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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1301617 |
審判番号 | 不服2014-23872 |
総通号数 | 187 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-11-25 |
確定日 | 2015-05-12 |
意匠に係る物品 | ストレッチャー |
事件の表示 | 意願2013- 15640「ストレッチャー」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1.本願意匠 本願は,平成25年(2013年)7月9日付けの出願であって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたものによれば,意匠に係る物品を「ストレッチャー」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面代用写真に現されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第2.原査定における拒絶の理由及び引用意匠 1.原査定における拒絶の理由 原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内または外国において公然知られた意匠に類似するものと認められ、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当する,というものであり,拒絶理由通知書には,公然知られた意匠として,「平成22年(2010年)10月18日から20日までに,イスラエル トレード フェアーズ アンド コンベンション センター(101 Rohach Ave.Tel-Aviv,Israel 所在)内ホール14-15で開催された展示会『ISRAEL DEFENSE EXHIBITION 2010』(ISDEF2010)において,イージー レスキュー リミテッドが『the BUDDY system』として展示し,公然知られたストレッチャーの意匠」が記載されている。 また,拒絶理由通知書には,当該意匠を立証する証拠として,以下の参考文献1から4までが提示されている。 参考文献1:DOUBLETAPPER記事「Easy Rescue」 URL:http://doubletapper.blogspot.com/2010/11/easy-rescue.html (別紙第2参照) 参考文献2:ARMY RECOGNITION記事「Easy Rescue,a new Innovative wounded soldier transfer system in the battlefield.」 URL: http://www.armyrecognition.com/isdef_2010_news_pictures_video_actualites_photos/easy_rescue_buddy_a_new_innovative_wounded_soldier_transfer_system_in_the_battlefield.html (別紙第3参照) 参考文献3:Defense Update記事「Easy Rescue」 URL:http://defense-update.com/20101017_easy-rescue.html (別紙第4参照) 参考文献4:Defense Update記事「ISDEF2010-Israel Defense Expo Opens in Tel Aviv」 URL:http://defense-update.com/20101014_isdef-2010.html (別紙第5参照) 2.各参考文献の記載事項及び引用意匠の認定 各参考文献をみると,その記載事項は,以下のとおりである。 (1)参考文献1 参考文献1には,「the BUDDY system」(以下,単に「BUDDY」という。)が「ISDEF2010」の会場で見られたこと,「Easy Rescue」がBUDDYを開発及び販売していること,BUDDYが軽量な布で作られ,1人の被搬送者を2人で搬送できる器具であることについて記載され,BUDDYを広げた状態の縦長の写真,BUDDYを袋に収納した状態の写真及びBUDDYで女性を搬送している状態の写真が掲載されている。 (2)参考文献2 参考文献2には,「Easy Rescue」がBUDDYを「ISDEF2010」で発表したこと,BUDDYが軽量な布で作られ,被搬送者を搬送する器具であることについて記載され,BUDDYを,被搬送者の膝に相当する位置及び腰に相当する位置で屈曲させた状態の写真,BUDDYで女性を搬送している状態の写真及びBUDDYを袋に収納した状態の写真が掲載されている。 (3)参考文献3 参考文献3には,「Easy Rescue」がBUDDYを開発及び販売していること,BUDDYが軽量な布で作られ,1人の被搬送者を2人で搬送できる器具であることについて記載されている。 (4)参考文献4 参考文献4には,「ISDEF2010」が,イスラエルにおける先端的な防衛業務についての展示会であること,専従の招待者だけに限定され,一般人は入場できないこと,Tel Aviv(テルアビブ)にあるIsrael Trade Fairs Center(イスラエル トレード フェアーズ センター)内のHall(ホール)14-15で,2010年10月18日から20日まで開催されたことについて記載されている。 (5)引用意匠の認定 参考文献1から3までによれば,「Easy Rescue」がBUDDYを開発及び販売していること,BUDDYが軽量な布で作られ,1人の被搬送者を2人で搬送できる器具であること,「Easy Rescue」がBUDDYを「ISDEF2010」で発表したことを推定できるし,参考文献1及び2に掲載された写真によれば,BUDDYを広げた状態での形態は,参考文献1に掲載された縦長の写真に現されたとおりのものであると推定できる。また,被搬送者を搬送する器具を「ストレッチャー」と表現できることは,明らかである。 そして,参考文献4によれば,「ISDEF2010」が,テルアビブにあるイスラエル トレード フェアーズ センター内のホール14-15で,2010年10月18日から20日まで開催されたことを推定できるし,当該「ISDEF2010」は,一般人の入場が制限されていたとはいえ,参考文献1から3までが存在することからみて,少なくともBUDDYについて知り得た情報の公開が禁じられていたとまではいえないことを推定できる。 以上を総合すると,引用意匠は,本願の出願前である,平成22年10月18日から20日まで,イスラエル トレード フェアーズ センター内のホール14-15で開催された展示会「ISDEF2010」において,「Easy Rescue」が「the BUDDY system」として展示し,公然知られたストレッチャーの意匠であって,その広げた状態での形態は,参考文献1に掲載された縦長の写真に現されたとおりのものであると認定できる。(別紙第6参照) 第3.当審の判断 1.本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,共に「ストレッチャー」であって一致する。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,以下のとおりの共通点及び相違点がある(なお,対比のため,「平面図」とされた図面代用写真を左に90°回転させて引用意匠の写真と並べて,膝屈曲部及び腰屈曲部の位置及び大きさを揃えたものを以下の参考図として添付し,上下や左右等の方向は,当該参考図における方向を示す。)。 (参考図) <共通点> 両意匠は,基本的構成態様として, (A)全体は,膝屈曲部及び腰屈曲部を有する縦長の略長方形状の布製の本体と,本体の左右に設けられたつり下げベルトで構成され,本体の膝屈曲部より下方が下腿支持部となり,膝屈曲部と腰屈曲部との間が座面部となり,腰屈曲部より上方が背もたれ部となっており,背もたれ部及び膝屈曲部につり下げベルトが接続されている点, 具体的な構成態様として, (B)本体の膝屈曲部の近傍に,被搬送者の大腿部を固定する固定ベルトが設けられ,腰屈曲部の近傍に,被搬送者の腰ないしは腹部を固定する固定ベルトが設けられている点, (C)下腿支持部の左右の下端に,グリップハンドル部が設けられている点, (D)本体及びつり下げベルトを収納する収納袋が,本体上方の背面側に取り付けられている点, (E)つり下げベルトに隅丸長方形状の肩パッドが付設されている点, (F)座面部,背もたれ部,つり下げベルト及びグリップハンドル部に濃紺色が配され,下腿支持部,肩パッド及び収納袋に赤色が配されている点, において共通する。 <相違点> (ア)本願意匠の背もたれ部は,下方の下腿支持部及び座面部から連続する,単一部材で構成されて隙間がないものであって,その形状は略逆台形状であり,背もたれ部の高さは,座面部の幅に対して1.2倍程度の高さであるのに対して,引用意匠の背もたれ部は,ベルト状の部材で連結された上側部分と下側部分との2部材で構成されて,上側部分と下側部分との間に隙間があるものであって,上側部分の形状は横長の略長方形状であり,上側部分及び下側部分の高さは,座面部の幅に対して0.5倍程度の高さである点, (イ)本願意匠は,背もたれ部の上端の左右及び腰屈曲部の近傍の左右にグリップハンドル部を有しているのに対して,引用意匠は,グリップハンドル部を有していない点, (ウ)本願意匠の下腿支持部は,下端からグリップハンドルの長さ分が濃紺色であるのに対して,引用意匠の下腿支持部は,ほぼ全面を赤色としている点, (エ)本願意匠は,背もたれ部の背面側の左右両縁部及び下腿支持部の背面側の左右両縁部に,背もたれ部及び下腿支持部を背面側に折り返して固定するための面ファスナーが設けられているのに対して,引用意匠は,背もたれ部及び下腿支持部の背面側の態様が不明である点, において相違する。 2.両意匠の類否判断 以上の一致点,共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価及び総合して,両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。 両意匠は,意匠に係る物品が「ストレッチャー」であって一致し,形態については,以下のとおりである (1)共通点の評価 ストレッチャーは,被搬送者を搬送するための器具であるから,需要者は,被搬送者を搬送してストレッチャーとしての機能を発揮している状態や,ストレッチャーを広げて準備した状態での態様に,最も関心を寄せるものといえる。したがって,両意匠の類否判断を検討するに当たっては,被搬送者を搬送している状態や,広げて準備した状態での態様を最も重視するべきである。 