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審決分類 |
審判 査定不服 意10条1号類似意匠 取り消して登録 D4 |
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管理番号 | 1302944 |
審判番号 | 不服2015-2983 |
総通号数 | 188 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2015-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-02-17 |
確定日 | 2015-06-12 |
意匠に係る物品 | 暖房用ラジエーターパネル |
事件の表示 | 意願2013- 9380「暖房用ラジエーターパネル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 本願意匠 本願は,平成24年(2012年)10月25日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,平成25年(2013年)4月25日の意匠登録出願であり,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「暖房用ラジエーターパネル」とし,形態を,願書及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第2 原審の拒絶の理由 原審における拒絶の理由は,本願意匠が,願書に記載した本意匠(意願2013-9381。以下,単に「本意匠」という。)に類似する意匠と認められないので,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものであって,具体的には以下のとおりである。 「本願の意匠と本意匠を比較すると,スリットの向き,長さ及び数が異なり,意匠全体として観察した場合,それらが相俟って異なる印象を与えるものであるから,本願の意匠は,本意匠に類似しないものと認められます。」 第3 手続きの経緯 上記原審の拒絶の理由に対して,請求人は意見書を提出し,本願意匠が本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものである旨主張したが,同主張を採用できないとして拒絶の査定がなされたため,同査定を不服として平成27年(2015年)2月17日に審判を請求し,原査定を取り消し本願意匠を登録すべきものとの審決を求めるとともに,同日に手続補正により本願の本意匠の表示を削除した。 第4 当審の判断 以下,本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。 1 本意匠 本意匠は,平成24年(2012年)10月25日の域内市場における調和のための官庁(商標及び意匠)への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い,平成25年(2013年)4月25日に意匠登録出願されたものであり,平成26年(2014年)7月4日に意匠権の設定の登録がなされ,同年8月4日に発行された意匠公報に掲載されたとおりのものである(別紙第2参照)。 2 本願意匠と本意匠の対比 (1)意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は「暖房用ラジエーターパネル」であり,引用意匠の意匠に係る物品も「暖房用ラジエーターパネル」であるから,本願意匠と本意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は同一である。 なお,本願意匠の願書に添付した図面中「使用状態を示す参考図」によれば,本願意匠は,長辺側を水平にして住居等の壁面に備え付けて使用されるものであり,本意匠も同様に使用されるものである。 (2)両意匠の形態 両意匠の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。 ア 共通点 両意匠には,基本的構成態様として,以下の共通点が認められる。 (A)基本的構成態様について 全体が,縦長長方形の板状体であって,内側には複数の細長いスリット孔が設けられている。 また,具体的態様として,以下の共通点が認められる。 (B)全体の比率について 正面視縦横比が,約2:5である。 (C)側面視の態様について 側面から見て,正面側及び背面側が中央に向かって傾斜して略倒扁平台形状に中央が膨出しており,その厚みは,背面側が正面側の約2倍である。また,正面側の台形脚部の傾きは,背面側よりも緩やかであって,正面側の台形脚部の長さが背面側に比べて大きく表されている。 (D)四隅の態様について 正面四隅及び背面四隅に,角部から内側に向けて斜めの稜線が形成されており,その稜線が左右又は上下のスリット孔の端部に連続している。 (E)背面周囲の態様について 背面外周のやや内側に二重線状の区画が形成されており,背面外周からその区画までが略枠状に表されている。 イ 差異点 一方,両意匠には,基本的構成態様として,以下の差異点が認められる。 (a)スリット孔構成態様について 正面から見た本願意匠のスリット孔は,縦長であって,横方向に5列等間隔に並んでおり,全体の板状体の長辺方向に亘って長く形成されているのに対して,本意匠のスリット孔は横長であって,縦方向に14列等間隔に並んでおり,全体の板状体の短辺方向に形成されているので,本願意匠に比べてスリット孔の長さは短い。 また,具体的態様として,以下の差異点が認められる。 (b)スリット孔の端部の間の態様について 本意匠には,各スリット孔の端部の間に,端部同士を繋ぐように縦方向の稜線が表されているが,本願意匠には,各スリット孔の端部の間に,端部同士を繋ぐ稜線は表されていない。 (c)背面周囲の形状について 背面から見て,本意匠の上端寄り中央に小円形孔が形成され,下端寄り左右には2段の小円柱状部が後方に突設されている。また,その小円柱状部の内側が横長長方形状に切り欠かれて,その切り欠きの左右の内側面に,横長矩形状の小突起が内側に突出して表されており,同小突起は底面視においても同様に表されている。 3 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品 前記認定したとおり,両意匠の意匠に係る物品は同一である。 (2)暖房用ラジエーターパネルの物品分野の意匠の類否判断 暖房用ラジエーターパネルを看者が観察するに当たっては,住居等の壁面に備え付けて使用されることから,看者は主として正面の態様を観察することになる。また,スリット孔は,正面の目立つ部位にあることから,看者はスリット孔の構成態様に対して特に注意を払うことになる。