒートシンクの物品分野において円形状の貫通孔を有する形態は,参考意匠1ないし参考意匠3に見られるとおりありふれたものであるから,貫通孔の形状を円形状とすることは,容易に創作することができたといえる。
しかしながら,本願意匠においては,貫通孔は破線で表されており,意匠登録を受けようとする部分以外の部分として,その形状が表されていることから,貫通孔が円形状であることをことさらに強調して本願意匠の創作が容易であると判断することはできない。
一方で,貫通孔の位置及び大きさについては,破線で表されたとしても,本願意匠の貫通孔の位置及び大きさをある程度特定しているというべきである。そうすると,本願意匠の貫通孔の位置及び大きさの特徴点,すなわち正面右端寄りのやや上方の位置に右辺の長さの約1/3の大きさを有する破線部が表されて,正面中央やや左上にも同大の破線部が表されている点は,公然知られた参考意匠1ないし参考意匠3の形態には見られないものであり,これらの形態が「ヒートシンク」の形態であるとしても,本願意匠とは厚みや形状が大きく異なることから本願意匠と同様の機能及び用途を有するものであるとはいい難いので,これらの形態に基づいて当業者が容易に創作することができたということはできない。そして,本願意匠に見られる位置と大きさで貫通孔を2つ設けることが,照明器具用ヒートシンクの物品分野において当事者に広く知られた周知の手法であるということもできない。
したがって,(D)で指摘した,本願意匠の貫通孔の位置及び大きさについても,当業者が容易にその創作することができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第3条第2項が規定する,意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから,原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-01-27 
出願番号 意願2013-8960(D2013-8960) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 朝康 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 小林 裕和
綿貫 浩一
登録日 2015-03-06 
登録番号 意匠登録第1521090号(D1521090) 
代理人 羽切 正治 

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