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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2
管理番号 1299396 
審判番号 不服2014-18738
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-19 
確定日 2015-03-16 
意匠に係る物品 乗用自動車 
事件の表示 意願2013- 21683「乗用自動車」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,平成25年(2013年)9月19日の出願であり,本意匠を意願2013-021678号(意匠登録第1499556号)とする関連意匠の出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「乗用自動車」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものであり,「明調子で表された部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたもの(以下,本願において,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「本願部分」という。)である。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び本意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。そして,本願意匠の本意匠の意匠登録出願である意願2013-021678号(意匠登録第1499556号)は,物品の部分について意匠登録を受けようとする,本願意匠の出願日と同日である平成25年(2013年)9月19日の出願であって,平成26年(2014年)5月9日に意匠登録の設定がなされ,平成26年(2014年)6月9日に意匠公報が発行されたものであり,その意匠は,願書の記載及び願書の添付した図面によれば,意匠に係る物品を「乗用自動車」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものであり,「明調子で表された部分以外の部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたもの(以下,本意匠について意匠登録を受けようとする部分を「本意匠部分」という。)である。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

そこで,当審において本願意匠の意匠法第10条第1項適用の可否,とりわけ,本願意匠が本意匠と類似するか否かについて検討する。

1.本願意匠と本意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「乗用自動車」であるので,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

2.本願部分と本意匠部分の対比
(1)用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲
本願部分と本意匠部分(以下,「両意匠部分」という。)は,いずれも乗用自動車における車体前面部,ボンネット及び左右フロントフェンダーで構成された車体のキャビン前方部分であるから,両意匠部分の用途及び機能並びに位置,大きさ及び範囲は,共通する。

(2)両意匠部分の具体的形態
両意匠部分の形態を対比すると,その形態には,主として以下に示す共通点及び相違点が認められる。

まず,共通点として,
(A)両意匠部分全体は,車体のキャビン前方部分であって,フロントグリル,左右フロントコンビネーションランプ,フロントバンパー,左右フォグランプからなる車体前面部,車体前面部上辺部からフロントガラスまでの間のボンネット,及び車体前面部左右側面部から左右フロントドアまでの間の左右フロントフェンダーから構成されている点,
(B)車体前面部は,その中央部分に正面視略倒立等脚台形状のフロントグリルを設け,そのグリル上方左右部分に外側がややつり上がった正面視略直角台形状の左右フロントコンビネーションランプをグリルと接して配し,この左右ランプ下方部分に下辺部でつながったフロントバンパーを設け,車体前面部外側下方部分に略円形状フォグランプを左右に1つずつ配設している点,
(B-1)フロントグリル枠内に設けられた水平な横桟は,左右端部付近で斜め後方に折曲して形成され,上部3本の横桟については,その下側部分に,中央部分で下方に略倒立扁平台形状に突出したモールを一体的に形成した態様とし,最上部の横桟については,その中央部に,内部にNの字が配された略倒立等脚台形状のエンブレムを配設したものとしている点,
(B-2)フロントコンビネーションランプは,上部約1/4部分を正面視略横長長方形状のウインカーランプ部とし,下部内側部分に略円形状のヘッドランプを配している点,
(B-3)フロントグリル上部には,フロントグリル横桟と同様に左右端部付近で斜め後方に折曲した水平なモールを,フロントコンビネーションランプのウインカーランプ部と同じ幅で横一直線上になるよう配設している点,
(C)ボンネットは,前側及び左右側角部をR状に下方に折り曲げた平面視略逆D字状の板体とし,フロントガラス下辺部から車体前面部に向かって緩やかな前下がりの傾斜で配設している点,
(D)フロントフェンダーは,下方部分を正面視略倒U字状に切り欠いてホイールアーチを形成し,ホイールアーチの周辺部分を車体外側に向かって僅かに膨出させ,ホイールアーチの縁部分を細幅の垂直な略円弧状帯状面となるように形成し,フロントフェンダーの上端部から,斜め後方に向かって立設したフロントピラーの下から約1/5までの部分を含んだ態様としている点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)バンパービームの有無について,本願部分は,左右フロントコンビネーションランプ下辺部内側端部付近からフロントグリル下部を囲うように正面視略凹状のバンパービームを形成し,ビーム中央部にライセンスプレート取付部を設けているのに対して,本意匠部分は,縦長のフロントグリルによりバンパービームが隠れて見えず,フロントグリル中央部下方部分にライセンスプレート取付部を形成している点,
(イ)フロントグリルの態様について,本願部分は,下部にモールを形成した横桟3本からなる車体前面部の約1/2の縦幅のアッパーグリルとバンパービーム下方部分に設けられた2本の水平な細い横桟が配されたロアグリルからなるのに対して,本意匠部分は,下部にモールを形成した横桟3本の下方にもモールを持たない横桟を3本等間隔に配設した車体前面部の約4/5の縦幅のアッパーグリルと,その下部に車幅一杯の横幅とした正面視略横長台形状のロアグリルを一体的に配している点,
(ウ)フロントバンパーの態様について,本願部分は,フロントコンビネーションランプ下部に,バンパービーム及びロアグリルを左右から挟むように配設し,左右バンパー内側下端部同士をフロントグリル横桟と同様に左右端部付近で斜め後方に折曲した水平なモールで連結した態様とし,左右バンパー外側下方部分に正面視略縦長台形状のスリットを形成し,スリット下方部分にバンパースカートを突出させて形成しているのに対して,本意匠部分は,フロントコンビネーションランプ下部に,大型のアッパーグリル及び車幅一杯の横幅のロアグリルを左右及び下側から挟むように配設し,バンパー下辺部分に車幅一杯のバンパースカートを突出させて形成している点,
(エ)ホイールアーチ部分の態様について,本願部分は,バンパーから膨出部分が続くブリスターフェンダーであるのに対して,本意匠部分は,ホイールアーチ周辺部分のみが膨出している点,
(オ)ボンネット上面部の態様について,本願部分は,ボンネット上面部中央部分を前に向かって下に傾斜させ,平面視略横等脚台形状の凹部を形成しているのに対して,本意匠部分には,凹部のないフラットな面としている点,
が認められる。