基本的構成態様としてあげた共通点(A)から(C)までは,ストレッチャーを広げて準備した状態での態様に関するものではあるが,この種の物品,すなわち被搬送者の左右から2人の搬送者でつり下げるように搬送するストレッチャーとしては,両意匠のほかにもいくつか見られる態様(例えば,公開特許公報,特開2009-5727号の図5から7までに表れるストレッチャーの意匠(参考意匠1,別紙第7参照)及び公表特許公報,特表2010-501216号の図7及び9に表れるストレッチャーの意匠(参考意匠2,別紙第8参照)であって,両意匠のみに共通する態様とまではいえないから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまるものといえる。 また,共通点(F)は,ストレッチャーを広げた状態において,一見して認識でき,需要者の注意を引きつけるものではあるが,色彩の共通性のみで両意匠の類否判断が決定付けられるものではなく,形状の異同と共に判断されるべきものであるので,その及ぼす影響は,一定程度にとどまるものといえる。 そして,共通点(D)は,本体の背面側に取り付けられた収納袋に関する態様であるところ,ストレッチャーを広げた状態においては,需要者から見えにくいものであるし,被搬送者を搬送する機能には直接関係しないから,需要者の関心をそれほど引きつけるものとはいえず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さいものといえる。 最後に,共通点(E)は,つり下げベルトとしては,ありふれた態様であるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱といえる。 (2)相違点の評価 これに対して,相違点(ア)は,ストレッチャーを広げた状態において,非常に目に付きやすいものであって,本願意匠の背もたれ部が,略逆台形状の単一部材であって,座面部に対して大きい印象を与えるのに対して,引用意匠のそれが,ベルト状の部材で連結された2部材であって,座面部に対して小さい印象を与えることは,両意匠の類否判断に非常に大きな影響を与えるといえる。さらに,本願意匠の背もたれ部は,座面部の幅との比較において,引用意匠のそれよりも,はるかに高いものであるところ,これは,本願意匠に係るストレッチャーは,被搬送者が座った姿勢だけでなく,寝た姿勢でも搬送できるものであるのに対して,引用意匠に係るそれは,専ら被搬送者が座った姿勢で搬送するものであることに起因するから,両意匠の背もたれ部の高さに関する相違は,被搬送者を搬送する状態を観察する際に,全く異なる印象を与えるといわざるを得ない。 また,相違点(イ)に係るグリップハンドルに関する相違も,本願意匠に係るストレッチャーが,被搬送者が寝た姿勢で搬送できるものであることに起因するから,被搬送者を搬送する状態を観察する際に,相違点(ア)とあいまって,両意匠が異なるものであることを,より強く印象づけるといえる。 そして,相違点(ウ)は,ストレッチャーを広げた状態において,目に付きやすいものではあるが,下腿支持部のうちで濃紺色とされた部分は,それほど大きな面積を占めるわけではないから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,それほど大きなものではない。 最後に,相違点(エ)は,ストレッチャーの背面側に表れるものであるから,ストレッチャーを広げた状態においては需要者から観察されにくいが,当該相違点は,本願意匠に係るストレッチャーが,背もたれ部及び下腿支持部を背面側に折り返して固定できることに起因する形態上の相違に係るものであるから,そのように背もたれ部や下腿支持部を折り返して,被搬送者を搬送する状態を観察する際に,需要者に対して,両意匠が異なるものであるとの印象を与えるといえる。 (3)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が「ストレッチャー」であって一致するが,形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度にとどまり,類否を決定付けるとまではいえないのに対して,相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,共通点のそれをはるかに凌駕しており,両意匠は,意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するということはできない。 第4.むすび 以上のとおりであって,原査定の引用意匠をもって,本願意匠は,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,原査定の拒絶の理由によって,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-04-21 |
出願番号 | 意願2013-15640(D2013-15640) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 鶴田 愛、並木 文子、神谷 由紀 |
特許庁審判長 |
本多 誠一 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 橘 崇生 |
登録日 | 2015-06-12 |
登録番号 | 意匠登録第1528693号(D1528693) |
代理人 | 東谷 幸浩 |
代理人 | 正林 真之 |