• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 G2
管理番号 1302951 
審判番号 不服2014-26234
総通号数 188 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2015-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-12-23 
確定日 2015-06-26 
意匠に係る物品 乗用自動車 
事件の表示 意願2013- 20201「乗用自動車」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,本意匠を意願2013-020184号(意匠登録第1499541号)の意匠(以下,「本意匠」という。)とする関連意匠の意匠登録出願として,平成25年(2013年)9月2日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,意匠に係る物品を「乗用自動車」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に表されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定の拒絶の理由及び本意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。そして,本願意匠の願書の【本意匠の表示】欄に記載の意願2013-020184号(意匠登録第1499541号)の意匠登録出願は,本願意匠の出願日と同日である平成25年(2013年)9月2日に出願され,平成26年(2014年)5月9日に意匠登録の設定がなされ,平成26年(2014年)6月9日に意匠公報が発行されたものであり,その意匠は,意匠に係る物品を「乗用自動車」とし,その形態を願書の記載及び願書に添付した図面の記載のとおりとしたものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

そこで,当審において本願意匠の意匠法第10条第1項適用の可否,とりわけ,本願意匠が本意匠と類似するか否かについて検討する。

1.本願意匠と本意匠の対比
本願意匠と本意匠(以下,「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「乗用自動車」であるので,両意匠の意匠に係る物品は一致する。

次に,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点が認められる。
なお,両意匠の対比にあたっては,車体前方をフロント又は前方側(両意匠の図面では,「左側面図」として表れる。),車体後方をリア又は後方側(両意匠の図面では,「右側面図」として表れる。),車体左側を左側面側(両意匠の図面では,「正面図」として表れる。),車体右側を右側面側(両意匠の図面では,「背面図」として表れる。)として記載する。