したがって,暖房用ラジエーターパネルの意匠の類否判断においては,上記の観点を主に評価し,かつそれ以外の観点も併せて,各観点を総合して意匠全体として形態を評価する。 (3)形態の共通点の評価 両意匠の形態の共通点(A)で指摘した,長方形板状体の内側に複数の細長いスリット孔を設けた態様は,ラジエーターパネルの物品分野において,本願の出願前に普通に見受けられることから(例えば,特許庁意匠課公知資料番号第HH14010896号。別紙第3参照。),共通点(B)の縦横比の共通点を考慮したとしても,看者の注意を惹くものとはいえない。また,(D)で指摘した四隅の態様についての共通点は,四隅という限られた部位についての共通点であること,及び正面側及び背面側が略倒扁平台形状に膨出していることから斜めの稜線が形成されているにすぎないことから,看者の目を特に惹くものとはいえず,(E)の背面視の態様で指摘した共通点については,背面に関する差異であって,ラジエーターパネルの使用状態において隠れる部位についての差異であるから看者が常に注視する差異であるとはいい難い。したがって,共通点(A),(B),(D)及び(E)は,いずれも両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さい。 一方,(C)の側面視の態様で指摘した共通点については,一方向から見た際に看取される差異ではあるが,正面側及び背面側が略倒扁平台形状に表された共通点は,看者に独特の美感を与えていることから,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼしているということができる。 このように,共通点(C)については一定程度評価され得るものの,両意匠の形態の共通点を総合すると,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといえる。 (4)形態の差異点の評価 これに対して,両意匠の形態の差異点については,以下のとおり評価され,差異点を総合すると,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすといわざるを得ない。 まず,差異点(a)で指摘した,スリット孔が縦長であるか横長であるかという向きの差異,5列か14列かの個数の差異,及び長短の長さの差異は,スリット孔が正面のほぼ全体に亘るものであって目立つ部位にあるため,看者はスリット孔のこれらの差異に着目することとなり,かつこれらの差異は看者に別異の視覚的印象を与えることから,差異点(a)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は極めて大きいということができる。 次に,差異点(b)は,各スリット孔の端部同士を繋ぐ稜線の有無に関する差異であり,本意匠では,14本のスリット孔の端部を繋ぐ稜線が縦方向に連続するので,正面外周寄りが四隅の斜めの稜線とあいまって略額縁状に看取されることになるところ,本願意匠には繋ぐ稜線がないためにそのような略額縁状を呈することはなく,この相違は看者に異なる美感を与えているというべきであるから,差異点(b)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 他方,差異点(c)の背面周囲の形状の差異については,背面に関する差異であって,ラジエーターパネルの使用状態において隠れる部位についての差異であるから看者が常に注視する差異であるとはいい難く,引用意匠に見られる小円形孔,小円柱状部及び横長矩形状小突起の意匠全体に占める面積が小さいことから,看者の目を惹く差異であるともいい難いので,差異点(c)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると,共通点を総合すると両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点(a)及び差異点(b)はいずれも両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,差異点(c)の影響が小さいものであるとしても,両意匠の差異点を総合すると,両意匠を別異のものと印象付けるものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。 (5)小括 したがって,両意匠は,意匠に係る物品が同一であるが,両意匠の形態においては,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が小さいのに対して,差異点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響が大きいので,本願意匠は本意匠に類似するということはできない。 4 本願意匠が第10条第1項の規定に該当するか否かについて 本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件を満たしている。 また,本願意匠と本意匠は,本願意匠の意匠登録出願の日が本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,本願意匠の意匠登録出願の日は,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。 しかし,上述のとおり,本願意匠は本意匠に類似するものとは認められないので,意匠法第10条第1項に規定されている,本意匠に類似する意匠(関連意匠)の要件を満たさない。 したがって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しない。 そして,前記のとおり,本願は,審判請求日と同日に願書の本意匠の表示を削除する補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当しないから,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができないものであって,願書の本意匠の表示を削除する補正がなされているから,原審の拒絶の理由によっては拒絶することができない。 また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2015-05-28 |
出願番号 | 意願2013-9380(D2013-9380) |
審決分類 |
D
1
8・
3-
WY
(D4)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 恭子、上島 靖範 |
特許庁審判長 |
斉藤 孝恵 |
特許庁審判官 |
小林 裕和 正田 毅 |
登録日 | 2015-07-10 |
登録番号 | 意匠登録第1530673号(D1530673) |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 恩田 誠 |