3.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願部分と本意匠部分が類似するか否か,すなわち両意匠部分の類似性について考察する。

まず,共通点(A)のキャビン前方部分全体の態様,及び共通点(B)ないし(D)の各部の態様は,両意匠の基調を形成し,需要者に共通の印象を強く与えるものであるから,これらの共通点(A)ないし(D)は両意匠部分の類否判断に支配的な影響を及ぼしている。その上,車体を前方から観察する場合,特に目に付く部分である車体前面部のバンパーより上側の部分に配された,フロントコンビネーションランプ,フロントグリル上方の水平モール,及びフロントグリル枠内の上部3本の横桟といった各部位の形態がほぼ同一であり,これら各部位の配置態様もほぼ同じ構成であるから,これらが共通する両意匠部分は,需要者に対し共通した印象を強く与えるものとなっている。
したがって,共通点(A)ないし(D)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は大きいと言える。

これに対して,上記相違点(ア)ないし(オ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまるものであって,上記共通点が与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。
すなわち,相違点(ア)バンパービームの有無,相違点(イ)フロントグリルの態様及び相違点(ウ)フロントバンパーの態様については,車体を前方から観察する場合,車体前面部におけるボンネットとフロントバンパーの間の特に目に付く部分に比べて目立たない部位における相違であって,部分意匠全体から見れば共通する態様に埋没してしまう程度の軽微な相違に過ぎないものであるから,これらの相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
次に,相違点(エ)ホイールアーチ部分の態様,及び相違点(オ)ボンネット上面部の態様については,この種物品分野において,本願部分の態様は特段特徴のないものであり,本願意匠のみが持つ格別な特徴とは言えず,両意匠部分に別異な印象を与える程のものではないから,この相違点(エ)及び相違点(オ)が両意匠部分の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。
そして,これらの相違点(ア)ないし(オ)によって生じる視覚的効果は,いずれも微弱なもので,それらが相まって生じる視覚的効果を考慮しても,両意匠の共通する美感を凌いで異なる美感を起こさせるほどのものではない。

4.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠の意匠に係る物品について一致し,両意匠部分の用途及び機能,並びに位置,大きさ及び範囲について共通し,両意匠部分の形態についても,共通点は,看者に対して視覚を通じてまとまった一つの美感を与え,両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼすものと認められるのに対して,相違点は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さく,これらが相俟って生じる視覚的効果を考慮しても,共通点が看者に与える美感を覆して両意匠を別異のものと印象付けるほどのものではない。
したがって,本願意匠は,本意匠である意願2013-021678号(意匠登録第1499556号)の意匠に類似するものと認められる。
なお,本願は,両意匠の出願人が同一の者であり,出願日が本意匠の出願日と同日であるので,これらについても意匠法第10条第1項の要件を充足しているものである。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するから,原審の拒絶理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-02-26 
出願番号 意願2013-21683(D2013-21683) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 江塚 尚弘
斉藤 孝恵
登録日 2015-04-03 
登録番号 意匠登録第1523328号(D1523328) 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 

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