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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 E0
管理番号 1299403 
審判番号 不服2014-18193
総通号数 185 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-09-11 
確定日 2015-03-20 
意匠に係る物品 ペットフード 
事件の表示 意願2013- 7694「ペットフード」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,2012年10月5日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成25年(2013年)4月5日の意匠登録出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面の記載によれば,意匠に係る物品を「ペットフード」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「各図の表面部前面にあらわされた点は,立体表面の形状を表現するためのものである。」としたものである。(別紙第1参照)


第2 原審における拒絶の理由

原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,本願意匠は,意匠に係る物品を「ペットフード」とし,その形態は,周側面を等厚とし,平面視形状(本願図面では正面図)を魚形とした態様のものと認められるが,ペットフードの分野において,周側面の厚みを一定とし,種々の平面視形状として全体を構成する手法が,例えば意匠1及び意匠2において,本願出願前からごく普通に見られる態様であると認められ,また,魚の形をペットフードの形状に用いることも,例えば意匠3において,本願出願前から公然知られており,本願の意匠は,ありふれた手法に基づき周側面を等厚とし,意匠3に見られるような公然知られた形状の魚の形を平面視形状としてほとんどそのまま用いたまでであり,この種物品について通常の知識を有する者であれば,容易にその意匠を創作することができたものである,というものである。

意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1419841号の意匠
(意匠に係る物品:ペットフード)

意匠2(別紙第3参照)
特許庁総合情報館が2000年 2月 2日に受け入れた
1999年12月31日発行の国際事務局意匠公報
(CD-ROM番号:No10/1999)に記載された
国際意匠登録 第 DM/049 373号の
犬用ビスケットの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH14507677号)

意匠3(別紙第4参照)
特許庁普及支援課が2009年 7月16日に受け入れた
大韓民国意匠商標公報 2009年 4月20日09-08号
ペット用菓子(登録番号30-0526341)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH21416686号)


第3 請求人の主張の要旨

本願意匠と意匠3は,その概略形状が魚の形である点で共通性がみられる。一方,意匠3との対比においてみると,本願意匠は,より丸い頭部と,角度の狭い尾びれ部とを有する平面視形状のものであり,かつ,周側面の厚みを一定としたものである点で,意匠3との相違がみられる。
本願意匠と意匠3は,前記のようにその平面視形状が相違しているものであり,両意匠を対比すると,意匠3は頭部が細くスマートで,大きな尾びれを有する魚という印象を与えるのに対し,本願意匠はずんぐりして頭でっかちな魚の印象を与えており,両意匠には明確な美感上の相違がある。この相違は,本願意匠は意匠3の平面視形状をそのまま用いたものではなく,多様なデザイン面での選択肢から創意工夫を施して独自の装飾効果を求めて創作したものであることを示すものである。
また,意匠3は,眺める角度によって輪郭形状が多様に変化する立体形状であり,常に平面から見た形状が観察されるものでもない事も勘案すると,本願意匠の創作に当たり「公然知られた意匠3の形状をそのまま用いた」という審査官の認定にも疑問がある。
すなわち,本願の意匠はその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内または外国において公然知られた形状,模様もしくは色彩,またはこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものではないから,意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものである。


第4 当審の判断

以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。なお,本願意匠の向きに合わせて,引用意匠(意匠1及び意匠3)を認定する。

(1)本願意匠の形態

本願意匠は,全体を等厚とした,平面視を魚を形取った形状としたペットフードである。具体的には,本願意匠は正面図において,全体の縦横比を約4:3とした,胴部と尾部とからなる上向きの略魚形状であって,縦方向における胴部と尾部との長さの割合は約2:1であり,胴部自体の縦横比は約1:1であり,尾部自体の縦横比は約1:2となっている。略卵形状からなる胴部は,上方が緩やかな弧状となっており,一方の尾部は左右下方向に膨らんだ略逆ハート形状に形成したものであり,そして,正面側の周端縁はわずかに略隅丸状に面取りがされているものである。

(2)本願意匠の創作の容易性について

原審の拒絶の理由において,ペットフードの分野では全体の厚みが一定な種々の平面視形状として全体を構成する手法は本願出願前からごく普通に見られる態様であり,また,魚の形をペットフードの形状に用いることも本願出願前から公然知られているとして,それぞれ意匠1及び意匠2並びに意匠3を示した上で,本願意匠はありふれた手法に基づき全体を等厚とし,意匠3に見られるような公然知られた形状の魚の形を平面視形状としてほとんどそのまま用いたまでに過ぎず,容易に創作できたものとしているが,それぞれ以下の理由により,成り立たない。
まず,意匠3については,本願意匠と同様に,魚をモチーフとしたペットフード(ペット用菓子)の意匠であって,胴部と尾部とからなる意匠3の左側面図と本願意匠の正面図とは共通する印象はあるが,意匠3は,全体の縦横比は約4:3であって本願意匠と同程度であるが,意匠3の縦方向における胴部と尾部との長さの割合は約5:3であって本願意匠よりも尾部の割合が大きく,意匠3の胴部自体の縦横比は約6:5であって本願意匠よりも胴部が細く,意匠3の尾部自体の縦横比は約1:2であって本願意匠と同程度の割合であり,これらを踏まえ本願意匠と意匠3とを比較すると,意匠3は本願意匠よりも尾部が大きく感じられ,そして略楕円状からなる胴部は横幅が細く先端も尖っており,本願意匠よりも全体的に細い態様となっている。そして,意匠3は,平面図や斜視図に表れるように,実際の魚のような略流線型をしており,実際に両意匠を比較した場合には,直線的に形取られた本願意匠と,全体的に丸みを帯びた意匠3とは異なる態様であり,意匠3をほとんどそのまま用いたまでのものとはいえない。
次に,意匠1については,全体の厚みが一定であるペットフードの例示であるが,平面図における全体の厚みと平坦面の横方向の長さとの割合について,本願意匠は約1:3であるのに対して意匠1は約1:0.8とかなり厚みがあるものとなっており,本願意匠とは大きく異なるものであるため,意匠1は全体の厚みの例示としては適切なものではない。なお,意匠2については斜視図のみの開示であって,全体の厚みが一定であるかどうかが不明であるため適切な引例とはいえない。
以上より,本願意匠と意匠3とは平面視形状における細部において異なっており,たとえ意匠3の全体の厚みを一定にしたとしても本願意匠にはならないものである。したがって,全体を等厚とし,略卵形状の胴部と略逆ハート形状の尾部とからなる,縦横比が約4:3の上向き略魚形状の正面側周端縁をわずかに略隅丸状に面取りした本願意匠の態様は,先行意匠からは容易に創作することができない本願意匠独自のものであるから,本願意匠は,公知の形態に基づいて容易に創作できたものということはできない。


第5 むすび

以上のとおりであるから,本願については,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-03-06 
出願番号 意願2013-7694(D2013-7694) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (E0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 伊藤 宏幸平田 哲也 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
綿貫 浩一
登録日 2015-04-24 
登録番号 意匠登録第1524885号(D1524885) 
代理人 朝倉 悟 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 黒瀬 雅志 

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