まず,共通点として,
(A)全体は,SUV(スポーツ用多目的車)タイプの乗用自動車であって,
(B)車体左側面側について,
(B-1)ピラー及びルーフサイドパネルについて,フロントピラーは,僅かに湾曲した略直線状に形成し,ボンネット後端部から後方に向かって側面視約27°の角度で斜めに立設し,センターピラーは,フロントピラーとリアピラーのほぼ中間部の位置からやや斜め後方に立設し,リアピラーは,アームのなす角度が小さい略幅広ブーメラン状に形成し,車体後端部から前方に向かって斜めに配設した形態とし,フロントピラーから水平なルーフサイドパネルを経てリアピラーまでを一体的に切れ目なく接合して形成している点,
(B-2)ドア及び側面ガラスについて,車体の側面中央部分に,側面視略横長長方形状のフロントドア及び後方側下部を略円弧状に切り欠いた側面視略幅広『(二重カギ括弧)状のリアドアを配し,フロントドア上部に側面視扁平な略扇形状のフロントドアガラスを設け,リアドア上部に側面視略台形状のリアドアガラスを配し,このリアドアガラス後方側には,直線状の枠体を挟んで略三角形状の嵌め殺しのガラスを配設している点,
(B-3)フェンダー及びホイールアーチについて,フロントフェンダー並びにリアドア後方側下部及びリアクォータパネルの下方部分を側面視略逆U字状に切り欠き,その切り欠き部のアーチ状縁部分を細幅の垂直な略逆U字状帯状面となるように形成してホイールアーチとし,このホイールアーチ内周部分に別部材のフェンダートリムを配し,ホイールアーチの周囲全体を車体外側に向かって大きく膨出させて側面視略長方形状のブリスターフェンダーを前後に形成している点,
(B-4)ウエストライン及びキャラクターラインについて,ウエストラインは,フロントコンビネーションランプの後端部からブリスターフェンダー上端部を経て,フロントドア及びリアドアの上端部付近を通り,センターピラー下方部分でやや下方に膨らみ,そこからリアピラー下端部に向かって僅かに上向きの直線状としたラインとし,キャラクターラインは,センターピラー下方部分から前輪ホイールのハブに向かって,なだらかに盛り上がった突出部によるエッジの明確でないほぼ直線状のラインとしている点,
(B-5)フロントブリスターフェンダー前方及びリアブリスターフェンダー後方部分について,車体側面をフロントブリスターフェンダー前方及びリアブリスターフェンダー後方部分で内部に折り込まれたような形態とし,該部位に垂直方向の段差部が表れている点,
(B-6)フロントドア及びリアドア下方部分のサイドスカートは,フロントホイールアーチ後方側下端部からリアブリスターフェンダー下方部に向かって側面視略横長三角錐形状の突出部をドアパネルと一体的に形成している点,
(B-7)リアコンビネーションランプは,側面視略横V字状とし,V字の上辺がリアブリスターフェンダー上方まで伸展し,下辺は垂直方向の段差部に沿って形成している点,
なお,車体右側面側は,給油口の部分を除き,車体左側面側のものと左右対称の形態である。
(C)車体前方側について,
(C-1)フロントグリル枠部は,縦枠の中央やや上方寄りが左右に括れ,下方部分が上方部分より左右に拡がる略鼓形状とし,車体より明調子のモールで構成している点,
(C-2)フロントコンビネーションランプ下方に設けられた前方視略レ点状のライト(以下,「矢印形ライト」という。)は,フロントグリル枠部の左右括れ部下方付近からフロントブリスターフェンダーに向かって,左右対称に配設している点,
(C-3)フロント左右下方部分は,矢印形ライト下辺部から下方部分が一段落ち込みつつ,フロントブリスターフェンダー内側に入り込んだ形態とし,このフェンダー内側の奥まった部分に,略L字状のスリット部を左右対称に形成している点,
(C-4)エンブレムは,楕円形状の枠内に傾斜したLの字を配したものをフロントグリル上方から約1/4部分の中央部分に1つ配設している点,
(D)車体後方側について,
(D-1)リアハッチは,上方に向かって前方に傾斜したリアガラス及び垂直ゲートからなり,この垂直ゲート上端部寄り中央部分に車体前方側と同様のエンブレムを1つ配し,垂直ゲート中央部分に上方が前方側に傾斜した後方視略横長台形状の凹部を形成し,その中央部分に横長長方形板状のライセンスプレート取り付け部を形成している点,
(D-2)リアコンビネーションランプは,車体後方側上方に配設した左右テールランプと,垂直ゲート上方部左右辺部分に設けたトランクリッドランプを一体的に形成し,両ランプを合わせて後方視略横向き三角形状としている点,
(D-3)リアバンパーは,その下部を後方視略横長台形状に切り欠き,該部位に別パーツを嵌合している点
(E)車体上面について,
(E-1)ルーフレールは,ルーフパネルの左右側面側に配設したルーフサイドパネルに沿って,左右一本ずつ配設している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)車体左側面側について
(ア-1)サイドミラーの態様について,本願意匠は,フロントドアパネル前方側上端部に後方視略横長細幅台形状の略棒状ドアミラーを配設しているのに対して,本意匠は,フロントドアパネル前方側上方付近に,後方視略D字状の支持部付き略砲弾形状のドアミラーを立設している点,
(ア-2)ドアハンドルの有無について,本願意匠は,フロント及びリアドア後方側上方付近に横長逆直角台形板状体の目立たないドアハンドルを設けているのに対して,本意匠は,フロント及びリアドア後方側上方付近に楕円状の凹みを形成し,その凹みの左右に渡って両端部を略矢尻状に形成した略棒状の把手部を配設している点,
(イ)車体前方側について
(イ-1)ボンネットの態様について,本願意匠は,フロントグリル上辺枠部分,フロントピラー外側根元付近からフロントグリル枠上辺左右端部に向かって湾曲して表れる左右分割線,及びフロントガラス下辺部近傍部分で囲まれた平面視略横放物線状のやや盛り上がった部分をボンネットとしているのに対して,本意匠は,車体のキャビン前方上面部分をボンネットとし,フロントピラー外側根元付近から前方に向かってやや内側に湾曲した左右プレスラインで囲まれた部分を僅かに膨出した形態とし,プレスラインの傾斜面とフロントグリル外枠側面部の傾斜面の角度を合わせて形成している点,
(イ-2)フロントグリル枠内の態様について,本願意匠は,枠体上方から約1/4部分の位置で断面視略「く」の字状に折曲し,グレーチングタイプの網目が下方に向かうほど漸次拡大するエキスパンドメタルを枠体全面に設けているのに対して,本意匠は,枠体下方から約1/4部分の位置に,ライセンスプレートを設けたバンパービームを配し,その上方に左右端部が後方に傾斜しつつ拡がったメッキモール及び横桟を交互に4条ずつ配設し,その下方にハニカムメッシュを配設している点,
(イ-3)フロントコンビネーションランプの態様について,本願意匠は,フロントグリル上辺枠の左右付近から斜め上方に向かって切り欠きを形成し,該部位に3つの小型発光部を持つランプを埋設しているのに対して,本意匠は,ボンネット前方左右部分に前方視略直角台形状の3つの大型発光部を持つランプを配設している点,
(イ-4)左右スリット部分の態様について,本願意匠は,矢印形ライト下部まで切れ上がったスリット部を形成しているのに対して,本意匠は,矢印形ライト下方部分の約1/2までの高さのスリット部を形成している点,
(イ-5)ボンネットのエアダクトの有無について,本願意匠は,ボンネット後端部に,内部にスリットを設けた平面視略三角形状の左右対称形のエアダクトを2つ対向して配設しているのに対して,本意匠は,ボンネットにエアダクトを形成していない点,
(ウ)車体後方側について
(ウ-1)左右スリット部の有無について,本願意匠は,リアコンビネーションランプ下半分から車体下部付近にまで縦長の幅の狭いスリット部を形成しているのに対して,本意匠には,このようなスリット部は形成せず,リアコンビネーションランプ下端部からリアバンパー垂直面部分上端部分にまで縦長の僅かな段差部を形成している点,
(ウ-2)リアハッチ及びリアバンパーの態様について,本願意匠は,リアバンパーをリアハッチ垂直ゲート下方に僅かに突出して形成し,リアコンビネーションランプ下方部分を車体側面のスリット部内側に入り込むように形成し,リアコンビネーションランプ内側先端部からスリット部下端部に向かって後方視略「ハ」の字状の形状線が表れているのに対して,本意匠は,リアバンパーを後方に突出させてリアバンパー垂直面を形成し,リアハッチ下方部分からリアバンパー垂直面上辺部分にかけて側面視略円弧状のなだらかな傾斜面となるよう形成している点,
(ウ-3)バンパー下部のパーツの態様について,本願意匠は,後方視略逆ハット状の部材の左右下方部分に後方視L字状の枠体を左右対向に配し,この枠体内に2重の横桟からなる水平モールを3本並設したものを埋設しているのに対して,本意匠は,後方視略横長長方形板状の別部材を埋設し,左右下端部に後方視略平行四辺形の開口部を持つマフラーのテールエンドパイプを配設している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と本意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様をベースにした共通点(B)ないし(D)の各部の態様は,両意匠の基調を形成する部分であって,需要者に共通の印象を与えるものであるから,これらの共通点(A)ないし(D)は両意匠の類否判断に支配的な影響を及ぼしているといえる。特に共通点(B-3)ないし(B-6)の車体側面側に形成された各部分の形態は,両意匠にのみ見られる特徴的なものであって,看者に共通した印象をより強く与えるものであり,共通点(C-1)ないし(C-3)の車体前方側の態様,及び共通点(D-2)の車体後方側の各部分の態様と相まって,看者にさらなる共通する美感を起こさせている。
したがって,上記共通点(A)ないし(D)は,共通点全体として両意匠の類否判断に大きな影響を与えているということができる。
一方,共通点(E)については,車体上面における目立たない部分であるから,この共通点(E)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱である。

これに対して,上記相違点(ア)ないし(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものにとどまるものであって,上記共通点が与える強い共通の印象を覆すほどのものではない。
すなわち,相違点(ア-1),相違点(ア-2),相違点(イ-1),相違点(イ-3)ないし相違点(イ-5),相違点(ウ-1)及び相違点(ウ-3)の各相違点については,サイドミラー,フロントコンビネーションランプ,及びボンネットエアダクト等,いわゆるパーツの細部に関する具体的態様に係るものであって,意匠全体としてみた場合には,それらは共通する車体全体の態様に埋没してしまう程度の部分的で軽微な相違であるから,これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまる。
次に,相違点(イ-2)のフロントグリル枠内の態様については,本願意匠は,エキスパンドメタルで構成され,一方,本意匠は,水平方向のメッキモール及び横桟からなるものであるが,いずれの構成も従来からごく普通に見られるものであって特段目を引くものでなく,それに加えて,両意匠のフロントグリル枠体の態様も略鼓形状であって全く共通するものであるから,相違点の印象を共通点の印象が凌駕し,看者に共通する美感を与えるものといえ,この相違点(イ-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度しかない。
また,相違点(ウ-2)のリアハッチ及びリアバンパーの態様については,車体後端部の態様を,リアハッチ垂直ゲートよりリアバンパーを僅かに突出して形成し,左右スリット部に入り込むように形成した本願意匠の形態は特徴的なものであるが,共通点(D-1)リアハッチ垂直ゲート中央部分に形成された凹部の形態,共通点(D-2)リアコンビネーションランプの形態,及び共通点(D-3)リアバンパー下部の略横長台形状の切り欠き部分の形態が共通している両意匠においては,この特徴的な形態に対する印象は薄まり,車体後方側を全体として見た場合,全く別異な印象を与えるものとまではいうことはできず,この相違点(ウ-2)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も一定程度にとどまる。
そして,上記相違点(ア)ないし(ウ)が相乗することによる効果を考慮しても,これらの相違点は両意匠の類否判断を左右するほどのものではない。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について一致し,形態においても,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきであるのに対して,相違点が類否判断に及ぼす影響は小さく,相違点の印象は,共通点の印象を覆すほどのものではないから,意匠全体として見た場合,両意匠は視覚的印象を異にするものとはいえず,類似するものと認められる。
したがって,本願意匠は,本意匠である意願2013-020184号(意匠登録第1499541号)の意匠に類似するものであるから,これを本意匠として関連意匠として意匠登録を受けることができる。

なお,本願意匠と本意匠については,出願人が同一の者であり,出願日が同日であるので,これらの点についても,意匠法第10条第1項の要件を充足している。

第4 むすび

以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠に類似し,意匠法第10条第1項に規定に該当するものであるから,原審の拒絶理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2015-06-10 
出願番号 意願2013-20201(D2013-20201) 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 本多 誠一
特許庁審判官 久保田 大輔
江塚 尚弘
登録日 2015-07-17 
登録番号 意匠登録第1531665号(D1531665) 
代理人 恩田 博宣 
代理人 恩田 誠 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